キヤノンからEOS55の後継機として、10月中旬にEOS-7が発売になります。そのセールスマニュアルを入手してきたので、例によって感想を書いてみたいと思います。
まずマニュアルが語るEOS-7について
最速視線入力7点AF搭載。
精悍ボディに、秘められた高性能。EOS-7誕生。
・上下左右の広視野7点測距を実現
・EOS最速の高精度視線入力7点AF
・軽量小型の斬新なデザイン。多機能を高密度に凝縮
・ダイヤル&レバーによる快適な操作性
・明快なスーパーインポーズ表示と視度調節機能を搭載した、見易いファインダー
・約4コマ/秒(動体予測・AIサーボAF時約3.5コマ/秒)の高速連写
・更に静かに。EOSならではのサイレント給送
・測距点連動35分割評価測光など、きめ細かな露出制御
・EーTTL自動調光システムに完全対応
この順番に従って、EOS55との違いとその感想を語ってみたいと思います。EOS55は私のメインカメラであり、隅々まで知り尽くしています。
まずAFセンサーの配置がKiss 3と同じの7点測距視線入力AFですが、全くの期待外れです。理由はふたつあります。
一つ目の理由は対角線上にAFセンサーが無い事。EOS3、EOS1Vはもちろん、ミノルタα-7、コンタックスN1も全て対角線上のAFセンサーを実現しています。実はこの位置のAFが一番使用頻度が高いのです。この位置にセンサーが無い限り、他のセンサーでAFロックして、フレーミングし直すことから脱却出来ません。
二つ目の理由は、にもかかわらず無用なAFセンサーを増やしたことです。EOS55の良い所は三点AFだったので、視線検知の判断が非常に速いことです。中央か、左か、右か、それだけですから。それゆえにカタログスペックに現われないレスポンスの良さがありました。今回はCPUの速度が倍になっているようですが(検知速度はEOS55の120ms、EOS3の65msに対して、55ms)、センサーの数は倍以上になっており、レスポンスの悪化、視線検知ミスの懸念があります。
EOS3の45点視線入力がミスが多く使いにくいのは良く知られていますよね。3点視線入力のEOS55から45点のEOS3に持ち代えると精度の低さにイライラします。そこで私はEOS3の測距点を11に限定して視線入力を使っていますが、視線検知精度はそれでもEOS55には及びません。EOS3の場合には対角線上のセンサーがあるので11点視線入力はとても実用的ですが、EOS3の11点から対角線上のセンサーを抜いたような配置の7点測距AFの実用性は如何な物でしょう?
視線入力機として初めて視度調整がつきました。これは画期的です。是非今後のすべての視線入力EOSにも採用して欲しいです。連続的に視度調整が出来る機構は、ちょっとだけ近視(-0.25)の私にはとても便利なのです。また、これ迄の視線入力はメガネをかけている人には不評でした。これでメガネが必要な人も視線入力の便利さを十分に味わえるようになると思います。
デザインはEOS55を少し丸くしたような感じです。D30に雰囲気が似ています。これは好き好きでしょう。EOS55同様にトップカバーにはアルミが使われています。マウントも当然金属です。しかしそれ以外の部分はプラスチックです。EOS55からあまり変わっていないようなので、多分フィルムレールもプラスチックのままでしょう。他のメーカーが品質感を向上させてきているので、出来ればもう少し上質な感じにして欲しかったです。
そうそう、EOS55にはあったシルバーボディが廃止されました。ブラックボディのみです。これってガッカリする人が多いと思います。
操作系はEOS55から基本的に変わっていません。一つだけ、背面のサブ電子ダイヤルの中央に測距点選択用の十字キーが付きました。これは使えそうです。なぜEOS1Vに採用されなかったのかが不思議な、多点測距機には当然あってしかるべきボタンです。
4コマ/秒のモードラは、EOS55の2.5コマ/秒から大きく進化しましたね。実際上の問題としては、モードラの速さよりも、それに付随するファインダーの消失時間の減少の方がメリットが大きいと思います。EOS55のファインダー消失は本当に長くてイライラしますから。
秒4コマまで速くなったなら、ミノルタα-7同様に、低速モード(2コマ/秒とか1コマ/秒)が欲しいですね。その方が動体予測AFの精度も上がるはず。
35分割評価測光...どうでも良いです。歴代EOSは色々な数の分割評価測光を持っていますが、性能に大きな差は認められません。
EーTTL自動調光はEOS55から始まった機能なので、別に今回進化した機能ではありません。
それ以外のスペックは...
