画像をクリックすると拡大されます
滅多にレンズを買い足さないKENですが、2024年9月に TAMRON SP 35mm F/1.4 Di USD F045 を購入しました。最初の撮影画像を見た時に衝撃を受けて、一瞬でKENのメインレンズの座を射止めた銘レンズ。撮影にも何度か連れ出してサンプルも増えたので、今回はその「役に立たない」レンズレポートです。
「最後に真面目に設計されたレンズは、私の手元に来て神となった」
というのがこのレンズの印象。その辺りを説明して行きましょう。
EOS 6D, Nikkor-S Auto 55mm F/1.2, F/1.2, 1/4000s, ISO 50
購入のきっかけとなったのが、友人に Nikkor-S Auto 55mm F/1.2 を借りて大崎下島の御手洗でスナップを楽しんだこの写真。F1.2のオールドレンズ開放で撮った写真の世界が面白くて、自分用にも開放でスナップを楽しめる大口径レンズが欲しくなりました。この時点で手持ちの大口径レンズは Carl Zeiss Planar 85mm F/1.4 MMJ と EF50mm F/1.4 USM。プラナーの方は時々持ち出して楽しんでいますが、中望遠レンズなのでスナップとなると用途が限られてしまいます。ならばとEF50mm F/1,4を持ち出してテスト撮影してみましたが、感心するほどに開放時のボケが汚くて堪忍袋の緒が切れて、新レンズの下取りになりました。流石純正レンズで、渋いキタムラで1万円以上の値が付いたのが幸い。
新レンズの候補としてニッコール55mm F1.2や50mm F1.2辺りもリストアップしましたが、中古でも結構値が張るし、フルマニュアルでの撮影になるので、もう少し足して最新のレンズを買った方が良いかなと思い直しました。そこで信頼しているLensTip.comのテスト結果をチェックすれば(って、日頃から熟読しています)、解像性能はシグマ40mm F1.4 DG ArtとタムロンSP35mm F1.4が双璧で抜きん出て良く、次いでキヤノンEF35mm F1.4L IIとシグマ35mm F1.4 DG Art。キヤノンは高いのと、広角レンズの設計思想に欠陥があるのでパス(伝統的に純正花形フードが開放でケラレて周辺光量低下をきたすとか、EF24-105/4Lの24mm近接撮影時にフィルター無しでも周辺がケラレて黒くなるとか、余裕のない設計をしています)。今回のレンズで撮りたいのは、開放のボケで空気感を表現する写真なので、ボケ重視で残り3本のネット上の写真をくまなくチェック。メーカー自らがボケに拘ったというだけあって、タムロンのボケ味が一番柔らかく、最終的にタムロンを選びました。
と、一応の検討プロセスを書いては見ましたが、タムロンSP35mm F1.4は不器用なほど真面目にアプローチして「この写りは、タムロン史上、最高傑作」と自ら言い切った姿勢に共感して、発売時から気になっていたレンズで、購入は決まっていたのかも知れません。ミラーレス時代になって小型軽量化が優先され、周辺光量や歪曲収差は「デジタルレンズ補正」前提で手抜き設計される事が多い中、タムロンSP35mm F1.4は最後に発売された一眼レフ用レンズで、極めて真面目に設計されています。
EOS 6D, TAMRON SP 35mm F/1.4 Di USD F045, f/1.4, 1/1000s, ISO 50, Kenko Center ND
キタムラで新品を購入後、テストがてら最初に撮影した写真がこれ。周辺光量を見る為に空を入れて撮っていますが、開放、デジタルレンズ補正無しで周辺光量低下が殆どありません。速度標識の支柱に張られた小さなステッカーの文字も全部読めて、開放での解像感も一級品。正直ぶったまげました。
