暫く前から、アオリのできる大判カメラ、特に可搬性に優れたフィールドカメラへの興味が湧きました。
ここに至る経緯は長くて、そもそもの発端は中判カメラへの興味です。35mmよりも大きなフィルムへの興味というのは、恐らく35mm一眼レフを持っている人なら一度はかかる流行疾患のような物でしょう(笑)。私もそうでしたが、流行疾患にかかる度に「理性」という名前の薬を飲んで、その危機を乗り越えてきました(笑)。中判カメラを買ったところで、そのポジフィルムをスキャニング出来るフィルムスキャナは目が飛び出るほど高く、中判カメラが2セットぐらい買えてしまうからです。今日のように透過原稿ユニット付きの1600DPIフラットベッドスキャナが安価に買える様になる前の、今から2〜3年ぐらい前の事です。
とは言う物の、一度とても危うかったことがありました。ペンタックス645に、45mmと75mmを付けて11万円という物件が出たからです。当時の相場からすれば、ボディ単体の価格、あるいはひいき目に見ても標準レンズ付きの価格で広角レンズまで付いてきました。表示値はもっと高かったのですが、例によってT町のT口さんの強烈な価格アタックで、KENは一瞬めまいがして、ポケットからクレジットカードを出そうとしていまいました(笑)。追い討ちをかけるようなM氏の強烈なアオリ...(^^;;;
この時はいつもの「理性」に「熟考」や「沈着冷静」など漢方の薬を処方して加えて、人生最大の危機を乗り越えました。その時に私が考えたことは...
私が撮影する被写体はマクロが殆ど。マクロ撮影をする場合に大きなフォーマットは決定的に不利ではないか。645だとフィルム面積が35mmの3倍(正確には2.7倍)あるので、35mmで等倍撮影したときの絵柄は、645だと3倍の拡大撮影をしなければ得られない。そんな倍率で撮影できるマクロレンズなど、ベローズのお世話にならないと無いし、そもそも3倍の撮影など難しくて出来る物か...それに35mm換算で1/3倍の撮影しか出来ない645用の等倍マクロは高いぞぉ!
それでも迷っていた私が最後に踏みとどまった理由は
「KENはカメラに一度に6桁のお金は払わない!」
でした(笑)。私が今まで払った最高額は、EOSー1N
DPの中古を購入したときで、税込み86000円です。まあ、ボディやレンズを分割して買えば関係ないことですが...これが貧乏性というもう一つの(良き)病気です(笑)。
その後、フジのGA645の魅力にも多少とりつかれました。今はまた相場が上がり気味ですが、一時3万円台前半で買えるような所まで値下がりし、この値段でAF645なら..と思ったのです。しかしGA645は35mmカメラに例えれば画質の良いAFコンパクトカメラ。私もコンパクトカメラは持っていますが、全く使うことがありません。「35mmでさえ使わないのに、何故645がいるのだ??」という自問自答でGA645も買わずに済みました。
しかし、フィールドカメラへの興味は最後まで抵抗出来ませんでした。友人の一人にホースマンVHを使ってプロ並みの素晴らしい作品を沢山残している人がいます。その撮影現場を見たことが有り、収納時のボディ、レンズのコンパクトさ、全くオート化されていない事による、撮影手順(儀式と言うべきかな)の厳かさ。それらはみな傍目に「カッコいい!」し、下手な中判を買うよりも「合理的」と思えたのです。一方の悪友(もとい、親友)M氏は4x5のフィールドカメラ「タチハラ・フィルスタンド」を持っているし、例によって彼は私に「馬人間(ホースマンのこと)ならアオリが出来るぞ!」とアオルし...(^^;;;
アオリは経験したことのない世界です。ビューカメラの冠布を被る厳かな撮影儀式も経験したことのない世界です。簡易アオリだけならEOSにはTSーEレンズ群がありますが、これを買うと中古でも10万円前後します。10万円あればフルにアオリの出来る中古のホースマンVHがレンズ付きで買えてしまいます。
う〜〜〜ん(^^;
この時点で「買うならフィールドカメラ」と決めた気がします。問題は、買うか、買わぬか、でした。
