今回は少し独断と偏見を(〜いつもの事か(笑))
写真撮影に於ける三脚の必要性はそのジャンルによって変わりますが、風景やマクロというジャンルで三脚不要論を唱える人はいないと思います。風景やマクロの場合は野山を歩き回ることが多く、三脚選びは自分の体力に応じてなるべく丈夫な物を、というのが雑誌に書かれる一般論です。それで多くの人はカメラショップで三脚を触り、自分に合うと思う重さの三脚を買っていると思います。
しかし私は自分自身の経験から「自分の体力に応じた三脚よりも一回り大きな三脚を買おう」と提唱します。
写真撮影再開後に私が最初に買った三脚はスリック・エイブル300DXで重さは2.6kg。その三脚の損傷で同じ重さの三脚に買い換え(マンフロット190+141、2.7kg)、そして現在メインに使っているマンフロット055CB+141の重さが3.6kgです。この三脚選びをしている時の「自分の体力に応じた重さ」の上限は4kgでした。それで4kgを超えない範囲での三脚を選定したことはつぶやき23と24で語った通りです。
マンフロット055CB+141を買った当初は3.6kgも結構手ごたえのある重さだと思いましたが、時と共に慣れてしまいました。最近になってより大型の三脚(スリック・ザ・プロフェッショナル、6.3kg)を購入してからは「羽の様に軽い」とまで錯覚する始末です(笑)。つまり、重さには人間慣れてしまうのです。思い返せば写真を再開した頃、EOS
Kiss, EOS 55にEF28-105mm F3.5-4.5、EF75-300mm F4-5.6、タムロン90mmマクロ、50mm
F1.4を入れた中型のカメラバッグ(合計4〜5kgほど)がずいぶんと重く感じられましたが、現在の撮影には概ね10〜13kgぐらいのカメラバッグを持ち歩きます。これに三脚を加えれば時に16kg以上に達します。もちろんこれを軽いと思ったことはありませんが、多少野山を歩き回っても苦痛にはなりません(慣れました)。
一方の三脚ですが、もし「移動のことを考えなければ」、三脚は重ければ重いほど良いのです。工作精度や設計の賢さが同等なら、重い三脚が軽い三脚に劣る点は殆ど無いと断言できるでしょう。だから少し無理して大きな三脚を買った方が後々買い換えるハメに陥ることを防げます。
個人的にお勧めの三脚はスリック・プロフェッショナル2です(私個人は持っていませんが)。重さは雲台込で4.7kg。この三脚は重さのわりに剛性と工作精度が高く、十分な高さを持ち、またローアングルなどさまざまな機能が凝縮されています。価格もとりたてて高いというものではありません(実売で3万円台)。特別な目的が無ければこの三脚がベストバイだと信じています。この三脚よりも軽いものは途端に剛性が落ちます。もちろん他の三脚にもそれなりの特徴があり一概に悪いとは言えません(私は剛性よりもローアングルの容易さを優先してマンフロット055CBを買っています)が、剛性面での妥協は必須です。これは三脚座のついた300mm以上の望遠レンズを使う際には気になるでしょう。私のマンフロット055CBとシグマの500mmズームでの撮影ではミラーアップが欠かせません。ミラーが下りた後でファインダー内の映像がかなりぶれているからです。もしプロフェッショナル2を買っていたらこの様な不満は少なかったでしょう。
しかし大抵の人にとってスリック・プロフェッショナル2は重すぎると感じるはずです(私もそうでした)。でも成年男子ならそこを無理してスリック・プロフェッショナル2(かそれと同等以上)の三脚購入をお勧めします。私の知人にもこの三脚の愛用者が結構いますが、みな好評です。それに慣れているからでしょう、「重い」という不評も殆ど聞きません。
繰り返しますが「重さ」には時と共に慣れますが「剛性不足」は時と共に「耐えられない物」、あるいはあなたのネイチャー写真の腕の奥行きが深まれば深まるほどに「使い物にならない物」になります。
「カーボン三脚!」という声が聞こえてきそうです。しかし(肉体年齢)60才以下の人に私はこれをお勧めしません。カーボン三脚の利点欠点は良く語られているので省略して、違う視点からカーボン三脚を意味付けしようと思います。
写真は若い人はもちろん、中年、老年の方まで広く普及している趣味です。頭と身体を使って芸術作品を創造するという喜びは万人に共通するものだからでしょう。また仲間も増え、会話も弾み、人生楽しくなりますね。ネイチャー写真の場合は更に「重い機材を持って歩き回る」という健康法的なメリットもあります(ゴルフに似てますね)。そこでこれを読んでいるあなたに質問!
「いつまで写真を続けますか?」
たぶんほとんどの人が高齢まで写真を続けたいと答えるのではないでしょうか。
残念ながら体力は年齢と共に衰えます。一方である種の写真ジャンルは本人の体力とは無縁にある種の機材を要求し、強度の高い(=重い)三脚は使用可能な機材の幅を拡げるため、ジャンルの幅と撮る喜びを倍加してくれます。しかし体力の衰えと共にその三脚を持ち歩けなくなった時、あなたはそれまで楽しんでいた写真ジャンルを諦めなければなりません。私はカーボン三脚をその時の救世主だと思っています。細かいことを抜きにすれば、カーボン三脚は同等の強度を持つとされる金属性三脚よりも30%以上軽量です。だから体力の衰えを感じてそれまで持ち歩いていた三脚が苦痛になったとき、カーボン三脚に買い換えれば撮影を続けられる事になります。
重い三脚は一方でそれだけ撮影時の運動量を要求しますので、体力劣化防止(要は老化防止)につながります。だから若い内から重い三脚を買って使い込むことは、老化を防止し写真生命を伸ばす事にもなるのです。そしてそれでも不可避に進む体力の衰えにより重い三脚が持ち歩けなくなったとき、同等の強度を持つカーボン三脚に乗り換えれば良いのです。若い内からカーボン三脚を買ってしまうと、運動量が減り体力劣化を加速し、ネイチャー写真を諦めなければならい時が早く来ることになるでしょう。
若くして既にカーボン三脚を買ってしまったあなた、あなたには後が無い!
最後に蛇足。現在のカーボン三脚は金属三脚に換算しても2kg台後半並みの強度しか無い華奢な物が主流です。こんなもの買ってどうするのでしょう?メーカーサイドのマーケティング結果も「カーボン=ビギナー老人」という構図が出来上がっている様です。実際、花などの撮影現場で何度かカーボン三脚ユーザーを見かけましたが、全員老齢で、写真のうまい人はその中にいたことがありません(カメラの構えを見れば腕は分かります。ネイチャーの場合...構え方はアングルと構図をそのまま語りますので。)。
現在市販されているカーボンでまともな物は、ジッツォの3型と5型のカーボンだけでしょう。
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