つぶやき226の続きです。完全に死んでいると思った水没EOS3が私に「助けて...」とささやいてきました。今回はその救出のお話です。
水分がまだ残っている?
つぶやき226にも書きましたが、これまでの症状は、
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全く反応しなかったEOS3を叩いたら、液晶がbc点滅を開始。
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充電したてのニッケル水素電池を装填した時に一時だけEOS3が動作しましたが、その後、カメラを上に向けた時にカタンという軽い音と共に動作をストップ。
この状況から考えられる原因を色々と考えましたが、恐らく内部にまだ少しだけ水分が残っていて、どこかの回路かモーターあたりをショートさせているのではないかと想像しました。カメラを叩いた拍子に水分が飛んで回路が復活し、カメラの向きを変えた時に水分が動いて再度ショートした?と思ったわけです。それで取り敢えずカメラを分解して徹底的に内部を乾燥させようと思いました。
まずフロントカバーを外すと、内部はとても綺麗で水の侵入した形跡が目視では判りません。てっきりメイン基盤の裏側あたりに水分があるのかと思いましたが、乾いていました。次にボトムカバー(底蓋)を外しますが、やはり目視では残留水分を確認出来ませんでした。最後にトップカバーを外そうと思いましたが...ネジが一本とても固く締められていて、ドライバーで外すことが出来ません。それでこの日は諦めて、カバーを外した半分裸の状態でカメラをビニール袋に収めて、除湿剤と共に密閉しました。
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フロントカバーを外した時の写真。メイン基盤は綺麗です。 |
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ボトムカバーを外したところ。やはり基板は一見綺麗です。 |
トラブルとミスと..
翌日、またカメラを取り出し、一旦元通りに組み立てて動作チェックしますが前日と変化ありません。電源スイッチを入れてもbc点滅のままです。それでトップカバーを外して更に内部症状を確認しようとしましたが、前日外れなかったネジが手持のドライバーではどうしても外せません。何度か作業している内にネジの頭を少しなめてしまったので、これではまずいと思い、DIYショップに行って新しい0番プラスドライバーを二本買ってきました。新しいドライバーはネジへの食い込みも良く、かなりの力を込めることが出来ました。その結果....なんとネジが緩むのではなく、ネジの頭のプラスの穴が根こそぎ綺麗にもぎ取れてしまいました(^^;。
トラブルの時に助かるのは掲示板での様々な方からのアドバイスです。ネジをなめた時には「ネジやま救助隊」というのが良いと聞きましたが、これはドライバーとネジの溝の隙間を詰めて、摩擦力を高めるもので、ネジの頭を完全になめてしまっては効果がありません。それで万策尽きて、ドリルでネジの頭を切り取る事にしました。他の部分から外したネジのサイズを計るとボルト部分は1.4mm径だったので、同じ径(1.5mm)の金工用ドリルを買ってきて、ネジの頭部分(穴を綺麗になめたのでドリルには丁度良いセンター穴が開いている格好になっていました)からボルトに至るまで穴を開けてゆきます。ボルト部分まで穴が達すると、頭はボルトと分離する筈でしたが、微妙なセンターのズレで部分的にボルトと頭がくっついて外れません。今度は一回り太い1.7mmのドリルをかませることで、僅かにボルトとくっついていた頭部分をもぎ取ることが出来ました。これで無事トップカバーが外れました。
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トップカバーを無事外したところです。一見どこもかしこも綺麗なので、原因究明に行き詰まる結果となりました。トップカバー裏に見えるグレーのものは、各スイッチの防滴ゴムです。 |
ここでちょっとした(しかし重大な)ミスをしてしまいました。トップカバーを外すには、トップカバーから生えたフラットケーブルをメイン基盤から外しますが、メイン基盤側についたコネクターを壊してしまったのです。5年前にEOS3を分解した時の様子はジャンク大帝(MATIAさんのサイト)に掲載してありますが、そこには「小さな白いレバーがあり、それを動かすとロックが外れる」と書いてあります。ところが今回のEOS3のレバーは白では無かったのです(ベースの黒に近いこげ茶でした)。画像として当時の状況を残していないので、私は見た目の違うコネクターの操作を誤り、ポッキリ折ってしまいました(^^;。これはいずれ直すにしても、今回の水没に関わる不調個所探求とは直接関係ないので取り敢えずそのままにしておきました。
フレキシブル基盤接続部を掃除する
苦労の末でトップカバーを外しましたが、内部はやはり綺麗でした。ある意味でどこを見ても一見綺麗なので、却って故障個所が想像出来ず行き詰まった感があります。そんな時にヒントを与えてくれたのも掲示板でのアドバイスでした。たまたまα7水没品を修理されている方がいて、冠水部分に粉を吹いた様な汚れがあり、これが悪さをしている事が多いと教えてくれました。それで再度基板を見渡すと、メインスイッチ部を含めて部分的に白い粉を吹いたような場所があり、綿棒で掃除してみました。そして念のため、と思って例のコネクターを壊した部分のフラットケーブルの端子部分を見てみると、銅が緑青を吹いたように汚れているのを発見、これを綿棒と爪楊枝を使って細かい端子間の汚れまで綺麗に掃除してみました。同様にカメラ内にあるフレキシブル基盤接続部(底部分に4ヶ所、フロント部分に1ヶ所、トップカバー部に5〜6ヶ所)からフラットケーブルを外し、全ての端子を綺麗にしてみました(みな相当に汚れてました)。
