前回つぶやきからの続きです。
10 外部ストロボを使ってみる:「え”、おい!、そんなぁ(--;」
そもそもPowerShot G2を買った目的が、外部ストロボを使うためですから、早速スピードライト550EXを使ってみました。これには大きな問題、期待ハズレがありましたので、順番に語って行きましょう。
撮影モードとストロボ撮影
これは外部ストロボでも内蔵ストロボでも同じなのですが、EOS感覚でストロボ撮影しようと思うと、出来るはずの事が出来ないので驚かされます。
・マニュアルモード
ストロボは常に最大光量で発光します。TTL調光されません。EOSの場合はマニュアルでもストロボはTTL調光されます。私がEOSでストロボを使うのは、カメラ側をマニュアルモードにしてストロボ側でE−TTL調光を使うケースが実は一番多いのです。その選択枝が奪われたことは大きなショックでした。
ストロボメーターを用いて撮影すれば?と思われるかもしれません。しかし絞り調節範囲がF8までしか無いという事は、外付けストロボで最大光量で発光されると露出オーバーとなるケースが殆どで、実用性は薄いです。(550EXにはマニュアル発光量コントロールがあるので、多少は救われます。)
・絞り優先AEモード
シャッター速度は原則1/60秒に固定されます。EOSならば絞り値に対してストロボ無しで背景が適正露出になる速度(通常はスローシャッター)が選択されて、ストロボはシャドウを起こす様な働きをしますが、G2の場合は1/60秒ですから、背景描写を残した夜景夕景撮影(スローシンクロ)が出来ません。日中の逆光の様に背景が明るくて選択した絞り値に対して1/60秒よりも速いシャッター速度が必要な場合は、1/250秒を上限として1/60より高速シャッターが選択されます。それよりも背景が明るい状況ではシャッターが1/250秒に固定されて、絞りが選択値よりも更に絞り込まれます。
つまり絞り優先AEでは、スローシンクロをする手立てがありません。本来スローシンクロって、絞り優先AEでするものの筈で、私はEOSではいつも絞り優先AEでスローシンクロ撮影していますから、この使い勝手の違いには驚いてしまいます。
・シャッター優先AEモード
このモードがストロボ撮影には一番使い道があるかもしれません。選択したシャッターに対して背景露出が適正となる絞りが選択されますので、スローシンクロも可能です。一般的な暗い状況では勿論開放値になります。但し、背景が明るくて最小絞り値(F8)よりも小絞りが必要な状況でも、ストロボ撮影時には露出警告が出ませんので注意が必要です(よく騙されます)。
また、ストロボ同調速度(1/250秒)よりも速いシャッター速度を選ぶと、Gシリーズで有名な絞込みトリックが発生します(英語ではF8
Trickと呼ばれています)。高速シャッターでは明るい絞りが構造上使えない為に、例えば1/1000秒ではどのような状態でも、絞りはF8となり、シャッターは同調最高速度の1/250秒に変更されます。選択したシャッター速度と、実際に選択される絞り値、シャッター速度は以下のとおりです。
ストロボ撮影時に高速シヤッターを選択した場合の動作
室内撮影などの極度に明るくはない状況では、赤文字の絞り値に設定される
選択シャッター速度 |
作動シャッター速度 |
絞り制御範囲(ワイド側) |
絞り制御範囲(テレ側) |
1/1000秒 |
1/250秒 |
F8 |
F8 |
1/800秒 |
1/250秒 |
F7.1 - F8 |
F8 |
1/640秒 |
1/250秒 |
F4.5 - F8 |
F5.6 - F8 |
1/500秒 |
1/250秒 |
F2.8 - F8 |
F3.5 - F8 |
1/400秒 |
1/250秒 |
F2.5 - F8 |
F3.2 - F8 |
1/320秒 |
1/250秒 |
F2.2 - F8 |
F2.8 - F8 |
1/250秒より低速 |
選択値 |
F2.0 - F8 |
F2.5 - F8 |
このG2の性癖は、マクロ撮影などでストロボが近すぎて絞り込まないと調光できない状態の時に使える裏技になっています。絞り優先AEで絞り込むという手も有りますが、この時のシャッターは1/60秒になります。ブレをより完全に防いだり、周辺光の影響を防ぐ為の同調最高速1/250秒と、暗い状況下での開放ではない絞り、そしてストロボ調光を得る唯一の方法です。マニュアルモードでストロボ調光が行われればこんなことしなくても良いのですがね〜。
ハイスピードシンクロが使えない
デジカメにはフィルムが無いので、撮影中のフィルム面反射光で調光するA−TTL調光、TTL調光が使えません。それ故に銀塩EOSとは異なり、デジタルEOSと外部ストロボを使えるパワーショットでは、プリ発光して通常の露出計で調光決定するE−TTLを備えたストロボ以外では調光できなくなっています。このE−TTLストロボ(型番末尾がEX)は全てハイスピードシンクロ機能を備えています。しかし、G2ではハイスピードシンクロが使えず、1/250秒以上のシャッターが使えません。
なお、E−TTL以外のストロボを用いると、常にフル発光します。同じ理由でEーTTLに対応していない、TTLホットシューアダプター/コード類を使った場合、EーTTL対応ストロボでも常にフル発光します。
550EXを装着するとバランスが悪い
