9月25日からのフォトキナに合わせて、24日は新製品の発表ラッシュでした。事前に情報がリークしていたキャノンのEOSー1Dsの正式発表に加えて、もうひとつの極めて注目すべき新製品が、コダックから発売された35mmフルサイズCMOS撮像素子を搭載したニコンFマウント一眼レフ、Kodak
Professional DSC-14nです。
このカメラは外観から判断すると、ニコンのD100をベースとしてかなり改造されたものの様で、トップカバー部にはD100の面影を残す物の、下半身は大幅にモディファイされてボコボコした突起の沢山ある形をしています。ボディはD100/F80系とは異なりマグネシウムで出来ていて、この点だけを捉えるとF100ベースかと誤解しますが、ペンタ部/トップカバー部造形は疑いも無くD100/F80系です。またシャッターは最高速1/4000秒、X=1/125秒なので、やはりF80系の物になっています。
英文の資料を読むと、このカメラはプロフェッショナルの為のポートレート、結婚式撮影を意図して作られたとあります。それ故か不格好ではあっても持ちやすそうな縦位置グリップとシャッターボタンがビルトインされていて、『ボコボコした突起の沢山ある形』という印象を作っています。
このカメラの最大のハイライトは、EOSー1Dsをも上回る1400万画素(正確には有効画素数1371万画素、4536x3024ピクセル)の36x24mmのフルサイズCMOSセンサーを搭載している事です。
画像記録方式にはお決まりのRAWとJPEGですが、JPEGの方はERIーJPEGになっています。これは通常JPEGファイルとして扱えますが、JPEG情報以外にRAWデータとJPEGデータの「差分データ」を保持しており、専用アプリケーションではJPEGから差分データを用いてRAWデータ並の品質に戻すことが出来るという物です。
記録ファイルサイズはEOSー1Dsの2種類(1110万画素&275万画素)に対して4種類と豊富で、1371万画素、609万画素、342万画素、86万画素で記録できます。記録メディア容量が限られているときに便利かも知れません。
以下に主要性能を記載します。
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ボディ;コダック特製、マグネシウムボディ・デジタル一眼レフ
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マウント;ニコンFマウント
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撮像素子;36x24mm CMOSセンサー、総画素数1389万画素、有効画素数1371万画素
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映像フォーマット;Kodak DCR (RAW)、ERIーJPEG
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映像サイズ;4536x3024、3024x2016、2268x1512、1134x765(ERIーJPEGのみ)
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記録メディア;コンパクトフラッシュType I / II、MMC/SD
Card
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露出モード;プログラム、絞り優先、シャッター優先、マニュアル
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露出ステップ;0.5EV
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ISO感度;80-640(低解像度は800まで)
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ドライブモード;ワンショット、連続、セルフタイマー
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連続撮影;1.7コマ/秒、最大8枚(内蔵メモリーを512MBにアップグレードすると18枚)
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ファインダー視野率;95%
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フォーカスモード;ワンショットAF、コンティニュアスAF、マニュアル、AF補助光あり
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AF測距点;5点、シングルエリアAF、ダイナミックAF、至近優先ダイナミックAF
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測光方式;評価測光、中央部重点測光、スポット測光
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シャッタースピード;30秒〜1/4000秒、X=1/125秒
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内蔵フラッシュ;あり
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音声録音機能;あり(マイク内蔵)
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電源;リチウムイオンバッテリー
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寸法、重量;131x158x89mm、907g
米国内では12月発売で、実売価格は約4000ドル。EOSー1Dsは米国での希望小売価格8999ドルで、国内はオープンプライスですが、フジヤカメラの価格では実売95万円程度との表示になっています。その事からすれば、もしこのカメラが日本でも発売になれば40万円台の価格で入手出来ると思います。
さて、このカメラ発表に関する私の感想を書いてみましょう。このカメラ発表には実に多くの意味があると思います。
まず第一の意味は、これはニコンユーザーにとって、キャノンユーザーが羨むような吉報であるという事です。コダックのプロユースのデジタル一眼レフは、これまでニコンベース、キャノンベース共に幾つか存在していますが、それらの全てがニコン、キャノンからも同じスペックで発売されています。つまりKodak
Professional DSC-14nの発表は、近日中にニコンからD100の後継機として同等機種が発売される知らせと思って間違いないでしょう。つまりEOSー1Dsと同等以上の画質の最新鋭デジタルカメラが、ニコンユーザーには1Dsの半額以下で供給されるという吉報です。これは今から予約しておいた方が良いのでは無いでしょうか?
