Nikon SUPER COOLSCAN 5000ED のスキャニング時間
KENのつぶやき vol. 276
(2007.9.16)
9年間使ったCanoScan 2700Fに代えて2007年7月末に購入したNikon
SUPER COOLSCAN 5000ED。2003年11月の発売以来4年間も全く改良されていませんが、競合のキヤノンやミノルタが撤退してしまったので、2007年時点でも最新最強であり、恐らく日本史上で最後のパーソナルユース35mmフィルム専用スキャナになりそうな機種です。
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5000EDは縦置き、横置きが可能なので、設置スペースの関係から横置きで使っています。スキャナ本体に付いているのがスライドマウントアダプターMA-21で、ストリップフィルムホルダーFH-3はこのアダプターに挿します。左にビニール袋に入って置いてあるのがストリップフィルムアダプターSA-21で、2〜6コマのストリップフィルムを自動でコマ送りして読み取ります。1コマだけのフィルムは読み取れない所がアバタです(決してえくぼには思えません(笑))。また端のコマやアンダー気味のコマはコマ間を間違えやすいです。 |
このスキャナの最大のウリは最高解像度でも20秒という超高速スキャニング、そして元画像に影響を与えずゴミ、ホコリをほぼ完ぺきに除去するDigital
ICE4です。今まで2700dpi, 8bit/chスキャニングで一枚45秒「も」掛かっていたCanoScan
2700Fから乗り換えれば、4000dpi 16bitの高画質画像が半分ぐらいのスキャニング時間で得られると期待して、オプションのフィルムホルダーFH−3を含めて11万円近い出費をしました。そして使ってみたら、何か遅いぞ〜〜。ストリップフィルムアダプターを使って連続スキャニングすると、一枚あたり2分以上も掛かりました。
Nikon Scan 4.0 ログファイル
保存先フォルダ:"xxxxxxxx:"
ファイル形式:TIFF 形式 画質:非圧縮画像
ニコンカラーマネージメントシステム オン
画像1 ジョブ スキャン を開始しました。07.8.19 4:14:05
PM
オートフォーカス 実行。
保存ファイル名:679002e.tif
スキャンは正常に終了しました。
画像2 ジョブ スキャン を開始しました。07.8.19 4:16:09
PM
オートフォーカス 実行。
保存ファイル名:679003e.tif
スキャンは正常に終了しました。
画像3 ジョブ スキャン を開始しました。07.8.19 4:18:13
PM
オートフォーカス 実行。
保存ファイル名:679004e.tif
スキャンは正常に終了しました。
画像4 ジョブ スキャン を開始しました。07.8.19 4:20:19
PM
オートフォーカス 実行。
保存ファイル名:679005e.tif
スキャンは正常に終了しました。
バッチスキャンが終了しました:07.8.19 4:22 PM |
ストリップフィルムアダプターを使ったログファイルの一例。連続4画像をバッチスキャンした際の時間を自動記録しており、赤い文字を見れば、ほぼ2分4秒前後の間隔でスキャニングされている事が分ります。但しこの時間にはスキャニング以外にフィルムの自動コマ送り、オートフォーカス、自動画像保存の時間が含まれています。
設定内容は、4000dpi, 16bit/ch, Tiffファイルによる自動保存、Digital
ICE ON, トーンカーブ補正ON、その他のDigital処理はOFFです。 |
何か無意味に時間の掛かる設定を選んでいるのかな?と思い、時間を見つけて色々と試すつもりでいましたが、9月になってやっとその時間が取れましたので、結果をお知らせしましょう。
スキャニング実測時間をご覧頂く前に、数値データからは読み取れないこのスキャナの性格とか、測定時間の意味を書いておきましょう。
まずパソコン依存度ですが、エプソンF-3200の様な自己完結型のスキャナとは違って、5000EDはスキャニング速度性能をパソコン側の能力に大きく依存しています。このスキャナはスキャニング時のデータ処理をスキャナ側ではなくパソコン側でやっているかの様で、CPU負荷率をモニターしながらスキャンすると、私のPCのデュアルCPUの負荷率は100%に貼りついたままになります。だからスキャニング中にバックグラウンドで何か作業させると速度がガクッと落ちますし、非力なパソコンほどスキャニング時間が長くなる傾向も大きいと思われます。
今回の結果はニコンの公表値よりも20%から100%ぐらい遅くなりましたが、一つの要因は私のパソコンがニコンの測定条件で指定されているパソコンよりも非力なせいだと思います。ちなみに私のパソコンとニコンの測定条件は以下の通りです。
ニコンの測定条件
