(とんぼ返りイタリア出張記3の続きです)
出張初日の朝の撮影が終わった辺りから、お腹が少し痛くなってきました。どうやら早朝に水道の水でお湯を沸かしてコーヒーを飲んだのがいけなかったようです。大阪を飛び立つ前に泊った日航ホテルの部屋にもコーヒーサービスがあり、お湯を沸かして飲んだので、つい同じ感覚でイタリアでも「やって」しまいました。この腹痛は段々ひどくなり、昼食を食べることも出来ず、午後2時ごろにはとうとう会議を続けられないほどになりました。一旦会議を中座し、ホテルの部屋でお風呂に入ってお腹を温めたら、少し楽になりました。それで残りの会議に出席しましたが、身体が冷えるに従い段々苦痛が戻ってきて辛い会議となりました。結局その日はお湯とお茶(今度はちゃんとミネラルウオーターから沸かしました)以外は口に出来ませんでした。その日の夜はミラノのカーニバル。出張に来ている人達は皆、華やかなお祭りに出かけたのに、一人ホテルの部屋で寝込む哀れなKENだったのです。
皆さん、ヨーロッパではミネラルウォーター以外の水には手を出すのはやめましょう。多分水質の問題なのでしょう。沸かして殺菌してもダメです。
腹痛のため8時にはベッドで横になりましたが、11時位に一旦目が覚めた頃には腹痛が大分収まってきました。時差は相変わらずで3時になるとまた目が覚めました。腹痛は収まっていました。ふと外を見ると真っ白い霧が出ていて、暗い夜景の中で街灯が幻想的に滲んでいました。咋朝よりも遥かに濃い、視界50mも無いかと思われる濃霧です。咋朝の霧の中の街灯をワンカットしか撮れなかったので再挑戦したいと思ったことと、ホテルの近辺には絵になる場所が無くて、少し遠出をしたかったので、まだ暗い5時前にカメラを持って撮影に出かけました。ホテルの前には防犯用の大型ライトが添えつけてあり、それに照らされた霧は霧雨の様に舞っていました。
ホテルの玄関から真っ直ぐに歩き出して、50mぐらい進んだところでふとホテルを振り返ると、玄関の大型ライトや街灯がホテル前の街路樹を美しいシルエットで幻想的に照らし出していました。例によってカメラと取り出し超小型三脚を取り付け、それを地面に置いて這いつくばる様にして構図を決めます。そして撮影...露出がよく分らないので、カメラの指示値に対してプラスマイナス1段の段階露出をしました。ワンカット30秒近い露出なので、それだけで数分かかります。
その撮影が終わると、被写体を求めて目的もなく歩き出しました。ホテル前の駐車場を横切り、メインストリートを横切って、門のある区画(欧州には街のブロック入口に門のある事が多いです)の奥の方に歩いてゆきました。最初の内はオフィス街という風情で、メインストリートの水銀灯だけが夜霧に輝いていました。これでは絵になりません。延々と歩いて行くと、やがて団地に辿り着きました。日本の団地同様に集合住宅が林立した場所です。そこで私は一つの絵になりそうな建物を探しました。ヨーロッパで人の住む所には必ずあるもの、教会です。暫くして教会を見つける事が出来ましたが、しかし残念ながら照明がありません。教会は肉眼ですら全体像を確認出来ないほど、夜霧の中に霞んでそびえ立っていました。ここでの撮影は諦めました。
更に被写体を探して教会の周りを歩いていると、遠くの方にオレンジの街灯の光を見つけました。それでそのオレンジ色の光と、手近に有る水銀灯の光を対比させて木のシルエットを撮影してみました。水銀灯は肉眼では白い光ですが、フィルムに写すと緑色になるので、水銀灯だけの写真は気持ち悪い物になります。ですから他の色の光とのコンビネーションが欲しいと思ったのです。しかし、出来上がった写真を見ると、最初のカットは成功しませんでした。水銀灯の光が強すぎて画面全体が緑色になってしまい、右端のオレンジ色の光が弱すぎました。
オレンジ色の光は教会裏にあるロータリー式の交差点の照明でした。恐らく光の色で交差点である事を示しているのでしょう。私はその交差点付近まで歩いて行き、そこでまた何枚か撮影しました。その撮影の様子を住宅地の住民が見つけたら、警察に通報されるかも知れませんね。何か小さくて黒い機械を地面におき、地面に這いつくばってそれを操作し、その後数分その場にじっとしている(ワンカット30秒で三枚の段階露出をしているのです)。ここでのカットの出来上がりは極めて満足できる物でした。とりわけ住宅の裏に入り、大きな木のシルエット越しに交差点を写した物は、人口物を殆ど木のシルエットで隠す事が出来たため、自然の中の不思議な光の情景といった感じに撮れています。
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