私もデジカメをひとつ持っています。オリンパスD-320Lという一世代前の81万画素の単焦点コンパクトタイプのカメラです。これはCー820Lと全く同じ物で、パソコン接続キット等が同梱されて販売されたモデルでした。付属品、元箱、スマートメディアが完備した中古をいつものカメラショップとの壮絶な値切り交渉の末に定価の60分の1に相当する1500円(!)で購入しました。このカメラはつぶやきにレンズやアクセサリーなどの写真を掲載するために使っています。その目的の範囲では大きな不満はありまんので、当面買い換える予定もありません。
もちろんこれから語ることはDー320Lの様なホームページ製作に使う簡易なデジカメの事ではありません。KENが作品製作に使いたいと思うような、新たに買ってみたいと思うデジカメの条件とその姿です。
現在コンパクトカメラタイプ、レンズ交換出来ない一眼レフタイプ、そして銀塩カメラとマウントを共通にした一眼レフタイプといった各種のデジタルカメラが、日進月歩の勢いで進化し発売されています。既に300〜400万画素は当たり前で毎年1.5倍になるペースで画素数が拡大していますね。しかし私の欲しいデジカメはこの中にひとつもありません。むしろ現在の進化(単純な画素数拡大)は無駄だとさえ思っています。
という前置きと共に私がデジカメに求める条件を一つづつ挙げながらその理由、私のデジカメ理想像を述べて行きましょう。
条件1. 最低限、36mm x 24mmフルサイズCCDであること
私がデジカメに求める第一の最低条件が、35mmフィルムのフルサイズ画面と同じ大きさ、36mm
x 24mmの有効画素領域を持つCCDであることです。現在までの所この大きさを実現した市販デジカメはありません。EOS
D30が比較的大きくて22.7mm x 15.1mmです。フジのFinePix S1 ProやニコンD1は公称サイズ23.3mm
x 15.6mmですが有効サイズの記載がありません。多分EOS D30と同等でしょう。オリンパスEー10は2/3インチですから公称横幅8.8mmです。この様に最近やっとCCDサイズの大型化の兆しが見え始めましたが、これ以外のCCDとなるとまだ1/2インチ前後が主流です。小さなCCDである限り画素数などいくら増やした所で根本的な画質改善は見込めません。
小さな記録画面サイズ(CCDのサイズ)は必要とするレンズの焦点距離を短くします。すると小さな口径で明るいレンズが製作可能となるため、例えばコンパクトカメラタイプのデジカメのレンズは恐ろしく小口径です。一部の一見まともなレンズを持ったデジカメでも、それは高倍率ズームの為で有効口径はさほど大きな物ではありません。ところが理論的にレンズの分解能はレンズの有効口径で決まります。
σ;分解能(角度、秒)、λ;光の波長、R;対物レンズの半径
対物レンズの半径が大きければ理論分解能は高くなり、小さければ低くなります。もちろんこれは収差が無いとした理論値で、収差の大きいレンズではもっと分解能は低くなります。
さて、銀塩一眼レフとレンズを共通にしていない、専用レンズを持つデジカメの場合、レンズの焦点距離は小さくて済むので必然的に口径が小さくなり分解能が低くなります。その映像情報を小さなCCDを何百万にも分割した小さな画素で読み取るのです。300万画素級の1/2インチCCDの一つの画素サイズは既にレンズの解像度よりも小さいという噂もあります。画素数が増えても画質がさほど上がったように思えないというのはこの辺りにも一因があるのでしょう。
近年の画素数拡大には更に弊害をもたらします。画素数が年々拡大するなかでCCDのサイズは殆ど拡大していません(高級機を除き1/2インチ前後のままです)。ということは一つの画素数あたりのシリコンの体積が小さくなっており、1画素に蓄積できる情報(電子)が減っていると言う事で、写真にとって重要な階調再現性が低下しているのです。それが証拠に2/3インチCCDを採用したオリンパスEー10のセールストークの一つに、「受光面積の大きなCCDですので階調が豊か」とあります。CCDサイズの拡大を伴わない画素数拡大は、素人騙しの写真の質を悪化させる「進化」なのです。微妙なトーン、グラデーションを再現できないカメラシステムなど私にはゴミです。
更に小さなCCDによる短い焦点距離は、個人的に重視しているボケを失います。私はボケが写真にとっての重要な要素だと思っているので、それを損なうシステムが許容出来ないのです。勿論CCDサイズに起因する小さなレンズの問題は、EOS
D30の様な既存の一眼レフと共通マウントシステムの場合にはそれほど大きな問題ではないかも知れませんが、36mm
x 24mmに拘る理由は他にもあります。それは私が35mmフィルムで作品を作っていると言う事です。同じサイズであることが私には重要なのです。その理由は後で語りましょう。もちろん35mm
x 24mmよりも大きなCCDが生まれれば、それは更なる新しい世界を切り開く事になります。
この原稿を書き終えた頃、ビッグニュースが飛び込んできました。コダックから中判専用のデジタルバックが発表されたのです。以下はコダックのプレスリリースからの抜粋です。
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コダック プロフェッショナル DCS プロバック
シングルショット1,600万画素 カメラバックタイプDCS
メーカー希望標準価格199万5千円(税別)で2001年6月
国内発売予定!
「DCS プロバック」は、4,080×4,080ピクセル、1,600万画素のフルフレーム
CCD*1 を搭載し、シングルショットで約48MB(メガバイト)のRGB画像ファイルを生成します。しかもCCDの大きさは、36.86mm×36.86mmの超大型サイズで、中判カメラと組み合わせてワイドレンジの撮影が可能です。
*1 フルフレーム CCD :デジタルカメラは基本的にCCDの画素数が多いほど高精細な画質が得られるが、CCDの画素数が同じ場合は、CCD自体が大きく1画素当たりの受光面積および開口率が大きい方が、より多くの光を受光することができ、ダイナミックレンジやS/N、色飽和度等に優れた高画質画像を得ることができる。フルフレームCCDは、他の方式に比べて1
画素当たりの受光面積や開口率を最も大きく取りやすいCCD構造になっている。
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小さなCCD故の欠点、今まで業界が皆さんに隠し通してきたことを*1の注釈でコダックは声高らかに宣言していますね!しかし私にとってのビッグニュースはコダックの宣言ではなくて、36mmの横幅を持つCCDが実用化されたことの方です。現在の価格は高いですが、シリコンの原料費は限りなくタダに近いですから、新技術投資の回収が終われば劇的に安くなります。これは今までのCCDの価格の歴史を見ても明らかです。
条件2. L判以上、出来れば2L判の液晶モニターを装備すること。
デジカメの最大のメリットは、撮った画像をその場で確認できることでしょう。殆ど全てのデジカメが液晶モニターを装備していますが悲しくなるほど小さな物です。こんなものでは作品製作において撮影した結果の確認は出来ません。ポジをプリントして作品として確認する場合と同様に少なくともL判、できれば2L判ぐらいの高精度な液晶モニターが欲しいのです。これはカメラに組み込まずとも別体でも構いません。液晶のバックライトは電気食いですから別体で大きなバッテリーパックを付けられる物の方が良いかも知れません。
条件3. 安価なこと(笑)
これは詳しく語るのは止めましょう(笑)。KENの基準においてどんなに高性能なデジカメでも本体に10万円以上の価値はありません(この「価値」は「KENは買えない」という意味です。念の為)。
さて、これらの条件を満たすデジカメがあるとすれば、その姿には二通り考えられます。それは次回のつぶやきで語ることにします。
つづく
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