PC: Pentium 4 3.06GHz, FSB533MHz
RAM: 1GB
OS: Windows XP Professional
Soft: Nikon Scan4
インターフェース: USB2.0
解像度: 4000dpi, 16bit/ch
Nikon Color Management System ON
原稿: ポジ |
私のパソコン
PC: Power Macintosh G4 Dual 1.25GHz
RAM: 2GB
OS: Mac OSX 10.2.8
Soft: Nikon Scan4
インターフェース: USB2.0 (PCI増設カード)
解像度: 4000dpi, 16bit/ch
Nikon Color Management System ON
原稿: ポジ |
20秒スキャンというニコンのカタログ値は実際のワークフローとしてはありえない数値で、絶対に必要なAFやスキャナ自体が自動で行うスキャニング前の設定処理時間、スキャニング後の画像処理/ファイル保存/転送時間を含んでいません。またこのスキャナを所有した人ならほぼ必ず使うであろうDigital
ICE4をONにするとスキャニング時間は画然と遅くなります。使うアダプターや、Nikon
Scan4の起動方法(単体起動か、フォトショップからのプラグイン起動か)によってもスキャニング時間が変わります。
今回の測定では、Nikon Scan4を単体起動し、スキャニング後のファイルは自動保存にしてあります。ニコンの公表値もNikon
Scan4を単体起動です。この条件を選んだ理由は、私の少ない経験では単体起動の方がフォトショップからの起動よりも処理時間が短く、何よりもMac
OSX上でフォトショップからの起動はNikon Scan4が不安定で、バッチスキャンしたりするとかなりの確率でスキャニング完了前にフォトショップごと異常終了し、それまでスキャニングした画像が消えてしまうからです。単体起動、ファイル自動保存だと安定性が増すばかりではなく、万一異常終了しても既にスキャニングが完了しているファイルは保存済みで無事なのです(フォトショップ上からは自動保存が出来ません)。
測定はマウントしたスライドを、スライドマウントアダプターに挿し込み行っています。画像による処理時間の影響を避けるために全て同じフィルムで測定し、また実際のワークフローを意図して、スキャニング毎に一旦フィルムを取り出し、また挿す事でスキャナに新しいフィルムであるという認識をさせています。これをしないと、以下の測定結果にある「事前準備」が行われずいきなり本スキャニングが始まるからです。
測定範囲は、スキャンボタンを押すと画像保存ダイアログが立ち上がります(画像自動保存なので)。ここでファイル名と保存先を指定して「保存ボタンを押した所」でスキャニング動作が始まるので、測定を開始しています。そして画像が保存されてスキャニングダイアログが消えた所で測定を終了しています。
この流れを絵にすると下のようになります。スキャニング・ワークフロー全体からすれば、ホンの一部分になります。
1枚30秒でスキャニングが終わる条件下でも、現実的にはフィルム選定とかホルダーへのフィルムセット、プレビュー/サムネイル作成&スキャニング条件セットに時間が掛かり、スキャニング全体の作業時間は1枚当たり3〜5分ぐらいは必要です。更にレタッチまで含めると別途1枚あたり数分の作業時間が加わります。単にカタログの20秒スキャンの文字に躍らされて、フィルム1本36枚が12分でスキャン出来るなどとは思わないように。
なおパソコンの画面を見ながらストップウォッチ片手に測定していますので、2秒以内の違いは測定誤差の範囲とお考え下さい。
ワークフローと測定範囲
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1 スキャニング範囲の影響度
測定を始める前にスキャニング範囲を画像範囲に合わせてトリミングする事に効果があるかどうか確かめました。傾向を見るために大胆に変えて、読み取り範囲最大(フィルム画像の外側のスライドマウント枠まで読み取ります)、その範囲の上半分のみ指定、その範囲の左半分のみ指定してみました。結果は走査距離が短くなる左半分ではスキャニング時間が短縮されましたが、ファイルサイズ/読み取り範囲が半分になるにも関わらず、上半分指定では走査距離が変わらない為かスキャニング時間に変化がありませんでした。
この事から、5000EDはスキャニング時間がファイルサイズに殆ど影響を受けない機械である事が分ります。この結果から測定は読み取り範囲を常に最大に指定して行いました。
読み取り範囲によるスキャニング時間
(連続スキャニング動作させた為、スキャナの事前準備動作無し)
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2 プレビューを行うべきか?
