私のメインカメラとして活躍していた(過去形です(^^;)EOS
55。私が唯一新品で購入したEOSであり、愛着もひとしおです(笑)。しかし私がEOS
3をジャンク@5000円で入手してから主役の座をEOS 3に奪われ、出番がめっきり減ってしまいました。先日ネガフィルムで人物撮影する機会があり、その時EOS
3にはベルビアが入っていたので代りにEOS 55を引っ張り出して使ってみました。するととても使いやすい事に認識を改めました。EOS
3の後でさらにEOS 1Nまで手に入れましたが、何故かEOS 55の方に愛着があります。現在EOS
1Nの方は処分することを考えていますが、EOS 55を処分することは全く念頭にありません。動かなくなるまで使ってやるつもりです。
EOS 55は中級機であり、安っぽいところや、性能的に十分でないところ、あるいは欠点などが沢山あります。EOS
Kissの後でメインカメラとして新品で購入したという「思い入れ」を差し引いて、それでもなお何故EOS
55が使いやすいと思うのか、自分なりに整理してみました。
1. ボディ
EOS 55のボディ本体はプラスチックです。トップカバーの一部にアルミが使われていますが、薄いので金属なのか、プラスチックの上に金属調仕上げを施した物なのか、よく観察しないとわかりません。フィルムレールもプラスチックで例の金属光沢面がありません。持った感じ、見た目は誠に安っぽい物です。しかしこれにバッテリパックBPー50をつけると大分印象が変わります。まず重量が増してフラッグシップ単体ボディ並になり、グリップ部が大きくなり、またカメラの重心/重量配分が下の方に移るので、カメラをホールディングして振り回したときの印象に高級感が出てきます。右手小指まで使ってしっかりカメラを支えられるというのは「いいカメラを使っているぞ」という感覚を醸成するのかも知れません。このバッテリーパックによる高級感向上効果はEOS
7でも同様でしょう。
バッテリーパックには縦位置シャッターボタンがついています。これがあるお蔭で、マクロでの縦位置撮影が苦になりません。不思議とEOSのフラッグシップ機のバッテリーパックにはシャッターボタンが無いので、むしろEOS
3やEOS 1NよりもEOS 55の方が使いやすいと感じる部分です。EOS 3やEOS 1Nに縦位置シャッターのあるパワーブースターまで付けると、ボディだけで1.5kgですからね〜。蝶のマクロ写真(縦位置の方がサマになる事多し)を撮るならEOS
55の物です!(EOS 7でも可)。
リモートケーブル端子は右手側グリップ下端にあります。ケーブル側の端子はL字型の小さなミニジャックで、装着してもカメラのホールディングの邪魔になりません。また脱着もワンタッチです。これもEOS
55が使いやすいと思う一因です。私がマクロ撮影している時は、リモートケーブルは付けっぱなしにしてカメラを持ち歩き、そのまま手持ちで撮影することも多いのです。この点、EOS
1N, EOS 5, EOS 600シリーズは落第で、リモートケーブル端子がグリップ中央部にある事に加えて、ケーブルが垂直に伸びてしまうためにカメラを手持ちで撮影することが出来なくなります。しかも端子はねじ込み式で脱着は非常に面倒です。マクロ屋の私はこの端子のカメラを使う気がしません。EOS
3とEOS 1Vは左側にワンタッチ端子があるので問題なしです。参考までに、EOS
1Nなどの旧タイプのねじ込み端子は6000円で新型端子に交換出来ます。その場合はリモートケーブルも買い直さなければなりません(5500円)。
EOSのアイカップ取り付け部には2種類あります。視線入力機の大きなタイプと、非視線入力機の小さなタイプです。アングルファインダーを使用する場合、このアイカップ部の大きさに合うアダプターに交換しなければなりません。EOS
3をメインカメラに据えて極めて高い頻度でアングルファインダーを使う私の場合、EOS
3と異なるアイカップ取り付け部を持つカメラは同時には使いにくいのです。だからEOS
55は良きEOS 3の相棒となり、逆にEOS 1N, EOS 630, EOS 100などは同時に使おうという気がうせてしまいます。
プレビュー機能がEOS 55にも備わっています。それは視線入力でファインダー左上隅の「四角」を見ると絞り込まれる、という物です。しかしこれはMF時には作動せず、90%をMFで撮影する私には役に立ちません。しかしもう一つの作動方法があります。カスタムファンクションの4番を「2」にすると、AEロックボタン(右手親指で押す)で絞り込みが行われるのです。これはあらゆるEOSの中で最も操作性の良いプレビューボタンで、EOS
55を使っていると「ほっとする」部分です。
EOS 1系、EOS 3は正面から見てマウント左下部、EOS
7、EOS600系はマウント右下部にプレビューボタンがありますが、このボタンをレンズをホールドしながら押すのは結構難しく、特に縦位置撮影時には不可能に近いです。プレビューをよく使う私としては、このEOS
