前回つぶやきからの続きです。
今回の本題に入る前にちょっと補足。前回のつぶやきを読まれて大判カメラの呼び方で戸惑った方もおられると思うので、ここに簡単に整理しておきます。非常に大雑把な分類ですので、例外も沢山あります。ご容赦。カメラの具体的な形などはトヨビューのHPをご覧ください。 |
ビューカメラ
冠布を被りながらピントグラスを直接見て構図を決め、撮影するカメラ。中判、大判それぞれにあります。多少の例外もありますが、殆どのカメラが「蛇腹」を持っています。
概ねモノレール型とフィールド型の二つに分類できます。 |
モノレール型カメラ
一本の長いレール(モノレール)の上に二つの垂直に立った枠(フレーム)が乗り、その間を蛇腹で連結したカメラ。主にスタジオで使われます。大判カメラとしての性能は最高ですが、一般的に大きくて重いです。 |
フィールド型カメラ
折り畳むと御弁当箱の様な形になる、持ち運び性に優れたカメラ。御弁当箱のフタにあたる部分を90度開くと、そこがレール代わりの「ベッド」と呼ばれる部分になり(カメラ使用時には底になります)、御弁当箱の本体の部分がフィルムを取り付けるカメラバックになります。御弁当箱の中からレンズを取り付ける前枠と、蛇腹が出てきて、撮影できる状態になります。収納性と軽量化を重視しているので、蛇腹の長さやアオリの量、調整精度などに妥協があります。主に屋外撮影で使われるので「フィールドタイプ」と呼ばれます。 |
さて、ここからが今回の本題です...
新品のタチハラを買うか、中古の出物を待つか..と悩みながら、大判写真入門という本で勉強を始めていたとある日曜日、私はかつてEOS100ジャンクなど、過去数多くの「転機」を買ったキタ○ラ○園店に行きました。思い返せばここは「良い中古レンズを買うためのおまじない(vol.21)」でレンズを買った店でもあります。そこには珍しい物が有りました。「フジ・クイックロードホルダー、Aランク、元箱付き」。私はしばらくそのホルダーを眺めていました。やがて、かつて○けぼの店でEOS3ジャンクを私に売り、その後こちらの店に異動となった店長Nさんがやってきたので、ショーケースの鍵を開けてもらってクイックロードホルダーを見せてもらいました。
「KENさん、買ってくださいよ。安くするから〜」
「え、本当...ん〜..、それじゃ店長を信用するかぁ...」
と、二人はクイックロードホルダーを持ってカウンターへ。Nさんの提示した価格は表示値から2割ちょっと値引きした価格で、税込みでも5000円に達しませんでした。それで私はこのクイックロードホルダーを購入しました。これを使えるカメラを持っていないにも関わらず....
このホルダーは撮影済みスタンプの付いてない初期型ですが、現行型の定価は23500円ですから価格的にさほど悪い買い物では有りません。また、ここで買っておかないと二度と中古では巡り会えないだろうと思いました。まあ、もし使わなければ4x5を持っているMあたりに原価で譲れば良いかなぁ...なぞとつぶやきつつ...
その足で私はT町店に行きました。そしてT口さんにクイックロードの話をすると、笑っていました。しかしこのクイックロードホルダー、Aランク元箱付き、定価の8割引き中古の御利益はすぐに現れました。
翌週再びT町店に行くと、何でもカメラ好きのご主人が、タチハラ、ミノルタα9、ニコンF2及びそのレンズ、付属品などを一式残されて逝去された家があって、全部をT町店に売りに出すかもしれないとのニュースをT口さんが私に告げました。私はこの「渡りに船」に思わず...
「タチハラ一式、引き取ります」
と告げたのです(^^;;;
しかし、その数日後の事です。某インターネットショップに、中古としては幻の物件と言っても良いトヨフィールド45A、ABランクが5万円台で出たのです。こちらは金属ダイキャストボディのフィールドカメラで、タチハラに比べると少々重い物の、剛性感など実際の使用では有利な面もあります。ピントフードもついていて、畳んだときにピントグラスがむき出しになるタチハラよりも収納に便利でもあります。しかし私は悩みました。タチハラの話もあるし、しかしこの物件は前回の経験からすれば瞬きをしている間に消えるだろうし...
