シグマの180mmマクロで実際に撮影した印象を書いて行きましょう。
180mmマクロと90mmマクロの違いは、雑誌などではワーキングディスタンスの違いが一番に挙られますが、私の印象ではそれよりも被写界深度の浅さ、ボケの大きさの方が違いの方がレンズの性格の違いとして差が大きく感じます。
180mmマクロの被写界深度は、90mmのそれに比べるととても浅いです。単純な計算によると、等倍撮影時の被写界深度は、90mm
F2.8レンズの撮影距離29cmだと、深度 0.70mm 180mm F3.5レンズの撮影距離46cmの場合は僅かに深度0.47mmです。実際には、マクロレンズを等倍方向にフォーカスすると、ズームレンズ的な働きで実効焦点距離が短くなっているので、もう少し深度は深いですが、いずれにして1mm(プラスマイナス0.5mm)以下の世界です。90mm
F2.8マクロとの比較では、実際にも半分ぐらいでしょうか。180mmの場合、加えてピントの外れた所が一気にボケてしまうので、数値以上に被写界深度が浅い様に見えます。
この違いを試し撮りした写真で見てみましょう。いずれも撮影倍率等倍でモノサシを撮影しました。被写界深度、ボケ具合の違いが具体的に分ると思います。撮影アングルの微妙な違いはご容赦を。先に180mmで撮影したのですが、ワーキングディスタンスの違いから90mmでは180mm並みの低いアングルが採れませんでした。
レンズと絞り以外の撮影データは共通で、EOS3、マニュアルモード、シャッタースピード1/125秒、露出補正+0.7EV、ストロボを白い紙にバウンスさせてTTLオートで使用しています。写真をクリックすると、より大きな写真で見ることが出来ます。
絞り |
SIGMA 180mm F3.5
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Tamron 90mm F2.8
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開放 |
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F5.6 |
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F11 |
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これらの写真から分ることは、180mmマクロ等倍では被写界深度が1mmも無い事と、絞り込んでも被写界深度の拡大、ボケの減少が90mm程には無いと言う事でしょう。ピントの外れた所が一気にボケて、形が殆ど分らなくなる(省略できる)という特性を理解すればおもしろい絵造りが出来そうですが、逆に背景を説明するために絞り込むというのは、180mmマクロの場合に邪道の様です。背景説明もしたい場合は素直に90mmマクロ、場合によっては50mmマクロに替えるのが良いようです。要は適材適所!
使いこなし、特にピント合わせは難しそうです。私はこの試し撮り結果を見てギョ!っとしました。三脚とマクロスライダーを使って、モノサシの0目盛の前後でボケが均等になるように厳密にピント合せしたつもりなのですが、結果は均等ではありませんでした。ピント合わせしたときと、レリーズでシャッターを切るときで微妙にカメラ位置が動いてしまった様です。その量はわずか0.2〜3mmぐらいでしょうが、それでもピンボケ、ピントのズレになってしまう恐ろしさが180mmマクロにはあります。
では実際の作品を見ながら、レンズの特徴を書いてみましょう。写真をクリックすると、大きくなります。
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これは180mmマクロの特性を良く表した作品だと思います。ボケて色だけになった所に雄しべだけが実像として浮かび上がっています。90mmマクロだとこうはいきません。花びらの存在がもっと感じられる写真になったと思います。どちらが良いかは別問題...撮影者の感性が重要になりますね。
EOS 100, SIGMA 180mm F3.5 Macro, F3.5, AE
(+1.0EV, 1/60sec), RVP |
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これは浅い被写界深度でとことん遊んでみました。私はこう言う遊び(絵造り)が好きです。ピントが合っているのは、花びらの極一部の縁だけです。それ以外は全部ボケて形がありません。いかに180mmマクロ開放等倍付近の被写界深度が浅いかが分る写真だと思います。ただ、作品としてはちょっと遊びすぎましたね。
EOS 3, SIGMA 180mm F3.5 Macro, F3.5, AE (+1.0EV, 1/320sec),
RVP |
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これは多少絞り込んだときのボケ具合を見るための写真です。撮影距離がさほど近くないので被写界深度は見慣れたレベルですが、水滴と、その中の像の両方にピントを合わせるために一段絞り込んでF5で撮影しています。一段絞り込んでもボケの美しさは維持されています。9枚羽絞りの効果が効いているようです。上記にある試し撮りのF5.6の写真でも、背後にある丸ボケの形も余り崩れていません。安心して絞りの使えるマクロレンズです。
EOS 3, SIGMA 180mm F3.5 Macro, F5, AE (+1.0EV, 1/60sec),
EBX |
この様に実際に撮影した感じでは、描写は悪くありません。個人的には気に入りました。キャノン180mmマクロとは比較していませんが、タムロン90mmマクロと比べて、ボケ味にあまり遜色は無いように感じました。180mmマクロはボケがとても大きくなるため、90mmに比べて粗が目立ちにくいのかも知れませんが、ポジを見る限り不満な描写は全くありません。ピントの合ったところも極めてシャープです。特性を理解して使えば、良い写真が撮れそうです。
結論ですが、買って良かったと思います。お金が出せるならキャノンEF180mm
F3.5L Macroを買う方が、より快適な操作性、性能が期待できますが、値段はほぼ倍額です。半額近いシグマでも180mm
Macroの90%の楽しみは味わえるし、それはやはり90mmマクロには無い世界です。
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