お子さんの運動会の撮影なら、このレンズと、同じシグマの50-500mmレンズはかなり無敵な部類に入るレンズだと思います。高感度ネガフィルムを詰めて、晴天下で撮影すれば開放でシャッタースピードが1/500秒以上に達しますので、多少華奢な三脚や一脚でも十分にシャープな映像が得られます。団体競技などで校庭の反対側にいるお子さんをアップで捉えることが出来るレンズで、しかもズームですからお子さんが動いてカメラマンとの距離が変わっても即座に対応出来ます。長焦点と機動力を活かせば、運動会では単焦点白レンズ恐るに足らず。サンニッパやヨンニッパ、ゴーヨンゴよりも良い構図の写真が沢山撮れるレンズです。ペンタックスFA250-600mm
F5.6 ED(130万円!)だけはこのレンズよりも上かも知れませんが、こんな長玉を運動会で振り回したら危険でしょう(笑)。 |
という前置きをしておいて、ここからは運動会のことは忘れ、ネイチャー写真をリバーサルフィルムで撮影することを前提につぶやきを書いて行きます。
私にとってかなり使用頻度の高いレンズです。日の出、日没撮影には必ず持ち出しますし、それ以外にも風景撮影にはよく使います。最長500mmというズームレンズで、x1.4テレコンをつければ700mm撮影も出来るので、自然の中から一部分だけを切り取りたい場合には無敵のレンズです。但し、使いこなしはかなり難しく、直感的には遥かに巨大な500mm
F4.5レンズよりも難しいと思います。焦点距離とその大きさの割に安価なレンズなのでかなり売れていると思われますが、ネイチャー写真では恐らくまともに使いこなせている方は殆どおられないでしょう。MP-E65mm
F2.8 Macrophoto x1-5ほどでは無いにせよ、ジャジャ馬レンズです。
しかしごく普通のサラリーマンが買える(買うことの許される(^^; )価格の中では唯一500mmをカバーし、絞りの付いているAFレンズですから、使いこなせる人にはオススメのレンズです。現在中古なら3万円台から見つける事が出来ます。このレンズをGETして、今回のつぶやきに書いた使い方を参考にされて、安価に得られる超望遠の世界を体験してみてください。
1 スペック、操作性など
まず、カタログに記載されているスペックの確認をしておきましょう。
正式名称; SIGMA AF APO 170-500mm
F5-6.3 ASPHERICAL RF
レンズ構成; 11群13枚。SLDレンズ3枚、非球面レンズ1枚。
絞り羽; 9枚
画角; 14.5度〜5度
最短撮影距離;3m(170mm)〜3.2m(500mm)
寸法; 92.5φx229.5mm
フィルター径;86mm
重量; 1320g
価格; 85、000円
付属品; ケース、フード、脱着式三脚座
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撮影時のレンズの状態。
上が170mm時で、下が500mm時。500側にズーミングするとレンズはこの様に約8cmも伸びます。
安価なレンズでも500mmは500mm。ここにあるような超大型三脚を出来れば使いたいところです。写真に写っているのはスリック・ザ・プロフェッショナルで、日の出、日没にはこの三脚を使います。
長い全長に対して、鏡筒はこの様に細くて、高級レンズの様な迫力はありません。しかしこれでもフィルター径は86mm、フード開口部径は112mmもあります。 |
<大きさ>
このレンズは超望遠としては小型ですが、そこは500mm屈折レンズ、普通のレンズと比較すると大柄でカメラバッグへの収納に苦労します。全長は前後キャップ、プロテクトフィルターを付けた状態で実測約260mmもありますので、ショルダー型カメラバッグの場合は余程の大型の物以外では立てて収める事が出来ません。
レンズ径は92.5mmとありますが、実際にはフード直径が大きく112mmもありますので、バッグへの収納には工夫が要ります。私は大型ショルダーバッグの底部に寝かせ、その上にクッション材を乗せて機材を重ねる形で収納しています。機材が多めの時には専用のケースで持ち歩く機会も多いです。
<フードと三脚座>
レンズフードは深さ7.5cmのプラスチック製丸形フードです。レンズにはバヨネットで固定しますが、クリックストップはありません。また焦点距離と前玉径の大きさに対しては深さが不足という気がします。15cmまで深くしても収納には困りませんので、深くして欲しい物です。
三脚座はシグマの70-200mm F2.8などと共通の良く出来た物で、脱着が可能です。
<操作性>
このレンズはズーミングで全長が変わります。170mm時でフードを装着していると、マウント面からフード先端まで305mm、これが500mm時には390mmまでニョキっと伸びます。伸びた状態の見栄えは、鏡筒中間部が細いのでちょっと頼りないです(大口径レンズという感じは希薄です)。鏡筒は自重で伸びてしまいますので、肩からカメラを下げていると500mm側に伸び切ってしまいます。ズーミングは回転リング式ですが、自重で伸びるレンズですので、レンズ鏡筒先端部を持って前後に動かしても操作できます。