とは言え、この写真には仕掛けがあって、Kenko Center NDフィルターを使っています。EOS 6Dは1/4000秒までしかシャッタースピードが無く、明るいレンズだとISO50でもしばしば1/4000秒に張り付いて適正露出が得られない為に(実際、2枚目のニッコール55/1.2の写真もISO50, 1/4000秒)、手持ちの明るいレンズにはNDフィルター代わりにCPLを嵌めていたりします。タムロンSP35mm F1.4の場合は広角レンズで周辺光量低下もあるので、CPLよりもCenter NDの方が相応しいだろうと思って、最初の1枚から使ってみました。それがツボにはまり、開放から周辺光量低下には無縁の自由な世界を手に入れる事が出来ました。
EOS 6D, TAMRON SP 35mm F/1.4 Di USD F045, f/1.4, 1/800s, ISO 50, Kenko Center ND
道路標識の写真は距離があったので、背景がさほどぼけていませんでしたが、このレンズは近付くとマクロレンズのような描写もします。Kenko Center NDフィルターのお陰で開放から均質な画像が得られて、正に神レンズ。
EOS 6D, TAMRON SP 35mm F/1.4 Di USD F045, f/1.4, 1/40s, ISO 50, Kenko Center ND
周辺光量を心配せず、開放でこんな写真を撮っていると楽しくて仕方有りません。冒頭で、、
今回はその「役に立たない」レンズレポートです。
「最後に真面目に設計されたレンズは、私の手元に来て神となった」
と書いたのは、Center NDフィルターが太古の昔に絶版になり、今から入手するのは極めて困難だからです。たまたま中判パノラマ撮影をするためにCenter NDフィルターを持っていた「私」の手元に来て、このレンズは「神」となったけど、皆さんの参考にはなりませんよね。実はこのレンズ購入時点で私の使っていたフォトショップが古いCS6で、このレンズの補正データが無かったという裏の事情もあります(笑)。皆さんの場合は最新のCCを使っているでしょうから、デジタルレンズ補正が効くので問題無いでしょう。
※この記事を皆さんが読んでいる頃には、私の手元に Mac Mini M4 が来て、Adobe CC を使えている筈、、
EOS 6D, TAMRON SP 35mm F/1.4 Di USD F045, f/2, 10s, ISO 1000, 8枚コンポジット, 地上景は20秒露出1枚
タムロンが一番拘ったとされるのが「点が点として写ること」、なので紫金山アトラス彗星を撮影した写真でコマ収差をチェック。生憎このレンズで撮影した星景写真は未だこの構図1枚だけですが、様子は分かります。Center NDフィルターは使っていないので、それなりの周辺光量低下はあります。
上記画像の等倍切り出し。但し、レンズの素の性能を見る為に、コンポジット前の1枚撮りの画像です。右上、左上共にコマ収差は皆無と言って良いでしょう。クリックすると等倍切り出し画像が開きます。
EOS 6D, TAMRON SP 35mm F/1.4 Di USD F045, f/2, 1/1250s, ISO 100, KANI Vivid C-PL
Center NDフィルターを使わない写真も何枚か。これはCPLを使う為にCenter NDを外した写真。F2なので周辺光量低下はありますが、さほど目立ちません。デジタルレンズ補正無し。
EOS 6D, TAMRON SP 35mm F/1.4 Di USD F045, f/2.8, 1/800s, ISO 100, KANI Vivid C-PL
これは被写界深度が欲しかったのでF2.8で撮影。この絞りから周辺光量低下は気にならず、真面目に設計されたレンズの証ですね。デジタルレンズ補正無し。
EOS 6D, TAMRON SP 35mm F/1.4 Di USD F045, f/1.4, 1/500s, ISO 800, Kenko Center ND
息を呑むキレ味と、柔らかなボケ味
このレンズのキャッチコピーですが、そのコンビネーションがもららす空気感は、他のレンズではなかなか得難いものです。但しその代償として、開放の被写界深度は本当に浅く、ピント合わせはMFで魂を込める必要があります。今や私のメインレンズであり、買って良かったと思います。
2025年2月3日
|