前回つぶやきからの続きです。そちらを読まれていない方は、先に前回分を読んでください。
前回つぶやきでは、コニカとミノルタの経営統合の内容と、これから「起こりそうなこと」を書きました。今回は「次は私個人は実現して欲しいけど、起こりそうに無いこと」の話からです。
<どうなる、コニカとミノルタ、その2;実現して欲しいけど、起こりそうに無いこと>
ミノルタブランドのフィルム
起こりそうに無い事の第一はミノルタブランドのフィルムの発売です。
フィルム市場のシェアはフジが70%、コニカ20%、コダック10%であり、フジの一人勝ち市場です。ポジフィルムの市場に限ればコニカの凋落はもっと劇的で、事実上SINBIしかありませんからせいぜい数パーセントでしょう。そんなコニカのフィルムシェアを少しでも巻き返すために、ポジフィルムをミノルタブランドで発売すればどうか?と思うのです。
古き善き時代のコニカカメラのフィルム室には「サクラカラー」のシールが貼ってありました。当時中学生で純真な私は、そのシールを見ながらフジのネオパンSSを装填することに罪悪感を感じていました(笑)。昭和40年代半ばに私が使っていたフィルムはネオパンSSやネオパンFの「イージーローダー」フィルムです。これは現在発売されていませんが、パトローネの無い遮光紙巻のフィルムで、これを使い古しのパトローネに装填して「遮光紙を引き出す」と普通のフィルムになるものです。新宿西口ヨドバシカメラがまだ支店も持たず平屋プレハブで営業していた昭和46年に36枚撮り一本100円で、これが最安値フィルムでした。そしてヨドバシの店頭には現像所から排出された大量の空パトローネがダンボールに入って置かれていました。
サクラ(モノクロ名称はコニパン)にもイージーローダーは有ったのかも知れませんが、記憶に有りません。当時コニパンを使うことはお金の掛かることで、意を決してイージーローダーではない高価な「サクラ・コニパンSS」をコニカFTAに装填する時には気分が良かった物です。更に現像プリント代まで含めると当時は非常に高価で、一年に何度も使えなかったカラーフィルムを装填するときには(物価は現在の1/5〜1/10程度にも関わらず、カラーサービス版一枚50〜70円の時代です。四つ切プリントは4000円もしました!)、当然「サクラカラーN100」を買って来ました。富士でもサクラでも値段は変わりませんから。
そんな心理(他の人にもあるかどうかは分かりませんが)を利用して、ポジフィルムのブランドをKONICA
SINBIからMINOLTA α-Chromeにし、ミノルタの銀塩カメラのフィルム室にそのシールを貼っておけば、コニカミノルタのポジフィルムの売上は倍増以上になると思います(現在の売上がほぼゼロに近いですから(^^;)。例えばこんな商品体系です。
MINOLTA α-Chrome 9 (低感度、極微粒子ポジ、プロフェッショナルグレード)
MINOLTA α-Chrome 7 (ISO100、微粒子ポジ、プロフェッショナルグレード)
MINOLTA α-Chrome 5 (ISO100、微粒子ポジ、アマチュアグレード)
MINOLTA α-Chrome 7 plus (ISO200、増感対応プロフェッショナルグレード)
ほら、KONICA SINBIには興味の無かったミノルタンなあなた、このフィルムなら使いたくなるでしょう!?(笑)
蘇れ、ヘキサノンAR
つぶやき70と71で書いた「蘇れ、ヘキサノンAR」のストーリーは実現しそうにありません(涙)。ヘキサーRFとそのデジタルバージョン用のレンズにヘキサノンの名前が残るかどうか、がせいぜいでしょう。
