前回つぶやきからの続きです。
EF70-200mm F2.8L USMの低い逆光性能や二線ボケの事を前回のつぶやきに書きましたが、今回はそれらの撮影結果をお見せしようと思います。ページを余り重くしないために写真を小さめにしましたので、表示解像度(ピクセル数)の大きなモニターだとゴーストが分かりにくいかも知れません。原版で目立つゴーストのある位置には水色の矢印を付けましたので参考にしてください。
このつぶやきを上梓後に、色々なパソコンで画像を見ましたが、機種によってはゴーストが非常に分かりにくい様です。パソコンの画像だけで判断すると「KENは何と微細なゴーストを問題にしているのだ?」と思われるかも知れませんが、水色矢印を付けた位置には原版で見ると一目で分かるゴーストがあるのです。ご理解下さい。
まずは、某月某日早朝の掛頭山・山頂での撮影状況を再現しましょう。
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日の出前、薄明が始まった掛頭山から芸北町方面の景色です。当然このような状況下ではフレアもゴーストも無く、とてもシャープな写真が撮れます。
EOS3, EF70-200mm F2.8L USM (100mm), F5.6, AE(0.0EV,
15sec.), EBX |
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日の出です。この日は水平線付近があまりクリアではなく、太陽は厚い霞の向こう側から「おぼろ月」ならぬ「おぼろ太陽」の様に顔を出しました。写真上では比較的ハッキリと太陽の形が写っていますが、肉眼でみる太陽は眩しい物ではなく、ちょっと明るめの月の様でした。この時点ではフレアもゴーストもファインダー上で見えていません。
EOS3, EF70-200mm F2.8L USM (180mm), F5.6, AE(-0.3EV,
1/100sec.), EBX |
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ここからが、EF70-200mm F2.8L USMの試練の時間です。太陽高度があがり、太陽からの光量が一気に上昇しました。太陽を画面内に入れれば盛大なゴーストとフレアがファインダーから見えてしまいますので、太陽を外してフレーミングしています。しかし画面右側にはかなりのフレアが発生しています。F11に絞ったにも関わらず....開放時のフレアみたいですね。
EOS3, EF70-200mm F2.8L USM (200mm), F11,
AE(-0.7EV, 1/125sec.), E100VS |
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上記の写真の直後に撮影した写真です。フィルム上でも次のコマです。相変わらず太陽は画面内に入れていません(フィアンダー上でゴーストが見えてしまうので)。プレビューを繰り返しながら絞りを注意深く選択してフレアとゴーストには気をつけて撮影したつもりですが、現像後のフィルムを見れば水色矢印の所にゴーストが発生していました。ホームページのこの小さな写真だと分かりにくいですが、原版上ではかなり目立つゴーストです。
EOS3, EF70-200mm F2.8L USM (120mm), F11,
AE(-0.7EV, 1/105sec.), E100VS |
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EF70-200mm F2.8L USMはこの様な撮影状況下だと撮影に神経をすり減らすレンズです。そこでレンズを常用しているSIGMA
AF170-500mm F5-6.3に付け替えました。焦点距離を300mm以上、絞りをF11以上というルールを守ればこのレンズはどんな逆光も恐くありません。下手な単焦点を凌ぐ逆光性能を見せつけます。高度の上がった太陽をど〜〜んと入れてもゴースト&フレアフリーの画像をご覧あれ...EF70-200mm
F2.8L USMでは手も足も出ない写真です。
これで価格は定価も実売もEFの三分の一です。
EOS3, SIGMA AF170-500mm F5-6.3 (400mm), F16,
AE (-0.7EV, 1/40sec.), E100VS |
普段はファインダー上でフレアやゴーストが見えていればシャッターを押しません。それではこのレンズの逆光性能の弱さを皆さんにお伝えできないので、敢えて太陽を画面内に入れて撮影してみました。しかし太陽を単純に入れてしまうとファインダー内はフレアで何も見えなくなるので、スキー場のリフトの鉄塔で太陽を半分以上隠して撮影しました。
出来上がったポジを見ての感想は「あれ?ファインダー上で見えていたものよりはフレアもゴーストも少ないなぁ」という事です。これは恐らくフィルムのラティテュードの問題(明るい背景の上にフレア、ゴーストがあると、肉眼では確認できてもフィルム上では真っ白/露出オーバーで分からなくなる)でしょう。
画面左2/3の背景が明るいために、ファインダー上で見えていた様には映像化出来ませんでしたが、それでも廉価ズームで撮ったかのようなゴーストを収めることが出来ました。印象的にはこれでもファインダーで見えていたゴーストの半分以下です。
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F2.8
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F16
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70
mm |
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70mmでは絞り込んだ方がフレア、ゴースト共に少ない様です。鉄塔の「黒さ」からフレアの量を判断してみてください。開放では盛大なフレア&ゴーストに悩まされますが(ゴーストが盛大すぎて水色矢印を付けられません)、逆に言えばこの焦点距離は絞り込むことで実用になる頻度が高いとも言えます。開放では周辺光量の低下も目立ちます(以下の写真でも同様)。 |
