前回つぶやきからの続きです。
7 操作性:レンズ非交換式EOSだと思うと裏切られます。所詮はコンパクトカメラです。
撮影モードが一見EOS同様にフルに備わっているので、EOSユーザーはその気になってしまい、操作性や撮影リズムについてもEOSのサブ機としてのものをG2に期待してしまいます。しかし、そう思うと裏切られます。
まずボディサイズとグリップですが、どちらもEOSに比べてとても小さく、しっかり握ることが出来ません。それ故に右手で持っていると、親指部分にあるメニュースイッチを良く押してしまい、撮影のリズムを阻害されます。この小さなボディに550EXの様な大きくて重い外部ストロボを付けると、右手だけではカメラを支えられなくなり、通常のホールディングでは撮影できなくなります。右手はグリップとシャッター、左手はストロボ(!)を支えるような持ち方になります。これを改善しようとすれば、オリンパスE20やニコンCOOLPIX
5700の様な一眼レフ的なスタイルになってしまうのでしょう。コンパクト性とのトレードオフですね。個人的にはカメラ下部につけるような延長グリップが欲しいです。G1用は米国で販売されているのですが、G2用は発売されないままにG3の時代になってしまいました。
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G2の前面&上部。グリップは一見立派そうですが、サイズが小さく私の手には寸足らずです。モードダイヤルはEOS中級機と同様な見栄えです。EOSなら必ず付いているシャッターボタンの前のメイン電子ダイヤルがG2にはありません。これはG3で初めて採用されました。 |
中級以上のEOSの操作性は一つの完成されたレベルに達しています。前メイン電子ダイヤル、後サブ電子ダイヤルによる瞬時の撮影パラメーター変更は、慣れると手放せなくなります。しかしG2はそれと比べると15年は遅れている、ミノルタの初期のAFカメラの様な操作性です。メイン電子ダイヤルもサブ電子ダイヤルもなく、露出補正一つでも、小さなボタンを押してメニューを呼び出し、その後で小さな十字キーで動かし補正値を設定し、その後にまた小さなボタンを数度押して撮影モードに戻るといった具合です。
G3では前メイン電子ダイヤルが採用されて、操作性が著しく改善されましたが、まだ後サブ電子ダイヤルがありません。G4かG5を待たないと付かないのでしょう。
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G2の背面。液晶モニターは自由自在なアングルを採る事が出来て、実に使いやすいです。右手側には所狭しとボタンが並んでいます。本来はドットが刻まれている位置に親指を置くのですが、小さなボディと小さなグリップ故に手の収まりが悪く、普通に持つと右端のMENUボタンのあたりを押してしまいます。これを押すと設定変更画面に行ってしまうので、直ぐには撮影出来なくなります。 |
AFはEOS55の様な3点AFで、視線入力はありません。手動でAFポイントを切り替えて使いますが、AFポイントの切替がワンタッチでは無いので、常に中央のAFポイントでシャッター半押しでAFロックして使うほうが良いようです。AFはあまり速いという気がしません。シャッターラグもかなりあり、スポーツなどの撮影には苦労するでしょう。
このカメラの操作性で最も優れている部分は液晶モニターです。自由自在なアングルにすることが出来るモニターには、AFフレーム、シャッター、絞り値、ストロボのON/OFFなどの必要な情報が常に表示されています(消すことも可)。また撮影後は画像の拡大、ヒストグラム表示なども出来て、結果のチェックが実用的に出来るようになっています。かなりの撮影操作が液晶モニターでないと出来ないようにも設計されており、史上最悪の光学ファインダー設計からしても、このカメラは液晶を使って撮影するのがデフォルトです。通常は液晶を上に向けて、ウェストレベルで撮影するのが最も自然なようです。
液晶で撮影していて面白いな、と思ったことが、シャッター半押しすると、AFが作動してピントが合うだけではなく、絞込みも行われて被写界深度のプレビューが出来ることです。但し35mm一眼レフの様な厳密なチェックは無理です。
室内撮影で有れば液晶のコントラストも高く使いやすいのですが、屋外ではさすがに外光の影響を受けて、画像が見えにくくなります。屋外では市販の液晶フードなどが欲しくなります(ルーペつきのものをその内に買おうかなと思っています)。
スローシャッターには必須のケーブルレリーズは使えません。EOS7などと同じ端子(ステレオミニジャック)をつけておいてくれれば良いのですが...
