相場よりも一桁安い格安価格で手に入れた完動極上のペトリ35「グリーン・オ・マチック」。しかし、HOP(広島お気軽写真クラブ)の仲間から情報を教えてもらった中に、以下のようなコメントもありました。
KEN>レンズ名がオリコールとはおもしろい。
HOP関係者A>レンズ名は「オリコー」でも,写りは「オリコー」ではないという悪口を読んだことがあります。
HOP関係者B>わ、私もそのウワサは耳にしたことが...(^-^;
この意地悪な(しかし史実を伝えている)コメントに対して、私は少々嬉しくなりました。最新のレンズはシャープかつハイコントラストに写るものが多く、その様なレンズなら沢山持っています。しかし、40年以上も前の基準で「オリコーでない」風評をかったレンズなら、現代レンズでは得られない味わい深い描写をするのではないか?と期待が膨らんだのです。
そこで、ペトリをGETした翌週の週末に、試し撮りに連れ出しました。フィルムはコダックE100VS、私の手持ちのフィルムの中ではもっとも高級なフィルムです(コダックのインターネット・アンケートに答えて貰った物です。自腹じゃ高くて買えない(笑))。露出計には反射光式セレン露出計である、Vivitar
35と、露出計代わりの一眼レフとして、EOS 1NにEF 28-105mm F3.5-4.5を付けてお供させました。EOSの露出とVivitar
35の露出を比べると、屋外では1〜2段食い違う...。手でセレンの受光部を覆っても結果はあまり変化無し。その日はポジだったので、露出はシビアだと考え、EOSの露出で撮影することにしました。
EOSに付けたレンズの焦点距離をペトリと同じ45mmにあわせ、露出を測り、ペトリのシャッターと絞りを調節して、ファインダーを覗く...この時に笑ってしまったのが、ペトリのファインダーの視野率。このペトリ、グリーン・オ・マチックという愛称を付けられたのは伊達ではなく、ファインダーには極めて見易いブライトフレームが備わり、しかも自動でパララックスを補正してくれます....が、そのブライトフレームが示す撮影範囲と、視野率100%のEOS
1Nの示す範囲に格段の違いがありました。EOSの視野は信用に足るので、それを基準にするとペトリの視野率は、まあ70%から、良くて80%ぐらい。のんびりしたフレーミングを心掛けないと、思わぬ構図になりそうです。
次に迷ったのが露出...ペトリのシャッタースピードは倍数系列ではありません。B,
1, 2, 5, 10, 25, 50, 100, 250, 500という中間スピードが中途半端な昔の系列です。幸いEOS
1Nは1/3段ステップでシャッターを設定できるので、これらのスピードにも対応出来ます。そこでシャッタースピード優先AEモードにしてシャッタースピードを例えば1/100にあわせて絞りをはじき出す。その時例えばF11だったとします。もう少し絞りを開けたいと思い、シャッターを動かした瞬間に??? 普段ならシャッターを一1段動かせば、絞りを1段開けるのですが、ペトリの1/100の次は1/250なので、1段ではなく、1・1/3段なのです。それで絞りも1・1/3段開けて、え〜っと、F6.7っと...ペトリの絞りは連続的に動くので、F6.7も(だいたいの目安で)設定できます。で、1/500の場合はF6.7から一段だから...F5.0っと...こんな調子で露出合せをしていました。EOSの露出は0.5段ぐらいアンダー目に撮れるので、更にプラス補正を加えて...(笑)
でも、計算がだんだん面倒になってきて、やっぱりEOS側のシャッタスピードを変えて露出を計り直す事にしました。
こんな調子で近所の神社の境内を撮影しました。翌日ポジの現像が出来上がってきてルーペで確認。結果は...すごい!
まず嬉しかったのが、スリーブの美しさ。フィルムのコマ間は最新のカメラで撮影したのと見分けが付かないほどに、キチンと揃っていました。一眼レフのコニカT3で撮影するとフィルムのコマ間はけっこうばらつくので、これは驚きでした。光線洩れによるカブリも全くありません。
次に、露出の方ですが、1段ぐらいオーバーに撮れてしまいました。恐らくはシャッタースピードが正確では無いのでしょう。試しに段階露出したコマでは、一番アンダー目のコマが適正になっていました。
レンズの描写〜まず階調再現性について、レンズコーティングの無いレンズ故でしょうか、日向を撮影した時のハイライト部は、完全に飛んでしまい、ハイライトの階調再現性には限界を感じました。しかし、それ以外の部分の階調再現性は結構豊富、味わい深い感じがあります。発色は淡白。やっぱりコーティング無しレンズの特性でしょうか、全体的にコントラストが少し弱く、色薄く写る感じがします。解像度については開放から思ったよりもシャープです。スナップなどの絞り込める状況では現代のレンズに引けを取らないと言っても良いでしょう。F8で撮ったカットは、最新の単焦点で撮ったと言われても(解像度の点では)誰も疑問を持てないほどに、シャープな写りをしていました。
距離計の精度は驚くべきものでした。無限遠はもちろん、意地悪して絞り開放、最短撮影距離で撮影した物でもピントがきちんと合っていました。その様なボケが大きくなる状態での後ボケにも、嫌味が全くありません。さすがはテッサー(?と言う噂)と9枚羽絞り!
(訂正:後で数え直したら、絞りは10枚羽でした。どこまで絞っても見事な円形です。)
このペトリ35と同時期に別のHOP関係者がライカD
II+ニッケルエルマー50mmを入手しましたが、その試写コメントが
フレアがすごい。
ぼやけまくり。
でした。これはこれで味わいがあるのでしょうが、(良くも悪くも)現代的な基準に照らせばペトリの「オリコール」の方が優等生「オリコー」的な描写をするようです。
最後に写真について、EOSと違って、ペトリは何もかもがのんびりしています。被写体を見つけても、EOSの様にその1秒後にシャッターを切れると言う物ではありません。露出を測り、カメラのシャッターと絞りを合わせ、ピントを合わせ、フレーミングを変えて、それからシャッターを切る。その間、どんなに急いでも10秒から20秒ぐらいはかかります。そののんびりさが写真にも現れて、のんびりとした、力の抜けた写真が捕れました。レンズの描写云々よりも、カメラの「のんびりとした」性格がもたらす写真の味が、このペトリの真骨頂でしょう。なんとなくレンジファインダー機の昨今の人気が判るような気がしてきました。
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ペトリ35「グリーン・オ・マチック」のファインダー。ブライトフレームと、中央の距離計像がとても見易いのが判るでしょう! |
ペトリ35で撮影したポジのスリーブ。コマ間が綺麗に揃っている。それにしてもこれを撮影したデジカメの歪曲収差がすごい! |
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絞り開放。結構シャープです。
Petri35, Orikkor 4.5cm F2.8
F2.8, 1/250s, E100VS |
徐々にボケてゆく様が自然。
Petri35, Orikkor 4.5cm F2.8
F4.5, 1/250s, E100VS |
この力の抜けた構図がこのカメラの真骨頂?
Petri35, Orikkor 4.5cm F2.8
F4.5, 1/250s, E100VS |
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