これから書くことは、天体撮影や星野撮影をしたことのある人には笑い話かもしれません。何の準備もせずに臨んだ撮影ですから、変なところがあったら笑い飛ばしてください。
私はここ2ケ月ぐらい、毎週土曜日の朝は日の出撮影のために早起きをしています。11月18日の朝は予定よりも早く午前2時半に目が覚めました(睡眠時間2時間)。もう一度寝てしまうと起きれなくなるので、そのまま日の出撮影のスポットに出掛けました。現場に到着したのは午前4時。日の出までにはまだ2時間半もあります。空は雲ひとつ無い晴天で、満天の星空が拡がっていました。そして天頂付近には半月が煌々と輝き大地を照らしていました。
さて私は日の出までの時間をどうつぶそうかと思いましたが、月が明るかったので、月明かりの下の夜景を撮影することにしました。「月は太陽光を反射しているので、月明かりは光量を除けば太陽光と全く同じ条件になります。だから月明かりに照らされた大地は適正露出を与えるとあたかも昼間のように写ります。空もまたその様な露出条件では昼間同様に青く写ります。日中の写真との違いは、その青い空の中に星が写ることです。」と、ここまでの「うんちく」は昔読んだ雑誌からの受け売りです。その雑誌記事を読んで私もいつか昼間のような夜景を撮ってみようと思っていたのです。
さて、撮影を始めようとは思ったのですが、もともと日の出撮影の為だけに来ていますから星野撮影の事前準備は何も無し。最も難しい露出の目安すら(かつて天体雑誌で読んだことはありますが)忘れてしまっている状況での撮影となりました。まずはカメラにフィルムを装填して...長時間露出に強いプロビア100Fです。とはいえISO100は感度不足?...レンズを付けて...手持ちの中では最も明るいEF50mm
F1.4...構図を見るために空にカメラを向けてみました。ここでショックが...ピントが分かりません。AFレンズは無限遠が浮いているので、ピントリングを一番端まで回しても無限遠は出せません。ピントリングを回しながらファインダーを注視しても点像である星も遠くの街灯もイマイチピントの山が分からない。こんな時はカメラのAFに頼るべく、遠方の明るい街灯にカメラを向けてピントを合わせて、その状態でMFモードにしてピントリングを動かないようにしました。次に構図ですが、50mmだと地上の樹木等を画面内に入れて撮影するには少し画角が狭い...それでシグマの28mm
F1.8に付け替えました。ピントは例によって遠方の街灯を使ってAFで合わせて...
露出ですが、全く勘どころがありません。とりあえずAVモードで絞りをF1.8にしてカメラを空に向けると、EOS3がはじき出した露出値はシャッター30秒でー1EVアンダー。つまりF1.8、60秒が適正露出との事。真っ暗な空に向けた露出なのに本当かなぁ????と思いつつも、他に基準がありませんので、これを基準に段階露出をすることにしました。28mmで絞り開放F1.8というのも画質、及びピントの面で不安があったので最初のカットはF2.8まで絞って、シャッター速度を2分30秒にしました。カメラにケーブルレリーズを付けて、バルブにして(この様なときにEOS3に付いている液晶バックライトは助かります)撮影開始....いや待て。その日は風がとても強く、カメラのストラップが風になびいてカメラと三脚を微妙に揺らしていました。これではダメだと思い、ストラップを三脚に結びつけて、ケーブルレリーズも三脚に結びつけました。今度こそ撮影開始....ゲゲッ! と、時計が見えない...
私の時計は何にもない普通のアナログ時計。月明かりの下では殆ど何も見えません。仕方なく懐中電灯で時計を照らして時間を確認。シャッターを開く時に懐中電灯をつけていては悪影響があるので、シャッターを開く瞬間の秒針位置は月明かりの中で僅かに輝く秒針を注視して確認しました。シャッターを開いた後はしばらく手持ち無沙汰...
シャッターを閉じるタイミングを確認するにも懐中電灯が必要なので、カメラに影響を与えないように20m以上離れた木の陰で時計を見ていました。頃合いを見てカメラのところに戻りシャッターを閉じる。そしてまた次のコマの撮影開始...今度は5分の露出です。また遠くの木陰に行って同じ事の繰り返し...
