♪♪♪ 今回は撮影記なので、ドキュメンタリータッチで(^^ゞ ♪♪♪
2002年11月2日、夜。
ネットでYahooのスポット天気予報と、JWAのひまわり画像をこま目にチェックし続ける。しかし、何度見ても、広島界隈のどの地点をみても、翌日11月3日の天気は思わしくない。
既に秋深し、である。秋は紅葉のシーズンでもあり、また霧の海のシーズンでもある。しかし今年は10月になってから週末となると天気が崩れて殆ど撮影出来ていない。だが紅葉も霧も待ってはくれない。むしろ寒波が早く到来した今年はどんどん逃げ去って行くと言った方が良いかもしれない。
悩んだあげく、翌日撮影にでかけることにした。目的地は芸北。名勝・三段峡、ブナの名所の臥龍山、そして日の出の撮影スポットの掛頭山のある場所である。既に紅葉は見頃を迎えていると言う。しかし天気予報は、晴れの特異日の「文化の日」だと言うのに「雨」。そして最低気温は限りなく氷点下に近い。雨の紅葉も良いかと....半ば決死の覚悟で出掛けることにした(^^;。
カメラ機材と防寒具の準備をして、就寝したのは1時半であった。
3時半に目が覚めた。目覚ましは4時に仕掛けたのだが、それよりも早く目が覚めたので、起きることにする。朝早いときには予定より少々早すぎても、一旦目が覚めた時点で起きる事が肝要だ。もし起きずにまた寝てしまうと熟睡中に目覚ましに起こされて、却って寝起きの悪い朝になってしまうからだ。それで、目覚ましを止めて....「さて、起きるか!」...と心の中でつぶやいた後で、私が起きたのはどうも夢の中だった様だ(^^;;;;;;;。身支度をしている様な気がしたのだが、ふと目を開けて時計を見ると4時半になっている。私はまだ布団の中。(;¬¬)ゲッ!
今度は慌てて起き上がった。そしてさっさと身支度を整えて、4時50分にはクルマを走らせた。駐車場で空を見上げると星が見える。東の空には昇ったばかりの新月も見えていた。
「な〜んだ、晴れているじゃん!。気象庁のウソツキ(^o^)/」
しかし、気象庁をナメてはいけないのだ。星空の輝く広島市内を抜けて、中国自動車道・広島北インターチェンジの付近に来ると雨が落ちてきた。少し寝坊したので時間を取り戻すために高速道路に入るが、暫く走るとやがて雨は土砂降りになった。幾許も無く戸河内インターチェンジに到着するが、雨は相変わらず強く降っている。いつものように出口の所にあるコンビニで朝食を仕入れて、更に北を目指す。外気温は2度。少々「ヤバイ」という気分になる。三段峡入口を過ぎて、どんどん高度が上がってくると、やがて雨の降る姿がヘッドライトにハッキリ過ぎるぐらい鮮明に映るようになってきた。クルマの外気温計が指す温度は下がり続けてとうとう0度である。ひょっとして...これは雪か!?。まだ真っ暗な山道を僅かなヘッドライトの明かりを頼りに走る私は、窓を開けてみた。吹き込んできた物体は白い物...オイオイ(^^;。まだ11月の初めだぞぉ。雪と言えば例年なら12月になってからだろうが...(翌日のニュースでは、昨年より40日も早い初雪だと言っていた)。
更に暫く走ると、とうとう反対車線が真っ白な景色になった。私の走っている車線はクルマの通行が多少有る為か真っ白にはなっていないが、良く見るとタイヤの跡が見える。つまりタイヤに踏まれない部分はやはり白くなり始めていた。雪は盛大に降っており、この調子だとどんどん積もりそうだ。ヘッドライトに浮かぶ降り頻る雪を見て脳裏を嫌な情景が横切る。このまま一人山奥に進入して、雪で身動き取れなくなって寒さに凍えるKENである(汗)。私のクルマは普通の二輪駆動で、タイヤもノーマル。設計が少し古いために地上高はスポーツカー並に低く、雪や不整路が大の苦手である。しかし目指している目的地は現在地点よりも遥かに標高の高い掛頭山山頂である。「そりゃ無理だぁ(^_^;」と思い、まだ真っ暗な夜道で潔くUターンをして引き返す事にした。場所は深入山への別れ道のあたりである。
戸河内インターチェンジまで引き返すと、夜が明け、雪は雨に変わり、しかも小降りになっていた。先程朝食を仕入れたコンビニの前で朝食を食べる。そして何処に行くか考える....特にあては無いが吉和の方(戸河内の西側)に行ってみよう。魅惑の里という観光地があり、多少は紅葉が有るかも知れない。
