前回つぶやきからの続きです。まだ読まれていない方は先にそちらを読んでください。
SIGMA AF14mm F3.5というレンズについて、私の経験に基づく実践的使用法を語ってみましょう。
下記では幾つかの作例を掲載していますが、ギャラリーの写真へのリンクがありますので、ブラウザの「戻る」ボタンで戻ってください。
●このレンズで「レンズをほぼ水平に向けた」風景撮影というのはあまり向いていないかも知れません。何度かトライしましたが、遠景の主役が小さくなりすぎ、空や地面が無駄なほど画面大半を覆ってしまいます。レンズを水平近くに構えるならレンズ直前に主役を配置して、遠景はあくまで脇役、背景、という撮り方が基本になるようです。 |
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●レンズを下、あるいは上に向けるのなら風景撮影もサマになります。下に向けた場合は、足元の地面から地平線まですべて写し込む事が出来ます。注意すべき点はきっちりパンフォーカスにすることと、自分自身が写らない様にする事でしょう。上に向けた場合は、広大な空の大半を写し込めます。印象的な雲とか夕景なら良い写真が撮れそうですが、太陽光が出目金レンズに入射すると強烈なゴーストが出るので撮りにくいかも知れません。 |
●私がこのレンズで一番多用する被写体は花です。この場合、MFにしてピントリングは最短撮影距離の18cmにセットし、被写体に様々な方向からググググッと寄ります。ピントの合う位置まで寄ってふと目をアイピースから離すと、レンズの目の前に被写体があるのでいつもビックリしていますが、それでもファインダー内の花の大きさはさほど大きいものではありません。その状態で構図を作り
(その際に多少の撮影距離の調整もします) 、撮影します。主役の花にほぼ最短撮影距離まで近づいてしっかりとした大きさに捉えれば、カメラを水平に向けて広大な空と大地を入れる構図もアリです。 |
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●しかし一番のお勧めは地面に寝転び、下から上を見上げるような撮影。これによってもたらされる絵柄は、まるで写真を見る人がアリにでもなったかのような不思議な世界です。この際の注意点は、太陽が出ていない時を選ぶ事と、思い切ったプラス補正をかけることです。広大な空を背景にしたこの構図は極端な露出アンダーになりやすく、また太陽が出ているとどちらを向いていても太陽光が出目金レンズに入射することを避けられません。 |
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●もう一つ面白い構図は、地面にカメラを置いて撮るような超ローアングル。この場合のカメラは水平からやや上向きで、主役にすべき地面に生える小さな花や草をレンズ直前、ほぼ最短撮影距離の位置に配置します。この撮り方だと地面の本来小さな花や草たちがそこそこ大きく写り、背景に50cmぐらいの花や木を配置すると、それらは巨木の様に写ります。これもまた写真を見る人が小さな虫になった様な錯覚に陥る写真です。 |
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●花のやや上から俯瞰的に撮るのは広角の定番構図です。14mmでこの様な撮り方をすれば、あまり大きくない花壇でも広大な花畑の様に見えるかもしれません。注意点は、当然主役にする花には思いきり近づく事、背景となる地面の絵柄が醜くないか、自分自身が写り込まないか、水平線上にある背景に変なものが写り込んでいないかチェックすることです。114度もの画角を持つレンズなので、とにかく色々なものが写り込みます。余計なものを写し込まない様に画面の隅々までチェックが欠かせません。 |
●太陽は天敵です(まるでドラキュラの様なレンズですね(笑))。太陽光が直接出目金レンズにあたる状態では強烈なゴースト&フレアが出ます。レンズを買って初めての撮影のときに太陽に向かって写した写真が右の作例です。太陽とは上手く付き合いましょう。 |
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●ご参考までに、絞り開放での周辺光量をお見せしましょう。これだけ潔く落ちてくれれば、イマジネーション次第では面白い絵造りが出来るかも知れません。この周辺光量の落ちはファインダーでも確認出来ます。
