♪♪♪ 撮影記なので、ドキュメンタリータッチで(^^; ♪♪♪
KEN(&KENのクルマ)は雪道の運転が苦手である。東京で生まれ育った事と、スキーを嗜まない事から雪道を運転した経験が限りなくゼロに近いのだ。広島に引っ越した後も雪道の運転は指折り数える程である。タイヤにチェーンを付けた経験もなければ、スタッドレスタイヤを自分のクルマに装着した経験もない。何度か外出中に天候が雪になり、道路が真っ白になった経験はあるが、いずれの機会もチェーンも履かずに自宅まで帰り着く事が出来た。
クルマは普通の二輪駆動の4ドアセダンである。ノーマルタイヤでの雪道走破性は誠にだらしない。最近のスタッドレスタイヤは高性能だし、さほど高価でもないので冬シーズンだけ履き替えたいとは思うのだが、マンション生活で既にベランダまで荷物が一杯の我が家には、タイヤ四本を保管する場所がなく諦めている。
「正月休みになってから、撮影に出かけていないなぁ...」
元旦の夕刻に突然撮影に出かけたくなった。それも季節柄、無性に雪景色が撮りたくなった。雪道の運転がクルマもドライバーも苦手だと言うのに、思い立ったらやらないと気が済まない。それで、翌日ノーマルタイヤで行けるところまで行って撮影することにした。
1月2日、朝4時半に起きた。まだ真っ暗な外に出ると、空気が肌にちょっと刺さるような寒さだ。クルマは見事に真っ白く凍りついていた。カメラ機材を積み込んでから、暫く窓ガラスの霜を掻き落とす。そして冷え切った車に乗り込み、エンジンをかけて直ぐにクルマを走らせる。外気温計は0度をさしていて、広島市内の早朝の気温としては低い方だ。目的地はとりあえず三次方面で、現地に着いてから撮影地を探すことにする。
いつものように、市内を抜けてから三次に向かう県道「広島ー三次線」を北上する。空は晴れているが、時々雪が舞うという掴み所の無い天候である。そして降る雪のためか暫くすると路面が濡れてきた。外気温計は更に下がり氷点下1度をさしている。ひょっとしたら路面凍結しているかもしれないので、クルマを走らせる速度をいつもより控えめにし、手のひらと尻の先に神経を集中する(手のひらに伝わるステアリングの感触から、前輪のグリップとトラクションを、尻に伝わる微妙な振動から後輪のグリップ状態を把握するのである)。白木(広島と三次のほぼ中間地点)を越えて更に北に向かうと、とうとう真っ白な路面が現れた。積雪ではなく、凍結路面である。タイヤがノーマルなので、ここからはまさに薄氷を踏む思いで走る。北上するにつれて白い路面の出現率は多くなり、周りの景色も白っぽくなってきた。この県道はこのまま進むと、殆ど交通量の無い、すれ違いが困難なほど幅の狭い山かげの道になるので「やばいかな?」と思い、吉田口のところで国道54号に出ることにする。一級国道なら交通量が多いので、路面凍結も少ないだろうという読みである。県道と国道を結ぶ道路も見事に白く凍結していて、控えめの速度で走る。
やがて国道54号(広島から松江を結ぶ一級国道)に出ると、ちょっと我が目を疑った。今まで走ってきた道と国道の境が見えるのだ。凍結している町道と、濡れてはいるが凍結の気配の全く無い国道。あるいは、そこだけ季節が春のような国道、といえば分かるだろうか?最初は交通量が多いからかとも思ったが、わだち状に凍結が溶けているのではなく、道路上全面に全く凍結が無いし、すれ違う車は数分に一台という少なさだから、恐らく凍結防止剤がきちんと散布されているのであろう。今までの薄氷を踏むような走行をしなければならなかった道が嘘のようだ。それで国道をいつものKENのペースで飛ばし、三次駅を目指す。
白木から吉田口まで凍結した路面を20kmほども走ったというのに、更に北にある三次付近は雪も凍結路面も無かった。天気が曇りのためか気温が思いのほか高く、1度もある(通常、三次の気温は広島市内よりも5度程度低いので、氷点下5度ぐらいを期待していた)。雪景色を期待していた私には期待はずれで、とりあえず国道375号を三和町方面(南東)に走ってみる事にする。馬洗川の支流が国道375号沿いに流れており、晴れた日ならば川面から朝霧が立ち上がる素敵な景色が見れるからだ。しかしこの日は曇っており、三和町に近づくと雪が降り出したので、当然朝霧は無い。暫く走るが私が撮りたいと思うイメージの光景が全く無く、引き返すことにする。国道375号も凍結していなかったが、これは除雪&凍結防止剤というよりも、私が走った範囲には積雪が無く、気温も道路凍結するほど低くは無かったという事であろう。それが証拠に川に架かる橋の上だけは真っ白に凍結していた。
三次付近には雪景色が無いと判断し、更に北を目指す事にする。再び国道54号に戻り、松江方面に向けて走る。中国山地を日本海側に越える道なので北上するにつれて高度もぐんぐん上がり、それに伴いまわりの景色も雪に染まり出す。赤名トンネルを抜けて島根県に入ると、一面の銀世界が待っていた。夜が明けだした淡い光の中に、KENの求めていた景色が広がる。見渡す限り、地面も道路も白い。しかし、一箇所だけ例外がある。それが国道54号の路上で、雪はおろか凍結の気配もない。クルマの外気温計は氷点下を示し、国道以外の道路は完全に雪に覆われているので実に不思議な光景である。これが人為的な作業によって行われている証拠に、国道の両脇は除雪された雪が一段と高く積み上げられている。氷点下の気温で何も処理されなければ凍結するはずの橋の上も、全く凍結していない。途中にあった道の駅に寄ると、駐車場は国道上とは打って変わって10cmほどの雪に覆われていた。