ズームリングは幅広の物ですが、操作性はやや重く渋いです。自重のあるレンズなのでこれぐらいタイトにしておかないとガタが多くなるので仕方ないでしょう。ピントリングはレンズ後端の三脚座の前にあって、幅は細く(12mm)操作性は良くありません。ズームリングを左手で持った時に、左手小指で操作するような感じになります。小指操作リングに相応しく(?)、MF時のピントリングは軽い操作力でスカスカ回ります。
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ズームリングとピントリング部。
ズームリングはレンズをホールドするのに良い位置にあり、幅も比較的広い。操作感はやや渋いが、これはレンズのガタ防止を考えると仕方のないところ。500mm側にズーミングしてもレンズ自体にガタは殆ど感じられません。ピントリングはその後ろ側にあり、幅はわずかに12mm。軽い操作力でスカスカと回ります。ズームリングに沿えた左手の小指で操作するには適切なセッティングです(笑)。 |
<AFと絞り表示>
このレンズの500mm側の開放値は、一般的なAFの動作限界値であるF5.6よりも1/3段暗いF6.3となっています。この状態でAFを作動させる為に、実際の開放値がF6.3でもレンズにはF5.6という信号が行きます(F5.6よりも小さな値がボディに入力されると、ボディがAFを受け付けなくなるため)。従ってボディに表示される500mm時開放の絞り値はF5.6です。170mm側の開放値はF5ですが、1/2段系列のカメラの場合はF4.5の表示になります。1/3段系列のカメラならF5と表示されます。
AFはあまり速いという感じはありません。しかしリアフォーカスなので、前群/全群レンズ繰り出し式レンズよりは軽快です。合焦は明るくコントラストの高い状況なら問題はありませんが、通常は少し迷う感じが見受けられます。特に500mm側では実際の開放値がF5.6よりも暗いので、AFが多少不安定という感覚を持ちます。AF作動時にはモーターのジージー言う音が多少します。
ケンコーのテレプラスを装着してもAFは動きますが、EOS3を以てしてもAFの作動範囲外になるので殆どの場合において合焦しません。素直にMFで撮影してください。
2 フィルターについて
このレンズを買って、皆さんが最初にちょっとしたショックを受けるのが、フィルター径86mmというサイズでしょう。82mmフィルターまでは一般的に流通していますが、86mmになるとケンコーではプロフェッショナルシリーズにしか用意されていなくて、価格がとても高くなります。82mmとの比較で並べると、プロテクトフィルターが86mm/82mm=9600円/5500円。CーPLフィルターが28000円/15000円です。実売価格は定価の2〜3割引きでしょうけれども、仮にレンズ本体を中古で3万円台で入手したとしても、プロテクトフィルターとCーPLフィルターを揃えると別途3万円近い出費になります。プロテクトフィルターは中古があれば買うことをオススメしますが、新品なら少々高い保険料かも知れません。CーPLフィルターは、現実的にはレンズの開放値が500mmでF6.3と暗いのと、後述しますが画質の良い絞りがF11ぐらいなので滅多に使わないと思います。また86mmのフィルター径を持つ35mm用AFレンズは同じシグマの50-500mmを除いて他にありませんので、共用する相手もいません(このため86mm
C-PLの中古も殆ど出現しません)。ステップアップリングもケンコーでは82mmまでしか用意していませんので、径の小さなレンズとの共用も困難です。従ってCーPLフィルターはこのレンズで撮影する余程の目的が無いと宝の持ち腐れになるでしょう。慌てて買うことはありません。私は86mm
C-PLを一応購入しましたが、一度しか使っていません。
3 中古購入時の注意点
このレンズは生産時期によってEOS3やEOS7/1V/1D/D30/D60でAF&絞り作動不良が発生します。中古を買われる際には店頭のEOS7でAFと絞りの作動をチェックして、もし作動しなければシグマにROM交換を依頼してください。修理費は保証期間後も無料で、運賃1000円+税だけ請求されます。
大柄でカメラバッグへの収納に困るレンズなので、レンズケースの有る中古の方が良いでしょう。前期型は黒いハードケースが、後期型は緑色のソフトケースが附属しています。ソフトケースの方が使いやすいかも知れません。私のはハードケースですが、あまりにもきっちり作ってあるので、プロテクトフィルターを装着するとフタが閉まりにくいのです。
長くなりましたので、以下は次回への続きとします。次回では良い映像を得る為の使いこなしについて書きます。
続く
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