花撮影の「奥の手」の紹介ではありません(^^;。「猫の手」を買ったというお話です..(なんだそりゃ??)
この話はコスモス撮影の時に始まります。コスモスの花は細長い茎の先にあって、いつも秋風に揺れています。マクロでコスモスを撮影しようと思うと、風がやみ揺れの止まるのを待たなければなりませんが、そんな瞬間は滅多にある物ではありません。まして段階露出をしようと思うと、同じカットを数枚撮る事になりとても長い時間がかかってしまいます。そんな事に業を煮やして、いつしかコスモスのマクロ撮影のときにはカメラを三脚に固定し、ピント位置を大まかに決めた後で、右手でコスモスの茎をつかみ花の位置を手で調節してピントと構図を調節して、左手でリモートケーブルを操作して撮影するようになりました。しかしこれでも素手でつかんだ花は手の揺れに伴って小刻みに揺れますので、撮影には神経を使い苛立つことも多いのです。
更に花撮影の場合には前ボケにする花の位置を調節するのにも手が必要な時があり、手が2本では足りません...こんな時には正に「猫の手も借りたくなる」のです(^^;
こんなイライラがコスモス撮影の度に繰り返され、3年目のコスモス撮影の時に「猫の手」を作ることを決心しました。イメージとしては三脚、または花の周りの造作物などに固定できる棒で、その先端には花の茎を固定できるような物を付けたもの。棒の向きと長さは調節出来た方が便利です。
こんな「猫の手」を作る為に、DIYショップを歩き回りました。工作物の固定用の大きなクリップ(洗濯バサミのオバケ)は色々なサイズがあり、三脚の脚への固定に使えそうでした。また伸縮自在の棒としては、安価で手に入りそうなのはフローリング掃除用のモップの柄などがありました。問題は大きなクリップと棒の固定方法、及び棒と花を固定するための小さなクリップの固定方法です。自由な角度で固定出来た方が良いので、小型の自由雲台などを使うことを考えました。しかしこのアイデア、しっかりとした設計図を作る前にコストで挫折しそうでした。自由雲台だけで両端に合計二つ付けるとなると5000円ぐらいします。それにクリップ、フローリングモップの柄等をあわせると、7000円コースです。しかも本来はその様な目的では無い部品の組み合わせになるので、工作精度に不満が残りそうです。雲台の付いた10段ぐらいの小型の三脚も考えましたが、脚部の剛性が不足するし、脚の先端にもう一つの自由雲台とクリップの様な物を固定する方法が思いつきません。コスト的にもやはり5000円以上はかかります。
そんな「猫の手」製作方法で悩んでいたある日、ケンコーのカタログを見たら一つの商品が目に留まり
「これだ!」
と思いました。サポートハンドという商品です。それを見つけた次の週末にはキタ○ラT町店に行き、そこで偶然に出会った(ニコンD1とD100を2台づつ買おうとしていた)S氏と(S氏を隣であおっていた)M氏の目の前でこの商品を発注しました。(注:ご本人の名誉の為に付け加えれば、S氏はD1もD100も買ってはいません(^-^)。時間の問題でしょうが....(^0^))
この商品の説明をしておきましょう。まずは本体の説明書から...
ケンコー・サポートハンドは三脚の脚に取り付けるだけで接写撮影時にレフ板等のために手がふさがってしまうのを助けてくれるサポートハンドです。両手が自由になるので、カメラ操作が楽に行えるようになります。
仕様
総伸長 53cm(二段伸縮ポール)
縮長 26.5cm
重量 230g
付属品 260mmx180mm白レフ板 重量30g
(ポリプロピレン製二つ折りタイプ)
定価 6800円
説明書にあるように、これは接写時にレフ板を支える為に三脚に取り付ける物で、二段伸縮ポールの片側には大きなクリップが取り付けられ、三脚の脚に取り付ける様になっています。クリップとポールの角度は自由に変えられます。反対側には二重のボールジョイントを介して小さな金属クリップが取り付けられています。
付属品として二つ折りのレフ板と、それを挟む幅8cmの幅広クリップがあります。
しかし私はレフ板もそれ用の幅広クリップにも用はありません。花の茎をつかめれば良いのです。しかしレフ板をつかむために設計されている金属クリップは結構強力で、花を傷めてしまいそうです。そこで私は洗濯バサミを一つシステムに加えました。花を固定するときにクリップでつかむのではなく、茎を洗濯バサミの「穴」の中に入れてテンションがかかるようにすれば、茎を傷めることなく撮影に必要な固定は出来ると考えたからです。
さて、このシステムを使って撮影してみました。結論は「使える!」です。
写真は風で揺れる桜の枝の先端部分を洗濯バサミで挟んで、桜の花を撮影している所です。揺れは完全には止まりませんが、しかし揺れの振幅は使用前の数センチから数ミリ(5mm以下)に縮まり、少し風が緩くさえなればピント位置に確信を持ちながらシャッターを押せます。撮影時間短縮と、成功確率向上にとても有効です。
更に他の花にも用いてみました。180mmマクロで等倍に近い倍率でチューリップの花の中を撮影する際に、茎の部分を洗濯バサミの「穴」で抑えてみました。風の強い日でしたが、揺れはゼロにはならないものの振幅は数ミリまで縮まり、桜の撮影同様にピント位置にかなりの確信をもって撮影が可能でした。但し人々の前でこの撮影をすると、背後から...
