フォトテクニック2004年11/12月号の「My Precious
Moments」というコーナーに、「Impressions by KEN」というタイトルで私の作品が4枚とコメントが掲載されました。「My
Precious Moments」は読者招待ギャラリーで、恐らくは前年度の年間総合ポイント上位者とか、必撮全部門制覇達成者、それ以外にも目立った掲載歴を持つ人に編集部が招待状を送り、招待された人が応募する事で成立しているカラー3ページのコーナーです。私の元に届いた招待状には「○○さん以外にも4名の方にお願いしています」と書いてありますので、競争と審査があるようです。
私は最近心掛けている撮影スタイルの考え方を書面で添付し、また一つ一つの作品にもコメントを付けて35枚の作品を送付しました。しかし誌面や編集方針の都合がありますので、当然掲載は全部ではありません。まず発売が10月20日という事で掲載作品は秋の作品主体に選ばれました(彼岸花、紅葉、霧の海、ブナの樹【これのみ春撮影】)。またコメントの方もスペースの関係上一部割愛されています。そこで今回のつぶやきでは、編集部に送付した文章の全文+α(αの部分は雑誌公開するのに相応しくないかと思い、自分で推敲削除した部分)と、送付した中で季節感にとらわれずに私が自分で良いと思っている作品を並べて、「裏・My
Precious Moments」を気取ってみたいと思います。このホームページ開設以来ほとんど放置されているWelcome
Galleryのアップグレード版と言えるかも知れません。
「Impressions by KEN」
「自分の心のままに絵を描くように、写真を描きたい」
写真は目の前の情景を忠実に記録する物だと思っていましたが、マクロレンズの「ボケ」に出会ってから私の考えが変りました。肉眼では見ることの出来ない美しいボケ描写は、情景を忠実にではなく、その情景を見ている自分の心のままに心象的に描く道を私にもたらしました。私が好きな絵は静かで柔らかな美しさのあるものです。夢で見たようなファンタジックな情景、と言えば分りやすいかも知れません。そんな情景を日常の現実の中から切り出して行くのが私のアプローチです。
私の写真ではマクロレンズのボケ描写を頻繁に活用しますが、フィルムの発色特性の使い分けと二重露出も多用しています。フィルムの使い分けはプロカメラマンの三輪薫さんが私のサイトにお見えになられた時に、直々にヒントを頂きました。私の撮影ではベルビア系を基準としつつも、エクタクロームE100VSの月や薄明の光の中で明確に青く発色する特性と日中でも赤がややピンクに傾き愛らしい色合いになる特性。またアスティアでオーバー目の露出をかけるとパステル調でファンタジックな色合いになる特性を被写体によって使い分けています。コダクロームの渋味のある発色は、このフィルム無しでは語れない被写体があります。
私が使う二重露出は二つの被写体を同一画面に収める為ではなく、ボケ味とか空気感をコントロールする為の物です。多くの場合において「夢の中の情景のような空気感」を付加するのが目的ですので、二回目の露出では「空気」を写しています。その「空気」の捉え方にも様々な方法がありますので、私の二重露出表現にも多くのバリエーションがありますが、基本は二重露出を感じさせず作品を見る人の心を優しくすることです。
実は一般的な風景写真も含めて色々なスタイルの写真を撮影しているのですが、自分のサイトに掲載して読者の方から評価されるのは上記手法を活用した作品が殆どです。必撮掲載作品もそうですね。やはり「他の人と違う」事が評価される一つの大切な要素なのだろうと思います。そこで最近は開き直って私流の感性と手法に集中して作品制作に取り組んでいます。
私の住む広島には風景の名所がさほど有りませんが、仕事の都合で休日の日帰り撮影にならざるを得ません。従って名所の絶景に頼るのではなく、身近な情景との季節ごとの対話を繰り返すことで私独自の心象的な作品を今後も写して行きたいと思っています。
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広島県佐伯郡湯来町の枝垂れ桜です。夜明けの雨の中にたたずむ桜を、E100VSの夜明け時独特の蒼い発色を使って、しっとりとした情景に仕立ててみました。
EOS3, EF70-200mm F2.8L USM (135mm域)、F8、絞り優先AE(補正なし、0.6
sec.)、評価測光、エクタクロームE100VS、三脚
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広島県佐伯郡湯来町の枝垂れ桜の枝です。夜明けの淡い光の中に漂う枝垂れ桜を、E100VSの夜明け独特の蒼い発色を使って、印象的、荘厳に表現してみました。狙った絵柄を得る為に数年がかりで取り組んでいます。
EOS3, EF70-200mm F2.8L USM (120mm域)、F2.8、絞り優先AE(-0.7EV、1/5
