SIGMA AF70-200mm F2.8EX HSMを処分し、Canon
EF70-200mm F2.8L USMを入手しました。そこに至る顛末を書いてみましょう。今回は処分したSIGMA
AF70-200mm F2.8EX HSMについてです。
1 侮れない高性能
写真を始めて暫くすると欲しくなるのが大口径ズーム。という事で私は初めての大口径ズームとしてシグマの新型70-200mm
F2.8EX HSMを購入しました。このレンズは1998年2月に、超音波モーターによるキャノンに劣らぬ操作性/AFスピード、クラス最軽量、AFスピードの落ちない純正テレコンの同時発売、そして純正よりも廉価というセールスポイントを引っ提げて登場しました。発売直後のカメラ雑誌のテスト記事でも評価は絶賛。レンズ解像度はEF70-200に引けを取らず、AFスピードも全くの同等。純正テレコンを付けたときのAFスピードはEF70-200を相手にせず、ボケ味も良好...等など。もともと名より実(価格と実質性能)を重視するKENですので、当時中古で11〜13万円ほどもしていたEF70-200は眼中になく、シグマに狙いを定めることにしました。そして幾月かの時が経ち、中古品が出回るようになった頃に、中古で購入しました。当時の購入価格は69800円で、現在と比べるとやや高めですが、当時の相場−αの価格です。
初めての実戦は1999年3月、HOP(広島お気軽写真クラブ)の常盤公園撮影会。ここでの成果は、それまでEF70-210mm
F3.5-4.5 USMやEF75-300mm F4-5.6 USMといった所謂廉価ズームの画像しか見たことの無い私には目を見張る物でした。ポジを見ただけで分かる解像度の高さとクリアさ、浅い被写界深度により立体的に浮かび上がる被写体など、やはり最新大口径望遠ズーム。もう廉価版ズームには戻れない魅力のある映像をもたらしてくれました。勿論、実際の撮影時には俊敏なAF、幅広いフォーカスリングによる良好な操作性のフルタイムマニュアルフォーカスなど、やはりそれまで持っていた廉価ズームとは異なる世界を恵んでくれます。とにかく、ファインダーを覗いて、操作しているだけで楽しいレンズです。
以後、多くの作品をこのレンズで撮影し、ギャラリーにも発表しています。
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このレンズで最初に撮影した数枚の中の一枚。ピントのシャープさ、被写界深度の浅さからくる立体感は廉価ズームでは得難い物です。背景に「線」が無ければボケもこの様に美しいのですが...
EOS 55, SIGMA 70-200mm F2.8 EX HSM (200mm),
F5.6, AE(+0.5補正、1/250秒), RVP |
2 しかし、弱点も...
どんなレンズにも弱点はあります。このレンズを使いだして最初に気付いた弱点は二線ボケです。背景に木々の枝があるような写真を撮影すると、それらの枝が全て綺麗に二本に分かれてしまい、非常に煩雑な背景になってしまうのです。こればかりは絞っても解決しませんので、背景に「線」がある時にはこのレンズを使わず、100mm付近の撮影ならタムロン90mmマクロに、200mm付近の撮影ならシグマ180mmマクロに付け替える様になりました。
もう一つの弱点が逆光性能です。日の出、日没の様に太陽が直接画面内、あるいは画面周辺に来るときには、フレアとゴーストが盛大に発生します。ゴーストの方は焦点距離を変えても、絞りを変えても減らすことが出来ません。フレアの方は絞り込みとハレ切りで多少は抑制出来ますが、太陽との位置関係次第では画面ギリギリのハレ切りが必要で失敗も多くしでかしました(ファインダー上では絞り開放なので気付かなかったのですが、撮影時に絞り込まれて、はっきりとしたハレ切りの板の影が写ってしまうことが多くありました)。という事でいつしか日の出、日没には使わないレンズになって行きました。
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二線ボケの代表例です。上記の写真と同じ常盤公園撮影会でのカット。中央左側部分の背景の木の枝が見事に真っ二つに分かれてぼけています。但しこの傾向はEF70-200mm
F2.8Lにもあります。(200mm開放) |
3 起死回生となるか、スーパーパーフェクトフード(!?)
