出張で東京に行った際に、帰りの新幹線までの時間があったので、秋葉原のカメラショップめぐりをしました。短時間で「ニッシン」と「マップカメラ」を回ることが出来るので、出張で新幹線までの時間に余裕のあるときにはいつも東京駅から秋葉原に直行しています。
その日は運良く「マップカメラ」の中古フィルターセールをやっていて、様々な口径のフィルターが安価に売られていました。そこで私は普通の値段なら買わないようなゲテモノフィルターをいくつかGETしました。77mm
Kenko Duto, 58mm Kenko FL-W, 58mm Marumi Blue Enhancer, そして58mm Kenko
Red Enhancerです。価格はフィルターの種類によらず77mm径が500円、58mm径が300円でした。エンハンサーフィルターは普通に買うとCーPL並みの値段がしますので「300円なら!」と思って購入してきました。
実は、花や紅葉、日の出や日没など、赤い被写体を良く撮影する私にとって、たいして赤くもない物を真っ赤に染めるフィルターは何となく「卑怯」な気がしていて、かつてケンコーのカタログを見ながら「エンハンサーシリーズ」を指さして女房とこんな会話をしていました。
「これはね、卑怯者フィルターって言うんだ。なぜならこれ(レッドエンハンサー)はたいして赤くない花を真っ赤にして、こっち(ブルーエンハンサー)は薄曇りの空も青空にしてしまったり、こちら(トワイライト)は夕映えを印象的に見せる物なんだ。」
「へぇ〜、そんな事が出来るんだ。凄いわね。でも、やっぱりずるいわね(笑)」
エンハンサーフィルターが卑怯だと言うなら、考えようによってはベルビアを使うことも卑怯だし、PLフィルターで色味を強調することも卑怯ですね(笑)。更に日の出や日没なら、露出をアンダー目にすることで見た目以上に真っ赤に出来ますが、これも卑怯(笑)....しかしこれらは一般的に多用され、写真のテクニックとして広く受け入れられている物です。それに対して、エンハンサーフィルターを使う事は、まだあまり一般的では無いためもあって使用に気が引けますし、コンテストなどの入賞作品の撮影データとして見たことも有りません。何ででしょうね?
思い返せば、3x年前に私が写真を始めた頃はまだ自動露出(EE)が一般的では有りませんでした。そんな頃にコニカFTAでEEで撮影していた私は、コンテストに応募する際にEEを使っていることに何となく気が引けて、あたかもメータード・マニュアル露出で撮影しているかのようなデータを記入したことがあります。現在は自動露出(AE)が当たり前なので、プロでも使っていますけど...新技術がハイアマ/プロの間で市民権を得るのには時間がかかるのかも知れません。
出張から帰って、女房に秋葉原の戦利品であるエンハンサーフィルターを見せたら、「卑怯者フィルター」の話をしっかりと覚えていて、
「あれ、貴方はこのフィルターはずるいから買わないって言っていたじゃない?」
と馬鹿にされてしまいました(笑)
「だってぇ....300円だもん。普通に買えば4000円以上するんだぞ」
というのが私の言い訳でしたが、
「なんだ、やっぱり貴方もずるいのね〜(笑)」
「300円ならいいの! フン(;¬_¬)」
さて、購入のいきさつはこれぐらいにして、本日の主題はレッドエンハンサー。私が購入したのは旧タイプのKenko
Red Enhancerで、現在これはRed Enhancer No.2として販売されています。それ以外により赤の強調効果の弱いNo.1とNo.0.5も販売されています。
効果の最も高いNo.2のこのフィルターは、見た目では薄い水色で「これで赤くなるのか?」と思わせる不思議な色ですが、しかしフィルターを通して景色を見ると、赤い部分が鮮明な赤に変わります。いわゆる着色フィルターではなく、干渉フィルター(薄膜を組み合わせることで、特定波長の光だけを透過させたり、吸収したりするもの)なのでしょう。見た目の色と、透過した結果の色が異なっています。肉眼では赤みのある色以外は特に影響を受けていないように感じられたので「さすが!」と思い、紅葉撮影に連れ出しました。
宮島の紅葉谷公園で撮影してみると、ファインダーを通してみる景色はフィルター単体で確認したのと同様に、赤い被写体が真っ赤に変わり、それ以外の色味はあまり影響を受けていません。露出倍数はカタログ上で1/2段で、1/3段系列のEOS3で使うと1/3段しか変化しませんでした。だから露出倍数も気にせず使うことが出来ました。この様に撮影時の手ごたえはなかなかのものでした。
以下の写真がその撮影結果です。赤い紅葉が真っ赤に変わっていることは肉眼で見た結果と同じですが、それ以外の色の変化は少し予想外でした。緑色はすっかり色あせています。また土の地面の色が不自然に赤く引っ張られています。全体としては色味が不自然で、ちょっと使い物にならないようです。
改めてケンコーのカタログを見直すと、一般撮影にはNo.0.5かNo.1を薦めていて、No.0.5は淡い色の花、No.1は紅葉や桜に向いているとの事。またこれらのフィルターなら他の色への赤カブリが殆ど無い事を謳っていました。しかしNo.2は赤の彩度を強力に高めるので、朝日や夕焼けでの使用を薦めてました。確かに朝日/夕焼けなら景色全体が赤い光に包まれるので、赤カブリしてもあまり不自然ではありませんね(笑)。ケンコーも最初にNo.2を発売したものの、一般撮影で不自然な発色となるのでクレームが沢山舞い込んだのでしょう。それでより効果の弱いフィルターを追加発売した物と思われます。
皆さんももし買われるなら、No.2よりはNo.1かNo.0.5の方をお勧めします。
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ノーマル撮影。天気は曇り。
EOS3, EF28-105mm F3.5-4.5 (70mm), F11, AE(+0.3EV,
0.5 sec.), E100VS
※ふたつの写真は、スキャニングから最終画像処理まで、全て同一のパラメーターで行い、原版のカラーバランスの違いを忠実に再現するようにしています。 |
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レッドエンハンサー(No.2)を用いての撮影。紅葉は見事な赤に変化しましたが、背景の緑の葉の色は退色しています。また土の色が不自然に赤くなっていています。土は赤みを持った色をしているので強調されてしまうようです。全体の色彩バランスは不自然に感じます。
EOS3, EF28-105mm F3.5-4.5 (70mm), F11, AE(+0.3EV,
0.6 sec.), Red Enhancer (No.2), E100VS |
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