我が家ではニッケル水素電池が大活躍しています。2001年12月現在、単三が12本、単四が4本フル稼動しています。この電池を使い出すとニッカド電池やアルカリ電池を使う気がしなくなりますよ。とりわけ単三電池/単四電池を用いるデジタルカメラへのニッケル水素電池使用は必須でしょう。しかし、使用上の注意点や欠点もありますので、それらをまとめて書いてみようと思います。
(ここでお勧めするニッケル水素電池に、機種専用のニッケル水素パックは含みません)
1.電池の種類と規格
まず電池の公称電圧、公称容量などを簡単におさらいしましょう。いずれも単三電池のものです。
電池の種類 |
公称電圧 |
公称容量 |
ニッケル水素(新タイプ) |
1.2V |
1600mAh (1500-1700mAh) |
ニッケル水素(旧タイプ) |
1.2V |
1300mAh (1300-1350mAh) |
ニッカド、ハイパワータイプ |
1.2V |
1000mAh(前後) |
ニッカド、従来タイプ |
1.2V |
700mAh(前後) |
アルカリ電池 |
1.5V |
ほぼニッケル水素新タイプと同等(注) |
参考)単四型ニッケル水素電池(新タイプ)の定格容量は700mAh前後です。
(注、アルカリ電池の定格容量を公表しているメーカーが無いけど、様々なテスト記事から推測するとほぼニッケル水素同等か、やや上回る様です)
ニッケル水素、ニッカド(ニッケルカドミウム)ともに、大容量タイプと低容量タイプがあります。買うならもちろんニッケル水素電池の大容量タイプ(新タイプ)です。現在市場に出回っているものは殆どが大容量タイプです。ただちょっと前の製品には低容量タイプの電池があり購入する時には注意が必要です。
充電器にも電池同様に複数の種類があります。ニッカド用の充電器はニッケル水素電池に対応していませんが(充電終止電圧が異なります)、ニッケル水素充電器の方はニッカド電池にも対応しています(上位互換になっている)。次に、同じニッケル水素用の充電器でも、旧タイプの1300mAh対応の物と、最新の1600mAhクラス対応の物があります。前者では最近の大容量タイプの電池に対応出来ない可能性があるので要注意です。
希にそのメーカーの電池しか充電できないものもあるようです。私のパナソニック製のポータブルCDプレーヤーはニッケル水素電池充電機能を内蔵していますが、予備電池として三菱のニッケル水素電池を買って充電しようとしたら受け付けませんでした(充電電池と認識せず、充電しない)。ですから、同一メーカーの電池&充電器で揃えると安心かもしれません。ただこれは稀なケースの様で、私は富士通の充電器でフジ、三菱、パナソニックの電池を充電していますが問題は発生していません。
最初に買うなら、ニッケル水素単三乾電池4本と、充電器がセットになった物がお勧めです。確認事項は、電池の公称容量が新タイプであること(1600mAh以上)と、充電器が単三、単四両方に対応しているかどうかです。それから急速充電タイプの方が使用上は便利です。価格は全部で3000〜5000円ぐらいでしょう。電池のみなら単三2本で800円ぐらいです。
(2003.2.1追記)単三ニッケル水素電池に2000〜2100mAhクラスの大容量タイプが増えつつあります。この容量であればアルカリ単三電池を上回るかも知れません。充電器は従来の物ではなく最新の2000〜2100mAh対応の物を用いる必要があるようです。(その様に電池のパッケージには書いてあります(真偽は不明)。)
2000〜2100mAh対応充電器と単三電池4本セットで4000円前後です。
(2004.8.1追記)最高容量のニッケル水素電池は、単三で2500mAhまで来ました。
2.アルカリ電池と原則互換性があり、大容量で経済的。デジタルカメラには必須。
ニッケル水素電池は繰り返し(500回以上)充放電が出来て、ニッカド電池の1.5〜2倍の容量を持ちます。アルカリ電池と比べても遜色ありません。それでいて価格はニッカド電池と大差ありません(ちょっとだけ高いですが)。一部の特別な用途を除いてもはやニッカド電池の使命は終わったと言っても過言では無いでしょう。使い古しの電池も発生しないので、アルカリと比べると資源/環境保護にも役立ちます。
ニッケル水素電池の公称電圧は1.2Vで、一般的なマンガン電池、アルカリ電池の1.5Vよりも低くなっています。しかしカメラ関係の電子機材なら殆どの場合に問題なく使えます。もしその機材がニッカド電池に対応していれば、放電電圧、放電特性共にニッケル水素と殆ど同じですから、全く問題ありません(但し、充電機能を内蔵していたとしても、充電は出来ません)。
