10月7日に朝3時起きで、三次の霧の海撮影に行ったことをつぶやきvol.105に書きましたが、生憎その時は霧が多すぎて自分自身が霧の中に飲まれてしまい、良い光景には恵まれませんでした。それが悔しくて、翌週の日曜日の10月14日にまた同じ場所に出掛けました。前日から当日朝にかけての天気予報は晴れ。霧の出現には好条件です。朝起きたのは3時30分。一週間前には寒さに凍えたので、より保温に優れたものを着込みました。今回は三次駅でトイレを借りず直接現場に向かったので、現地到着は4時50分頃。一週間前とほぼ同じです。
国道から地図に載っていない細い林道を、霧にまみれながら登って行きます。すると霧は益々濃くなって、頂上付近が一番濃い霧という有り様。まだ夜明け前の真っ暗な時間で、しかも月は新月に近い三日月で地平線近くにありました。だから濃い霧の中では何も見えません。一週間前よりも更に霧が多く、条件は最悪です。
私はいずれ霧が晴れることを期待して、頂上付近の道路脇に車を停めて仮眠しながら様子を見守りました。待つこと1時間半、周囲がすっかり明るくなった6時半頃に空の部分の霧が晴れ、太陽と、それに照らされた高層雲が綺麗な姿を現しました。
あいにく朝焼けは既に終わっていて、白い光の競演です。それで私はクルマを降りて、機材を持って撮影ポイントに行きました。しかし...数カット撮影したところで、また濃い霧に包まれてしまいました。
また霧が晴れるのを撮影ポイントでじっと待っていました。やがて一台の軽自動車が通りかかったので、道を譲るべく私は機材を持って道路の脇に退きました。すると軽自動車が止まって、窓を開けました。載っていたのはお年を召した女性の方で、髪は既に白くなられていました。その方が私に声をかけてくれました。
「コンテストか何かに応募されるのですか?」
「いいえ」
「では、趣味で写真を撮られているの?」
「ええ」
「今日はダメですね」
「そうですね」
「良い日には、霧がず〜っと(遠方まで)見えましてね、
丁度そこ(霧の上)から朝日が顔を出すんですよ。
私も2〜3枚撮った事がありましてね」
「へぇ〜」
「ええ、とても綺麗ですのよ」
「実は先週もここに来たのですが、霧が多過ぎてダメだったんです」
「やっぱりここよりも高谷山に行った方が良いのでしょうか?」
「私は高谷山には行ったことがありませんの」
「あ、そうなんですか」
「ええ、写真はね、いつもここからです」
「そうなんですか。どんな日が、霧の条件が良くなるのですか?」
「え〜っとですね、天気の悪くなる前、これから天気が悪くなるという
時で、朝の天気は良い日」
「その時にはですね、霧が低く出るんです。するととても綺麗に見えますよ。」
「そうですか。それでは次回は天気予報をよく見てから来ることにしましょう」
「ありがとうございました」
「どういたしまして。ご苦労さまです」
一週間前に軽自動車で通りかかった男性も声をかけてくれましたが、この日に軽自動車で通りかかった女性も声をかけてくれました。皆さん霧の写真を撮られた経験があるようで、撮影している私に親近感を感じてもらえたようです。私の撮影場所は地元の極く一部の人しか知らないスポットなので、余計に親近感が生まれるのでしょう。一週間前の男性も、この日の女性も、日の出の時刻に近い時間帯にクルマで移動されていました。多分お仕事なのだと思います。通勤時間帯に霧の海の日の出という絶景が見れるのですから、カメラ持参で撮影するのは当然でしょうか?この場所に現地の状況もわからずに70km以上も彼方からクルマでやってくる私には羨ましい限りです。
この女性のおかげで、朝霧の過ぎたるは及ばざるがごとし、という事を学びました。朝霧の出現する条件が良すぎると、霧が多くなりすぎて、山の上まですっぽり覆われてしまいます。次回は少し条件の悪い、天気が下り坂に向かっている様な朝に撮影に来ることにしましょう。
さて、軽自動車の女性が去って暫く待ってみましたが、霧の晴れる気配がありません。それでまた私は、機材を撤収しクルマに戻りました。一週間前はまだ霧のあるうちに下界の景色を撮ろうと思い、7時過ぎには下山しましたが、今回は霧の晴れるのを待つことにしました。山の上の霧が晴れても、谷の方には霧が残っていて、きっと綺麗な景色を見ることが出来ると思ったのです。しかし.....
クルマの中で仮眠しながら、いつまで待っても霧が晴れません。9時を過ぎても辺りは真っ白です。私は少しクルマで移動して霧の様子を見てみました。クルマで暫く走ると霧が晴れました。それでは!とUターンして元の場所に戻ると、相変わらずの濃霧で真っ白。何も見えません。9時半を過ぎて、私はあきらめて下山しました。すると下界は霧がすっかり晴れていました。そして麓から見える景色は、山の頂上付近がすっぽり霧で覆われた姿だったのです。まるで霧は私がいた場所を狙い撃ちするように、最後までそこに留まっていたのでした。
霧は気まぐれ
朝霧には苦労する
朝霧を相手にすると、早起きは徳ならず...
などなど、色々な言葉が私の脳裏を交錯しました。骨折り損のくたびれ儲けとはこの事....でも、山の上での地元の人との会話は、この不毛な朝の中にあってとても貴重な栄養剤でした。
今度こそ、霧の海から登る朝日を撮るぞ!
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