2002年2月24日に、広島県北東部にある甲奴郡総領町(現在は庄原市に合併され「広島県庄原市総領町」に変わっています)に節分草の撮影に行ってきました。
節分草は旧暦の節分の頃(3月上旬)に咲くのでその名前がつけらています。キンポウゲ科のとても小さな花で、丈は5cmほど、花径は2cmほどです。白やピンクの花があるようです。図鑑によれば花弁に見える部分は実は「がく」で、雄しべに見える多数の黄色い触覚の様な物が花弁、雌しべに見える沢山の紫のしべが雄しべと雌しべの集まりだそうです。現在ほとんど絶滅に近いそうですが、総領町の皆さんは本当に大切にこの花を育てられ、町を日本一の自生地として盛り上げられています。節分草の見頃となる3月上旬(2002年は3月10日)には、節分草祭りが催されます。
総領町へは庄原市から国道432号線で13kmほど。中国自動車道・庄原インターを下りて15分ほどで到着します。私はいつものように広島市から県道を北上し、甲立町→三和町→川西町→三良坂町→総領町という、庄原経由と比べて10kmぐらい節約出来る近道を走りましたが、途中の道は狭く、すれ違いの困難な山道や工事中の未舗装路もありましたので、素直に庄原市まで行ってから回り込む方が時間的にも速くて疲れないようです。急がば回れ...
総領町内に入ったら、国道沿いにある「道の駅・リストアステーション」にまず行くのが良いと思います。ここにはシーズン中に案内所もあり、節分草の自生地、開花状況などを教えてくれますし、地図の書かれたパンフレットも入手できます。但し、この案内所や道の駅の食堂の開店時間は朝10時なので、早朝の撮影はここでの情報抜きで臨む必要があります。
パンフレットに記載されている自生地は8箇所で、開花状況にかなりの差があるようです。私が訪れたときに正式に公開されていたのは2ヶ所のみ(6と7)で、残りの6ヶ所はまだ花が咲いていないとの事で公開されていませんでした。公開場所には道路沿いに「幟」が立てられていて、すぐに分かるようになっています。
私は当日、未公開の自生地を含めて5ヶ所を回ってみましたので、簡単に説明しておきましょう。
|
節分草自生地地図
1.山地康生宅南
2.横岩清司宅西
3.アースワーク河川公園
4.黒木陸烝宅裏
5.山根保則宅西
6.八幡神社
7.谷山勝登宅東
8.岡田佳典宅横 |
自生地番号3番「アースワーク河川公園」は、道の駅・リストアステーションの裏手にある場所です。道の駅にクルマを駐車して、裏手の川にかかる橋を渡ると山際に自生地があります。ただ開花は比較的遅い様で、私が訪れたときにはまだつぼみがほんの少し地面から顔を見せているだけでした。
|
左の写真;道の駅・リストアステーションを裏側から見たところ。ガラスのドームに見える建物が節分草の案内所です。自生地は手前に見える橋を渡った、この写真を撮っているカメラマンの背中側にあります。
右の写真;案内所に掲示されている自生地の地図と開花状況。ここでパンフレットをもらうことが出来ます。 |
自生地番号4番「黒木陸烝宅裏」は、民家の裏山の斜面になります。駐車場は無く、クルマで行くと道路沿いに迷惑にならないように駐車するしかありません。私が訪れた時にはまだ公開されていませんでしたが、多少の花が咲き始めていました。自生地に入るには、山に向かって右手から少し回り込む形になります。個人の土地なので踏み荒らしたり汚したりしないように注意しましょう。
|
左の写真;自生地は左に見える民家の裏の斜面一帯です。自生地に入るには、手前に見える石橋を渡り、写真右側から回り込みます。
右の写真;節分草。白い花びらに見えるのはがくで、黄色い雄しべのような物が花弁です。実際の雄しべと雌しべは紫で、中央部にひしめいています。 |
自生地番号6番「八幡神社」は、神社の左裏の山の斜面になります。唯一南斜面に面した自生地だそうで、開花時期も一番早く、私が訪れたときに既に満開でした。新暦の節分、2月3日ごろには咲き出すそうです。この場所にも駐車場はありませんが、国道に面しており、道の左右に多少広くなった路側帯があり、数台なら停められる様になっています。しかし私が訪れたときにも、10時ぐらいからはクルマを停められないほど混雑していましたので、シーズン中の見学は難しいかも知れません。
|
左の写真;八幡神社の入口です。自生地は神社の左奥、この写真の鳥居の後方に見える斜面になります。
右の写真;自生地です。節分草公開中はご覧のような幟が立っています。 |
自生地番号7番「谷山勝登宅東」も民家の裏山です。自生地は町道から「節分草自生地」の案内のある所を右折して、橋を渡って200mほどですが、駐車場はありません。ですから橋を渡らずに町道の広い部分にクルマを停めて歩くのが良いと思います。この自生地はかなり有名な様で、2月28日朝のNHKのニュースで放映されていました。私が訪れたときに既に公開されていて、花も沢山咲いていました。この自生地にはピンクの節分草があるのですが、この日は残念ながら綺麗に咲いた花が無く、しおれている物しか見ることが出来ませんでした。
|
左の写真;自生地の様子と、節分草を狙うカメラマン。皆さん、カメラを低く構えています。