54号をノーマルタイヤのままで普段と変わらぬ速度で更に北を目指しながら、除雪作業に携わった人たちの尽力に感謝する。そして幾つかの峠を越えると、雪が激しく降り出して銀世界は一段と白さを増し、山々の木々も真っ白に化粧をしていた。「これが私の求める景色だ!」と思い、絵になりそうな景色のある場所を探してクルマを停めようと思った.....が、大問題が。クルマが停められないのだ。国道以外の道は深く雪に覆われていて、一度クルマを突っ込むと抜け出せなくなる恐れがある。比較的交通量があると思われる三瓶山に向かう県道ですら15cmほどの雪で完全に覆われていて、54号から県道に左折したばかりの車はそこで進めなくなり、チェーンを装着していた。一方で国道脇にある「P」標識の待避所は殆どが除雪された雪で覆われていてクルマが入ることが出来なくなっている。暫くしてクルマを停められる待避所をやっと見つけたが、雪が5〜10cmほど積もっていて、クルマを乗り入れた瞬間にABSが「ガガガッ!」と音を立てて作動した。
やっと駐車できた場所である。見える範囲の景色から印象的なところを一生懸命に切り取った。雪が激しく降っており、撮影時のカメラにも、撮影データを記録するメモ帳にもフリカケの様なころころした粉雪が降りかかるが、気にしてはいられない。
その後も、滅多に無い駐車可能な待避所を見つけては撮影を続けたが、どうしても「良い景色」ではなく「待避所から見える景色」になってしまい、不満がつのる。やがて日本海側に向けて高度が下がりだすと山の木々の色が白から黒に変わってしまった。そこでUターンをして、再度三次方面を目指し、待避所を見つけては撮影を続けた。そうこうしている内にまた三次側に抜けてしまい、Uターンして雪景色を捜し求める。
二度目の三次側から松江側へのドライブは、時間が午後になっていた事も有り、国道以外の交通量のある道路にはわだちが出来上がって私の車でも走行出来そうだった。そこで、早朝には深い雪で覆われていた「八重滝入り口」という場所の道に入ってみる。しかしその付近の国道沿いの景色も面白そうだったので、いきなり奥には進まずに国道から曲がってすぐの道路脇にクルマを停めた。
国道脇の景色を撮影し終えてから、クルマで奥に進むかどうかを、滝に向かう道を少し歩きながら考えたが、道はすれ違い出来ないほど狭く、またすれ違いのためにクルマをわだちの外に寄せると身動き取れなくなりそうなので、クルマを置いて徒歩で行くことにした。歩いて10分ほどの距離(実際には撮影しながらの歩行だったので30分ほど)で滝の入り口の駐車場に到着したが、駐車場は足首まですっぽり埋まる深さの雪で覆われており、クルマで来なくて良かったと胸をなでおろす。駐車場の案内図を見れば、最寄の滝まで人がやっと歩ける山道を更に1100mも歩かなければならないとのこと。その山道は20cm以上の雪で覆われており行くことは諦めた。代わりにその付近での撮影を続けてから、クルマに戻った。
クルマを停めた場所は道路両脇が少し広くなっていて、一度の切り替えしでUターンできるはずだった。しかしエンジンをかけて前進しようとしても、車が動かない。ATをスノーモードにして、細心のアクセルワークでそろりとタイヤにトルクをかけても、スリップしてしまった。車を止めた場所にはもちろんわだちは無く、15cmほどの雪の中で、おまけにやや上り坂になっていたのだ。やっぱり滝に向かって奥に入らなくて良かったと思った。
押しても駄目なら引いてみろ!という事で、私は駐車時に自分で作ったわだちを使ってクルマを脱出させた。つまり道路脇から国道までの下り坂をバックで進んだのである。そして国道の出口で切り返しをして、帰途についた。
今回の撮影で、私は冬の道路管理のレベルが道路の格に比例していることを学んだ。一級国道の54号は、周りが数十センチの積雪で、かつ雪が激しく降り頻る中でも積雪も凍結も起きておらず、広島から松江方面まで(実際は木次付近まで、その先は確認していない)ノーマルタイヤで何ら不安無く走れた。また橋の上ですら凍結がなかったのである(二級国道の375号は凍結していた)。これは頻繁な除雪と、しっかりとした凍結防止剤の散布のお陰であろう。もちろん大雪の最中は除雪が間に合わないので、その場合はスタッドレスタイヤやチェーンが必要になる事もあるとは思う。
一方の県道や、それ以下の道は自然の為すままに深い雪に覆われたり、凍結したりで、ドライバー側に万全の準備と細心の運転を要求するのである。
住宅事情からスタッドレスタイヤを履けない私でも、一級国道なら真冬にドライブできる事が分かったので、雪景色撮影をもう少し続けてみようかと考えている。当然、いざという時のチェーンは常に携行しての事だが...
広島に帰るみちすがら、国道54号線沿いに「除雪基地」と書かれた建物があった。正面のシャッターがしまり人影は無かったが、深夜早朝に仕事をされたであろうその基地の人たちに感謝の気持ちを込めて、広島への道を急いだ。
※実はこの日の雪景色撮影用に100円ショップで購入した新兵器を試したのですが、実に上手く行ったのでつぶやき172でご紹介しましょう!
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