この絞りでは画質も相当に甘いです。 |
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以上の様に、このレンズを使いこなすコツは沢山あり、適当に構えてシャッターを押しても良い写真には恵まれません。しかし、ツボにはまった時の写真は他の焦点距離のレンズでは得られない強烈なものです。
このレンズは既に製造中止ですが、まれに新品店頭在庫を見かけます。EOS/ニコンマウントは売り切れたようですが、2001年10月現在、αマウントなら近所のカメラショップにまだあります。店頭価格は39,800円。中古は希にしかありませんが、有れば2万円台後半から3万円台後半の売価の様です。
このレンズは性能至上主義の人にはお勧めしません。また現在発売されている他の14mmレンズを予算的に買う事の出来る人にもお勧めしません。面倒な撮影方法が嫌いな人にもお勧めしません。他のレンズを買えば、このレンズよりも良い性能を謳歌できるでしょう。欠点を補う為の面倒な撮影制約も少ないかも知れません。しかし現在発売中の14mmレンズはことごとく高く、定価で14〜30万円もします。中古でもタムロンで10万円、キャノンなら20万円近くもします。シグマの新型や出たてのニコンの中古はまだ見た事がありません(シグマはあれば7〜9万円?)。それにこのレンズの描写性能が芳しくないとは言っても、10万円以上するレンズを買ったところで開放から2段ぐらい絞らないと周辺部の光量、画質が不足するのは同じです。だからKENと同じような軽い財布や貧乏な金銭感覚しか持っていない人には事実上選択枝が無いと思います。旧型のシグマ14mmを買うか、14mmの世界を知らずに生きるか(笑)。
我が同士よ!このレンズを見つけたら騙されたと思って買っておこう。そして持てるイマジネーションをフルに活用して作品を作り上げるのだ!(笑) もし駄作しか撮れなかったら、それは貴方のイマジネーションが不足しているからだ。でも心配は要らない。使っているうちにこのレンズは貴方のイマジネーションを鍛えてくれるだろう。
さて、読者の方の中にはリッチな方も多いでしょう。現在発売中の14mmレンズ4本の簡単な比較をしておきましょう。
レンズ名 |
最短撮影距離 |
レンズ前面からの
最短撮影距離* |
価格 |
キャノン EF14mm F2.8L USM |
25cm |
11.5cm |
307,000円 |
ニコン AI AF Nikkor ED14mm F2.8D |
20cm |
7cm |
220,000円 |
タムロン SP AF14mm F2.8 |
20cm |
7cm |
198,000円 |
シグマ AF14mm F2.8 EX HSM |
18cm |
4.5cm |
140,000円 |
*フランジバック45mmとしてレンズ全長カタログ値から逆算
これらはいずれも開放値F2.8を持ち、レンズガイドブックによればどれも横並びの画質を持つようです。だとすれば決め手は最短撮影距離でしょう。その点でシグマとタムロンとニコンは優れていて、キャノンはかなり劣ります。シグマと比較すればレンズ面からの距離は2.5倍も違います。少なくとも私の撮影スタイルでキャノンは役に立ちません。
最も安価なシグマの最大の欠点は太陽光が出目金レンズに入射したときの強烈なゴーストで、これは新型でも多分残っているでしょう。タムロン/ニコンの14mmは試した事が有りませんが、無責任な一般論で言えば、タムロンはシグマよりもフレア、ゴーストには気を使うメーカーです。ニコンは逆光に一番強いメーカーです。という事でニコン以外のリッチ派へのお勧めはタムロン、ニコンのリッチ派はニッコールを使え、という事になりますでしょうか?
タムロンの新品同様の中古(中古という名前のメーカー保証の付かない新品)が結構出回っている様で、2001年10月現在、某インターネットカメラショップで99,800円で売られています。ニコンは定価で言えばタムロンとあまり差がありませんが、実売価格となると差が出るので、15万円を下回る事は期待できないでしょう。しかし貧乏性のKENとしては、99,800円でもなかなか勧めがたい価格ではあります(笑)。
格安ボロレンズで、イマジネーションを活用して性能不足を補い、高級レンズに負けない作品を撮る方がカッコイイと思うのはKENだけかな(笑) |