右の写真;節分草の咲く状況。密度はまばらで、石と草と落葉の間から顔を出しています。 |
自生地番号8番「岡田佳典宅横」は、国道から少し山を登った所にあります。国道沿いには「ミニ公園」があり、その反対側、福山方面に向かって左側には大きな駐車スペースがありますので、ここにクルマを停めて歩くのが良いと思います。自生地付近まで車道はありますが、すれ違いも難しい細い物で車を停めるスペースは全くありません。国道からミニ公園左脇の道を歩き、橋を渡り、やがて道は右に折れて山あいを登ります。少し行くと小さな集落がありますが、自生地はその集落の一番奥、畑の中を少し登ったところにあります。ここは総領町の自生地の中で一番広いところだそうです。案内所では「まだ雪があって咲いていません」と言われましたが、実際に訪れると雪はなく、広い自生地の中から沢山の白いつぼみが顔を出していました。恐らく節分祭りの頃には満開の美しい景色を恵んでくれるでしょう。
|
左の写真;右側が国道沿いにある「ミニ公園」です。このカーブの奥左側にやや広い駐車場があります。
真ん中の写真;自生地直前の道。
右の写真;自生地です。総領町の中では最も広い場所だそうです。この日はまだつぼみが顔を出したばかりで、この写真では存在が分かりにくくなっています。 |
各々の自生地の、節分草の咲く領域は柵で入れないようになっています。また柵の外に芽を出した節分草の一輪一輪の側には小さな棒が立てられ、誤って踏まないような印になっています。この小さな棒は、本当に小さな花一輪に対しても丁寧に立てられていて、総領町の方の節分草に対する愛情をひしひしと感じました。撮影に当たってはこの柵の外に咲いた節分草を足で踏まないことはもちろん、カメラ、三脚などでも傷つけないように細心の注意が必要です。しかし私が目にしたカメラマンのマナーは、花を上手く捉えるアングルを探すあまりか、残念ながら良いと言えるものでは有りませんでした。
節分草はとても背が低く(地面から3〜5cmほど)、咲くときの花の密度もまばらで、石ころと落葉の間から顔を出しています。ファインダーで覗いても花以外の部分が美しくならず、絵造りのとても難しい被写体です。また撮影姿勢もほとんど地面の高さにカメラをおいて撮影することになるため、アングルファインダーを使っても息苦しくなってきます。撮影に相応しいレンズはやはりマクロ系で、出来れば望遠系が宜しいと思います。また柵の外からの撮影になりますので、程よくまとまった花の集団までの距離が遠くなりがちなので、超望遠レンズ+中間リングなども役に立ちそうです(500mmレフにテレコンを付けて撮影している人もいました)。三脚は有った方が良いですが、大型の物は使い物にならず、むしろ超小型三脚の方が良いです。多くの人はベルボンMINI-Fを使われていました。この三脚はローアングルマクロ撮影専用に作られた物ですが、傍目にはこれでも節分草には大きすぎる様です。私は手持ちの中で最もローアングルの出来るマンフロットのテーブルポットを使いました。この三脚には高さ調節が無く、11.5cmの高さにしか固定出来ませんが、高さが低すぎる事は有りませんでした。これよりも低くカメラをセットするなら、布袋に小豆を入れたような小道具が役に立つかも知れません。これと同じ原理のアクセサリーは「ビーズバッグ」という名前で3000円でミノルタから発売されています。
|
撮影時のひとこま。マンフロットのテーブルポットで地面すれすれにカメラを構えています。この写真はMP-E
65mm F2.8を使って2.5倍の拡大撮影をしている時の物です。この倍率でやっと花が画面からはみ出すぐらいの大きさに写り、しべの部分の表情を良く捉える事が出来ます。
マクロスライダーを使えないので、ピント合せには苦労しました。 |
節分草の自生地は、八幡神社を除くと何故かみな北側斜面で、栗林の下になっています。基本的に花に太陽光はあたりませんので、ベルビアの様な低感度フィルムでの撮影は少し辛いかも知れません。
当日私は7時過ぎに総領町に入り、八幡神社を皮切りに各自生地を回って、昼過ぎまで撮影していました。撮影は風の起きる前の9時ぐらいまでが良い様です。風が出てくると花が微妙に揺れますので、日影でマクロ近接撮影や、望遠近接撮影しているとシャッター速度が速くなりませんのでどうしてもぶれてしまいます。
節分草が咲く季節の県北・総領町はとても寒いです。当日は比較的暖かい日でしたが、朝7時の気温は氷点下1度でした。昼過ぎには気温はずっと高く、恐らく5度ぐらいは有ったと思いますが、北側斜面の林の下で撮影していたら、かなり強い北風が吹いてとても寒い思いをしてしまいました。早朝と同じ服装をしていたのですが、風のない早朝よりも風の強い昼過ぎの方が体感温度は低く、あまりもの寒さに凍えて頭痛を起こし、撮影続行出来なくなりました。防寒には十分に気をつけて撮影に行ってください。
総領町のホームページはこちらです。庄原市に合併されたので、庄原市の総領地区のページです。シーズンになると節分草関連の情報も掲載されます。なお節分草詳細情報は、2月になってから庄原市のトップページにアクセスしてからリンクを探した方が見つけやすいかも知れません【2006年の経験値】
|