1月7日朝、目覚まし代わりにタイマーでONになるテレビから、目覚まし効果抜群のニュースが流れてきました。
「.....コニカとミノルタが経営統合することで合意.....」
カメラ業界を揺り動かすようなこのビッグニュースについて、色々と雑感を書いてみようと思います。最初にお断りしておきますが、私の雑感には何ら信憑性も信頼性もありませんので、決して真に受けないように(^^;
<コニカとミノルタの経営統合の内容>
まず、コニカとミノルタの合意内容と今後の計画について、両社のプレスリリース資料から要点のみ簡単にまとめておきましょう。ミノルタのプレスリリースはこちらです。(コニカの物と全く同一ですが、ウェブ上ではミノルタの方が見やすいです。)
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コニカ(株)とミノルタ(株)は両社対等の精神で、完全なる経営統合をすることで合意し、基本合意書を締結した。
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経営統合ステップは以下の通り。
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2003年4月に、コニカ(株)は各事業を会社分割し、コニカ(株)自身はそれらを親会社として統括する持ち株会社に移行する。
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2003年8月に、両社対等の精神に基づき株式交換を行い、コニカ(株)は新たな統合持ち株会社「コニカミノルタホールディングス株式会社」となる。ミノルタ(株)はコニカミノルタホールディングス株式会社の完全子会社となる。
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2003年10月に、旧コニカと旧ミノルタの全事業を統廃合、再編し、各事業を担当する8つの子会社を設立する。
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カメラは子会社の一つである「コニカミノルタ・カメラ株式会社」が担当する。フィルムは「コニカミノルタ・フォトイメージング株式会社」が担当する。
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カメラ事業は、デジタルカメラ事業を中心に据える。市場ニーズを先取りしたユニークかつ特徴のある商品化、高付加価値で差別化された商品の開発により、高付加価値セグメントで市場No.1を目指す。
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新しいブランドは「コニカミノルタ」を採用する。但し例外的にカメラは「ミノルタ」、フィルムは「コニカ」とする。企業シンボルマークは新しい物を採用する。
<経営統合って???>
経営統合について少し解説します。但し私自身この領域の専門家ではないし、専門的な解説をつぶやきですることも意味が無いと思いますので、多少の間違いには目を瞑って、簡単な理解を図る解説をしてみます。
経営統合って、聞き慣れない言葉ですね。合併とどう違うの?という疑問も持たれるでしょう。大まかな定義は次の通りです。
合併:
二つ以上の会社が、資本上も組織上も一つの会社になること。
経営統合:
二つ以上の会社が共同で持ち株会社を設立し、その傘下に入ること。
合併については日本でも歴史的に多くの例がありますので、皆さんも何となく分かるでしょう。一方の経営統合は、直接事業を営まない「持ち株会社」なる親会社を設立して、今までの会社/事業体はその傘下に入る(子会社となる)事です。合併との違いは、経営統合する既存の会社が、表面的には今までどおりの事業形態、会社形態を継続することも出来るという点です。例えばダイムラークライスラー社はベンツ、クライスラー、ジープ、スマート、三菱自動車などを傘下に収めていますが、個々の自動車メーカーは外から見れば今までどおりの別々の会社ですね。
しかし、コニカとミノルタの場合は両社の全事業を統合再編するので、持ち株会社の傘下に入る点を除けば合併に非常に近いものとも言えます。日本興業銀行、第一勧業銀行、富士銀行の3行が経営統合してみずほ銀行になったケースに近いです。持ち株会社「みずほホールディングス」があるという事以外では、外から見ていると合併と区別がつきません。コニカミノルタでは特にカメラ事業においてコニカが消滅してミノルタだけになるので、一層その感が強いです。
