前回つぶやきからの続きです。今回は第三話..
3. カタログや取説の裏をチェック。必ずある「補修部品の保有期間は...」、これは避ける(避けられるものなら..)
旧・通産省の指導により、耐久消費財の修理、保守に必要な部品はその商品の製造中止後、商品により5〜10年の期間保有することが求められています。昔は製造中止と共に補修部品も持たずサービスを受け付けなかった悪徳業者が多かった故の指導だと思いますが、最近はこれが仇となり、この指導年限以上に補修部品を持っているメーカーはほとんどありません。この年限は家電製品だと概ね6年〜8年で、故障した頃には丁度修理できなくなっているという微妙な設定になっています。
新品購入時の使用期間を10〜20年単位で考える私の場合、これは大きな不満です。そして10年ほど前にオーディオセットを一新した時にはこの事を極めて重視しました。そしてある時雑誌で読んだ...「我が社の製品は初代モデルでも全部メインテナンスできますよ」という言葉につられて、アンプはそのメーカーの製品にしました。アキュフェーズというメーカーです。ラックスマンとかウエスギなども通産省の指導に関係なく半永久サービス体勢を敷いているメーカーだと思います。
一方でソニーのオーディオにはRシリーズという高級品もあるのですが(1ユニットあたり数十万円〜百万円以上のコンポーネントです)、そのカタログの裏にはしっかり通産省の指導が明記されていて「一式百万以上払うお客に対して、何考えてんの???」と思った事があります。松下のテクニクスやパイオニアのエクスクルーシブはその時欲しい商品が無く、カタログチェックしませんでした。
スピーカーの世界ではJBLとタンノイがいつまで経ってもメインテナンス可能なメーカーとして有名で、それ以外の高級海外メーカーも概ね同様だと思います(メーカーが存続していれば)。オーディオでは有りませんが、私の家のリビングに置いてあるチェアは、スウェーデンのinnovator社のもので(但し製造はライセンスを受けた日本の村田合同という会社)、購入してから既に12年が経ちますが、未だに現役で販売されていて、交換用シート表皮を入手することが出来ます。過去一度シート表皮を交換して新品同様に戻った経験があり、そろそろ2回目のシート表皮交換しようかなと考えています。シート表皮は色、素材含めて数十種類から選べるので、新しいチェアを買った気分にもなりますし...純粋な日本製品ではあり得ない事でしょう。欧州メーカーの商品寿命は本当に長いです。
私の買ったCDプレーヤーのメーカー「マイクロ精機」も半永久サービス体勢を敷くメーカーの一つの筈でしたが、CDよりも有名なアナログプレーヤーの修理に関しては、いつしか「技術者が定年退職したので修理できなくなりました」という状態になり、やがてメーカーそのものが消滅してしまいました。半永久サービス体勢を敷く高級品メーカーには、この様なリスクがあるのですね...
(注:マイクロ精機という会社は存在している様ですが、所在地が変わり、オーディオは扱っていないようです)
このように一部の小規模高級メーカー、欧州メーカーの製品なら、メーカーがある限り、また部品の調達(代替え手法を含めて)が可能な限り一般的に修理可能です。その商品は概ね高価ですが、しかし大量生産メーカーの高級品と同等レベルの価格から選ぶことが出来ますので、その様な商品を検討されている方は一度専門メーカーの商品をご覧になっては如何でしょう。
残念ながら、家電製品の場合にこの話は趣味性の強いオーディオに限ったことで、テレビとかビデオ、冷蔵庫や洗濯機などには当てはまりません。
35mm一眼レフカメラについても事実上海外メーカーや小規模ハンドメイド・メーカーが無いに等しいので、この旧・通産省の指導から逃れる事は困難です。補修性能部品の保有期間はアサヒカメラ2002年2月号によれば、初級5年、中級7年、高級10年とのこと。これからすると、短いサイクルでモデルチェンジされて、その後5年しか補修部品の無いエントリーモデルよりも、8年ぐらい作られてその後10年補修部品のある上級機の方が、長く使うという点では良いかもしれません。一般的なカメラの修理費は一回1〜2万円ぐらいしますから、価格と修理費のバランスでも、上級機は長く使うのに相応しいといえるでしょう。
家電製品なら必ずカタログの裏にあるこの「補修性能部品の保有期間」ですが、カメラのカタログには全く記載がありません(キャノン、ニコン、ペンタックス、ミノルタのカタログをチェック)。これでは購入前にどれぐらい長期にわたって修理が利くのか分かりませんね。キャノンの場合は取扱説明書にこの記載が有って、EOS630、EOS100、EOS55、EOS-1N、EOS-3は補修性能部品の保有期間10年と書いてありました。キャノンの中級一眼レフ以上は一律10年です。この基準は各メーカーごとに異なると思います。
大判カメラとなると状況は一変します。タチハラのホームページには
「十分に自然乾燥された無垢の木と僅かな金具でできた木製カメラは数十年経っても修理できますので安心して使えます。不具合については、お気軽に相談してください。」
と書かれています。これぞ私の求めるメーカーの姿です。この一文がある故に、私は「大判、買うならタチハラ」と決めかけていたのです。長く使うという点において、大判カメラほど相応しいものは無いでしょう。但し、この様なカメラは人生を共にしますので、製造している匠の人のご健康や、後継者の事も気になります。ディアドルフという良きカメラがかつてありましたが、いつの間にか無くなってしまいましたし...「立原さん、いつまでも元気でいてください!」
後日談:トヨフィールド45Aの中古が出現したので購入しました。45Aは1974年に発売され、1992年に新型に変わったモデルですので、少なくとも10年以上使われた中古です。しかしトヨの製品も寿命が長く、現行モデルとの部品の互換性があるので、メーカーがある限り使い続けられそうです。
海外のカメラ、中判ならハッセルブラッドとか、35mmのライカなどなら、通産省の指導を気にせずいつまでも使い続けられるかも知れません。この点で私は経験や知識が無いので、もし長く使いたいという理由で海外メーカーの製品を検討されるなら、経験者に聞いてみてください。
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