私はシグマレンズの愛用者です。EOS用のレンズ全17本(2001年6月23日現在)の内、メーカー別に見るとシグマが7本で、キャノンの6本を抜いて一番多くなっています。それだけ色々なシグマレンズに触れている事になりますが、つい最近シグマAF28-70mm
F2.8 EXを購入し「あれ?」と思った事柄があり、店頭で最新作AF24-70mm F2.8
EX DFを触って「あれれれ?」と思ったので、今回のつぶやき執筆となりました。
それはピントリングの操作感です。もともとキャノンではなくシグマのレンズを買うのは「安い」からで(特にキャノンの大口径は中古でも高くて手が出ない)、ピントリングの操作性や絶対的な描写性能など、ある程度の妥協は覚悟の上ですが、それでも最近のピントリングはちょっとおかしい...
私の持っているシグマレンズのピントリングの操作性を、発売日順に記してみます。操作感評価はタムロンマクロを★★★★★とした場合の物です。
SIGMA AF 14mm F3.5 (1993年3月発売) 操作感:★★★
ピントリングは廉価版AFレンズのそれで、MFに比べるとスカスカ回ります。ピントリングは指の幅よりも細く(実測9.5mm)、鏡筒から窪んだところについているので、操作が多少やりにくいです。ピントリングの位置は鏡筒中央やや前方にあるので、問題有りません。操作感ですが、スカスカ回る中にも多少の重みがあり、しかも引っかかりやガタがありません。廉価AFレンズとしてはリングの幅を除いて比較的上等な部類だと思います。
SIGMA AF 28-70mm F2.8-4 UC(1994年12月発売) 操作感:★★★☆
14mm同様に、ピントリングは廉価版AFレンズそのもので、比較的スカスカ回ります。ピントリングの幅は指の幅分ぐらいはあり(実測16mm、一体となって動く部分の幅。以下でも同様)、しかもレンズ最前端にあるので操作に気を使うことは有りません。操作感ですが、前群繰り出しの為に重みが上記14mmよりもあります。回転方向と前後方向に多少のガタが認められますが、操作時に気になるほどではありません。変なフリクション感もほとんど無いので、廉価AFレンズとしては14mm同様に比較的上等でしょう。
SIGMA AF 28mm F1.8 II(1995年2月発売) 操作感:★★☆
これは発売時期が近いだけに、上記28-70mm F2.8-4とほぼ同等のピントリングを持っています。位置はレンズ最先端で、幅は指の幅分あります(実測17mm)。こちらは全群繰り出しなのですが、リング操作時の重さは28-70mm
F2.8-4よりも何故か軽くなっています。リングのガタはほとんど認められません。個人的にはリングの重みがもう少しあって欲しいので、廉価AFレンズの平均並みという事にしましょう。
SIGMA AF APO 170-500mm F5-6.3(1996年11月発売) 操作感:★★
ピントリングはレンズの後ろの方、三脚座の直前にあります。幅は実測17mmという、23cmもある全長に比べると極めて細い物で、例によってスカスカ回ります。絶対的なピントリング操作時の重さは28-70mm
F2.8-4並みあるのですが、レンズが重い(約1.3kg)ので相対的に軽すぎる感じがします。もっとも、手持ち撮影のときにピントリングの部分で重さを支えるのはムリなので、左手は前方のズームリングに置き、ピントリングは伸ばした小指で操作することになります。これは三脚使用時もほぼ同じです。小指操作用リングという意味では適度な軽さと言えましょう。残念ながら回転方向、前後方向双方にガタが認められ、多少の違和感あるフリクション感も認められます。
SIGMA AF APO 70-200mm F2.8 EX HSM(1998年2月発売) 操作感:★★★★☆
ピントリングはレンズ前方にあり、幅は実測57mmもあります。MFレンズと張り合えるだけの適度な重みがあり、1.2kgもある鏡筒を左手をピントリングに添えて支えても、スムーズに操作できます。変なフリクション感は全く無く、ガタもありません。キャノンのLレンズと比較しても全く遜色のない、素晴らしいピントリングです。タムロンマクロと持ち代えても違和感ありませんが、はやりHSM/USM特有の差動ギアの存在をわずかに感じます。タムロンのシリコングリスの中をダイレクトに滑らせるような操作感には僅かに及びません。とはいえAFレンズとしては最上級の操作感だと思います。
SIGMA AF APO 28-70mm F2.8 EX(1998年7月発売) 操作感:★★★