乱暴に言えば、合併と経営統合を分けている要素は「持ち株会社」の有無だけとも言えます。では「持ち株会社」って何でしょう?持ち株会社は複数の会社の株を取得し、経営支配する会社です。もともとは財閥に代表されるように日本にも有ったのですが、戦後の日本では財閥解体に伴い独占禁止法で禁止されていました。しかし海外ではコングロマリット、持ち株会社制度は極く一般的な経営形態であり、日本の企業に認められない事は経営の足かせとなっていました。その後、1997年の独占禁止法の改正により日本でも持ち株会社が認められるようになりました。
経営支配、と言うと響きが恐ろしいですが、別の言い方をすれば、事業推進と、戦略策定機能を分離するという事です。もっと分かりやすい(乱暴な)例を挙げれば、社長、取締役会、経営企画部/経営戦略部/戦略企画室などの機能と、それ以外の部門を別会社に分けた姿を想像してみてください。前者の人たちは会社の進むべき道、大きな方針、戦略などを考えることが主たる仕事ですが、一つの会社組織だと、それ以外の事業遂行に伴う様々な意思決定も求められます。会社勤めの人ならご存知ですが、ある一定以上の金額の費用決裁や、事業上の重要な意思決定を求めようとすれば社長や取締役会までの決裁が商法的に必要です。社長や取締役の立場からすればそれら雑務に忙殺され、本来の大戦略を考える時間が取れません。そこで持ち株会社制度で法人的に各部門/事業を別会社としてしまえば、その様な日常の意思決定は、別会社の社長(つまり実質的な部長とか本部長)レベルで商法的に可能になります。そして本来の社長や取締役は雑務から開放されて、グループ企業全体の戦略立案とその意思決定に専念できるようになります。一方の各事業を遂行する子会社は、日々の事業遂行上の意思決定を、本来の社長まで上申する必要が無くなりますので、意思決定の迅速化が図れ、小回りの効く組織になります。
持ち株会社制への移行は必ずしも経営統合を必要としません。実際に統合ステップの最初、2003年4月に行われることはコニカ単体の持ち株会社制への移行であり、これはコニカとミノルタの経営統合が発表される前から公表されていました。つまり上記で説明したメリットはミノルタとの統合をせずとも得られることです。
では何故コニカはミノルタと統合するのでしょう。それは厳しい業界で生き残りを賭けた戦いをするために、企業規模を生き残れるレベルに引き上げる為です。この業界は、平たく言えば売上高2兆円超のキヤノンとフジ写真フィルム、売上高1兆円超のリコー、売上高5000億円付近のコニカ、ミノルタ、ニコン、オリンパス、ずっと離れて1000億円のペンタックスという勢力分布になっています。3強・4弱・問題外という分布ですが、コニカとミノルタは3強の仲間入りを果たして生き残りを賭けて来たという事です。参考までにもう一つのカメラメーカーの京セラは1兆円企業ですが、ファインセラミックスが本業のために、コピー機、プリンター、光学機器などを主体とした精密機械業界には区分されていないようです。
持ち株会社制について少々乱暴な説明をしました。この制度はダイムラークライスラーの様に子会社(ベンツ、クライスラー、三菱自動車、スマート、ジープなど)がそれぞれ表面的には独立して、互いに同じ市場で戦っている様なケースだと、もっとダイナミックな効果を発揮する物なのですが、コニカとミノルタの場合はこのケースに該当しませんので、説明を割愛します。
<どうなる、コニカとミノルタ、その1;起こりそうなこと>
ここからは私の勝手な希望的推測をしてみましょう。まず最初は起こりそうなことですが、その推測を始める前に、プレスリリースで私が一番注目している文章があります。それを原文のままで引用します。
カメラ事業は、両社の事業を統合し、デジタルカメラを事業の中心に据え、市場ニーズを先取りしたユニークかつ特徴のある商品化と事業の効率化を進めてまいります。高付加価値の差別化された商品を開発し、高付加価値のセグメント分野での市場No.1の実現を目指すとともに、事業規模の拡大を図ってまいります。