何故1.5Vのアルカリ電池と1.2Vのニッケル水素/ニッカド電池で互換性があるのでしょう。その訳は放電特性にあります(下記グラフを参照)。アルカリ電池の放電電圧の初期値は1.5Vですが、放電開始と共に電圧が降下し、多くのケースにおいてニッケル水素よりも低い電圧(1.2V以下)でしか放電していません。一方のニッケル水素電池/ニッカド電池は初期値1.4Vで、放電時はほぼ1.2Vで安定しています。つまり実際の動作時において両者は大差無い電圧で放電し、かつ電圧変動という点ではアルカリ電池の方が大きいのです。だからアルカリ電池で対応できる機材はニッケル水素電池も殆どの対応できる事になります。
(2004.8.1追記)ニッケル水素電池、ニッカド電池は内部抵抗がアルカリ電池よりも小さいために、内部で高電圧を作り出すDC/DCコンバーターが余裕のないギリギリの設計がなされた機材だと、大電流が流れて機材故障の原因になる事があるようです。ストロボ、携帯蛍光灯/ライトボックスなどで「アルカリ乾電池以外を使わないように」「充電式乾電池を使わないでください」と明記してある物には用いないでください。有名なヒカル小町の初期型などには使えないようです。また私の使っているハクバのライトボックスもアルカリ乾電池以外は使用禁止の注意書きがありました。一方、DC/DCコンバーターを用いた機材でもニッカド電池に対応していればニッケル水素電池の使用は問題有りません。
もう一つのニッケル水素電池のメリットとして、内部抵抗が低い、という事があります。これは何かというと、大電流を取り出したときの電圧降下が少ないという事です。大電流を要求するストロボ、デジタルカメラなどの機材には動作準備完了までの時間が短くて済むというメリットが生まれます。
アルカリとニッケル水素の公称容量はほぼ同じですが、特にデジタルカメラの場合には両者の実用容量の間には天と地の差があります。アルカリ電池が使用可能なデジカメを持っている人なら、それは実感としてお持ちでしょう。(もしその様なデジタルカメラでアルカリ電池で使いつづけておられる方がいたら、即ニッケル水素電池に切り替えましょう。)それについて簡単に説明しておきます。
アルカリ電池をデジタルカメラで使った場合に直ぐに電池切れになるのは、アルカリ電池の放電特性によるものです。多くのデジタルカメラは1.1Vよりも少し高いところに動作限界電圧があります。しかし放電と共に電圧降下するアルカリ電池は容量をたいして使わないうちにこの動作限界電圧を下回ってしまいます。また、電池の静放電電圧がカメラの動作限界電圧を上回っていたとしても、内部抵抗が高いのでデジタルカメラが撮影時/画像保存時などで大電流を要求したときに電圧降下が発生し、動作限界電圧を下回るため電池切れと判断されてしまうのです。だから実際には殆ど容量を使っていないのに、アルカリ電池はデジタルカメラに「電池切れ」として見捨てられてしまうのです。
ついでに言えば何故デジタルカメラでマンガン電池が使えないか、それはアルカリ電池以上に内部抵抗が大きく、放電特性に劣るマンガン電池では、新品時から大電流要求時にカメラの動作限界電圧を保つ事が出来ないか、出来たとしても非常に少ない枚数しか撮れないからです。
一方で容量末期まで電圧が1.2Vで安定し、内部抵抗も低いニッケル水素電池なら、ほぼ全ての容量を使い切るまでデジタルカメラは作動します。この差がアルカリ電池とニッケル水素電池の寿命の天地の差となって生まれまるのです。
※デジタルカメラが電池切れと判断したアルカリ電池は、実際にはまだまだ容量は残っており、懐中電灯や携帯ラジオなどの電圧/電流要求がシビアでない機材なら存分に使えますよ!
各電池の放電特性グラフ(イメージ参考図)
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各電池メーカーが公表している放電特性グラフを参考に、私が作った放電特性グラフ。あくまで定性的なイメージを理解するものだと思ってください。定量的には正確でありません。
グラフの見方は、実線がある一定の抵抗負荷で放電をして行くときの時間(つまりは電池残量)と放電電圧の関係です。点線のグラフはデジタルカメラなどが一時的な大電流を要求したときに発生する電圧降下のイメージで、内部抵抗の違い(ニッカドが一番低く、アルカリは高い)を反映しています。オレンジの横線のある1.1Vはデジタルカメラが動作する一般的な限界電圧です。このグラフから、何故アルカリ電池をデジタルカメラに使うとすぐに電池切れになるのか理解できると思います。 |
以上、ニッケル水素電池の特長はご理解頂けたでしょうか。次回つぶやきではニッケル水素電池の使用上の注意などを書いてみます。両方お読みになってから使用を検討下さい。
続く
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