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中判かうなら、あおりの出来るホースマンVHかな...と思い初めた頃、某インターネットショップにホースマンVHとレンズの中古が出ました。その店に連絡すると、インターネットには掲載していないけど、ロールフィルムバックが二つある事も判明しました。VH、レンズが65mmと105mm、ロールフィルムバック二つ、この合計額が幾らになるか...T町と相談しました。T町扱い商品ではない為にはっきりとした金額は出せませんでしたが、10万円を切るはずもなく、「KENはカメラに一度に6桁のお金は払わない!」というポリシーに引っ掛かって、暫く悩んでいました。するとその物件は売れてしまい、縁(円)が無かったのだ...と諦めました(^^;
某カメラショップのアウトレットコーナーに赴いたときの事です。そこには新品展示品のホースマンVHと、ホースマン45HDが並べて置いてありました。レンズ付きのセット販売のこの二台、価格は2万円ほどしか違わず、大きさ重さも殆ど変わりません。
VH 157x160x97mm 1.7kg
45HD 172x157x94mm 1.7kg
それでいて、4x5カメラの方はロールフィルムホルダーを別途追加すればVH同様に6x7や6x9撮影も出来てしまいます。この時点で6x9フィールドカメラへの興味が一気に薄れました。
注)フィールドカメラに関して全く無知なKENは、この時点で45HDには後部アオリが付いておらず、風景などでの撮影時のアオリに困り、またフランジバック寸法が不足することがあるという事を知りませんでした。後部アオリのある45FAを買うと高い物になります。45FAとVHの比較なら、価格差、重量差を含めて十二分にVHの存在意義があると今でも思います。
KENは4x5カメラの情報を熱心に集め出しました。例のM氏は「アオルならモノレール」と更にアオリを入れてきますが、モノレールは初めて大判カメラを持つ身には大きすぎ、重すぎるのでパス。軽量コンパクトなフィールドカメラを探しました。それで東京出張の日に寸暇を惜しんで中古ショップを歩いてみましたが、あるのは旧型ホースマンとか、名前を聞いたことのない得体の知れないカメラとか、とても高いリンホフばかり。私の琴線を弾く物件がありません。
本やインターネットで調べてみると、タチハラとかトヨとか言う名前が出てきました。これらのメーカーのフィールドカメラは「もし中古が有れば」ホースマンよりも安く入手できる様です。(タチハラの)ボディを3万で入手したとか、レンズ込みで4.5万で入手したとか言うコメントがインターネット上にはありました。しかし、幾ら根気よく探しても、タチハラとかトヨフィールドの中古はありません。某インターネットショップにトヨビュー45G+150mmレンズが59800円で出ましたが、文字どおり瞬きしている間に売れました(ホンの数分でした)。これはモノレールだったので私の検討対象外ですが、しかしこの時に安価なトヨやタチハラの中古物件の足の速さに強く印象づけられたのです。「こりゃ、中古は期待薄かな?出物があっても数分で売れてしまうし...」
私は中古を諦めて、タチハラの新品を買おうかな?と思い始めてました。新型となったタチハラ・フィルスタンド4521の新品価格は10万円を僅かに越えますが、そんなレベルです。中古のホースマンVHの一般的な相場と大差ありません。
しかし、あくまで本命は中古です。わずかとは言え6桁の価格になる新品タチハラはKENのポリシーに反する事もありますが(笑)、大判カメラのような周辺機材を沢山必要とするシステムは、一式手放す人から(カメラショップを経由してでも)入手しないと周辺機材の中古が手に入らず、これらを別途買うとなると、思わぬ高い買い物になるからです。
新品を買うにせよ、中古を待つにせよ、取り敢えず勉強をしておこうと思い、本を一冊購入して読み始めました。大判入門者のバイブルとも言える本「写真工業・大判写真入門、玉田勇著」です。その本を読み終えた御利益でしょうか...転機が訪れました。
続く
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