sec.)、評価測光、エクタクロームE100VS、三脚
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広島県山県郡芸北町にある臥龍山のブナです。雨と朝霧の中にたたずむブナの大木を荘厳幻想的に仕立てました。コダクロームの渋い発色を用い、二重露出による空気感表現を控え目な2回目の露出で目立たぬように加えています。
EOS55, EF70-200mm F2.8L USM (180mm域)、二重露出、1回目:F4、絞り優先AE(補正なし、1/30
sec.)、2回目:F2.8、絞り優先AE(-1EV、1/60 sec.)、評価測光、コダクローム64、三脚
My Precious Moments掲載作品
※この作品はウェブ上では細部描写が表現されず、良さが無いと思います。原版の雰囲気はむしろ1回露出のこちらの作品の方がウェブ上では近いです。
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広島県山県郡芸北町にある小さな白樺林です。春の白樺林を明るく幻想的に表現したくて、アスティアにオーバー目の露出を与えて爽やかな発色を意図しました。更に二重露出で幻想空間を表現しています。
EOS3, Tamron SP-AF90mm F2.8 Macro, F2.8, 絞り優先AE(+0.3EV 1/250
sec.)、同一露出で二重露出、評価測光、アスティア100プロ、三脚
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アスティアによるハイキー表現として、私の作品の中では極みに有るものです。白地に赤いチューリップに、前ボケの色を重ね、二重露出で夢の中の情景の様な雰囲気に仕上げました。広島県庄原市の備北丘陵公園で撮影。
EOS55, Sigma AF APO MACRO180mm F3.5EX HSM+x1.4テレコン, 開放(F5),
絞り優先AE(+0.5EV、1/500 sec.)、同一露出で二重露出、評価測光、アスティア100プロ、三脚
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広島県世羅郡世羅町の康徳寺の紫陽花です。余り目に触れないアングルからガクアジサイの美しさを表現したくて、地面の高さから真上に向かって撮影しています。淡い曇り空の白と竹林の緑のボケをバランス良く配置し、加えて二重露出で、花がその場の空気と一体になって咲いている様な雰囲気を作り出しています。
EOS3, Voigtlander MACRO APO-LANTHAR 125mm F2.5SL, F2.5, 絞り優先AE(+0.3EV,
1/320sec.)、同一露出で二重露出, 評価測光、エクタクロームE100VS、三脚
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広島県三次市吉舎町の彼岸花群生地を、緻密ストレートにとるのではなく、二重露出でちょっと不思議な雰囲気に仕立てました。絞り込んだ緻密な細部描写とソフトフォーカスを両立させる特別な撮影方法によります。
EOS3, EF70-200mm F2.8L USM (200mm域)、二重露出、1回目:F22、絞り優先AE(-0.3EV、0.5
sec.)、2回目:F2.8、絞り優先AE(-0.3EV、1/125 sec.)、評価測光、ベルビア50、三脚
My Precious Moments掲載作品
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宮島の紅葉です。黄色いもみじ、赤いもみじの背景、点在する緑の葉のボケ、これらをE100VSの独特の赤がピンクに傾く発色を活用して、和菓子かゼリーの様な美味しそうな色合いに仕立てました。二重露出で主役の葉が背景に溶け込むような雰囲気にしています。
EOS3, Sigma AF APO MACRO180mm F3.5EX HSM, F3.5, 絞り優先AE( 補正なし、1/15
sec.)、同一露出で二重露出、評価測光、エクタクロームE100VS、三脚
ギャラリー未発表作品
フォトテクニック2006年9-10月号 必撮ベストショット
風景ネイチャー部門掲載
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広島県三次市の霧の海です。月光下では青く発色するE100VSを活かして幻想的な情景にしています。これでもデーライトフィルムのノーフィルター撮影です。
EOS3, Sigma AF APO70-200mm F2.8EX HSM(100mm域)、F5.6、絞り優先AE(-0.3EV,
20 sec.)、評価測光、エクタクロームE100VS、三脚
My Precious Moments掲載作品
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