次はプレビューの時間測定です。初めてのフィルムでプレビューを行うとAFやフィルム確認等のスキャナの事前準備動作が始まり、本スキャンまでに18秒ぐらいの時間を要します。本スキャンはICEを使うかどうかで多少の時間差があり、13秒から16秒、合計すれば30秒前後の時間が掛かります。プレビューして画像処理セッティングを追い込むのなら必須のプロセスですが、後述するICEを使わない単純本スキャニングがやはり30秒強で出来るので、フォトショップ上で画像処理するのなら勿体ないかも知れません。
スキャン時間部分だけの比較ではニコンの公表値から20〜30%遅い結果となりましたが、傾向は似ています。
プレビュー時間
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3 ICE等を使わない、単純スキャニング(結構速いです)
次はDigital ICE4等の画像処理を使わないスキャニング時間です。カタログのウリの20秒スキャンはこの条件で、私のパソコンでは僅かに及ばないものの、本スキャニングだけを取り出すと22秒で完了しました。実際にはAF他の事前処理時間やファイル転送時間が加わって30秒前後の処理時間になります。
Nikon Scan4にはトーンカーブ、カラーバランス等の色調処理機能が付いていますが、これを使う事による時間遅れは事実上ありませんでした。一方で解像度やビットデプスを下げればスキャニング時間が短縮出来るのでは?という期待がありますが、結果からは短縮効果が見られません。以前使っていたCanoScan
2700Fは明確に時間短縮出来たので残念な結果です。スキャニング時間だけを基準にすれば、4000dpi
16bit/ch以外でスキャニングする意味は無さそうです。
スキャニング時間(画像処理無し、AFあり)
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4 Digital ICE4を使う。遅くなるも、2000dpiを境にジキルとハイドの性格!
このスキャナのDigital ICE4によるごみ取りは一度使ったら手放せない機能です。かなりのゴミやキズがあっても、元画像に影響を与える事なく見事に消し去ってくれます。従ってこの機能は常にONでスキャニングすべきですが、スキャニング時間が画然と遅くなります。
しかし面白い事を見つけました。きっかり2000dpiを境にスキャニングスピードが2倍近く変わるのです。アナログ的な変化ではなく2000dpiと2100dpiで断層の様に変わるので、最高解像度の丁度半分から下の所で一種の並列処理が為されるのかも知れません。2000dpiの解像度が許せれば、持って生まれた超高速スキャニング性能を併せて極めて実用的なDigital
ICE機になります。4000dpiの場合には平凡なスピードになりますが、しかしDigital
ICEはどの機械でも処理時間が長くなりますので、現行機種の中ではフラットベッドスキャナを含めて5000EDが最速Digital
ICE機である事は多分間違いないでしょう。
Digital ICEをONにすると事前準備動作が遅くなり18秒ほど掛かるようになります。またDigital
ICEのみの場合はICE画像処理がスキャニングと同時に行われるようです。画像ビッドデプス(8bit/16bit)や「2000dpi以外」での画像解像度の違いがスキャニング時間に与える影響は無いか、軽微です。
スキャニング時間(AF, Digital
ICE ON)
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(参考)パソコンの機嫌がそのままスキャニング時間につながってしまうパソコン依存症体質
今回の測定値は他にアプリを立ち上げず、パソコンを再起動した直後の素の状態で測定しています。全く同じ条件でもパソコン側で動作が遅くなる何らかの要因があると、スキャニング時間が画然と長くなります。下の表は上の表の測定の20分ほど前の結果で、いつもより遅い気がして(実際上の結果と比べると30秒遅くなっていたので)測定し直しました。その間にした事と言えばこの表を作るためにエクセルを立ち上げただけです。何故遅くなったのか、エクセルを立ち上げて少し作業をしたら何故速くなったのか(元に戻ったのか)は分りません。
(参考)原因不明で遅くなるスキャニング時間(AF,
Digital ICE ON)
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5 Digital GEM/ROC/DEEを使う。これは遅い!!
最後にICE以外のデジタル処理を使ってみました。しかしこれは時間がかかります。特に粒状低減のGEMと退色補正のROCの処理時間(これは同時に行われます)が極めて長いです。特に必要なければ忘れた方が良い機能ですね。
ICE以外の機能をONにすると、ICEの画像処理も後処理に回されるのか、4000dpiで本スキャン時間が15秒ほど短縮されます。その代わりに後処理の時間ではバーグラフが5回ぐらい現れる煩雑な処理になります。また本スキャン時の2000dpiマジックはここでも生きています。
画像処理時間は画像解像度の二乗にほぼ比例して増大します。しかしビットデプスには余り影響されません。
ニコンの公表値とかけ離れた測定結果になりましたが、パソコンの能力差だけでは説明が出来ない違いですね。何でだろう?? ひょっとしたらデジタル画像処理の部分はマルチプロセッサに対応していないのかも知れません。
スキャニング時間(AF, ICE以外のデジタル画像処理あり)
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6 結論
Digital GEM/ROC/DEEを除いてスキャニング時間が画像解像度、ビットデプスの影響を受けない機械なので、最高解像度4000dpiの16bit/ch取り込みがお勧めです。Digital
ICE4は必須の機能だと思いますが、これを使って急いでスキャニングしたい場合には2000dpiでのスキャニングを検討すると良いでしょう。
今回は触れませんでしたが、絵造りの性能は極めて高いと思っています。もちろんレタッチは必須ですが、元の情報量が多いので、レタッチは楽です。
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