スリックの超小型三脚、スリック・ミニ。私はこれを長年愛用しています。ポケットに入る大きさ重さでありながら、結構しっかりした作りで一眼レフも注意して使えばしっかり支えてくれますので、特に海外旅行や超ローアングル撮影時に重宝しています。布製ケースが付属するので他の物を傷つける心配も少なく、持ち歩くのにもとても便利です。
ところでこのシリーズには上級機種プロミニもあります。似たような三脚でありながら価格はずっと高く、実売価格ではミニの2倍以上もします。最近、中古と言う名目の格安のプロミニを見つけたのでこちらも購入しました。そこで、プロと付くだけで価格が倍額以上になるプロミニの存在価値を探ってみました。
まずはスペックの確認から
スリック・ミニ
二段、エレベーター付き三脚。雲台は2ウェイ、取り外し不可。
全高215mm、縮長200mm、重さ320g、布製ケース付属。
色はシルバー。定価4200円。
スリック・プロミニ
二段、エレベーター付き三脚。自由雲台付き。雲台取り外し可。
全高245mm、縮長210mm、重さ330g、布製ケース付属。
色はブラック。定価6800円。
このふたつの三脚の脚の部分はほぼ共通の作りをしています。子細に見ると違いもあるのですが大きな意味は無いでしょうから説明を割愛します。一番大きな違いは雲台が2ウェイか自由雲台か、更に雲台が分離可能かどうかです。一見これだけの違いですが、価格は大幅に異なり、スリック・ミニの方の実売価格は1500〜2000円、スリック・プロミニは4000円〜4400円ぐらいで販売されています(いずれも広島地区)。この値段差ですから、貧乏性のKENは迷わず安いミニの方を3年ほど前に購入しました。価格は1560円+税でした。
スリック・ミニは私の写真の領域を大きく拡げてくれたと言って過言ではありません。縮長200mmで布製ケース付属ですから、カメラバッグのレンズスペースにも収まり、またコートなどのポケットにも無理無く入ります。ですから海外旅行には常に持ち歩き、暗い建物内部や素敵な夜景を前にした長時間露出を楽しんでいます。例えばホテルの窓からの夜景は、部屋の電気を全て消して窓ガラスへの写り込を無くし、カメラにミニを取り付けて三脚を窓ガラスに垂直にあてがい、カメラを外に向けて撮影すれば可能です。三脚を強くガラスに押し当てていれば、30秒の露出でもブレはありません。この様に私の海外作品のほとんどがこのミニのお世話になっていると言っても良いでしょう。またローアングルを必要とするマクロ撮影でも持ち歩いています。この三脚を付けてローアングルに構えれば、手持ちよりは遥かにブレの少ない写真が撮れます。
このミニシリーズには独特の使い道もあります。それは手持ち撮影でのカメラホルダーです。ミニをカメラ底部に取り付け、三脚の脚とエレベーターを一杯に伸ばしてからそれを手前に向け、自分の胸にあてがうのです。こうするとカメラブレが抑制でき、低速シャッターでの確信度合いが上がります。以上がミニシリーズの使い方です。
ではミニとプロミニの比較に入りましょう。大きさについては、自由雲台の高さがある分プロミニの全高の方が30mmほど高くなっています。しかし収納時には自由雲台の頭が90゜倒れるので、プロミニとミニの差は殆どありません。
ミニの2ウェイ雲台とプロミニの自由雲台ですが、この雲台の違いは大きいです。ミニを長年使っていて最も困るのがカメラの水平出しです。公園のベンチなどにカメラを置いた場合、ベンチには傾斜のあることが多くカメラの水平出しが困難なのです。私の撮影アングルは大抵上に向かっていますので、カメラと雲台の向きは同一にして、雲台で上下アングルを決めた後、水平出しをするのですが雲台にその機能がありません。後は脚の長さで調節するのですが、ほぼ水平に近く開いた短い脚ではその調節しろが殆ど無く、他に台などを探さなければなりません。しかし何故かヨーロッパの公園ってとても綺麗で、台になるような「ゴミ」や「石」が見つからないのです。お蔭でトリミング覚悟で水平の傾いた写真を量産したこともあります。
プロミニの自由雲台ならこの様な苦しみからは無縁です。更にミニでは想像もできない縦位置撮影もプロミニなら重量配分に注意すれば可能です。
雲台が取り外し可能というプロミニの特徴にも数々のメリットがあります。ひとつは雲台単独で使用可能ということ。この雲台だけを使えば、一脚への装着とか、あるいは他の三脚のエレベーター底部にあるネジを活用してローアングル撮影も可能になります。また雲台を外すとプロミニは更にコンパクトになり、その幅はほぼカメラの幅と同じになります。ですからバッグの中のスペースが見つからないときでも、雲台を取り外せば布ケースに入れたプロミニはカメラの真下のスペースにおさまってしまいます。あとは雲台をフィルムスペースなどに押し込んでおき、現場で組み立てて使えば良いわけです。
更に、緊急避難的な使い方ですが、雲台を使わずに脚を直接カメラやレンズの三脚座に装着すると、一段と低いアングルが可能になります。チューリップ撮影で一度試しましたが、結構使えます。
一見ほとんど同じように見えるミニとプロミニですが、やはり「プロ」には実際の撮影現場で役に立つ特徴が沢山備わっています。価格も実売でミニの倍額とかなり高いですが、その価値はあると言って良いでしょう。4000円も出せば見た目だけは結構大きな三脚も買えますが、小さい故の使い道、小さいくせにしっかり作ってある事の恩恵は計り知れない物があります。
以前、仲間内でミニとプロミニとベルボンのミニFでどれが良いかという議論をしたことがあります。その時は大きな価格差があるのでミニを薦めたのですが、両方を比較した今は迷うことなくプロミニをお勧めします。ベルボン・ミニFはよりしっかりした三脚ですが、ポケットに入る大きさではないのでメインとなる三脚のお供、あるいはスナップなどのお供にはなりにくく、使い道は限られてしまうような気がします。
次回のつぶやきでも、小型三脚の対決編を書いてみようと思います。ミニとプロミニの対決はプロミニの圧勝でしたので、プロミニを日本代表として、イタリアの小さな巨人と対決させます。
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(左の写真)
スリック・ミニ(左)とスリック・プロミニ(右)。高さは自由雲台の付いたプロミニの方が30mm高い。
(右の写真)
しかし収納時の高さは大差無い。 |
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(左の写真)
スリック・ミニの水平調節しろ。雲台にレベリング機能が無いため、足の長さで調節せざるを得ないけど、短く水平に近い角度の脚ではこれが精一杯。これがこの三脚の最大の欠点。
(右の写真)
スリック・プロミニの雲台を外すと、ほぼカメラの幅になっていまう。右に写っているのはEOS1NーHSのブースター部分です。 |
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緊急避難的な使い方ではあるけど、雲台の取り外せるプロミニだとこんな使い方も出来る。EOS1NーHSにシグマ180mmマクロを装着し、レンズに直接脚を装着。一段とローアングルが可能になる。 |
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