最近入手したKenko MC Soft 85mm F2.5には純正フードの設定がありません。しかしこのレンズに使えるフードで、誂えたような逸品を探し出しました。これはこのレンズに限らず、フィルター径52mmの標準〜望遠レンズなら殆どのレンズに使用可能ですし、注文さえすればどの店でも入手可能なので、ご紹介します。
その「一部分」はCanon EF50mm F1.8 II用のフードであるES-62です。
これは型番によれば取り付け部口径62mmの標準レンズ用のフードですが(本文の最後に型番の解説があります)、一方のEF50mm
F1.8 IIの鏡筒部にはフード取り付け構造がありません。そこでこのフードには「アダプターリング」が付属しています。このアダプターリングを52mm径のフィルターネジにねじ込み、そこに62mm径のスナップオン式(ニコン流に言えばスプリング式)のフードを取り付けるのです。このフードはもちろん、収納時に逆付け出来ます。またアダプターリング先端にも52mm径のフィルターネジが切ってあり、フード逆付け時にその先端にキャップをすることが出来ます。もちろんフィルターの装着もOKです。
このフードはあまり深いものではありません。見た目では35mmレンズぐらいまで使えそうですが、アダプターリングの厚味が10mmも有る為(つまりフィルター二枚重ねしたぐらいの厚味があります)、広角レンズには向きません。フードの内径は十分に広く、最大部で80mm、付け根の一番狭い部分の、スプリング機構にケラレた部分でも66mmあります。
この様にフードESー62&アダプターリングは、取りつけが52mmフィルターネジであることと、フード内径が大きいことから、「一般的な形状」「52mmフィルターネジ」「標準以上の焦点距離」を持つレンズならどれにでもワンタッチで装着でき、収納時のフード逆付けも可能となります。
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EF50mm F1.8 II と純正フードESー62。左から順に:
・レンズだけ。
・レンズのフィルターネジ部にアダプターリングを装着。
・アダプターリングにフードESー62を装着(ワンタッチです)。
・フードESー62を逆付けして、キャップを装着。
これはフィルター径52mmの標準〜中望遠レンズなら大抵のレンズに装着可能。 |
ここまでのお話はEF50mm F1.8 IIにフードを付けて使用している人ならみな知っていることです。それだけでは終わらないのが「KENのつぶやき」(^^ゞ。
キャノンのレンズカタログをながめると、もう一つだけ、62mm口径を持つフードがあります。それはET-62(&ET-62
II)です。キャノンの別体フード取り付け方法にはバヨネット、かぶせ、スナップオン(スプリング式)の3種類あり、その区別は型番からはできません。そこでチェックすると、ET-62はEF100-300mm
F5.6L用のフードで、レンズの設計が古いためにスナップオン式の装着でした。次なる課題はES-62と装着互換性があるかどうかの現物チェック。
私の日頃の行いが良いからでしょうか(笑)、新宿のマップカメラに行くと、なんとESー62とETー62の中古(!)が並んで置いてあるではないですか。どちらも中古では珍しい物件です。そこでチェックすると問題なくET-62はES-62付属のアダプターリングに装着できました(もちろん両方共にお買い上げ!)。
ET-62の深さはES-62の倍ほどもあります(約45mm)。これを装着する本来のレンズの最短焦点距離は100mmですが、この深さはEF70-210mm
F3.5-4.5 USMなどにも装着されるET-65(53mm)よりも浅く、70mm以上の焦点距離を持つレンズなら問題無いと断言できます。
そこで、Kenko MC Soft 85mm F2.5にES-62付属アダプターリング+ET-62という組み合わせのフードを装着してみました。写真を見れば分かるように、装着時も逆付け時もとても使い勝手が良く、純正フードの様です。
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Kenko MC Soft 85mm F2.5 に、ES-62用のアダプターリングを付けて、望遠用フードETー62を装着したところ。ETー62は85mmレンズ用として十分な深さを持ち、効果が期待できる。また右の写真の様にフードの逆付けも可能である。右の写真は見えにくいけど、キャップを装着している。
ね、「Canon ET-62 Japan」の文字が無ければ純正フードの様でしょう(^^)
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繰り返しになりますが、この組み合わせのフードは52mm径のフィルター径を持つ一般的な太さのレンズならどれにでも装着出来ます。50〜70mmレンズにはアダプターリング+ES-62を、70mm以上のレンズにはアダプターリング+ET-62がベストマッチです。
このフードの推奨レンズで真っ先に思いつくのが、純正フードの設定のない旧型となったEF100mm
F2.8 Macroです。ET-62を装着すれば、まさに純正フードとして活躍するでしょう。