100
mm |
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100mmでは、ゴーストの量はF2.8とF16の画像で大差ありません。いずれも連だこの様なフレアが写っています。ファインダーではもっとハッキリと確認出来ました。フレアに関しては開放の方が多いです(鉄塔部分の黒さが薄いですね)。 |
135
mm |
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135mmです。焦点距離が伸びるに連れて絞り込んだ方がゴーストが酷くなるのがこのレンズの特徴です。まあ、開けようが、絞り込もうが、全く使い物にならないゴーストの量ですが....それにしてもF16の量はハンパではないです。フレアに関してはやはり開放の方が多いです。 |
200
mm |
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200mmです。この焦点距離では何をしても無駄、という様相を呈しています。どちらもゴーストが多く(F16の方がやや酷いですが)、フレアに関してもF16で大幅に改善されているという事がありません。シグマAF70-200mm
F2.8EX HSMでも絞り込んだ場合にここまで酷かったという記憶がありません。 |
逆光性能に関してはもう一枚追加でお見せしたいと思います。三次の霧の海の撮影時のカットです。
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EOS3, EF70-200mm F2.8L USM (90mm), F13,
AE(-0.3EV, 1/125sec.), RVP |
EOS3, Tamron SP-AF90mm F2.8 Macro, F5.6,
AE(-0.3EV, 1/800sec.), RVP |
三次の霧の海の撮影で、太陽高度がある程度上昇したときのカットです。左側がEF70-200mm
F2.8Lの90mm付近での撮影。撮影しながらフレアとゴーストが見えていたので、それらが目立たない絞りと構図で撮影していました。直後に撮影した右の写真と見比べるとわかりますが、ゴーストを避けるために太陽をかなりのアングルで外しています。フレアを消す為にプレビューをしてF13まで絞り込みました。私にしてみれば、このレンズと状況で選択できた最善の状態の写真ですが、しかし水色矢印の先にはゴーストが発生していますし、画面全体のコントラスト(特に左上部分)は弱く、フレアが発生していることも分かります。
私は撮影データを記録していて「90mm」という数字を見てひらめき、その場でタムロンマクロに付け替えて撮影しました。それが右の写真です。EFと比べれば開放からゴーストフリーでフレアも極小なので、より自由な構図で撮影できました。太陽を画面ギリギリの所に収めて、絞りもあまり絞り込まずにこれだけクリアな写真が得られます。
EF70-200mm F2.8L USMの画像を「ズームだから」と言い切るのは簡単ですが、しかし価格は似たような焦点距離の単焦点レンズ3〜4本分です。逆に言えばこの逆光性能は1/3の価格の廉価ズームとも実用上大差ありません。何故このズームレンズに高い価格が付いているのか、日の出/日没/逆光撮影だけをしていると全く分からなくなります。
さて、最後に二線ボケの写真をお見せしましょう。このレンズは3mよりも近い位置にピントを持って来ると前後で二線ボケ/三線ボケが発生します。焦点距離に関わらず発生しますが、当然長焦点の方がボケが大きい分目立ちます。作例を色々と撮影しましたが、運良く小枝が規則正しく生えている枝を見つけて、1枚で前ボケ、後ボケ両方を見ることの出来る写真を撮ることが出来ました。
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中央の枝と葉を境に、右側に見えているボケが前ボケ、左側に見えているボケが後ボケです。後ボケは綺麗に二線ボケ、前ボケは二線ボケというよりも三線ボケに近い状態になっています。焦点距離は135mmで二線ボケにとっての最悪焦点距離(200mm)ではありません。撮影距離は2m弱です。
EOS3, EF70-200mm F2.8L USM (135mm), F2.8, AE(+0.3EV,
1/200sec.), RVP |
EF70-200mm F2.8L USMは言うまでもなく世界最高レベルの評判を持つズームレンズで、とても高価であるにも関わらず恐らく世界一売れている70-200mmズームです。私もその評判を信じて購入したわけですが、私の基準では「高性能」とは言い難いレンズです。
別に全てを否定するつもりはありません。ズームとしてはとてもシャープですし、操作性も良好です。色乗りもLレンズ的な所があると思います(まだハッキリとは識別していません)。しかしシャープさに関して言えばSIGMA
70-200mm F2.8EX HSMがこのレンズに劣るという事はありませんし、逆光性能も厳密な比較をしていませんが、どちらも「失格」という意味で同点です。私の印象ではEFの方がシグマよりもゴーストやフレアの出方が嫌らしいくて目障りです。操作性に関してはシグマの方がやや上で、軽量である事に加えて、ズームリングの動きがとてもスムーズです。EFにはギアを回すようなゴリゴリした感触があります。発色については未だ差を認識していないので、コメントできません。AFの速さは(というか合焦する瞬間の吸い付きの良さにおいて)ややEFに分がありますが、どちらも超音波モーターなのでとても俊敏です。
選択肢が限られる以上、70-200mmズームが欲しいEOSユーザーはEFが本命になるでしょう。しかしシグマを買われた方もブランドと鏡筒色を除けば引け目を感じることはありません。それが両方を使ってみての私の結論です。
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