ミノルタα-7が発売されました。まだ実際のカメラは見ていませんが、カタログを店からもぎ取ってきましたので、それを見た印象を語ってみようと思います。
まずカタログを読んだ印象は、とても良いカメラだな!ということです。素晴らしく高機能で、使い勝手も良く考えられている気がします。中級高機能カメラでありながら、ファンダースクリーンにα-9同等の物を使うとか、ファインダー倍率0.8倍を達成するとか、基本性能もぬかりありません。
まず操作系ですが、今回目を引くのが、背面液晶パネルの採用。これによって極めて高機能な操作が可能になっています。ただし背面パネルのお蔭で、ボディ上面のパネルにはフィルムカウンター(絞り値表示切り替えあり)とシャッタースピードしか表示されなくなりました。私はローアングル撮影の頻度が極めて高いのですが、その場合背面パネルを読むことが出来ず、上面パネルには必要な情報が表示されないので、役に立ちません。また左目でファインダーを覗く私にとって背面液晶パネルは、いつも鼻の油で汚れる位置にあり気になります。しかし、この位置でないとこれだけ大きなパネルが設置できなかったのも理解できるので、痛し痒しでしょうか。
高機能になっても、ワンボタンで操作切り替えが可能な操作系にこだわっているようです。これは非常に好ましい事です。ただしその結果、カメラ背面は所狭しとボタン類が並び、ブラインドタッチで操作するには、ピアノを弾くピアニスト並みの熟練が必要そうです。
AFセンサーは9点。中央部はクロスセンサーを二重に配置し、合計12のセンサーを採用しています。この配置はとても理にかなった物で、使いやすそうです。センサーの対応F値はF6.7。中央部のみF2.8対応のより高感度なセンサーが設置されています。ここで不思議なのが、キャノンの場合横線センサーはF2.8に限られるのに、ミノルタの場合はF6.7で横線センサーを実現していること。ミノルタの方が圧倒的に使いやすいのは言うまでもありません。キャノンとミノルタで何が違うのでしょう?
AFセンサーの選択は、背面セレクターのワンプッシュで9点を選択でき、使い勝手は良さそうです。EOSの場合は(新発売のEOS-7を除いて)クルクルとダイヤルを回さなければ選択できません。
世界最速AFを唄っていますが、これは単なる見せかけでしょう。50mmレンズに限った話で、ボディ駆動AFを用いたミノルタでは、本当にAF速度が問題になる望遠レンズ系での速度にハンディキャップがあるのは明らかです。
モードラは秒間4コマで、実用上十分な速さを確保しています。加えて秒間2コマにも切り替えられるのはとてもGOODです。キヤノンだとEOS1&3系のHS(RS含む)タイプでしかこの速度切り替えが無く、時として速すぎて困ることがあります。
AF/MFコントロールボタンはミノルタ初の様ですが、フォーカスクラッチを採用し、ボタン一つでAFとMFの切り替えを可能にしています。これはミノルタにとっては大きな進歩でも、キヤノン、ニコン、コンタックスNそしてシグマ(!)に依然として遅れをとっているのには変わりありません。しかしこのフォーカスクラッチという機構を使えば、ボタン操作無しでのAFとMF切り替えが可能だったような気もします。何か問題があったのでしょうか?
ブラケッティングが3枚、5枚、7枚で出来るのは私にとってとても羨ましい。キヤノンはNew
Kissから最高級機EOS 1Vでもバカの一つ覚えで3枚のみですから。ただ、なぜニコンの様に2枚が無いのでしょうね。基準露出と+0.5とかいう2枚ブラケッティングの頻度は極めて高いのですが。
露出インジケーターが1/2段系列の時でもEOSの様に複数のセグメントを点灯させることなくスッキリと表示できるのはとても羨ましいです。よく考えられている!(EOS1系とか3系で0.5段の表示をするときには0.3と0.7の二つのセグメントを点灯させる。これって見にくいのです。)
今回の目玉の一つ、Dレンズと専用Dストロボの組み合わせて可能になるADI調光システム。内容を読むと距離情報を駆使して、反射率の極端に高い/低い壁の前にある被写体でもストロボ適正露出が可能と書いてあります。これって、むかし存在したGNオートレンズの様な発想の様な気がします。昔のストロボ/フラッシュ撮影では、GNと撮影距離だけで絞りを算出していましたから。今回は撮影距離と絞りから、GNを制御しているだけの様な気がしてなりません。もちろんプリ発光もしてはいますが、一体どんな内部演算をしているのでしょう。謎です。この機能の為にカメラとレンズとストロボを全部買い換える人はまずいないでしょうね。
今回私が一番目を惹いて、一番謎なのがSTFモード。絞りを変化させながら多重露出することで、あのSTFレンズの様な効果を出すとあります。確かに作例写真ではSTFレンズで撮ったかのような滑らかなボケ味が得られています。手動で良ければこのテクニックは他のカメラでも出来るはず!原理が分かればEOSで試してみたい!