ニコンのD100後継機が35mmフルサイズになることで、キャノンD60の後継機も遅かれ早かれ35mmフルサイズになるでしょう。この二社はお互いに相手に遅れを取ることを是とはしませんので(特にキャノンは)。
第二の意味は、キャノン、ニコン、コンタックスが35mmフルサイズデジタル一眼レフを発表したことにより、「小さな撮像素子」のデジタル一眼レフの将来に正真正銘の終止符を打ったという事です。当面は過渡期として小さな撮像素子のカメラも共存するでしょうが、5年後には昔話になっているでしょう。但し、その頃には価格が暴落した小さな撮像素子のデジカメを、貧乏性のKENが購入して『つぶやき掲載用の写真を撮るために』使っているかも知れません(笑)。
第三の意味はオリンパスのデジタル一眼レフの行方が不透明になったという事です。オリンパスもフォトキナに合わせて、コダックと提携して新しいデジタル一眼レフのフォーマット「フォーサーズシステム」を策定したと発表しました。これは35mmフルサイズと比較するとかなり小さな対角寸法4/3(フォーサーズ)インチのCCDをベースに、デジタルに最適化された専用マウントを開発し、それを広く公開することで異なるメーカー同志でもレンズに互換性を持たせるものです。そのプレスリリースを読むとあたかも「コダックもこのシステムに相乗りして、一眼レフ&交換レンズを発売する」かの様に思えます。しかし当のコダックはフォーサーズシステムの発表の日に、フォーサーズを使わない35mmフルサイズデジタル一眼レフを発表したのです。オリンパスにしてみればコダックはトロイの木馬でしょうね。
またプレスリリースには「富士写真フィルムも賛同している」との記述が有りましたが、これは恐らく富士写真フィルム側の抗議によって「富士写真フィルムも賛同しているが、規格を採用するかどうかは未定」と修正されてしまいました。フジも御存知のようにファインピクスS2プロというニコンFマウントのデジタル一眼レフを発売しています。コダックのProfessional
DSC-14nの発売に合わせて、ファインピクスS3プロ(仮称)は35mmフルサイズになって来るのでは無いでしょうか?
このオリンパスのフォーサーズシステムは、当初の構想発表が2001年の4月で、2002年2月にはカメラを発表することになっていました。またその時点では多数の賛同メーカーがある事になっていたのです。しかし2002年2月になっても何等発表は無く、7月の記者説明会では「デジタル一眼レフカメラは我々の悲願であり、来春(2003年春)には出したい。」とトーンダウンしてしまいました。恐らく、フォーサーズシステムを使うデジタル一眼レフがオリンパス以外から「本格的に」発売されることは無い気がします。コダックブランドはあり得るかも知れませんが、もともとコダックの一眼レフは全てベースとなったメーカーからのOEMで、ロゴだけを付け替えてプロ相手に販売しているものです。従ってコダックの参入には大きな意味がありません。むしろコダックの場合は自社撮像素子の受給者への「おつきあい」というのが真実でしょう。
OMのデジタル化という道ではなく、OMを切り捨てて新しいフォーマットの一眼レフを目指したオリンパス。私は耐久消費財のマーケッター&リサーチャーとして繰り返しその決断を「愚行」だと言ってきました(この理由をキチンと説明し出すと、本一冊書けそうなので止めておきます)。オリンパスのその「愚行」に対するツケは大きいと私は考えています。今からでも遅くないから、旧OMマウントとメカニカルな互換性のあるAFマウントを興して、35mmフルサイズデジタル一眼レフOMー5Dと、銀塩AF一眼レフOMー5Fを発売した方が良いと思うのは私だけでしょうか?
(2004.9.19追記)ニコンは1240万画素のD2XすらAPSーC(ニコンDXフォーマット)サイズで発売しました。DXニッコールも充実してきたし、コダックがフルサイズ・ニッコールマウントデジタル一眼レフをアップデートする中で、ニコンは意地でもフルサイズには行かない見たいですね。...つまりこのつぶやきの内容は見事にハズレ(^^?。なおこのつぶやきはDXニッコール発表の遥か前に上梓しています。
(2007.8.23追記)ニコンからやっとフルサイズデジタル一眼レフのD3が発表になりました。ふぅ(-。-) |