9月21日の朝のNHKニュースで、「君田村の藤兼地区で、蕎麦の花が満開になりました」との話題が取り上げられました。君田村・藤兼地区といえばつぶやきvol.94でご紹介したように、ヒマワリの花の中国地方屈指の名所です。そのヒマワリの満開からわずか2ケ月弱で、今度は蕎麦の花の満開のニュースです。「花の栽培が好きな農村なんだなぁ〜」と関心しつつニュースを聞いていると「蕎麦を植えたら上手く育った。今後どう活用するか検討してゆきたい」との農家の人のコメントが紹介されました。そして画面には一面に広がる白い花畑が映し出されていました。どうやら蕎麦の花を大規模に植えたのは今年が始めての様です。
9月23日、私は君田村に近い庄原市で早朝のコスモスを撮影し、その帰り道に寄ってみました。
つぶやきvol.94と重複になりますが、君田村をご紹介しておきましょう。広島県三次市の北に位置する双三群君田村。三次市内から県道39号をクルマで北上すれば10分ほどで到着します。標識が完備しているので、迷うことはありません。話題の藤兼地区は峠を越えて直ぐのところに位置する、君田村最南端の地域です。(2005年4月に三次市に合併されて、現在は「広島県三次市君田町藤兼」に変わっています)
私は庄原から山間部を縫って君田村の北側から村に入りました。途中、つぶやきvol.94で紹介した、君田村役場の南に位置するヒマワリ畑の前を通りましたが、そこには枯れ果てたヒマワリがまだ残されていました。だから藤兼地区の蕎麦の花畑はヒマワリの畑とは異なる場所なのだろうと思いました。しかし現地に到着してみると、なんとあのヒマワリ50万本が満開となっていた広大な畑が、全て満開の蕎麦の花畑に変わっていたのです。満開から満開まで2ケ月弱で完全に入れ替わってしまうとは、蕎麦の短期成長力には驚いてしまいます。
到着が朝の10時すぎだったからでしょうか、休日にもかかわらず誰もいませんでした。農家の方も今回は観光客が来ることを想定していないようで、ヒマワリ撮影の時に使わせてもらった駐車場も蕎麦の花畑になって使えませんでした。ヒマワリのときには営業していた朝市も、営業の気配すらありません。
蕎麦の花の高さは50cmほど。一方の畑は道路から1mぐらい下がった位置にありますので、道路からだと畑の反対側のあぜ道が見えてしまいます。その結果、背丈が2m以上あるヒマワリの場合には畑がどこまでも広がっている感覚がありましたが、蕎麦の花の場合はその感激はありません。拡がりを持った構図で撮影をする場合、背景選択を気をつけないと畑の反対側にある余計な物が写り込んでしまいます。
花を大きく撮影しようとすると、必然的に畑の中に入り込む必要があります。当日は朝10時を回っていて、気温も20度を大幅に超えていたので、既に朝露は無く畑は乾いていました。ヒマワリ撮影の時のような泥だらけになる心配も無く、私は撮影を楽しみました。ヒマワリのときとは異なり、蕎麦の花ではローアングル三脚が活躍します。
蕎麦の花は小さいですが、とても可憐です。構図を上手く作ればとても良い写真が撮れます。私は2時間ほど撮影を楽しみました。その間に来られたのは年配のカメラマン一人と、家族連れが二組だけ。数百万本と思われる蕎麦の花をたったこれだけの人達で味わうのは勿体ないほど、贅沢なひとときを過ごしました。
当日の花の状態は文字どおり満開で、しかも傷んだ花のない絶好の撮影タイミングでした。コスモス、彼岸花に加えて、お彼岸の休日の新たなる楽しみがまた増えました。
追記:10月7日に君田村を再訪しました。藤兼地区には行かず別の蕎麦畑の花を見たのですが、まだ満開状態を保っていました。ただひとつひとつの花の状態を見ると、一つの穂に枯れた花弁と、咲いたばかりの綺麗な花弁が混在していました。マクロ撮影は辛そうですが、広大な蕎麦畑の風景という絵柄ならOKでしょう。蕎麦の花の撮影可能な期間は結構長そうです。
ヒマワリとの対比をすればやや感激は薄い物の、これだけ広大な蕎麦の花畑はやはり中国地方屈指ではないかと思います。今年はそのこけら落としの様な物で、来年以降、新たなる花名所になるでしょう。藤兼地区の農家の方には、駐車場などの整備と、観光キャンペーンをしっかりされる事をご提案しておきましょう。
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藤兼地区の同じ畑の蕎麦の花(9月23日、午前10時30分頃)とヒマワリ(7月29日、午前6時頃)。
花の背丈の違いから、遠景の見え方、拡がり感が異なるのが分かります。それにしても見事な数の花です。この写真に写っている範囲は全体の1/4程度です。これを撮影しているカメラマンの背中側にも畑があります。 |
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