BetterScanning製フィルムホルダー
KENのつぶやき vol. 336
(2011.1.3、2014.2.14追記)
中判、大判フィルムのスキャニングにEPSON GT-X970を使っています。その中判フィルムのスキャニング品質を改善するために、アメリカの写真系掲示板ではデフォルトスタンダード扱いになっているBetterScanning製のフィルムホルダーを購入しました。
BetterScanningのサイトは http://www.betterscanning.com/ です。今回私が購入したEPSON GT-X900/970(米国型番V700/V750)用以外にも、エプソン、キヤノン、マイクロテック、アグファの様々なスキャナに対応したホルダーを販売しています。またGT-X900/970で8x10スキャニングをする際に平面性を改善出来るアンチニュートンリングガラスも少量ながら販売しています。
betterscanning.comでの購入には英語に加えて、支払にPayPal口座が必要になります。それらに抵抗のある人は日本のお店からでも購入可能ですが、少々割高なのと、対応機種が限定されます。そのお店はこちら。
GT-X900/970用の価格は
アイテム | betterscanning.com | 日本のお店 |
Dual MF Film Holder | $89.95 | 10,500円 |
Anti Newton Ring Glass | $29.95 | 3,500円 |
追加T-Lock | $2.50 | 3個1,000円 |
送料 | $15.50〜 (購入量により変動) | 宅配便着払い |
PayPal加算 | $3.00〜 (購入額により変動) | - |
私はフィルムホルダーにアンチニュートンリングガラスを二枚追加して、送料、PayPal加算料、保険料などを加えて合計174ドルを支払いました。決済レート84円/ドルとして14600円余りで、日本で買うよりも二割以上割安でした。但し日本のお店から買えば日本語の取扱説明書がついてくる様です。
左側がエプソン純正のブローニー用フィルムホルダーで、右側がBetterScanning製フィルムホルダーです。標準ではコマ間ごとにフィルムを上から押さえつけて固定するT-Lockと呼ばれる細い棒が付いていますが、私は6x12や6x17といった中判パノラマ写真がメインなので(=スリーブにコマ間が無い)、オプションのアンチニュートンリングガラスを購入しています。
BetterScanning製ホルダーは剛性感のある素材で作られていて、無段階に高さ調整出来るネジが12個付いています(小さな白い点)。8個の大きな黒い丸はホルダーを透過原稿ユニットで押さえつけて浮き上がりを防止する硬質ゴムです。またスキャナが純正ホルダーであると誤認識させる為の細かな細工もされています。その一つがホルダー下端にある四つの小さな穴で、フィルムの位置情報をスキャナに与える物です。
ホルダーの拡大写真。エプソン純正品は薄いプラスチック製で、下の裏側写真から分かるように肉抜きされており、極めて軽量で剛性が無く、簡単にしなってしまいます。一方のBetterScanning製ホルダーは圧縮樹脂の様な物を貼り合わせた、合計6mm厚の構造で、重量感があり、しなったりすることが殆どありません。裏側の写真から分かるように、純正ホルダーと誤認識させる為の四角い白テープも貼ってあります。
フィルム固定方法の違い。ブローニーフィルムには645, 6x6, 6x7, 6x8, 6x9, 6x12, 6x17, 6x24と様々なサイズがありますので、35mm用ホルダーとは違って「桟」を設けることが出来ません。エプソン純正ホルダーは上下をプラスチックの枠で挟むだけの構造です。一方のBetterScanning製ホルダーはT-Lockでフィルムコマ間ごとに上から固定するか、フィルム全面をアンチニュートンリングガラスで上から固定する方法を採っています。
高さ調整のネジは小さなプラスチック製です。調整方法はまずネジの頭とフィルムホルダー下面が一致するようにネジを調整し、そこを基準に回転させます。ネジ一回転で0.8mm高さが変わるので、1/4回転ごとに0.2mmになります。BetterScanningの取扱説明書では六角レンチの向きで回転角を判断するように書いてありますが、微調整を繰り返す毎に六角レンチを抜き差しするので正しい回転角が直ぐに分からなくなります。そこで私は基準位置を決めた際に各ネジに黒い油性マジックで印を付けました。皆さんも印を付けられることをお勧めします。
調整幅は、ネジが全く出ていない状態がエプソン純正の最小値と同じ2.5mm。最大値は4.5mmとの事です。
エプソン純正ホルダーの最大の問題点がこれ。幅のあるブローニーフィルムをホルダーに挟むと、必ずと言って良いほど「たわみ」が発生しフィルムの平面性が失われます。この状態でスキャニングすれば当然部分的に惚けた画像が出来上がります。