G2はコンパクトタイプのボディを持つので、大型EOSの様なしっかりとカメラをホールド出来るようなサイズのグリップがありません。カメラの右手側には小さなグリップがありますが、無いよりマシなレベルの物です。このカメラに550EXを取り付けると、とてつもない頭でっかちなバランスになります。なにせカメラ本体よりもストロボの方が大きく重いのです。それで右手だけではカメラを支えきれずに、つい左手でレンズ鏡筒部分を持ち重さを支えたくなりますが、レンズは伸び縮みする上にガタのあるかなり華奢な造りであり、下手に持つと壊してしまいそうです。だから550EXを装着して撮影する時には、レンズ部分でしっかり支えられるハクバのコンバージョンレンズアダプターが必需品です。これは別に純正のアダプターでもケンコーの物でも良いのですが、かっこ悪いですよ(特にキャノン製は黒なので、ゴールドのボディには似合いません)。コンバージョンレンズアダプターが無いのであれば、左手でストロボを持つ支え方が一番しっくり来るようです。
G2を買ったら、重量バランスの崩れない小型軽量なワイヤレストランスミッターST−E2が欲しくなりました。しかし、中古は全く無く、新品は定価は22000円です!!高いよぉ〜キャノンさん。
オフカメラシューコード2は問題ない...が、
カメラからストロボを分離してセットするための、オフカメラシューコード2はEーTTLに対応しているので、全てのモードで問題なく使えました。但しこのコードをカメラに装着すると、シューから前方に伸びたカールコードがレンズに掛かりがちになりますので、油断すると画面に写りこみます。レンズにかからないように、とコードを引っ張ると、今度はカールコードがバネの様な働きをして、カメラやストロボを動かしてしまいます(コードの張力に対してカメラもストロボも軽すぎて、三脚などに固定しないと安定しません)。あまり使い易い物ではありません。ストレートコードだと良かったのですが。
ワイヤレス多灯撮影、ちょっと期待ハズレ
PowerShot G2は正式にはワイヤレス多灯撮影に対応していません。G3では正式にワイヤレストランスミッターSTーE2への対応をしていますので、この面でもGシリーズは急速に進歩しています。しかし海外のサイトではG2でワイヤレス多灯撮影が出来ると書いてありました。(G1でも使えますが、かなりトリッキーであったり、使えないケースがあったりとの事です。)そこで早速実験をしてみました。ワイヤレストランスミッターST−E2を持っていないので、テストはカメラにトランスミッター機能を内蔵した550EXをマスターストロボとして装着し、もう一台の550EXをスレーブとして使うというものです。
1) マスター非発光。スレーブ発光。(ワイヤレス1灯撮影)
カメラに装着した550EXをST−E2同様にトランスミッターとしてのみ使うモードです。これはきちんと発光し、調光もされます。問題ありません。
2) マスター発光。スレーブ発光。光量比調節無し。(同一光量での2灯撮影)
きちんと発光し、調光もされます。問題ありません。
3) マスター発光。スレーブ発光。光量比調節あり(異なる光量でのワイヤレス2灯撮影)
550EXやST−E2の特徴である、光量比制御をマスター側で行うモードです。これは残念ながら調光されません。ストロボはマスターとスレーブ間の交信を含めて合計3回発光しますが、シャッターとは同調せずに、写真は真っ黒になります。スローシャッターでも写真は黒くなるので、シャッターが開く前に発光している様です。稀に上手く行く事もありますが、どうやったら上手く行くのか傾向は掴めませんでした。あるセッティングでは3枚に1枚ぐらいきちんと写り(2枚はダメ)、別のセッティングでは10枚撮っても1枚も上手く行きませんでした。
E−TTLに対応しているEOSでも、旧型のEOS55やKissシリーズでは光量比調整出来ないとキャノンのサイトに書いてありました。G2はこれらのカメラ並(Kiss並)の扱いという事ですね。
4) マスター発光。スレーブ発光。光量比率調節無し。代りに個別ストロボで調光補正。
2灯の光量比を調節するもう一つの方法で、マスター側では光量比調節せずに個別のストロボ側で調光補正をするものです。このモードならばきちんと発光し、調光もされます。G2による光量比調節撮影は、これが唯一信頼性ある方法の様です。
EOS用ストロボを使う目的で買ったG2ですが、当然EOSと同じ感覚で使えるものと思っていた私にはちょっと期待はずれでした。操作性、使える機能、実用になる撮影モードのいずれもEOSとは異なるので、頭を切り替えないと使いこなせません。しかし、他のメーカーのデジカメ&ストロボを買った場合はもっと違和感があったでしょうから、遠い将来にEOSデジタルを買うまではこれで妥協せざるを得ないでしょう。
厳しいことを書きましたが、しかし外部ストロボを使えるか否かは撮影結果に対して大きな差を生みます。被写体背後の影を緩和する為にバウンス撮影や、デフューザー撮影が欠かせず、それらは一応実現出来るし、多灯撮影まで出来ますからね。福沢さん数人の予算では他に選択枝が無く、現時点でベストな選択とも言えます。
それに、ストロボ撮影にはデジカメとしてのメリットが最大限に生かされるとも感じました。バウンス撮影、レフ板やデフューザーを併用した撮影、多灯撮影などの、光のバランスどりが難しい撮影でも結果がその場で分かります。デジカメならフィルム代も気にせず、どんどん試行錯誤できますのでライティングの勉強になりますし、銀塩撮影の為のセッティングの追い込み&テストにも役立ちそうです。
多少の難があるとはいえ、外部ストロボで撮影する術を得ましたので、今後つぶやきに掲載する機材関連の写真は、今までよりも多少クォリティの高いものになると思います。
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