15分ほどで吉和・魅惑の里に到着する。雨は上がって、時折陽がさしてきた。めぼしい紅葉は無かったが、朝日を受けて無数の雨の雫がキラキラと光る。それで私は魅力的な紅葉を求めて、魅惑の里から更に山側にクルマを走らせた。しかしめぼしい場所が無いままに道はどんどん山を登りはじめて、とうとう峠を超えてしまった。このまま降りれば広島に戻ってしまう。私は狭い道を走りながらUターン出来る場所を探す。そしてやっと見つけた少し広いところでUターンして、来た道の方向を振り返ると、僅かな紅葉(黄色い葉)の奥に雪を冠した山景色。これは良いかも..と思い、車を停めて機材を取り出す。三脚を立てて、カメラを設置したころ、今まで出ていた太陽が隠れて辺りが暗くなってしまった。私は太陽の出るのを待つことにするが、しかしその時突風が吹き、大粒の雪が叩きつける様に降ってきた。慌てて傘を取り出しカメラが濡れないようにするが、この雪は止みそうに無かった。私は諦めて機材を撤収し、来た道をクルマで戻る。
峠を越えると雪は止んだ。山の天気は目まぐるしく、また局地的である。山を降りる途中でクルマを止めて、細い道を歩いて付近を流れる川の河原に降りてみる。そこには多少の紅葉と、太陽光が当たるとキラキラと輝く雨の雫が沢山あった。それで一旦クルマに戻り、機材を持ってまたやってくる。しかし今度は雨だ(ホント、山の天気は目まぐるしい)。カメラ(注:カメラマンは含まれない)が濡れない様に傘をさし、雨がおさまるのを待つ。暫くすると雨が止み、僅かな時間だけ太陽が顔を出した。その機を逃さず、雫の輝きを写す。しかし2カット撮影したらまた雨である(^^;。それでまた場所を変えることにした。
一旦魅惑の里に戻って念入りに絵になりそうな場所を探してみるが、これは!と思う場所が無かったので、少し離れた「もみのき森林公園」まで足を伸ばすことにする。吉和インターチェンジの所の交差点を曲がり山道を登り出すと景色が白くなってきた。高度と共に周りの景色がどんどん白くなって行く。幸い交通量のある道路に積雪はなく快調に走れる。やがて森林公園に入ると銀世界の景色が待っていた。そこにまだ誰も足を踏み入れていない白い草原があり、キツネかタヌキの足跡だけが点々としていた。そこで写真を撮ろうかと思ったが、もっと良い景色があるかも知れないので公園内の状況偵察を先にする事にする。
公園内を車でうろうろしていたら、激しい雪が降り出した。その雪の中にたたずむ一本の色づいた葉をつけた木が気に入って、降り頻る雪の中でカメラを取り出す。そしてこの木と、その周りのいくつかの景色を切り取る。ファインダーから見る降り頻る雪は美しく魅力的だった。普段はカメラを濡らさないように雨や雪を避けるKENだが、今日は気分が何となくサディスティックになってきて、悪天候が心地よい(^0^;。雪の降り頻る中をカメラ、レンズ、三脚、傘、そしてタオルを2本の手で持ちながら(あと2本ぐらい手が欲しい気分だ)あちこち動き回っては撮影する。レンズは買ったばかりのEF70-200mm
F2.8L、このような悪天候の中で使うのならイチバン信頼性があるかも知れないと思っての選択である(実際は知らない(--;。ISバージョンなら防滴構造になっているが、私のレンズはISでは勿論無い)。
暫くしたら、雪がやんでしまった。降り頻る雪の無い景色は退屈に見えて、先ほどタヌキの足跡?のあった白い草原のある場所に戻ってみる。しかしそこには私よりも遅れて来た熟年カメラマンの団体がいて、タヌキの足跡しかなかった白い草原は、無数の人間の足跡で無残な景色になっていた。う〜ん.....(^^;
教訓「良い景色にめぐり合ったら、直ぐに撮影しておきましょう」
暫くそのあたりをカメラを持ってうろうろするが、天気が回復して太陽が顔を覗かせ、季節はずれの雪をどんどん溶かして行く。サディスティックな気分のKENはまともな景色が飽き足らず、心は降り頻る雪を求めて、夜明け前に引き返した芸北方面に思いを馳せる。天気が多少回復し、気温もほんの少しだけ上がってきたので、私の車でも芸北まで走れるかもしれないと思ったのだ。
またクルマを走らせ、芸北に向かう。戸河内を過ぎて、三段峡駅入り口を過ぎると、時折雪が降り出す(^0^)/。今朝方Uターンした場所に来るとやっぱり道路上にも雪が積もりだしたが、既に交通量が多くわだち部分に雪はなく夏タイヤでも通行に何ら支障が無い。それでどんどん山を登って行き、臥龍山入り口に到着した。国道を外れると、走ることには支障は無いものの、道路上には10cm程の深さの雪とわだちが出来上がっている。臥龍山の麓を走り抜けて、キャンプ場のある掛頭山入り口に来ると雪はますます深くなり、山頂にたどり着くのは無理と諦める。
引き返して臥龍山の麓あたりで暫く撮影するが、いまひとつ気が乗らない。めぼしい紅葉が無いのだ。それで新緑の時に見つけた私有地にある白樺林に行ってみる。そこに到着すると天気が崩れて雨交じりの雪が降り出した。そうこなくっちゃ(^0^)/。で、カメラと三脚と傘とタオルを取り出して撮影を始める。足元は雪解け水が流れて川のようになり、時折激しく降る雨と雪で衣服と三脚はびしょ濡れになる。レンズは例によってEF70-200mm