ミノルタは良いレンズを沢山作っているので、これをα以外のマウントでも欲しい、という声はかなりあります。私も自分のEOSで使いたいミノルタのレンズが数本あります。ある人など「ミノルタは第二のシグマとして、カメラボディも発売するレンズメーカーになるべきだ」とまで言っています。まあ、その是非は兎も角として、万一そうなった時のレンズ名は「ミノルタ」よりも「ヘキサノン」の方が良いとは思いませんか?でも実現されないでしょうね〜(--;
<どうなるコニカとミノルタ、その3;起きては欲しくないけど、起こりそうなこと>
最後に、今回の経営統合に伴う不安要素を幾つか挙げておきましょう。つまり、起きては欲しくないけど、起こりえることです。
ヘキサーRF,Mヘキサノンレンズの消滅
短期的にヘキサーRFとMヘキサノンが無くなることは無いでしょう。しかし中長期的には不安です。ヘキサーRFが発売されたときに、「この不況下、たいした販売台数も期待できない(=儲からない)35mmレンズ交換式レンジファインダーカメラに何故ヘキサーRFの様な凝った商品開発が出来るのか?」と、コニカの知人に聞いたことが有ります。そのときの答えは、「ヘキサーRFはレンズ部門の管轄で、レンズ部門は儲かっているからヘキサーの様な儲からない(であろう)商品でも成立するのだ」ということでした。ここで言う「レンズ部門」の取り扱い品目はMヘキサノンとかヘキサノンLの事ではありません。コニカはスキャナ、複写機、ファクシミリ、印刷機、医療機器、小型カメラ(携帯に組み込む物とか、その他カメラ以外のユニットに組み込む部品)など様々な商品を扱っていて、そこに「レンズ」が採用されています。これら事業領域は35mmカメラとは異なり収益の出る事業ですから、「レンズ」は儲かるのです。
しかし、今回の経営統合、事業再編によりヘキサーRFは明確に「コニカミノルタ・カメラ株式会社」の扱いとなり、今まで儲かっていたレンズ事業分野はヘキサーから切り離されて別会社の扱いとなってしまいます。だからヘキサー単独で収益を出さない限り存続は難しいでしょう。ヘキサーRFとMヘキサノン、及びその後継モデル(名称のミノルタへの変更分を含む)の中長期的存続は、Mマウントデジタルの発売とその成功(あるいは別の商品投入による成功)に掛かっていると言えるのです。
アフターサービスの質の低下
キャノンのサービスセンターの対応の善し悪しが話題になっていますが、その際に良く引き合いに出されるのがミノルタやニコンの対応の良さです。私個人の意見では、中途半端な一流企業ほどにサービスの対応が悪くなる気がします。その原因は、ビジネス効率を改善しようとすれば(これは企業としてすべき事です)節約できるコストは下げる、という動きに出るからだと考えています。これをサービスセンター業務に対して表面的に行えば、「補修部品をいつまでも持たず一定期間が過ぎたら保有しない」「無償修理は規定内(保障期間内に申し出のあった自然故障のみ)に留め、それ以外は全て有償にする」などの方針が自ずと決まります。
この様なビジネス効率改善を「していない」企業(ある意味で一流以下の会社)のアフターサービスは顧客にとって心地よい事があります。例えば20年前の部品が未だに入手できるとか、保障期間が過ぎていたけれども無償で修理してくれたとか、補修部品を部品単体で売ってくれたとか......。しかしこの企業が一流化するとこれらが消滅して行くでしょう。
もっと深く企業経営の事を考える、真の意味での超一流企業ならば「顧客の満足は何か、それに対して何をすべきか」を考えるので、杓子定規的なルールも無くなり顧客の期待に相応しいアフターサービスをするので、違う意味で良いアフターサービスになりえます。私見ではキャノンは企業として一流(超一流にはあらず)、ニコン、ミノルタは一流以下なのだと思います。だから私たちにとってはニコン、ミノルタのアフターサービスの方が心地よく、キャノンは冷たく感じるのではないでしょうか?