「あっ、見て見て。あの人、花を洗濯バサミで挟んでるよ...」
と半分非難の声が聞こえてきました。
「ちがうってば、挟んでなんか無いよ。茎を洗濯バサミの穴の中に入れているだけだよ(^^;」
と心の中で叫んでみますが、相手には聞えませんし、傍目には確かに挟んでいるようにしか見えません(^_^; 見物人のいる前では使わない方が良い機材のようです(汗)。
更に条件の厳しい撮影をしてみました。菜の花の先端を、被写界深度が0.1mm〜というMPーE65mm
F2.8 Macrophoto で撮影したのです。風は強く、このクリップ無しではそもそもファインダーの中に揺れる被写体を捉えることが出来ません。しかし菜の花の茎を洗濯バサミで挟むと(今回は挟みました。菜の花さんゴメンネ。ちょっと痛かったかな?)、3〜4倍というとんでもない撮影倍率でも、被写体を捉えることが出来ました。ファインダーの中でシベは小刻みに揺れていますが、風が緩くなるとシャッターを切ることができるレベルになります。
しかしこの撮影倍率だと落とし穴が一つありました。ミラー作動時のショックが三脚に固定されたサポートハンドに伝わり、固定したはずの被写体その物が揺れてぶれてしまうのです。特に縦位置の時は酷い物でした。
三脚は上下方向のショックには強いですが、横方向には以外と華奢です。カメラを縦位置にしてシャッターを切ると、ミラーショックは三脚に対して横方向に伝わるので、サポートハンドが揺れてしまうのです。これを抑制するためにはサポートハンドをなるべく雲台側から遠ざけて地面に近い部分に付ける事と、撮影倍率を多少下げることが効果的でした。
風の強い屋外で、MPーE65mmを用いて2〜3倍の撮影が出来たことには驚きでした。この倍率でも菜の花のしべを画面一杯に捉えることが出来ますが、被写界深度は0.2〜0.3mm程度です。そんな被写界深度で風に揺れる花のピント位置を把握することは常識ではあり得ない事でしょう。
「猫の手」には少々問題もあります。折り畳んでも全長26cm、三脚に取り付ける大型クリップの部分は幅8cm、厚み9cmもあります。かなり嵩張るためにカメラバッグに押し込むという訳には行きません。携行には工夫が必要です。
この「猫の手」、風に揺れやすい花を撮影する時には隠し持って行くことになるでしょう(笑)。
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「猫の手」を借りて、春風の舞う中で菜の花を撮影。
(左の写真)ミラーが上昇した時のショックがサポートハンドに伝わり、ブレてしまった写真。撮影倍率はMPーE65mmの最大倍率に近い4.5倍です。1mmのブレがフィルム上で4.5mmのブレになってしまう倍率で、細心の注意が必要です。
(右の写真)サポートハンドの取り付け位置を三脚の雲台側から地面側に移動して、同じ倍率で撮影した写真。これだけブレが減っています。但しまだ微小なブレがあり、少々甘い写真になっています。この後撮影倍率を2.5倍にまで下げた写真はキチンと撮れていました。
撮影データ:EOS3, MP-E65mm F2.8 Macrophoto(倍率4.5倍),
F2.8, AE(+0.7EV, 左の写真は1/50秒、右の写真は1/80秒)、RVP |
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