ファインダー視野率(90x92%)、倍率(0.7倍)はEOS55のままです。ということは視野率、倍率ともに小さくて、見にくく、余計な物が写りやすいファインダーと言えます。私にとってEOS55の最大の不満点ですが、改善されませんでした。
ファインダースクリーンはEOS55同様に交換できません。個人的にはよりピントの山の掴みやすい、レーザーマットスクリーン(MF時代と同じ特性のスクリーン)の方眼タイプを装着したいのですが、それが出来ない事はとても残念です。
被写界深度確認ボタン(プレビューボタン)が付きました。EOS600シリーズが消えた後は、EOS1系、EOS3を除いて他のEOSには無かったボタンです(最近、Kiss
3に付きましたが)。位置はマウント左手側で、EOS600シリーズと同じ位置です。EOS1やEOS3は右手側に付いていてとても使いにくいので、改善と言えましょうか。ただ、EOS55はカスタムファンクションでAEロックボタンによるプレビューが可能でした。これは極めて使いやすいものですがEOS-7で残っているかどうか不明です(マニュアルに説明無し)。またEOS55は視線入力によるプレビューもありました。これは廃止されてしまいました。総体としては改善というよりは改悪かな?
そうそう、キャノンさん、EOS1系、EOS3系でも操作性の良い場所のボタン(例えばAEロックボタン)でプレビューが出来るように、カスタムファンクション増やしてくれ!
ROMの書き換えで対応できる気もするけど...
露出制御は1/2段系列のみ。シャッターは30秒〜1/4000秒でX=1/125秒。これはEOS55から変わっておらず、平凡な中級機のレベルにあります。
別売のバッテリーパックにはEOS55同様に縦位置シャッターが付きます。今回は新たにAE/FEロックボタンが追加されていますが、メイン電子ダイヤルがありません。少々高くなってもこのダイヤルは付けるべきです。ミノルタの縦位置グリップがすべての操作ボタンを付けているのに比べると、キャノンの縦位置撮影に対する見識の浅はかさが目立ちます。
ニコン、ミノルタ、コンタックスにはある流行の撮影データ記録機能は、オプションでも装着できません。EOS55は裏蓋交換できないタイプだったので、多分EOS-7も出来ないでしょう。ということはデータ記録は紙のメモ帳でするしか無いですね。
この内容でEOS55から5000円値上げの93000円。バッテリーパックは500円値上げの9500円です。
1995年9月に発売されたEOS55は、それまでに無い多機能高性能な中級一眼レフとしてエポックメーキングでしたが、それが5年ぶりにモデルチェンジされたEOS-7は進化した部分が非常に少なく、正直に行ってガッカリする内容です。既にEOS55を持っている人が買い換える理由は殆どありません。私が欲しいと持った新機能は視度調節機能のみです。まだEOSを持っていない人が中級機から入るなら、旧型在庫処分か、中古の程度の良いEOS55を買う方が半額で済むのでお勧めです。また、EOSに拘らないなら、もう少しお金を足してミノルタのα-7を買われた方が遥かに満足度の高いカメラボディを手に出来るでしょう。但しキヤノンのUSMによるAFは抜群の魅力度を持っている事は否定できませんので、そこが悩みですね。ミノルタやニコンの中級機の出来が非常に良くなったので、キヤノンの中級機の貧相さが目立ってきたと言うことでしょう。EOS3では中級機として高すぎますよね。12〜13万円ぐらいの、EOS5の後継機が必要なのかも知れません。
最後に、ネーミングのEOS-7といい、4秒/コマのモードラといい、発表のタイミングといい、ミノルタのα-7を凄く意識しての商品と言えますね。キャノンさんは他社情報を非常に良く集めていらっしゃる。
|