今回のコニカとミノルタの経営統合と事業再編は、いわば企業経営の上級編、あるいは欧米流に移行するような物で、企業の全事業領域に渡って高効率化、コストの削減のメスが当然入るでしょう。その際に私が恐れるのが、ミノルタやコニカのこれまでの「一流以下」の「日本的」な企業体質から生まれる「良いアフターサービス」が悪化するのではないか?という事です。
売上高の低下
コニカとミノルタの昨年度の売上高の合計は1兆500億円です。それを統合後の2005年度には1兆3000億円に引き上げると公表しています。勿論、この様な効果が期待できなければ経営統合などという大きなアクションを取る意味は無いのですが、では経営統合すれば売上が伸びるか?といえば「ちょっと待て!」となります。特に合併に近い今回のケースは統合により売上が減ることはあっても、伸びる理由は殆どありません。売上伸張の為には統合だけではない追加のアクションが必要です。
ダイムラークライスラーの様に、二つの会社が一つの企業の傘下に入っても、ベンツとクライスラーの様に個々の企業がマーケットに対して独立した存在を維持していれば、二社合計の売上はそのまま維持されます。しかしコニカとミノルタのケースは、現在二つ存在しているブランドを一つに集約していしまう物であり、単純に考えれば売上は減少します。
例を挙げて説明しましょう。どんな商品でも良いのですが、貴方が買おうとしている商品を探したら四つが候補に挙がったとします。A社、B社、コニカ、ミノルタ、の合計4社の製品です。この中から貴方はどれを購入するでしょうか?選ぶ基準は様々ですが、仮に製品内容に大きな差が無いとすれば、コニカかミノルタを選ぶ確率は50%ですね。コニカとミノルタの統合後には、統合前に候補に上げたコニカの製品とミノルタの製品の両方が存在することはまずありえません。似て非なる商品を自社で二つ用意することはプロダクトミックスの点で無駄であり、コニカミノルタは一つの商品に集約します。つまり統合後に貴方の検討候補に挙がる製品は、A社、B社、コニカミノルタ、の合計3つになるのです。すると貴方がコニカミノルタの製品を購入する確率は33%に落ちます。この様に独立した二つのブランドを一つに統合して、それだけで売上が伸びることは理論的にはあまり有りません。
例外は統合する片方のブランドが、もう片方のブランドよりも圧倒的に強い場合で、かつ商品体系に重なりが無い場合です。簡単な例を挙げれば、もしトヨタがダイハツを完全に子会社化して、ダイハツブランドを消滅させ、軽自動車をトヨタブランドで売り出すとどうなるでしょう。トヨタブランドは強いですから軽自動車の売上はダイハツ時代よりもかなり伸びると思います。そしてもともとトヨタは軽自動車を持っていませんから、その伸びた売上高はトヨタダイハツ連合では上乗せになります。ヤシカとコンタックスの例もこれに当てはまるでしょう。しかしコニカとミノルタはどちらも、どの商品分野でも圧倒的な強さを持ってはいませんので、この様なケースは生まれにくいと考えます。
互いに事業領域が重なる二つの会社の合併に近い経営統合という、売上高をむしろ引き下げるフォースの働くアクションを採りながら売上を伸ばす。コニカとミノルタはその手法に何を考えているのかは私には想像出来ませんが、彼らがこれから何をしてくるのか、今から楽しみです。
従業員のリストラ(4000人削減)
これは統合に際して必ず発生することであり、また既にプレスリリースで公表されていますので、必ず起きます。合併とか経営統合を学ぶときに、必ず引き合いに出される例があります。
「一つの会社に総務部は二つ要らないから、合併すれば一つの総務部は廃止できる」
という物です。これは総務部に限らず、人事部もそうですし、細かに業務機能を精査してゆけば合併前の二社で重複している業務は沢山見つかるはずです。これらを一つに整理して、余った人員とか設備を減らしてコスト削減を図る。これは合併とか統合で必ず手に入る効果です。
この様な効果は華々しく報道されますが(今回のプレスリリースでも、効果は年間500億円と公表されています)、仕事の現場で起きる事は残る人と去って行く人の色分けと別離です。私の会社でも経験がありますが、それは残る人にも去って行く人にも辛い事ですし、去って行かざるを得ない人にはその後にもっと厳しい時間が待っています。出来れば有って欲しくない事です。
と、色々と勝手な推測を書きましたが、この推測が当たるか外れるかは1年後ぐらいには分かるかも知れません。その頃にまた読み直して、もし当たっていたら皆さんでKENを褒めましょう(笑)。でも外れていたら、お手柔らかに(^^;;;;;;;; |