ふと空を見上げると「アッ!流星が...」そう、その日は獅子座流星群のピーク日だったことを思い出しました。しかし最初に見た2〜3の流星が飛んだ位置は獅子座のある南の空ではなく、どちらかというと北西とか北東の獅子座とは正反対の位置でした。とは言え「獅子座流星群」ですから多くは獅子座のあたりから飛ぶのだろうと思い、次のコマは獅子座に向けて撮影しました。しかしその後も流星は獅子座付近ではなく、北斗七星とか、おうし座の当たりで見受けられました。その後オリオン座、おうし座付近とか、北斗七星脇の北極星のあたりとか色々と撮影しましたが、カメラを向けるとその方向に流星は飛ばず、結果的に流星は一枚も写ってはいませんでした。
恥を忍んで追記(2000年11月27日):
獅子座と思っていた星座は、あとで冷静に考えたらおおいぬ座でした。なんと全天一の恒星シリウスとレグルスを見間違えたのです(バカだねぇ>KEN)。この日この時間に獅子座は天頂付近やや南東側、月のそばにありました。月がとても明るかったので、そちらの方の星座を確認しませんでした。
天頂の南東寄りに獅子座があれば、北斗七星付近(北東)を初め様々な方角で流星が見られたのもごく当たり前の事です。
上記文章の赤い字の「獅子座」は「おおいぬ座」と読み替えて理解下さい。
星野撮影は一枚当たり数分〜10分もかかりますので、段階露出までしていては見る見る時間が過ぎて行きます。薄明が始まるまでの1時間半で撮影できたのは10枚ほど。その結果は次回のつぶやきでお見せするとして...
星野撮影(固定撮影)を体験してみて思った必要機材。何よりもまず暗いところで時間確認出来る時計が必要です。バックライトの付いた液晶デジタル腕時計が良いと思います。短波ラジオを薦めた友人もいましたが、学術的な観測撮影をするのでなければそこまでの必然性は感じられません。時計以外にラジオまで持って行くとなると荷物になります。第一私はカーステレオ以外のラジオを持っていない..
カメラはメカニカルシャッターのMF機が良いですね。電子制御のAFカメラ用のレンズだと、まずピント(無限遠)が分かりません。MFなら単純にピントリングを無限遠方向に一杯まで回せば事足ります。電子シヤッターカメラで電池がアルカリ単三だと低温下で容量不足になり作動しなくなります。私の場合も最初は単三電池で撮影していましたが、途中で作動不良になりリチウム電池に切り替えて撮影継続しました(EOS3にEOS1N
DP用のバッテリーパックBP-E1を付けていました)。更にフィルムの平面性の不安です。手巻きのMF機なら巻き戻しクランクを縛ることで長時間露光中のフィルムのたるみ等の発生を抑えることが出来ますが、巻き戻しまで自動のAFカメラではそれが出来ません(ニコンF4、F5は別格ですが)。
本格的に撮影するならカメラは複数台必要ですね。星はどんどん動きますので、魅力的な被写体や構図は待っていてはくれません。1カットあたりの撮影時間がどうしても長くなるので、1台では狙った被写体や構図を撮影する前に星が動いてしまう事が多くなります。だから異なるカメラで同時に撮影して、魅力的な被写体をどんどんフィルムに収めて行きたいですね。段階露出も一台で同じ構図での撮影は不可能ですから、複数台で同時段階露出が必要でしょう。三脚は頑丈な物が必要です。私のマンフロット055C(重さ3.7kg)でさえ強い風があるとカメラなどが微妙に揺れてしまいます。もちろんエレベーターの使用など論外!ケーブルレリーズは必須で風で揺れないように縛る必要が有ります。ストラップは出来ることなら外して撮影に臨んだ方が良いみたいです。付けたままなら縛る必要が有るのでその為の紐があると便利そうです。
それ以外にも本格的な撮影には防寒用品とか、結露防止用品など必要な物が沢山ありそうですが、詳しくは天文ガイドとか、スカイウォッチャー、あるいは天体撮影ガイドブックなどをご覧下さい。
とは言えこれは理想論。AFカメラしか持っていない人が星野撮影のためにわざわざマニュアルのMF機を買うほどの事もないでしょう。少々の不便を甘受すればAFカメラでもちゃんと撮影は出来ます。
次回つぶやきで、KEN初体験の星野撮影結果をご披露しましょう。
(恥の上塗りだな〜KEN談(爆))
(いや、上塗りに上塗りを重ねて塗り固めたな(2000年11月27日〜KEN談〜冷汗))
(つづく)
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