まず注目すべきは「デジタルカメラをカメラ事業の中心に据える」という事です。コニカはフィルムメーカーですから銀塩から撤退することは無いでしょうけれども、その比重は落ちて行くでしょう。更に注目すべき、というか、良く分からない文章が「高付加価値の差別化された商品を開発し、高付加価値のセグメント分野での市場No.1の実現を目指す」です。高付加価値セグメントとは、平たく言えば量販商品よりも多少なりとも高価な商品分野です。幾らから高価かというのは主観的な問題ですが、少なくとも店頭で叩き売る様な廉価コンパクトカメラは指さないのでは無いでしょうか。それに、「その分野でNo.1を目指す」と言っています。一眼レフカメラは高付加価値商品の資格十分ですが、キャノンが圧倒的な強みを見せる「分野」で「No.1を目指す」とはどんな経営者でも言えないでしょう。更には「差別化された」という言葉です。「これは他社と異なる」、とか「他社には類似商品が無い」という意味です。コニカやミノルタの現在のカメララインナップで、他社に類似商品の無い(少ない)廉価ではないカメラとは何でしょう?私が思い浮かぶのは二つだけです。ヘキサーRFとTCー1。これと冒頭の言葉「デジタルを事業の中心に据え」を重ね合わせると、コニカミノルタの統合後の象徴として発売されるカメラは、「ライカMマウント(つまりヘキサーRF)のデジタルカメラである」という推測が成り立ちます。ブランドはミノルタになりますが、ミノルタにはかつて、ライツ・ミノルタCL/CLEというMマウントのカメラがありました。それがデジタルとして復活しても不思議はありません。しかもコニカはそれを実現するための全ての技術を持っています。ライカデジタルは本家ライカから発売されることはまず無いでしょう(彼らにその技術力はありません。何処かと提携すれば別ですが)。しかし裕福なライカ族は世界中に沢山います。彼らに向けて交換ボディとしてのMマウントデジタルを発売すれば、正に「高付加価値の差別化された商品」で「その分野でNo.1」を実現出来ます。
但し、全く予想つかないのがそのカメラの名前です。純正レンズは現在Mヘキサノンなのですが、ミノルタのブランド下でヘキサノンがあり得るのか?という疑問。更にはMマウントデジタルを発売するならば、銀塩ボディであるヘキサーRFのハードウェアは継続発売されると思います。そのボディの名前がヘキサーRFを継承するのでしょうか?う〜ん(-
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マーケッターとしての視点から見れば、ブランド資産としての「ヘキサー」「ヘキサノン」の名は「(ライツ)ミノルタ」や「Mロッコール」よりも大きいような気がします。だから少し変ではありますが、ミノルタ・ヘキサーRF、ミノルタ・Mヘキサノン、という名前が残る気がします。この路線ならば、Mマウントデジタルは、ミノルタ・ヘキサーデジタル、あるいはヘキサーRFーDという事になるでしょう。
次に起こりそうな事は、ヘキサーデジタルの撮像素子を譲り受けて、αのデジタル化です。一眼レフ市場は全体から見れば非常に小さく、儲からない市場ですが、ミノルタはこの分野でキャノンに次いで世界第二位の地位を占めています。この事業を捨てるはずがありません。コニカの力を得て、αのデジタル化は一気に進むでしょう。その際にコニカの企業風土がαデジタルにどの様な新風を吹き込むのかが楽しみです。世界初のTTLーAE一眼レフ、世界初のAFカメラとかを発売したメーカーです。オマケに今回のプレスリリースで「市場ニーズを先取りしたユニークかつ特徴のある商品化」と言い切っています。これは正にデジタルの近未来を見据えて何かを考えている証拠では無いでしょうか?
その次に起こりそうなことは、現在コニカブランドで発売されているコンパクトカメラ、デジタルカメラの廃止(ミノルタブランドへの鞍替えの無い単純廃止)です。両社のこの分野の現在のラインナップを見れば、コニカで残すべきカメラは「現場監督」だけのような気がします(これはミノルタ・現場監督として残るでしょう)。従って、これからコニカブランドのコンパクトカメラ、コンパクトタイプのデジタルカメラの在庫処分バーゲンが期待できます(笑)。
レンズ付フィルムはあくまでカメラではなく「フィルム」ですから、コニカブランドで残るでしょう。但し将来的にレンズ付フィルムの高画質競争が起きるとすれば、カメラの名前がミノルタになるかも知れません(笑)。
少し長くなりました。書きたいことはまだあるので、次回つぶやきへの続きとします。
続く
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