シグマのAF APO 70-200mm F2.8 EX HSM専用と銘打って発売されたAPO
TELE CONVERTER 1.4x EX。このテレコンは、AF APO 70-200mm F2.8 EX HSM、及びAF
APO 300mm F2.8 EX HSMには専用設計として対応し、装着すると絞り表示の自動補正のみならず、AFスピードが落ちないという特長があります。またAF
APO Macro180mm F3.5 EX HSMに装着すると、絞り表示の自動補正に加えて、1.2mを境とするAF作動範囲の自動制限が働き、結構使いやすい物になっています。
70-200mm F2.8 EXの新発売時のアサヒカメラ1998年6月号のフルテストでは、ズームレンズ本体の画質の良さに加えて、このAPO
TELE CONVERTER 1.4x EXの画質の良さを絶賛していました。その言葉に釣られて、私はレンズとテレコンを相前後して入手しました。
使ってみると、確かにAFは速く、絞り表示は補正され、解像度的な画質も満足すべきものでした。ボケ味はアサヒカメラの評価とは違って、ちょっとガッカリでしたが...それは半分以上マスターレンズ70-200mm
F2.8 EXの二線ボケ傾向のせいもあります...解像度の良さに気を良くして、70-200mm
F2.8 EXや180mm F3.5 EXのお供によく連れ出していました。所が最近、このテレコンに腹を立てています。それは逆光性能にとんでもなく弱いという事です。それに気づいたのはコスモス撮影の時でした。
ある秋の日、庄原市の車道から、道路脇の小川の対岸の畑に咲いていたコスモスの群落を撮影しました。最初は180mmマクロ単体で撮影しました。コスモスにレンズを向けると、画面外の左上部分には朝の低い太陽が有り、コスモスが逆光の朝霧の中で輝いている、という情景です。もともとレンズ鏡筒内の反射処理がお粗末で、コーティングもニッコールやキャノンLレンズに比べると見劣りするシグマのレンズですから、この様な情景ではコントラスト低下をきたしますが、逆光の霧の輝きに対して多少のフレアはスパイス代わりであまり気になりませんでした。それで何枚か撮影。しかし川を挟んでコスモスまで少し距離があり、180mmでは画面が少し散漫だったので、次に1.4xテレコンを装着しました。そしてまたコスモスにレンズを向けると...ゲッ!...なんと画面右下半分にとてつもなく大きなフレアが発生したのです。それは今から30年前、コニカヘキサノン70-230mm
F4.5というマニュアル絞りのレンズ(注:ARレンズではありません。そしてマルチコーティングの出現する前のレンズです)に、コムラー・テレモアを二段重ねして920mmで撮影したときに見えた、画面半分を覆う盛大なフレアに匹敵します。私はそれ以来、こんな大きなフレアを(つぶやきvol.106で書いたシグマの14mm
F3.5を除いて)見たことがありません。
その日、帰宅してから180mmマクロにテレコンを装着してチェックしました。するとフレアの原因は、テレコンの第一郡レンズの表面で発生する反射のようでした。マスターレンズから入射する光の加減と、お粗末なレンズコーティングにより発生する物の様で、レンズを後ろ側から覗きながらレンズを光源(室内の蛍光灯)に向けると、テレコンレンズの第一面部分が盛大に光ります。加えて、テレコンの一番カメラ側部分の鏡筒内面も光っていました。
テレコンレンズ第一面の反射はマゼンタ色をしています。しかし180mmマクロ単体レンズをマウント側から覗いても、その様なマゼンタ色の強いレンズ面反射は見えません。色はどちらかと言えば青緑系です。レンズ面での反射はゼロでは有りませんが、他のレンズと見比べても「肉眼では」目くじらを立てて非難するほどの差はありません。しかしテレコンレンズの反射はマゼンタ色をした盛大な物で、ちょっと現代のレンズとしては信じ難いレベルにあります。
それから暫くして、霧の海からの日の出撮影に出掛けました。レンズは70-200mm
F2.8 EXです。この時やはり長焦点側の焦点距離が足りず、1.4xテレコンを装着して日の出を撮影しました。しかし結果は悲惨な物でした。画面全体を大きなゴーストが占めて滅多に見れない見事な日の出の一瞬が台無しになってしまいました。70-200mm
F2.8 EX単体でもゴーストは出ますが、これほど酷い事はありません。このゴーストとフレアには撮影時に気づいていたので、それを抑制する為に最小絞りまで絞り込んで撮影しました。しかし絞り面よりも遥かに後方にあるテレコン面での反射によるゴーストは、絞り込みでは小さくならず、結果的には無残なコマを大量生産してしまいました。
日の出、日没撮影の頻度の高い私にとって、このテレコンは許せない、という気持ちになってきました。う〜〜ん、どうしてくれようか、このテレコン....
|
霧が晴れる前の庄原のコスモス。画面左上には太陽があります。180mmマクロ単体で撮影したこの写真は、もちろんニコンの高級レンズで撮影したような抜けの良さはありませんが、しかし朝の雰囲気を出すのに適度な淡いベールの様なフレアで、私には許容範囲です。
EOS3, Sigma AF 180mm F3.5 EX Macro, F5.6, AE(+1EV,
1/100sec.), RVP |
|
1.4x EXテレコンを装着して撮影した、同じ時間、同じ場所のコスモス。画面右下部分に大きなフレアが発生しています。これは全てテレコンに起因するフレアです。このフレアの色が妙に暖色系に寄っているので原因を調べたところ、テレコンレンズの第1面における反射が盛大に発生している為のようでした。この反射像はマゼンタ色をしています。
EOS3, Sigma 180mm F3.5 EX Macro, F5(開放),
AE(+0.3EV, 1/250sec.), x1.4 EX Teleconverter, RVP |
|
三次の霧の日の出を撮影した写真。ファインダー内でもフレアとゴーストが確認出来たので、それを抑制する為に最小絞りのF32まで絞り込みました。しかし主にテレコンを起因とするこのゴーストは、絞り込んでもほとんど小さくなったり、抑制されたりしませんでした。レンズ単体でもゴーストは発生しますが、ここまで酷い事はありません。
EOS3, Sigma AF 70-200mm F2.8 EX, F32, AE(-0.7EV,
0.3sec.), x1.4 EX Teleconverter, E100VS |
|