Cherry Blossom 2003
(桜のギャラリー2003)


雨桜
2003年4月4日。この日は一日中雨が降っていました。時折土砂降りになる程の天候でしたが、私は夜明けから日暮まで一日中桜を撮り歩いていました。このような日には花見客も写真を撮る人も殆どおらず、却って落ち着いて写真を撮ることができます。雨の日は晴れの日には無い色彩を恵んでくれますし、空間には独特の奥行き感が漂います。私はずぶ濡れになりながらシャッターを押していましたが、印象的な情景の前では寒さも疲労も吹き飛んで行きます。良い作品は、人の撮らないような時にこそ生まれるのかも知れません。
夜明け過ぎに目的地の駐車場に着きました。雨の中ではレンズ交換できないのでクルマの中でカメラにレンズを付けて、ふと窓越しに外の景色をフィアンダーで覗けばこの様な深淵な情景が飛び込んできました。土砂降りの雨に煙る情景、濡れたクルマのドアガラスがソフトフィルターの役割も果して、私のお気に入りが一枚生まれました。手持ちでは苦しい明るさなので、クルマの中で三脚を用いての撮影です。
降りしきる雨は、山肌から霧を立ち上らせます。小高い山の山頂にあったこの桜は、その霧に包まれて嫋やかなる表情を見せていました。
恒例の二重露出ですが、雨の日の色は花の表面反射が抑えられて落ち着きがあります。二回目の露出のボケ量を控え目にして、雨らしさを表現してみました。
天候が荒れるほどに、情景は印象的になります。山頂に突風が吹き、霧が目の前で龍のように舞っていました。そんな暴れる霧を背景に従えて、下界に見えた森は色とりどりの木々が雨で落ち着いた色合いになって、優しい情景を生み出していました。
ここからは水滴をテーマとした4枚です。まずは定番写真から(笑)。雨により花の色味にも深さと優しさが加わっていますね。
被写体が色かぶりをしないように、撮影中には透明なビニール傘を用いています。その傘越しに桜を撮影して、雨らしさを表現してみました。え、反則?
綺麗に並んだ水滴。降り頻る雨の中では、さっさと撮らないとこの水滴も落ちてしまいます。
マクロ撮影で、落ちる水滴を捕らえることは結構大変でした。背景が明るいと水滴が消えてしまいますので、水滴の後には木の幹を配置しています。



晴れ桜
「晴れ桜」という言葉は有りませんが、「雨桜」と対比させたギャラリーとしてこの名前を付けました。桜は晴れの日に撮影することが一般的ですが、それだけにありきたりな写真になりがちです。2003年に撮影した作品を中心として、自分なりに工夫して撮影した作品を選んでみました。一部に2002年以前に撮影した作品もあります。
夜明けの茜色をバックにした桜です。ストロボをごく弱くあてて花の表情を出しています。
この構図では花が小さすぎて、EーTTLではきちんとした調光がされず、露出オーバーで花が真っ白に飛んでしまいました。これはマニュアルで減光しヤマ勘調光で撮影しています。本来ならばストロボにアンバー系のフィルターをかけると背景の色と調和するのですが、持っていませんので来年以降の課題とします。
同じ桜をシルエットで、文字どおり日の丸構図で収めました。
朝露をためて、朝日に輝く桜二輪。
太陽を画面内に入れておいて花の表情を出すためには、思い切ったプラス補正が必要ですが、実際には太陽を外して測光し、同じ露出値になるように補正を加えています(一種のマニュアル測光ですね)。
その美しさと清楚さ故に、桜はソフトフォーカスレンズが良く似合う被写体だと思います。ボケの中に奥行き感を出すような構図を作りました。
シンプルな構図、シンプルな背景。朝日らしい真横から当たったアンバーの光を活かして...
逆光の朝日に輝く八重桜。実は三輪薫さんの梅の作品に心響くものが有りまして、真似させていただきました。しかし(当然ながら)三輪さんの作品の方が美しいです(^^;
花弁が真っ白に輝いて、それでいてシベが表情を失わないようにすることがキモです。
梨の花にも思えるような、白い大島桜。その純白の清楚さを失わないように、画面の大半を白で包みました。
桜の木を見上げたときの壮大さを表現出来るレンズといえば、超広角ですね。桜の場合は逆光にならないように光線を選んだ方が、花が色合いを失わず良いみたいです。
花の駅として広島では有名な可部線・安野駅の写真です。レンギョウの合間から桜を捉えました。明るい色合いに包まれた、初々しさを感じる情景だと思います。
同じ安野駅の写真です。今度は桃の花と組み合わせて、ピンク色の饗宴です。この美しい組み合わせが有るために、春はこのローカルな駅への人出がたえません。
安野駅に花の木を植える際には、恐らくはデザイナー(もしくは素晴らしいデザインセンスのある人)が携わったのだと思います。レンギョウ、桃、桜の見事な饗宴をソフトレンズで仕上げました。
湯来町の枝垂れ桜の全景写真、2003年度版です(笑)。この桜の表情を全景写真で引き出すには、柔らかい光線状態で、絞り込んでボケを無くす方が良いみたいです。手前のレンギョウを開放でボケさせた写真も撮りましたが、まとまりが有りませんでした。
霧の中にたたずむ、庄原・上野公園の桜。
湖畔の慎ましやかな枝垂れ桜とレンギョウ。そして湖面の反映...

上野公園は日本の桜名所100選の地に選ばれている名所ですが、2003年は桜の木が病気になったとかで、公園は閉鎖され、見事に満開の花を付ける筈の背景の木は枝が切られていました。この二枚は、かろうじて湖畔沿いに咲く桜の木とレンギョウを、霧と組み合わせて撮影しました。もう一度見事な桜を見てみたいものです。

緋毛氈の上の光と影、そして花一輪。
同じ場所の野点傘。ピンクの枝垂れ桜を背景にして。

純日本的な情景ですが...西洋的な場所にありました。
広島のカトリック幟町教会(世界平和記念聖堂前)にて撮影。