BetterScanning製ホルダーの場合は、まずフィルムの裏表を気にせず、カールしているフィルムの「弓」が上に向くように置きます。そしてT-Lockまたはアンチニュートンリングガラスで上から押さえつけます。従って「弓」が下を向いていてはT-Lockもガラスの効果も生まれません。フィルムのカールの向きによってはスキャニング後に裏焼き画像が出来上がりますが、画像ソフトで反転させれば問題有りません。
アンチニュートンリングガラスを使うとフィルムセッティングは簡単ですし、平面性も上がりますが、ガラスのゴミや汚れがスキャニングされてしまう危険性や後処理の手間は増えますし、Digital ICEが使えなくなります。フィルムコマ間が沢山ある645や6x6のスリーブならT-Lockの方が良いと思います。
この写真を見るとアンチニュートンリングガラスを用いても完全な平面にはならない様ですね。これ以上の平面性を追求するとウェットマウント(英語ではfluid mounting)を用いることになります。これは専用液でフィルムをガラスに貼り付けるもので、、取り扱いが面倒なのでそこまでする気は起きません。
BetterScanning製ホルダーの使いこなしの中で一番手間なのが、高さ調整。12個ある高さ調整ネジをまず基準位置に調整し、そこから少しずつ高さを変えてはスキャニングを繰り返してゆきます。上の写真は3200dpiでスキャニングした写真の等倍画像で、GT-X970のアンシャープマスクはOFFにしてあります(ONにするとピンぼけが分かりにくくなるので)。思ったよりも高さによる画質変化は微妙で3.5〜3.9mmの間の映像には殆ど差がないように見えました。私は他の場所の画像もチェックして、最終的に3.9mmセッティングで用いることにしました。
エプソン純正ホルダーにも高さ調整機能は付いていますが、2.5mm, 3.0mm, 3.5mmの三段階(デフォルトは3.0mm)で、スイートスポットが実は3.5mmよりも高い位置にある事が第二の問題です。フィルムの平面性と高さ調整幅の不適切さがBetterScanning社にビジネスチャンスを与えてしまっています。
では、実際のスキャニング画像をごらん頂きましょう。
サンプル画像は2010年の夏に撮影した御机からの大山の写真です。オリジナルは3200dpi, アンシャープマスク「中」でスキャニングした約1億ピクセルの画像になります。エプソン純正ホルダーは高さ3.5mm、BetterScanning製ホルダーは3.9mmでのセッティングです。比較的画質に差が出ないと思われる画面中央部(A)と、エプソンではフィルムにたわみが出ている画面右端部(B、C)の等倍切り出し画像を以下に並べています。
ご覧のようにアンシャープマスクを掛けた画像でも違いが見て取れました。今まではGT-X970による3200dpiでのスキャニングに価値を感じず2400dpiでスキャニングしていましたが、これなら3200dpiでも良いかなと思わせてくれます。6x17もスキャニングしましたが、1.6億ピクセルに達する、画面全体がほぼ均質のシャープさを保った画像を見たときに、「ああ、買って良かった!」と思いました。
(2014.2.14追記)フィルム端末の反りを抑えるガイドを作りました。
このホルダーを使い始めて早3年が経ちましたが、いつも気になっていた事があったのでチョットした工夫を加えました。
それはフィルム端末のたわみ。このホルダーの基本的な使い方は上梓時に説明した様に、フィルムの裏表を気にせずカールした弓が上を向くよう置いて、上からアンチニュートンリングガラスで押さえつけること。しかしフィルムは時に綺麗にカールしているとは限らず、上の絵の様に波打つ時もあります。特にコダックはフィルムベースが薄い為にほぼ確実に上記の状態、、
そんなフィルムをアンチニュートンリングガラスで押さえつけても、平面性は大きく損なわれてピントが甘くなる傾向があります。これに簡単な工作で対処しました。
用意したのは薄いプラスチック板で、商品を包装しているブリスターパックの一部です。剛性が確保出来る範囲で薄い方が良く、厚さ0.3mmの物を使いました。
それをフィルムホルダーの穴の幅で長方形に切り出します。
次にこの薄板がしならないように両側を折り曲げた上で、これをフィルムホルダーの「桟」の下に落とせるように四隅を切り落とします。
一旦フィルムホルダーに設置してみて、各部寸法をチェック、、
最後にスキャニング時に余計な光の反射が起きないように、折り曲げた縦面にパーマセルを貼り付けました。
上面はフィルムとガラスが重なるので厚みが出来ない様に、何も貼っていません。だからパーマセルの粘着面が見えていて、見栄えは今ひとつ(笑)。
これを使ってフィルムをセットした状態です。ご覧のようにフィルム端末の平面性が大きく改善されました。このホルダーの穴の周囲には「桟」があるので、この写真の反対側の端末はその桟で平面性が確保出来ています。穴の大きさが6x24フィルムでも対応出来そうなぐらいに長いので、片側のみ移動可能なフィルム端末ガイドが必要になるのです。これで今まで以上に精神衛生上心地良くスキャニング出来そうです(笑)。
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