私は瞬きを二回してみました(笑、ブラウザの更新ボタンを押したのです)。でもトヨフィールドはまだそこにありました。それで「え〜〜ぃ!」とばかりに注文したのです(^^;。
次の週末には、トヨフィールド45AがT町店に届きました。実物をチェックすると、金属部分には殆ど傷が無く、また全ての可動部はガタも無くスムーズに動き、しっかりしてました。蛇腹にも問題はありません。ピントグラスには僅かな擦り傷がありましたが、全体的に見て程度の良い物でした。45Aは1974年に発売され、1992年まで製造されたので、少なくとも10年、最長28年前の中古という事になります。そんな時間を微塵も感じさせない、しっかりしたカメラです。ボディ表面の貼り革が少し縮んでいる事だけが、このボディが過ごしてきた時間の長さを囁いている様でした。
カメラの付属品はカットフィルムホルダーが2枚。とても嬉しいことに、そのフィルムホルダーには装填練習用のフィルムが一枚入っていました。フィルム表面には注意書きまで書いてあって、どうやら写真専門学校か何かで使われていたカメラかもしれません。これで取り敢えずクイックロードでも、カットフィルムでも使える体制が整いました。
しかし期待していたリンホフボード用のアダプターレンズボードはありませんでした。トヨフィールドのレンズボードは専用サイズで、このアダプターレンズボードが無いと一般的に使われているリンホフボードのレンズが装着できないのです。別途買うと1万円以上して高いのですが....まあ、本体が5万円台なら仕方ないか...
良い中古レンズに巡り会うなら、良い中古フィルターを先に買うのが鉄則ですが(笑)、良い中古大判カメラに巡り会うなら、良い中古フィルムホルダーを買うのが掟かもしれません(ホントか??)(^^;
-----------さらばEOSー1N-----------
トヨフィールド45Aを受け取るときに、EOSー1Nを持参しました。下取りに出すためです。今まで何度かつぶやきにも書いてきましたが、EOS3をメインカメラとして使っていると、EOSー1Nは何かと使いにくい面があります。別にEOSー1Nが悪いカメラという訳ではなく、アングルファインダーやケーブルレリーズが撮影現場でEOS3と共用出来ないからです(アダプター交換する必要があり、面倒なのです)。また複数のフィルムを同時に使うことも殆どない私は、カメラは普段1台しか持ち歩きません。その結果、銘機EOSー1Nはオートドライのオブジェと化しており、可哀想でなりませんでした。
EOSー1V発売後はEOSー1Nの相場が暴落気味で、現在7万円台前半の「表示値」の程度の悪くないEOSー1Nを見つけることも可能です。下取り値は当然それよりも安く、元箱の無い物件の場合は5万円を切ってしまいます(東京の買い取り専門店に行けばもう少し高いでしょうが、広島在住の私には関係ありません)。委託に出すなどもう少し高く売る手段もありましたが、面倒な事をしたくなかったので、そのままトヨフィールドの下取りに出しました。T町との価格交渉の結果は、トヨフィールドとの差額は無しで、消費税のみ支払うことで売買は円満に成立しました。
そのEOSー1N、T町店長のA澤さんが取り敢えず中古コーナーに展示しようとした時に、一人の女性のお客さんが来ました。現在はEOS5を持っているけど、EOS7が欲しいとのこと。撮影経験が比較的浅いようで、AFのスピードの事をとても気にされています。しかし撮影対象はモータースポーツとかの動きの速いものではなく、スナップ、風景、花などだと言います。A澤さんはEOSー1Nを中古コーナーの前に置いたままその女性に新品のEOS7の説明をしていました。脇でその会話を小耳に挟んだ私は「AFスピードなど関係ないですよ。もっと大切なのはファインダーの見え方です」と、口を挟みました。そしてEOSー1NとEOS7を取り出してマクロを装着して、マニュアルでピント合わせをしてもらいました。その女性はEOSー1Nの良さを認めつつも「でもEOSー1Nは高いから...」と躊躇しましたが、仕入れ値を知っている私はA澤さんを差し置いて「でも、EOS7の新品買うつもりなら、大差無いです!」と言い切ってしまいました(笑)。だめ押しに「このカメラは私のです。いま下取りに出したのですよ。」と告げて、その場を離れました。
A澤さんは私に聞えないように価格を説明していましたが「EOS7よりちょっとだけ...」という言葉が聞えましたので、そんなレベルの価格を提示したようです(後で『幾らで売ったの?』という私とT口さんの質問には決して答えてはくれませんでした(笑))。結果は商談成立で、EOSー1Nはショーケースに収まる間もなく新しいオーナーの下に嫁ぐことになりました。A澤さんは「まさか売れるは思わなかったけど、KENさんの言葉が効いた。『私のカメラです』という言葉で決まりました。オーナーの顔が見える事が良かったんでしょう」と。
その女性は帰りがけに私に「大切に使わせていただきます」と言葉を残して帰宅されました。また翌週にも「良いカメラを譲っていただいて、ありがとうございました」とのメッセージがA澤さん経由で届きました。実に気分の良いカメラ売却です。EOSー1Nもオートドライのオブジェよりも、メインカメラとして可愛がられる方が本望でしょう。T町はわずか十数分で、?万円の純益を挙げることが出来ました。みんな良かったね〜。
漆黒のEOSー1Nが去り、手元にはその数倍の大きさの漆黒のトヨフィールド45Aが来ました。一日一回は触っていますが、総金属ボディのガタの無い精緻なメカニズムは、男心をくすぐります(笑)。消費税のみの支払いで交換できましたので、極めて満足度が高いです。私にとっても良い買い物でした。
続く
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