70-200mm F2.8 EX HSMの直後に発売されたレンズですが、残念ながらピントリングの操作性は全く違います。ピントリングはレンズ前方で、幅は実測40mm。この面では申し分ありません。操作感のうち、絶対的な重さはそこそこあります。しかしMFモードでもギアをジ〜ジ〜回すような音と妙なフリクション感があり、スムーズさに欠けます。回転に伴う微妙なクリック感まであります。ガタは特に有りません。兎に角、MFで撮影しているとピントリングの下品さを感じてしまうレンズです。廉価AFレンズと捉えれば、幅広いピントリングに免じて並、高級AFレンズと捉えれば落第でしょう。
SIGMA AF APO 180mm F3.5 EX Macro HSM(発売2000年1月) 操作感:★★★☆
70-200mm F2.8 EX HSM同様にHSMを備え、しかもこちらは単焦点の、より新しいモデルなので、当然70-200mm並みの操作性を期待したのですが期待外れでした。ピントリングの位置はレンズ最先端で、幅は実測71mmもあり申し分ありません。操作力も70-200mm並みにあるのですが、何故か妙なフリクション感があります。マクロMF撮影では微妙な調整をしたいのに、それに相応しいピントリングにはなっていません。固めにネジを締めすぎたような感じで、動き出せば適度な重さで回るのですが、最初の動き始めにやや過大な力が必要です。また子細に動かすと(マクロの時はいつもです)位置により微妙なクリック感があります。回転方向に微妙ですがガタもあり、操作感を損なっています。これは個体差かとも思ったのですが、カメラショップのレンズを触っても同様でした。
上記7レンズの中で一番高い評価をした70-200mm
F2.8 EX HSMを購入後、180mm F3.5 EX Macro HSM、28-70mm F2.8 EXという順序で私はレンズを入手しました。そして新しいシグマレンズを手にする度にピントリングの操作性に落胆を感じ、何か変だぞ?という感じを持ったのです。28-70mm
F2.8 EXは中古同等価格以下で新品を購入しましたが(税込み34000円でした)、これは型落ちになったからです。新型は光学系はそのままにDFという、タムロンマクロの様にMF時とAF時で前後に動かすピントリングが採用されています。同様のピントリングは105mm
F2.8 EX Macroに既に採用されており、こちらをかなり以前に触ったときにはタムロンに遜色の無い操作感を示したので、DF版も同様の性能を持っているのだろうと思い、DF版の登場で旧型になった(操作感の悪い)レンズを買ったことに後悔してしまいました。しかしカメラショップに行って新型のAF
24-70mm F2.8 EX DFを触ってみると...
SIGMA AF 24-70mm F2.8 EX DF(発売2001年4月) 操作感:★☆
ピントリングの位置、大きさは概ね28-70mm F2.8
EXに準じます。タムロンマクロやシグマの105mmマクロ同様に、AFの時にはピントリングを移動することで、リングが回転しなくなります(AF/MF切り替えスイッチが別途あるのは時代錯誤ですが)。しかしMF時の操作性は全く褒められた物ではありません。DF機構を持たない28-70mm
F2.8 EX同様のジ〜ジ〜とギアを動かすような妙なフリクション感が相変わらずあり、しかもピントリングの位置によってキューっと音を立てて引っ掛かります(操作力も重くなります)。ピントリングまわりの工作精度が悪くて、その前後にあるゴムシーリング(?)にピントリングが干渉する感じです。こんな操作性を設計時の前提とする設計者もいないででょうから、製造(あるいは量産化設計時の)欠陥商品と言って構わないと思います。しかし私の触ったレンズは試作品ではなく、メーカーの出荷検査を経た、カメラ店のショーウィンドウにあった売り物です。
後日別のカメラショップでAF24-70mm
F2.8 EX DFをチェックしたところ、ピントリングの引っ掛かりがありませんでした。MF時のリングの感触はかなり良好です。どうやら最初に触ったレンズは不良品の様です。それにしてもメーカー出荷検査ではピントリングの感触まではチェックしないのでしょうか?御購入前には実物をチェックすることをオススメします。特に展示品ではない箱入り新品を買うときには、一度箱から出してチェックしたほうが良いでしょう。
最近のシグマは元気が良いように見えます。広角F1.8三羽がらす(20/24/28mm)の発売、24-70mm
F2.8 EX DFの発売など、存在感あるレンズの発売が相次いでいます。シグマ愛好家の私としては財布の中味を心配しないといけません。しかし、企画は良くても設計製造品質が悪ければ、客は逃げますぞ。シグマの大口径レンズはキャノンのLレンズに比べると格安なので、多少の事には寛容な私ですが(EOS3で動かないレンズを入手しても、笑顔でROM交換してますよ)、最近のピントリングの変な操作感はちょっと許せないのです。
どうしたシグマ? しっかりしろよ!
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