日の出撮影は私が精力的に取り組んでいる被写体ですが、これまでフィルムはエクタクロームE100VSとベルビア(50)を常用してきました。一方、前回つぶやきに掲載しましたが、7月に発売されたフォルティアのテスト目的でベルビア100F(これも日の出撮影には今まで余り使っていないフィルム)と日の出を比較撮影しました。この2本の現像が出来上がったのを機に、過去の写真を一同に並べて比較して自分なりの「日の出撮影ベストフィルム」を決めました。今回のつぶやきではその一部の写真をご覧いただきながら、私の考えを書くことにします。
まずは写真をどうぞ(クリックすると大きくなります)。
個々のフィルムの色再現性の評価に入る前に、撮影状況について説明しておきます。フォルティアとベルビア100Fの写真は、同じ日にカメラを二台並べて、交互にシャッターを切った物です。だから両者全く同じ条件下で撮影しています。一方のベルビア50とE100VSの写真は別の日のものですが、撮影地やアングルは同じ掛頭山からの日の出です。また太陽が顔を出した中段と下段の写真ではLEEのハーフNDフィルター(ND4相当のもの)を用いて、太陽と霧の露出差を是正しています。
前回つぶやきと重複しますが、まずはフォルティアとベルビア100Fの比較をしましょう。当日の肉眼での印象はベルビア100Fに近い物です。しかしフォルティアはこの平凡な日の出を印象的な情景に仕立てています。画面全体がマゼンタに傾き、朝焼けの色も深い色合いに化けています。肉眼にも真っ赤に映る朝焼けには滅多に遭えませんから、フォルティアの現実の色を無視したような色表現は芳しくない日の出撮影の強い武器になるかも知れません。なおフォルティアから深い赤色(あるいは原色)を引き出すためには、控え目な露出が肝です。フォルティアの実効感度は誰もが御存知のプロカメラマンルートの情報(フォルティア発売前にお伺いしました)ではISO64、私の感覚ではISO64〜70(50+1/2EV)と公称感度ISO50に対して高く、しかもラティチュードが極めて狭いので、僅かなプラス側露出に敏感に反応して色合いはどんどん薄く(白飛び方向に)なって行きます。
一方のベルビア100Fですが、肉眼の印象にかなり忠実な再現をしていますが、日の出の絵としてはストイック(禁欲的)に過ぎると思います。霧の色合いは早朝の光にも関わらずニュートラルに過ぎてつまらないですね。ND4相当のハーフNDフィルターでは露出差が完全には補正されず、霧はグレーに再現されてしまっています。もしハーフNDフィルターが無ければ霧はどす黒くなるのでは無いでしょうか?個人的には日の出には使いたくないフィルムという印象です。
ベルビア50とE100VSはこの4種類の中では比較的近い色再現性を持っています。丁度フォルティアとベルビア100Fに挟まれた性格ですね。どちらも露出を切り詰めることで朝焼けの色を肉眼以上に印象的に仕上げてくれますが、画面全体が露骨にマゼンタに転ぶフォルティアの様なアクの強さはありません(中段のE100VSの写真撮影時は霞がかかっていたので、霞が太陽光を反射してフォルティアに近い絵柄になっていますが、フィルムのせいではありません)。また霧もパープルがかった色合いになり、朝らしい魅力的な色になっていると思います。似ているベルビア50とE100VSの発色の違いですが、ここには掲載していない写真も含めてもう少し厳密に比較すると、パープルに再現されている霧の色がE100VSはややマゼンタ寄り、ベルビア50はブルー寄りになる傾向が見て取れます(やや赤紫とやや青紫の違い、です)。但しE100VSには夜明け前の光でブルーに発色するというマジックが隠されていますので、夜明け前、あるいは夜明け前の光と夜明けの光が混在する様な状況では、ベルビア50を飛び越えてブルー主体の発色をします。この辺の使いこなしはとても楽しく、時としてフォトジニックな写真を恵んでくれます。
で、私なりの夜明け撮影フィルムの結論ですが、ストレートに印象的な写真を狙うならベルビア50、意外性のある面白さ/フォトジニックな情景描写を狙うならE100VS、そしてあまり焼けない夜明けのバックアップ用としてフォルティア、です。
最後に参考までに、夜明け前の光がある状態でのE100VSの作例を、ギャラリーから引用しておきましょう。
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夜明け前の月光下でのE100VS。まるでタングステンフィルムで撮影したかの様な情景ですが、ノーフィルター撮影です。
EOS 3, Sigma AF70-200mm F2.8 EX (200mm), F5.6, AE(+0.0EV, 2.5 sec),
E100VS |
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雨混じりの夜明けの厚い雲間から朝日が漏れた情景でのE100VS。太陽光が当たっていない場所は夜明け前の光線状態と同じなので、この様にブルーとオレンジが混在する事になります。
EOS 3, Sigma AF170-500mm F5-6.3 (170mm), F16, AE(-0.7EV, 0.3 sec),
E100VS |
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