レンズに欠点があれば、それを何とかしようとするのがKENです。シグマの逆光性能の低さ、ハレ切りの正確性を上げるためにフードを購入しました。キタムラに入荷した中古の「LEEレンズフード」です。これは伸縮式の蛇腹フードで、レンズの画角に合わせて最短4cmから最長10cmまで長さ調整できます。またレンズ側には100mm角のフィルターを挿入できます。定価はアダプターリング別で18000円と高価で、別途フィルターサイズに合わせたアダプターリング(3200円〜11500円)が必要です。私の中古購入価格は値切りに値切って5000円でした。アダプターリングばハッセルブラッド用がついていたので、別途購入しました。
100mm角フィルターを持っていない私は、シグマ70-200mmに合わせて極限的なハレ切りを実現するフードを製作しました。発泡ポリスチレンの黒い薄板を入手し、画面サイズに合わせた切り抜きをしてフードの前後に装着したのです。計算上、そして実際上も70mmでもぎりぎりケラレのないフードが製作できました。
このLEEフードは特に支柱などが無いために、フードを途中から傾けることが出来ます。これは主に大判カメラのアオリに対応した機能ですが、この機能を使うと200mmの時にもギリギリのハレ切りが可能なフードになります(フードを太陽とは反対側に傾けて、太陽側のフード端を内側に持ってくるのです)。フードの試作が出来上がったとき、まさに「スーパーパーフェクトフード」という呼称に相応しい出来だと、自画自賛したものでした.....が(^^;
このフードで私は日の出撮影に臨みましたが、効果はたいしたことありませんでした。ハレ切りは確かに有効なものの、10cmというフード浅さからくるハレ切りの限界(太陽が画面近くにある時には、ギリギリのハレ切りをしてもフレアが発生)、そして何より「如何なるフードも画面内に太陽があれば何の役にも立たない」という当たり前の理屈から、日の出/日没撮影でのシグマ70-200mmの有用性を大きく改善するには至りませんでした。
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在りし日のSIGMA AF70-200mm F2.8EX HSMに、LEEレンズフードを取り付けた写真。 |
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右の写真:このLEEレンズフードは曲げることが出来るので、ハレ切りなどではギリギリの所まで調整できます。
左の写真:後日、このレンズフードの前後に、画面サイズに合わせたマスクを取り付けました。これで70mmでもケラレはありません(撮影済み)。レンズ側マスクは効果を高めるために、レンズの一部を覆い隠しています。長焦点側で撮影する時には、右の写真の様にフードを傾けることで、限界的なフード効果を得ることが出来ます。 |
4 小さな不具合も
更に私のレンズには持病がありました。EOS3との組み合わせで使うと絞り動作が不安定なのです。時折撮影時の絞り込みが行われずに開放のまま撮影されてしまい、露出オーバーで使えないコマが発生するのです。レンズの端子を接点復活剤で掃除すると比較的調子は良いのですが、撮影に出かける度に清掃しなければならない程に神経質な持病です。これはEOS55など、EOS3以前のカメラだと発生しません。修理すれば良いのでしょうけど...逆光性能の事もあり、修理するなら買い換えるか、という気持ちが強くなってきました。
5 そして買い換え決断
逆光性能の低さも絞りの不具合も最近始まったことではありませんが、三次盆地の霧の海からの日の出時のゴースト発生、そして湯来の枝垂れ桜撮影での絞り不具合発生により、千載一隅の名情景を台無しにしたのを見て、買い換えることにしました。折しもEF70-200mm
F2.8L IS USMが発売になり、EF70-200mm F2.8L USMの中古相場が一気に下落して8万円前後の物も珍しく無くなった、そんな頃の決断です。
注釈:この後のつぶやきで詳しく語りますが、EF70-200mm F2.8Lも逆光性能には弱く、日の出、日没ではフレア&ゴーストに悩まされます。シグマ同様の二線ボケ傾向もあります。今回シグマから買い換えましたが、その意味は余り無かったと言えます。 |
続く
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