広島市森林公園にある昆虫館・パピヨンドームには、数々の蝶が放し飼いになっていて、蝶の写真を撮影するには絶好の場所となっています。しかしそこを訪れる良識のない親子が競って蝶を捕まえてしまうため、開館後数時間で何百といる蝶の羽がボロボロにされて、撮影にならない、という事をつぶやき16で書きました。
先日、久しぶりにパピヨンドームを訪れました。その日は会社の変則休日。平日の月曜日が休日だったので、親子連れも殆ど来ることも無く、誰にも邪魔されない撮影が出来ると思ったからです。朝、パピヨンドームのそばの駐車場に着いてみると、私のクルマ以外誰もいません。大芝生広場にも人影がなく、パピヨンドームでもその日初めての入館者となりました。「やった!今日は貸切りで撮影に専念できる!」とつぶやいたのは言うまでもありません。
しかし、ドームに入ると私は愕然としてしまいました。何百という蝶の殆どすべての羽がボロボロなのです。草影をふと見ると、羽をボロボロにされて飛べなくなって死んでいった蝶の残骸も多数散見されました。これでは撮影になりません。単に被写体になる蝶がいないというだけではなく、その残酷な週末を経て月曜日まで生き延びた蝶たちを見ていると、悲しくなるからです。
このパピヨンドームには、オオゴマダラ、リュウキュウアサギマダラ、ツバムラサキマダラ、コノハチョウなど、本州にはいない蝶が多数飛んでいます。以前テレビで観たのですが、このドームで飼う蝶を確保すべく、スタッフが沖縄まで行って蝶を捕獲し、それをドームで養殖しているのだそうです。実際に壁面のガラスケースの中にはオオゴマダラのサナギが数十も陳列されて養殖されていました。しかし何のためにこんな事をしているのでしょう?確かに子供たちに虫達との接点を作るというのは良いことです。私だって子供の頃は虫を捕まえて遊びました。しかし、だからといって、沖縄にしかいないような貴重な蝶を捕まえて広島に連れてきて、そこで良識の欠如した親子の獲物にさせる事に意味があるのでしょうか?オオゴマダラを初め沖縄から連れてこられてドームで飼われている蝶は大型で動きが鈍く、子供たちの捕獲動作から逃げることが出来ません。それだけではなく、動きの非常に早いはずのアゲハチョウまでが、全部羽をやられていたのを見るに至っては、週末の捕獲合戦の凄さに驚くばかりです。
ここはまるで蝶のアウシュビッツ収容所みたいです。強制連行されて、捕獲ゲームの獲物にされ、それで死ぬか、ボロボロにされながら生き延びるか...
蝶を撮るなら週末前の金曜日か?...などと呑気なことを最初のうちは考えていましたが、やがてそんな問題ではなく、写真など撮れなくても良いから、このドームを閉鎖しろ!と思うようになってきました。あるいは蝶と人間の空間をガラスなどで分けて隔てるべきです。最近の親どもには常識が欠如しているようですから。
パピヨンドーム入口には、昨年まで無かった貼紙がありました。
「虫とり網などの、昆虫捕獲用具をお持ちの方は、受付にお預けください」
とうとうパピヨンドームに虫捕りにくるバカモノまで現れたようです...
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羽をもがれて、ミズバショウに休む蝶
実はこの写真、パピヨンドームの悲惨さをお伝えするために写したのではありません。この蝶は羽が綺麗だと思い、作品として撮影したのです。しかし、後でポジをルーペで見ると、四枚あるはずの羽の一枚はもがれて無くなり、残りの羽もボロボロでした。
羽の綺麗な蝶だ!と思って撮影した蝶がこんな状態なのです。それ以外の蝶は、遠目に見るだけで羽がボロボロなのです。触覚をもがれた蝶も多数いました。如何に週末の親子連れの捕獲合戦が蝶にとって惨劇なのか、お分かりいただけますでしょうか?
EOS3, Tamron SP-AF90mm F2.8 Macro, F2.8, AE(+0.3EV,
1/320sec.), RVP
広島市森林公園・昆虫館にて2001年7月9日撮影。 |
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