正方形フォーマットに改造したEOS650で撮影した写真に、シャッター開閉不良による露光ムラがありました。このカメラはもともとシャッターに油汚れのようなもの(加水分解で溶けたダンパーゴム)が付着したジャンクカメラを、ベンジンで清掃修理したものです。その後4年間は全くのノーエラーでしたが、4年目の真夏、カメラ表面温度が40度を超えるような炎天下で撮影したコマに不具合が発生しました。原因も対策もわかっていますので、早速再修理することに....
シャッターを清掃してみると、思ったよりも大量の汚れが付着していました。恐らく4年前時点ではまだ加水分解してなくて残ったゴム片が、その後の時間経過で加水分解し、真夏の炎天下の高温により溶け出したのだと思われます。
4年前の修理の模様はジャンク大帝に文章で掲載しましたが、せっかくの(?)機会ですから、今回は清掃修理の様子を画像入りでご紹介しましょう。 |
シャッター開閉不良で上半分が
未露光になったカット。
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1 準備するもの
清掃に必要なものは
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ベンジン;これは染み抜き用として和裁店などで売られています。シンナーでは清掃出来ませんので注意してください(実験済み)。
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パトローネケースのキャップ;ベンジンを入れる小皿代わりです。お猪口でも代用できます。ベンジンは揮発性が強く、どんどん蒸発しますので、少量ずつボトルから取り出して使用します。
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綿棒;シャッター表面の汚れを拭き取るものです。大量に必要です。
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レンズクリーニングペーパー;シャッター幕の間の汚れを拭き取るものです。大量に必要です。
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不要なハガキ;レンズクリーニングペーパーを用いるときの心材にするものです。別にハガキでなくとも、ケント紙など少し厚みのある紙ならOKです。汚れの付着を判断するために、出来れば白い無地の物が良いでしょう。写真に写っているのは、プリントゴッコの試し刷り用のハガキペーパーです。
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ハサミ;クリーニングペーパーや、心材にするハガキを切るための物です。
(2002.12.30追記)ある方から、HCLのFILMクリーナーを用いると、ベンジンよりも簡単にシャッターに付着したゴムが拭き取れるという情報を頂きました。拭き跡も残らないそうです。お持ちの方はお試しください。 |
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2 シャッター表面の汚れ取り
綿棒の先を指である程度平らにつぶして、シャッター幕への接地面積を大きくしたほうが拭き取り効率が良くなります。その綿棒にベンジンを浸して、シャッター幕表面の汚れを拭き取ってゆきます。この際に決して無理な力をシャッターに加えてはいけません。優しく拭き取ってください。
ある程度綺麗になったら、シャッターを動かしてみてください。恐らくねっとりとした動きしかせず、数回繰り返すとまた汚れが表面に出てきます。その汚れをまた拭き取るという作業を繰り返します。
汚れた綿棒はどんどん新しいものに変えてゆきましょう。 |
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3 シャッター前側表面の汚れ取り
上記と同様の清掃作業を、ミラーボックス側からもします。ミラーを手で跳ね上げて押さえておけば作業は可能です(EOS RTはこの作業が出来ないので、不良品には手を出さない方が良いですよ)。この清掃の時には綿棒はシャッター幕にほぼ垂直に近い角度で当たりますので、綿棒の先をその状態で接地面積が大きくなるようにつぶすことがコツです。 |
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4 シャッター幕の間の清掃
ここからが本番です(笑)。シャッター幕表面の汚れがある程度綺麗になり、シャッターを作動させても汚れの付着が少なくなってきたら、シャッター幕の間、およびフィルムマスクの裏側にある汚れの清掃に取り掛かります。
まずレンズクリーニングペーパーを半分に切ります。そしてハガキを細長く切り縦に二つに折り心材にします(二つ折りにするかどうかは、紙の厚みで決めてください)。その心材に半分に切ったクリーニングペーパーを完全に巻きつけて平板状にし、先端部分にベンジンを浸します。そしてシャッター幕の間に丁寧に差し込み、徹底的な清掃をします。この作業では、綿棒による作業以上に慎重に、決して無理な力を加えたりせず、優しく行ってください。万一にも薄いシャッター幕を折り曲げたらおしまいです。
ペーパーはすぐに汚れますので、汚れた部分をハサミで切り取り、綺麗な部分にベンジンを浸してまた清掃に用います。3〜4回ハサミで切るとクリーニングペーパーがなくなりますので、また新しいクリーニングペーパーを作って同じ事を汚れが全く付着しなくなるまで繰り返します。
清掃する場所ですが、裏側からみて、シャッター幕の左半分が主体で、24x36mmの開口部の裏側に隠れた部分まで、シャッター幕の間と表面を徹底的に行います。 |
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さらに一番汚れが激しい部分が、24x36mmのマスクの裏側の左下の部分です。ここには溶けたダンパーゴムがありますので、ここにクリーニングペーパーを突っ込むと、ベットリとした汚れが大量に付着します。この汚れが無くなるまで、徹底的な清掃をします。多分、クリーニングペーパー5〜10枚ぐらい(KEN流で拭き取り作業40〜80回分)はここだけで使ってしまうでしょう。
ミラーボックス側からも清掃します。これには多少のコツが必要で、クリーニングペーパーを途中でL字に曲げてシャッター幕の間に挿入できるようにします。そしてベンジンを浸してシャッター幕の間と、24x36mmのマスクに隠れた部分(ここは裏ブタ側からでは拭けない)を清掃します。
また、シャッター幕表面もチェックします。ここには、クリーニングペーパーでシャッター幕の間の清掃をしている間に、汚れが付着していることがありますので、汚れが付いていれば再度綿棒で拭き取っておきます。
以上の作業が全て終了したら、目視で汚れた部分が無いことを確認し、最後にベンジンをつけずにクリーニングペーパーで、シャッター幕の間を乾拭きして、残留ベンジンを取り除きます。 |
この場所が一番汚れの多い場所です。
この裏に溶けたダンパーゴムがありま
す。 |
5 動作チェック
レンズをつけずに、裏ブタをあけて、明るい方向にカメラを向けてシャッターを切ります。そしてシャッターが完全に開いているかどうかをチェックします。シャッター開閉不良は先幕と後幕の間隔が短くなる高速シャッターで発生することが多いので、最高速にセットしてチェックします。この場合普通の蛍光灯やTV画面のように数十ヘルツで点滅を繰り返している光源はチェックに使えません。電球、インバーター蛍光灯、あるいは外光などを用いて、24x36mmの範囲全体に光が見えるかどうかをチェックします。
もし光が見えなかったり、見えてもムラがあれば、再度シャッター幕の清掃を繰り返します。
最高速スピードで問題なくシャッターが開いていれば、念のために他の速度もチェックします。全てOKであれば、数日置いて、再度チェックします。それでOKであれば実践復帰です。
6 定期点検&メインテナンス
シャッター開閉不良のEOSはベンジンによる清掃で一応使えるようになりますが、今回の私のEOS650の様に、時間経過とともにまた汚れが付着する可能性は大です。なぜならベンジンで取り除けるものは加水分解で溶けたゴムだけで、その時点でまだ溶けていないゴムは取り除けません。この残ったゴムが時間と共に溶けるからです。ですから、一年に一度ぐらい、シャッターの点検と清掃を繰り返したほうが良いでしょう。 |