某日、滅多に行かないカメラショップに行ったら、シグマの新型一眼レフ、SAー9とSAー7のカタログがあったので思わず貰ってきました。これはレアなものになるに違いないからです(笑)。
皆さんはシグマの一眼レフの実物を見たことがありますでしょうか?私は幸いにも知人のY○○さんがSAー5システム一式を購入する現場に居合わせたため、幻の(笑)SAマウントレンズを含めて見て触ったことがあります。SAー5の全体の感じは、EOS55に良く似ていて、キャノン特許の視線入力AFを取り去り、測距点を一つにした感じです。シャッター音の感触、ボディの作りなどはそっくりでした。しかし中味はEOSでは無いようです。
そんな貴重な体験を踏まえてSAー9とSAー7のカタログを見ると、SAー5の小改良版という感じを受けます。ダイヤルを多用するようになったので細部はかなり違いますが、全体的な感じはSAー5から変わっていません(とはいえ、自分では持っていないので、オーナーならもっと大きな違いに気づくかも知れません)。全体的なスペックも、ペンタックスMZー3やEOS7あたりと同レベルの、いわゆる中級機です。
ファインダーはスクリーン固定式で、AF測距点は中央部一点のみという淋しい物です。視野率92%、視野倍率0.7倍はかなり低く、EOS7と全く一緒。あまり褒められたスペックではありません。
測光方式は、評価測光、中央部部分測光、中央部重点平均測光の三種類で、これもEOS7と同等です。スポット測光が無い辺りに中級機の限界が漂います。
露出制御は1/2段ステップですが、このカメラはペンタックス同様にシャッターダイヤルを持ちます。このため、シャッター優先、マニュアル時はシャッター速度が1段刻みでしか選べません。何故わざわざこの様な不利な方式を今回わざわざ採用したのか私には理解できません。絞り優先時はシャッター速度が電子制御されます。
AEロックがついていますが、これは右手親指部分のボタンを押している間だけ有効な物で、使いにくそうです。EOSは押した後に放しても6秒間有効ですが、これでも使いにくい物です。AEロックに関してはコンタックスの様に一度スイッチを入れたら、切るまで有効という形にして欲しい物です。
SAー9/7で「いいなぁ」と思ったのが、ドライブモードダイヤル。このダイヤルにはシングルショット、連続撮影に加えて、セルフタイマー(10秒と2秒)、ミラーアップ、多重撮影などのポジションが独立してあり、すぐにセット出来ます。ミラーアップを良く使う私としては、これはありがたい。EOS1NやEOS3だとカスタムファンクションによるセットになるので、説明書とかメモが無いと操作できないし、よく解除を忘れるのです。(ちなみにEOS3のミラーアップはCF12ですが、この番号は機種ごとに変わってしまいます)。
これ以外には、専用ストロボEF-500Superでのハイスピードシンクロ対応、プレビューボタンなどがありますが、このクラスでは目新しくありませんね。
さて、間違い探しの様な上級機SAー9と下級機SAー7の違いですが、
シャッター速度:SAー9・B、30秒〜1/8000秒。SAー7・B、4秒〜1/2000秒
ストロボ同調速度:SAー9・1/180秒、SAー7・1/90秒
連写速度:SAー9・3コマ/秒、SAー7・1.5コマ/秒
電池:SAー9・2CR5、SAー7・CR2x2
だけです。それからボディ寸法と重さが異なります。グリップ部分と底蓋の厚味がSAー9の方が厚くなっています。下級機SAー7のシャッターは低速側が4秒までしかなく、夕景夜景撮影などには辛そうです。
それぞれの機種にデートの有無の設定があって、デート付き機種の価格は5000円高くなります。デート無しの価格はSAー9:75000円、SAー7:50000円です。冷静に考えるとEOSKiss3やミノルタαスイート2並の値段で上級機SAー9が買えるのですね。間違いなく実売では同等でしょう。いつもながらシグマの価格付けにはビックリさせられます。
さて、このカメラを皆さん欲しいでしょうか?私には存在価値が無いような気がします。他社に無いシグマならではの機能性能は何も無いし、第一使えるレンズがシグマだけというのは制約が多すぎます。キャノンならばキャノン以外にも多様なレンズメーカーのレンズが使えますが、シグマはシグマだけです。あのタムロンマクロが使えません!(笑)。50mmF1.4とか85mmF1.4の様な標準〜望遠域の明るい上質な単焦点レンズもありません。
それにシグマのカメラ/SAマウントのレンズの場合は全て新品で揃えなければなりません。中古がまず無いからです。キャノンやミノルタなら多種多様な価格と種類の中古の世界を楽しむことが出来ますが、シグマだとまず不可能と言えるでしょう。また、シグマの一眼レフとSAマウントのレンズは下取りに出しても殆ど値段がつきません。だから実際に購入するとなると、結局は高い物に付くでしょう。
最近、シグマは多くのレンズを発売しています。上級レンズEXシリーズだけを取り上げても、広角F1.8トリオ(20mm,
24mm, 28mm)は他社に無い明確なスペックなので良いとして、28-70mm F2.8EX
DF, 24-70mm F2.8EX DF, 17-35mm F2.8-4EX, 15-30mm F3.5-4.5EX, 20-40mm F2.8EXという似て非なるレンズは多すぎる感じがします。そして今回のカメラも2機種4種類も揃えています。これも多すぎです。
シグマの愛用者として、正直にいって最近のシグマのことがとても心配です。かつてこの様な新製品攻勢に出て、しかもそれぞれの新製品同志に明確な差別性/他社に対する優位性が無かった物を発売したメーカーは、ことごとく経営がおかしくなっているからです。店頭では大口径望遠ズームレンズの大幅値引きも始まっているようですし、新製品の品質コントロールも少しおかしいし、商売の歯車が狂いだしているように感じます。
(KENの仕事は某メーカーのマーケティング担当で、新製品開発にかかる投資、売上、利益率などについて日夜検討するのも仕事のひとつです。)
最後に、SAー9のカタログで大感激した記述がありましたので、ご紹介しましょう。
リモートコントローラーRS-21
(機能説明、略)
※他のSAカメラが近くにある場合も誤動作を防ぐため3つのチャンネルを用意、
(以下略)
なんとシグマのリモコンはSAカメラがリモコン動作範囲内に沢山ある事を想定しています。キャノンのEOS55やKiss3のリモコンにはチャンネルはありません。コンパクトカメラ付属のリモコンを含めて小型簡易リモコンにチャンネル装備があるのは他に無いでしょう。SAを同時に2台以上使う人と言えば日本に3人ぐらいのもの〜一人はシグマの社長(?)、もう一人はサ○○ー●山、そして最後の一人はSAー5を二台も持っているY○○さんです(笑)。この人たちの為にわざわざ装備する、これはロマンというか、道楽というか... |