55(とEOS 100, EOS 5)に備わるAEロックボタンによるプレビューカスタムファンクションを全機種に展開して欲しいと願っています。
2. ファインダー
EOS 55はスクリーン交換が出来ません。スクリーンそのものはAF主体の明るくて陰りの出にくい「ニューレーザーマット」で、MFだとピントの山がつかみにくい物です。よりピントの山が分かりやすい「レーザーマット」はEOS1系のみに標準で、EOS
3とEOS 600シリーズはスクリーン交換で対応出来ます。EOS 5の交換スクリーンは全てニューレーザーマットでピントの山は分かりにくいままです。
さて、ピントの山の分かりにくい「ニューレーザーマット」ですが、カメラによって程度の差があります。私の手持ちのEOS
3, EOS 55, EOS 650, EOS Kissの4機種の「ニューレーザーマット」を、タムロンマクロでMFでピント合わせし、比較したことがあります。その結果、最もピントの山の分からなかったカメラはEOS
3、ついでKiss, 650の順で分かりやすくなり、最もピントの山が分かりやすかったのがEOS
55でした。(このテストでEOS 3のスクリーンは使いものにならぬと判断し、EOS
1N用の「レーザーマット」に交換しました。)
通常はピントの山の分かりやすい「レーザーマット」にも一つの欠点があります。ピントが外れた部分のボケ量が大きいために、逆光で撮影していると、太陽などの光源ボケが大きく回り込み、肝心の主被写体のピント状況が見えにくくなるのです。逆光撮影の多いKENの場合、ピントの山がそこそこ分かって、光源ボケが過大にならないEOS
55のスクリーンは「適度な妥協」であり、結構使いやすいスクリーンなのです。
また、EOS 55のスクリーンにはパノラマ用の横線が入っていて、水平出しに重宝しています。
3. ストレスのない視線入力AF
慣れてしまうと、視線入力AFは測距点選択が一瞬で出来るのでとても便利です。EOS
55は視線入力機の中の最小の3点の測距点しかありませんが、それだけに視線入力の誤認が皆無で、実質的にAF反応速度が早い感じがします。これが45点のEOS
3になると測距点誤認が多くて却って腹立たしくなります(私は誤認を減らすためにカスタムファンクションで11点に限定使用しています)。7点になったEOS
7も誤認が多い物と思われます。対角線上に測距点の無い多点測距はあまり意味が無く、EOS
7の7点測距にわざわざ買い換える必要を感じません。ストレスのない視線入力という点ではEOS
55がイチバンではないかと思います。
4. その他、EOSの最新機能のほとんどは、EOS
55に装備されている。
ハイスピードシンクロ、FEロック、サブコマンドダイヤルによる瞬時の露出補正、セルフタイマー併用ミラーアップなど、撮影によく使う機能はEOS
55に既に装備されています。ですから使っていて、あるいは新製品のニュースを見ても、EOS
55が古くなったという感じを受けません。今でも第一級の先進機能を持っているカメラだと思います。敢えて欲しい物と言えば、データ記録機能でしょうか?
比較的よく使う(というか、絞り優先AEストロボ撮影していると、明るい場面で自動的に切り替わる)ハイスピードシンクロはEOS
1NやEOS 5, EOS 100, EOS 600シリーズにはありません。その意味でもEOS 55は、EOS
3の良き相棒と言えます。
5. では欠点は無いのか?
欠点、沢山あります。冒頭に挙げた安っぽさ、ファインダー視野率の低さ(これはどの中級機も同じ事ですが)の為にポジの隅に余計な物が写り込むこと、シャッター作動時のファインダー消失時間の長さ、シヤッタータイムラグの大きさ、シャッター音の切れ味の無さ(これもどの中級機も同じ事。α7でもこの点は情けない)、そしてスポット測光が無い事などでしょうか。しかしこの大半はフラッグシップ機を買わないと解決しないことでもあります。
安っぽいカメラではありますが、バッテリーパックの装着でそこそこ安っぽさが改善され、実際の撮影には十二分な機能が備わり、かつ使いやすく設計されています。操作系はダイヤル式で、一目で設定状態が分かるようにもなっています。これで値段が高ければ意味がないわけですが、中古で3万円を切ります。万一新品在庫があっても4万円ぐらいでしょう。機能的に殆ど差のないEOS
7の半額レベルで、これはお買得だと思います。価格的には逆転現象すら起こしているEOS
Kiss IIIあたりと比べると、その機能と基本性能の差は歴然としています。Kiss系での作品撮影はかなり制約が大きく、苦労します。あるいは逆の言い方をすれば、Kiss系からEOS
55にステップアップすると、実戦向きの機能の豊富さ、操作のしやすさに感激することになるでしょう。(所有者が語るのだから間違いありませんよ)。
これからEOSで本格的な写真撮影(作品製作)を考えられている人の最初のカメラとして、中古で程度の良いEOS
55はうってつけだと思います。(但し、ネイチャー写真にEOSが良いか?という議論はまた別にありますが...) |