それ以外では、ニコンの様々なレンズが対象になりそうですね。ニコンのレンズには52mmのフィルターネジ径を持つレンズが多く、一方でワンタッチ脱着の出来ないねじ込み式のフードが数多くあります。AF
Nikkor 50mm F1.4D, AF Nikkor 50mm F1.8S, AF Micro Nikkor 60mm F2.8D, IX
Nikkor 60-180mm F4-5.6, MFのNikkor 50mm F1.4S, Micro Nikkor 55mm F2.8SにはES-62が便利そうです。また組み込みフードが悲しいほどの深さしか無いNikkor
105mm F2.5S, Nikkor 135mm F2.8SにはET-62が便利かも知れません。
それ以外のメーカーにも適用出来るレンズがありそうですが、詳細は私も調べきれないので、心当たりのある方はご自分でチェックください。
言うまでもありませんが、キャノン以外の純潔主義者にはお勧めしません(笑)。
フードの価格(定価)はES-62(アダプターリング付き)が1700円、ET-62IIも1700円です。アダプターリング単体での発売があるかどうかは調べていません。カタログには記載がありませんが、修理部品扱いなら有るかも知れません。
原理上はステップアップリングを使うことで52mm以下のフィルター径のレンズにも使えそうですが、アダプターリングを二重に装着することになるため、あまり格好良くありません。その点が許容できればお勧めです。前玉径の小さなフィルター径55mmのレンズにも55→52mmステップダウンリングを用いれば、格好の悪さを除いて使用可能と思われます。様々なヘキサノンARレンズなどが対象となりそうです。
そうそう、一つだけESー62をお勧めしないレンズがあります。それはなんと純正であるはずのEF50mm
F1.8 IIです。このレンズは全てプラスチック製で、フォーカシングで動く部分(内部鏡筒)はグラグラします。このフードを付けると重みでそのレンズ鏡筒が偏芯するのと、無理な応力がかかり折れそうだからです。以前カメラ店の店頭で内部鏡筒がポキッと折れたEF50mm
F1.8 IIを目撃したのですが、思うにこのフードを取り付けてその先端を何処かにぶつけたのだと思います(落としたとか)。今回ここに掲載した写真撮影の為にフードを取り付けましたが、無理な力を加えると折れそうで怖かったです。
このES-62が用いているレンズフード装着構造は、一般に売られている、ワンタッチで装着も出来ず、逆付けも出来ないラバーフードやねじ込み金属フードよりもずっと優れていると思うのですが、ケンコーとかハクバとかが発売しないのは何故でしょうね。広角にも対応出来る薄型のアダプターリングと、数種類の深さのフードを設定すれば売上倍増だと思いますよ。
このお話には、後日談があります(^^ゞ
ご参考:キャノンEOS用フードの型番ルール
キャノンのフードの型番(EW-83C IIなど)の読み方を説明しておきましょう。将来何かの役に立つかも知れませんので。最初の「E」がEOSのレンズ用(?)、次のアルファベットが「W;広角用」、「S;標準用」、「T;望遠用」で、ハイフンの後の数字がフード取り付け部の口径です。その後に改暦であるサフィックス(II、IIIなど)が付くことがあります。最新のフードは殆どが植毛フードになっているので、このサフィックスがついています。また同口径で異なる形状のフードが数種類ある場合は、口径の数字の後にB、Cなどの種類を表す記号が付きます。フード取り付け方法には、バヨネット、かぶせ、スナップオンの3種類がありますが、型番では表現されません。新設計のレンズはほとんどバヨネット式になっています。かぶせは大口径白レンズ用です。スナップオン式は旧世代レンズの生き残りです。取り付け方法が一緒で、口径が一緒であればフード取り付け部に互換性が生まれます。
例えばEF20-35mm F3.5-4.5 USM用のフードはEW-83で、これは広角用の取り付け部83mm径のフードです。その植毛タイプが現行版でEW-83
IIとなります。同じ超広角ズームのEF17-35mm F2.8L用の最新版植毛フードはEW-83C
IIとなります。記号上の違いは口径の後の「C」だけで、形状がもちろん20-35mm用とは異なります。しかしこのふたつのフードの「取り付け部」には互換性があります。
この互換性にまつわる逸話をひとつ:かつて日本カメラの広角ズームレンズテスト(1998年4月号)では誤ってフードをアベコベに装着してしまいました。つまり20-35mmに17-35mm用の浅いフードを、17-35mmに20-35mm用の深いフードを装着したのです。これでは20-35mmレンズにはフード効果は不十分で、一方17-35mmレンズは最広角側でフードによるケラレが発生してしまいます。その結果、20-35mmのテスト結果では「(レンズ内の)絞りより前方の反射が高い。通常この様な場合レンズフードを用いるとグレアを減らすことが出来るのだが、付属のフードを用いてもあまり変化が無かった」と評価し、一方の17-35mmのテスト結果では解像力テストで「さすがに超広角のため隅では低い値になる」「周辺では多少甘くなる」という大ボケレポートを発表したことがあります。日本カメラ(キャノンも?)はとうとうこの誤りには気づかなかった様で、訂正文は発表されませんでした。
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