ただし、これはあくまで多重露出撮影になるので、原野に咲く花の様に、風で微妙に揺れるような被写体には使えないテクニックです。
ここからα-7の目玉である背面大型LCDパネル(ナビゲーションディスプレィ)を活用した機能についての感想を述べたいと思います。
一番メリットのあるのは、撮影データメモリーでしょう。カメラはフィルム7本分のデータを記憶しますが、これを液晶パネルで確認できます。これは便利!(確かα807でも出来たかも知れませんが、表示項目は増えているはず)。更にデータをスマートメディアに記録できるアダプターも別売されています。
ただ、フィルム7本分しか記憶できないとなると、一日の撮影でさえ心もとないですね。スマートメディアとそのアダプターは撮影に携行しないといけません。せめて20本分は記憶して欲しい物です。
ナビゲーションディスプレィで出来る主な機能は他に
・バルブ撮影時のタイムカウント、これは便利そうです。
・被写界深度表示、これは役に立たないでしょう。被写体を目の前にして、撮影距離で示されても意味は無いです。ひとつ有益そうなのは、過焦点距離が分かることでしょうか。過焦点距離とは、あるレンズの焦点距離と絞り値において無限遠が被写界深度におさまる最短の撮影距離の事です。
・撮影履歴表示、これは直近5コマの撮影データが表示される物ですが、マニュアルでAEBをしている時には役に立つかな?
・輝度分布表示。これは役に立ちそうです。13点マルチスポット測光を一発でやってのける機能です。これがもし露出補正操作でリアルタイムに表示が動けば(カタログには説明無し)、無敵の機能になるでしょう。
このナビゲーションディスプレィ。縦位置のときには縦表示になる!おお、なんと心配りの利いたこと。さすがはミノルタさん。更にこの表示、日本語以外にも、英語、フランス語、ドイツ語、スペイン語表示も出来ます。外国人の友人と写真の話題になったときに結構こまるのが、写真用語。絞りとか露出とか、英語で言えますか?(正解はdiaphragmとexposure)このディスプレィで外国語の写真用語の勉強をしましょう!
最後にカスタムファンクション。実に種類が多いですね。キヤノンに比べると中級機でありながら心配りが利いているという気がします。これだけあると他のカメラだと撮影現場で設定変更するのは不可能ですが、α-7はナビゲーションディスプレィに説明が出るので、使えそうです。ただし数が多いので、目指すカスタムファンクションに辿り着くまでが大変そうですが。
冒頭でも書いたファインダーは倍率0.8倍でαー9と同等のスクリーンを採用。とても魅力的ですね。ただし視野率の低さ(92x94%)とファインダースクリーンを自分では交換できないことは残念です。せっかくα-9と同じスーパースフェリカルアキュートマットを装着できるのに、携行レンズによって使い分けられないのでは、実益は少ないでしょう。
最高速1/8000秒、X=1/200秒はEOS3と同スペック。秒間4コマのモードラもEOS3並み(EOS3は4.7コマ)。視野率こそ劣るけど(EOS3は97%)、ファインダー倍率では上回る。これで125000円はとても安い気がします。EOS3の185000円との値段差は、視野率とボディ材質(カバーはプラスチックだけど、フレームは金属)と防滴処理の違いでしょうか。縦位置グリップがいかなるEOSの物よりも使いやすいのはミノルタの良き伝統。縦位置撮影頻度の高い私には、極めて羨ましい装備です。
ミノルタファンで、現在α507、α707、α807あたりを使っている人なら、カメラ屋に走りたくなるでしょうね。極めてよくできたカメラ、それがα-7です。4年前のEOS55並みのインパクトを持つカメラだと思います。
え、私ですか?買いませんよ!EOS以外のシステムを拡張する気はありませんので。カメラバッグに入らないほどカメラを持っていても仕方ない、というのが私の考え方です(^^ゞ
10月に発売になるEOSー7のセールスマニュアルも入手してきました。次回つぶやきはEOSー7の事を書いてみようと思います。前回つぶやきで書いた「ペンタックスFA28-70mm
F4とキヤノンEF100mm F2.8 Macro USM」の続編は、EOSー7の後に掲載の予定です。
|