F2.8Lで、この白樺林を切り取るには丁度良い焦点距離である。
しかし不思議な物でカメラをセットして構図を作ると天気が良くなる。いや普段なら天気が悪くなるのだが、今日は降り頻る雪を撮りたいので、カメラマンの意図を天が知ってか天気が良くなる。ネイチャー写真はそんな天気とカメラマンの根競べである。雪解け水が靴を濡らして足元が冷えてくる。寒風は絶えず吹いていて、体も冷えてくる。しかし激しく雪の降る瞬間を待つ。暫くしたら、突然背後の林が激しく音を立てた。そしてその方向から突風が吹いてきて、それに乗るように激しい雪が吹きつけてきた。
「今だ!」とシャッターを連射する。そしてこの日のフィルムが終了し、撮影も終了する。
数日後にフィルムの現像が出来上がってきた。そして期待した降り頻る雪の景色を撮影した(はずの)カットを見てみると、写っていない!!綺麗な白樺林の中に降る雪が消えて無くなっている。いや、よく見れば写っているのだが、非常に目立たない薄い白い線として写っているだけである。
吹きすさぶ雪の中でびしょ濡れになりながら、苦労して撮影したのになぁ...
季節外れの雪は写らない.....のか?
いや、季節の問題では無いであろう。
雪の降る中で撮影したポジを、データと突き合わせながらチェックした。何枚か雪がしっかりと写っているカットもあり、写っていないカットとのデータの違いを見比べると....第一の違いはシャッタースピードだった。降る雪が良く写っているカットは1/60秒と1/80秒。それ以外のカットはシャッターが遅くなるに連れて雪の存在感が薄くなり、白樺林を撮影した際のカット(1/30秒)ではほとんど目立たない。更に遅い1/15秒だと雪の存在そのものが確認出来ない程だ。
第二の違いが背景の明るさ。降る雪がハッキリ写っている写真は背景が暗い。しかし白樺林の写真は明るい。明るい背景だと雪の白い線が背景に溶け込んで存在感を消してしまうのだ。雪のハッキリ写っている写真でも、背景の明るい部分での雪の存在感は非常に希薄である。
第三の違いは焦点距離。200mmで撮影した写真の方が一つ一つの雪の存在が大きく、画面全体にその存在感が広がっている。より短い焦点距離で撮影したカットでは、雪が小さくしか写っていない。勿論これには撮影距離との兼ね合いもあろう。
突風と共に叩きつけるように降ってきた雪の中で撮影した白樺林の写真は、135mmで1/30秒。明るい背景。雪が写りにくい条件が整っていた様だ。同じ場所で70mm、1/15秒で撮影したカットだと、幾ら目を凝らしても雪の存在を見つけられない(確かに降っていたのに..)。
シャッタースピードが降る雪を撮影するカナメである事は分かったが、問題も明らかになった。今回の撮影では意図してスローシャッターにしたのではない。必要な被写界深度とボケ味を求めたらこのスピードになったのだ。しかもフィルムはベルビアではなく、KEN常用の中では最も高感度なE100VSである。つまり、降る雪の撮影にはもっと高感度なフィルムが必要という事だ。
今回は失敗だったが、データがあれば失敗を成功に導ける。絞り優先AEでもシャッタースピードを記録しておくことが今回はとても役に立った。次回はもう少し上手く撮ろう!
ところで、高感度フィルムは何を買おうか?
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降り頻る雪が比較的ハッキリと写ったカット。シャッタースピードは1/60秒、焦点距離は200mm、背景はご覧のように暗い。この写真でも紅葉の部分(背景が明るい部分)の雪の存在は希薄です。
EOS3, EF70-200mm F2.8L USM (200mm), F4, AE
(0EV, 1/60 sec.), E100VS |
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問題の白樺林のカット。シャッタースピードは1/30秒、焦点距離135mm付近。画面全体に存在する白樺に目が行くために、視覚的な背景は暗いとは言えません。但し暗い背景の部分を注視すれば、そこには雪が写っている事がわかります。右の写真は、左の写真の中央やや左下にある弓なりになった木の根元部分の拡大です。左上から右下に吹き荒ぶ雪が見えますね。
EOS3, EF70-200mm F2.8L USM (135mm), F5.6, AE
(0EV, 1/30 sec.), E100VS |
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