街のカメラ屋ではさっそくEOSー1V談話で花が咲いているようです。まだカタログは来ていないようですが、販売店用のセールスマニュアルとか、ポスターとかを見てきましたので、幾つか補足話をしましょう。
インターネットの写真で見る限り殆どEOSー1Nと変わりないように見えたデザインですが、実際にはかなり角が取れて丸みを帯びており、キャノンT90のトップカバーとニコンF5のアイレベルファインダーを足したようなデザインでした。最新の空力特性に優れた車のコンセプトモデルを彷彿させるもので、ヌメっとしていて、正直に言って私にはちょっと気持ち悪いデザインです。
ファンダースクリーンは全面マットのレーザーマットスクリーンでした。これは種類としては今までのEOS1シリーズと変わりません。従ってスクリーンの見え方は今までの1Nと変わらない事になります。但し45点測距エリアの表示線が加わり、型番はEcーC
IIIになっていました。ここでEOSのスクリーンについて補足を..
EOS用ファインダースクリーンには大別して、(1)レーザーマット、(2)ニュー・レーザーマット、(3)ブライト・レーザーマットの三種類があります。
レーザーマットはMFを重視したピントの山の分りやすいスクリーンです。その代わり視野は暗くなり、F値の暗いレンズだと陰りがでます。歴代EOS-1シリーズにはこれが標準装備で、交換スクリーンも極一部を除いてこのタイプです。EOS600シリーズの交換スクリーンにもこのタイプが用意されています(方眼マットなど)。EOS3の交換スクリーンはEOSー1と共通ですので、EOS3にもレーザーマットタイプを装着できます。
ニュー・レーザーマットはAFを重視した、視野が明るく、F値の暗いレンズでも陰りの出にくいスクリーンです。しかしピントの山はかなり掴みにくいです。EOS3の標準装備のスクリーン、EOS-1シリーズ用のEcーR(EOS-1N
RS標準装備)、EOS5の全ての交換スクリーン、EOS600シリーズの大半のスクリーン、及びスクリーン交換出来ない全てのEOSのスクリーンがこれに相当します。
ブライト・レーザーマットはファインダー視野を絞り一段分明るくし、超望遠レンズでのAF撮影を目的にしたものです。実物は見たことありませんが、多分ピントの山が分らず、MFは不可能に近い見え方をするのではないかと思います。EOSー1N用に発売されていましたが、既に生産中止となりました。
次に歴代EOSー1シリーズ標準装備のスクリーンについて。EOSー1用は型番Ec-C、EOSー1N用は型番Ec-C
II、EOSー1V用が型番Ec-C IIIです。これらの違いは、スクリーン表面の表示です。EOSー1用のEcーCは中央部にスポット測光(2.3%)と部分測光(5.8%)の各エリアを示す二重の同心円と、AFエリアを示すマークがあります。EOSー1N用のEcーCIIはスポット測光エリアのみになりました。Ec-C
IIIはEc-C IIに45点測距エリアを追加したものです。蛇足ですが、新しいEc-C
IIIをEOS3に装着すると、45点測距エリア表示を残しながらMFのしやすいファインダーになります。MFの機会の多い人は是非交換されることをお勧めします。私はEOS3入手直後にEOSー1N用のEc-C
IIに交換しましたが、45点測距エリア表示がなく、視線入力モードで測距点の無いところを見つめてしまう事が頻繁にあります。この時AFは誤作動します。
EOSー1、EOSー1Nにニュー・レーザーマットスクリーンを装着すると、露出補正が必要になります。(EOS
3, EOS-1Vにはカスタムファンクションでファインダースクリーンにあわせた露出計特性をセット出来るので、補正は不要)。
さて、話をカメラ店でのEOSー1V談義に戻して...
動体性能を重視するひとはやはりEOSー1Vへの買い換え意欲が強いようです。私の目の前では下取りカメラ談義が早くもされてました。話を聞いていると、EOSー1N、ニコンF100などの高級カメラを下取りに出すケースが多いようです。ということはもうすぐ巷には中古のEOSー1Nや、キヤノン以外の高級カメラが溢れ出すカモ知れません。これで中古相場が下がるようであれば、旧型への興味が益々湧いてきます。
私とカメラ店員の話題はEOSー1Nの中古相場でした。売値で早くも10万円を大幅に下回る(下取り/買い取りでは数万円レベルの)相場予想が店員側から出されてましたが、実際どのように相場が動くのか楽しみです。もしEOSー1Nを持たれていて、それを下取りに出してEOSー1Vを買われようと思われている方は、EOSー1V供給までのつなぎのカメラがあるなら、EOSー1Nは早めに買い取りに出した方が高く売れるかも知れません。EOSー1V供給開始と共にEOSー1N中古が在庫過剰になるのは必至でしょうから。
一方のEOSー1V、個人的には知れば知るほど興味の失せる新モデルです。カメラ店の人も「こりゃマイナーチェンジですね、堅実といえば堅実ですが」と言ってました。EOSー1Vの進化で一番大きなものは、EーTTL調光と、スピードライト550EXによる全速同調ワイヤレス多灯システムでしょうが、既にEOS3には採用済みのものです。次いで最高秒間10コマのモータードライブですが、これは極一部の人にしか有益ではないと思います。マグネシウムボディは私にはどうでも良いことです。作品の品質には何等関係しません。撮影データ記録は有益だと思いますが、はたしてキヤノンがパソコンの今後のOS、ハードウェアの進化に対してどれだけのサポートをしてくれるか大いに疑問です(そもそも今回Windows
95/シリアルポートすら切り捨てたメーカーですから)。カメラの機械寿命とパソコンのOS/ハードの寿命は大いに違います。EOSー1Vが現役中(4〜5年間)はOS/ハードにどんな変化があってもサポートされるでしょうが、EOSー1Vが現行機種でなくなったときに、ビジネスの損得で動く体質のキヤノンがサポートするとは思えません。1994年発売のEOSー1Nはもちろん、1989年発売のEOSー1もまだまだ実戦で十二分に通用するカメラですが、EOSー1Vの5年後、10年後はどうなんでしょう?勿論ハードウェア性能は問題ないでしょうが、撮影データ記録機能は無益になっているかも知れません。EOS100や10のアートコードの様に。もう一つの懸念、ソフトのアップデートの度に私たちは幾ら請求されるのでしょう?たかがケーブルアダプターに5000円の値付けをするメーカーから。
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