この作業をしてからEOS3を組み立てると、電源が入り、液晶に通常の表示が戻りました!しかしシャッターを切ると、シャッターが作動した直後にミラーが上がったままで止まりbc点滅してしまいます。このbc点滅はもう一度シャッターを半押しするとミラーが下がり、フィルムが巻き上げられ、液晶に通常表示が戻りますが、もう一度シャッターを押すと同じ事の繰り返しです。しかしそれでもフレキシブル基盤接続部の清掃前からすれば半歩前進です。
この時点で既に日曜日の夜遅くでしたので、私はEOS3を除湿剤と共にビニール袋に収めて、翌週末まで保管することにしました。
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フレキシブル基盤接続部の清掃した部分の写真。コネクターから外したフラットケーブル側の基板が結構汚れてました。この様な構造は底蓋部で四ヶ所(緑の矢印部分)あります。他にトップ部にも5〜6ヶ所、フロント部に1ヶ所あります。 |
EOS3復活! 最後の原因はKENのミス部分でした
翌週末にまた修理再開です。まずは念には念を入れて、フレキシブル基盤接続部のメス側(コネクター側)接点も掃除してみましたが、症状は改善しませんでした。それで改めて原因をじっくり考え直すことに...bc点滅で止まる状況は、シャッターが切れた直後、ミラーが上がったままの状態。つまりフィルム巻き上げ前で、シャッターもミラーもチャージされていない事になります。私は二つあるモーターのどちらかの不調を疑いましたが、しかし再度シャッターを半押しすれば元に戻るので、モーターそのものの不調よりも、そこに至る電気回路の接触不良ではないかと思いました。それでEOS3発売時の詳細説明資料を見ると、モーターの片方がフィルム巻き上げ用、もう片方がフィルム巻き戻しとミラー/シャッターチャージ兼用でした。bc点滅で止まるのはフィルム巻き上げ前でしかもシャッターチャージ前なので、両方とも疑わしいことになります。
更にトラブルシューティングを進める為にジャンクテスト用フィルムを試しに装填してみました。するとキチンと一枚目まで巻き上げられて通常の撮影体制に入れます。シャッターを押すとbc点滅で止まりますが、シャッター半押しで復帰し、フィルムも巻き上げられ撮影を進めることが出来ます。それで規定枚数の撮影を終えると自動的に巻き戻しもされて正常に終わりました。このことからモーターへの回路もどちらも正常で、原因は他にあると推論しました。
さて、残る異常は何か?? 一つの心当たりは私のミスで壊したトップカバーからのケーブルを止めるメイン基盤のコネクターです。この部分が現在は導通されておらず、視線入力AFスイッチをONにしても視線入力が使えない事はテストの過程で判っていました。それで念の為と思って、このコネクターのストッパー代わりに薄いプラスチックの板をフラットケーブルと同じ幅で切り取り、フラットケーブル差し込み口に差し込んでケーブルと基板がしっかり接触するようにしました。すると...EOS3は正常な動作を始めたのです!私は急ぎレンズを取り付けて、AF、AE、モータードライブモード、露出モード、視線入力、フィルムを装填した撮影&巻き戻しテストを繰り返しましたが、どれも正常に作動しているように思えました。結局、フレキシブル基盤接続部を清掃した時点で故障原因は直っていたのですが、KENがコネクターを壊しトップカバー部との導通が断たれたので、カメラ側の自己診断機能が異常を感知してbc点滅で止まっていたんですね。
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EOS3が正常動作を初めた直後、レンズを付けてテストしている時の写真です。矢印部分がミスで壊したコネクター代わりに白いプラスチック板をフラットケーブル差し込み口にさして、きっちり導通させた場所です。 |
本番撮影、OK
ドリルで切り取ったネジが一本不足し、メイン基盤の1ヶ所のコネクターを壊して薄いプラスチック板でストッパー代わりにしている欠陥EOS3ですが、きちんと動いているみたいなのでテスト撮影ならぬ本番撮影に使ってみました。被写体は総領町の節分草で、外気温マイナス6度の中の、早朝の雪の中での撮影です。水泳上がりのEOSには少し条件が厳しすぎたかも知れませんが、最後まで問題なく撮影できました。現像結果にも問題はありません。デートバックDB-E2は残念ながら日付印字が機能せず、写っていませんでした。しかし私は日付印字を必要とすることが無いので、実用上の問題はありません(とは言え近日中に分解点検してみます)。これから私の3台目のEOS3として現場復帰してもらいましょう
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水没EOS3の初仕事、雪の中で可憐に咲く節分草です。
EOS3, Tamron SP-AF90mm F2.8 Macro, F2.8, AE
(+0.7EV, 1/40sec.), RVPF |
今回の水没EOS3が一応実用可能な状態まで復帰できた理由には、水没事故直後のカメラショップの適切な処置(十分乾かすまでスイッチを入れなかった事)と、防滴構造があると思います。水没した筈なのに内部は意外なほど綺麗で、防滴部分からの水の浸入形跡はありませんでした。生憎レンズ側からの水侵入と、裏ぶた部分からの侵入はあった様ですが、被害を最小限に留めたのは各スイッチ類、カバー接続部に採られた防滴構造への寄与が大だと思います。
水没EOS1系(銀塩)、EOS3をお持ちの場合、勿論メーカーが修理してくれるならメーカー修理の方をオススメしますが、何らかの事情でそれが叶わず、最悪の場合にカメラを再起不能なまで壊しても良いと思うのならこのつぶやきを参考に挑戦されても良いかも知れません。あ、そんな人はいないか(笑) |