ポジフィルムでネイチャー写真を撮るときには、大抵の人が段階露出をしていると思います。私もほぼ必ずします。EOSの評価測光は、アサヒカメラの診断室の測定によるとKissを除いて全て-0.5EVアンダー目にセッティングされているので、+0.5EVの補正が適正露出になる筈です。実際にもその通りで、スナップなどの通常撮影では+0.5EV、プラス補正が原則となる明るい花などは+1.0EV〜+1.5EVで適正露出になることが殆どです。
段階露出の最初の目的は、上記のようなカメラの露出の癖、被写体と適正露出の関係を把握するまでの保険でしょう。この目的の場合は、プラスマイナス0.5段で三枚、迷うときには五枚ぐらい撮影することも必要です。私はポジ主体の撮影に転向するのと同時に撮影データを記録するようにしたので、露出の癖はすぐに掴むことが出来ました。
段階露出の次の目的は、ポジフィルムというラティチュード(許容度)の極めて狭いフィルム上に、美しい画像を残す為の調整です。例えばコスモス撮影の場合、0.5段露出が変わると、花そのものの色合いも変化しますが、それ以上に背景のコスモスの葉と茎の緑色が激変します。それを色味を保ったまま美しく淡い緑に表現するには、微妙な段階露出が欠かせません。ただこの目的の段階露出は必ずしも三枚撮影する必要はありません。私はピンクのコスモスの場合、+0.5EVと+1.0EV補正の二枚撮影することにしています。
所が、最近私はまた三枚の段階露出をするようになりました。丸一年以上撮影データを蓄積したおかげで、殆どの状況で適正露出となる補正量は判断が付くようになりました。にも係わらず殆どの場合でプラスマイナス0.5段(EOS3の時には0.3段、または0.7段、被写体による)段階露出を行っています。何故か...?
ホームページに掲載する写真は、必ずしもポジをライトボックスで見て適正露出となるカットを選択してはいません。何故なら、私のフィルムスキャナー、CanoScan
2700Fがハイライト部の微妙な再現を不得手としており、アンダー目のカットをスキャニングした方が、質感が良いからです。(蛇足ですが、CanoScan
2700Fはシャドー部の再現性も不得手です。ただ、私の写真がどちらかと言えばハイライト部を重視した物が多いので、ハイライト基準でスキャニングしています。)
一方で、ポジからプリントするダイレクトプリントは、機械焼きだと一段ぐらいアンダー目に仕上がってきます。だから、機械焼きだけで終わらす(L判、2L判)プリントなら、明るめのカットで注文した方が良い場合が殆どです。
この様な事情があるので、適正露出と思うカットに対してプラスとマイナスの補正をしたカットも撮影しておくのです。もしホームページが無くてスキャニングの必要もなく、鑑賞はポジか、手焼きのダイレクトプリントだけでするなら、段階露出の必要性は激減するでしょう。趣味が高じて段階露出....と言うわけです(笑)。
参考までにEOSの評価測光で撮影する場合の、私の露出補正量基準値は以下の通りです。EOSは0.5段アンダー目に撮れますので、明るめに撮れるペンタックス等とは1段ぐらいの差がありますので、注意してください。
紅梅 -0.5EV〜0EV
白梅 0EV〜+0.5EV(白梅はプラス補正をしすぎると花の質感が無くなる)
桜 +0.5EV〜+1.0EV(〜+1.5EV)(桜はかなりプラス補正をしても質感を保つ)
真紅のコスモス 0EV〜+0.5EV
ピンクのコスモス +0.5EV〜+1.0EV(+0.5と+1.0で撮っておけば間違いなし)
白いコスモス +1.0EV〜(白からと言って、あまり極端なプラス補正は不要)
菜の花 +1.0EV〜+1.5EV(質感を失うギリギリのプラス補正が綺麗)
カタクリ +0.5EV〜+1.0EV
赤いチューリップ +0.5EV〜+1.0EV(濃い赤でもむしろプラス補正ぎみの方が綺麗)
昆虫 +0.5EV(段階露出する間の無い物は+0.5で撮れば、大きな失敗は防げる)
風景 0EV〜+0.5EV
大樹(幹の質感優先) -0.5EV〜0EV
大樹(新緑の質感優先) +0.5〜+1.0EV
朝霧 +0.5EV〜+1.0EV
夜霧 0EV
夜景 0EV
日の出、日没(太陽を直接撮る)-0.5EV(プラスマイナス1段の段階露出、それぞれ表情が変わる)
太陽光を直接被写体に重ねる様な逆光撮影 スポット測光+1.3〜+1.7EVでAEロック
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