代りにリモコンが付属していますが、これを使うと常に2秒後のシャッターリリースとなり、シャッターチャンスを生かす撮影には使えません。このあたりは何とかして欲しいものです。
電池は良く持ちます。米国のサイトのテストでは、ストロボ併用で400カットぐらい撮影可能でした。私自身もつい充電を忘れるほどです。メモリー効果の無いリチウムイオン電池なので、出かける前に充電する癖をつければ、その日の撮影の内に電池がなくなることは多分無いでしょう。予備電池の必要性を感じていません。
もし予備電池を買うとなると、純正は定価8000円です。外部充電器に至っては18000円です。D30/D60用の充電器も使えるようですが、部品で取り寄せたときの値段は知りません。電池は同等品がケンコーから多少安く販売されています。
普段の充電はカメラにACアダプターを接続して行いますが、充電時間は3時間程度かかります。充電を始めるとファインダー部のオレンジライトが点滅し、1時間強で常時点灯になれば90%充電、その後2時間程度かけて100%充電まで達します(この時は緑色が点灯)。90%から100%への充電時間がとても長く感じます。まあ、容量は十分でメモリー効果は無いので、急いでいるときには90%充電で使用しても実害は無いです。
8 パソコンとの接続:長期視点では玩具と考えておけば裏切られない。
接続はUSBケーブルです。カメラ側端子が専用なので、専用ケーブルでないと接続出来ません(やめて欲しいです、こういう設計。この種の専用部品は、接触不良を起こす頃には補修部品保有期間が終わっていて入手できなくなります)。USBケーブル接続端子は、四角いゴムのカバーで覆われていますが、このカバーを開ける方法は操作し難くスマートとは言えません。G3では早速改善されてきました。パソコン用の様々なソフトが用意されていますが、私個人はフォトショップでRAWファイルの現像をするTWAINドライバー以外は使いません。パソコンへの画像ダウンロードはコンパクトフラッシュリーダーを使っています。
一つ面白いソフトは、カメラをパソコンから遠隔操作するものです。パソコンでファインダー画像を確認しながら、ズーム調節をしてシャッターを切ることができますから、自宅の庭に来る野鳥などを撮るのには良いかもしれません。但し撮影はプログラムオートに限られるし、待機している内に節電機能により電源がOFFになったりするようです。またUSBケーブルの長さにも制限があるとか。
う〜ん、発想は面白いのですが、今一歩でしょうか。
いずれにしても、パソコンとの接続というのは、短期的な玩具と捉えたほうが良いです。OSやインターフェースがどんどん進化し、2年も経つと現在のOSが古くなり、カメラやソフトが新しいOSには対応できなくなっている事が往々にしてあるからです。5年後ならほぼ間違いなく対応出来なくなっているでしょう。コンパクトフラッシュ(というOSに依存しないメディア)にJPEG(というOSに依存しない標準フォーマット)で保存出来ることがこのカメラにとって一番大切な事です。RAWはどうしても現像プロセスがOSに依存し、かつフォーマットそのものがキャノン独自ですから、長期使用にはちょっと不安ですね。
9 結論:「カメラとしての完成度が違います」〜確かに違う。未完成品だ!!
このカメラの機能や操作性の評価は、このカメラをどう見るかで大きく異なると思います。レンズ固定式のコンパクトEOSだ、と思ってしまうと、全てに落胆します。機能も操作性もEOSと比べてれば大きく劣り、作品製作に使えるマシンとは言えません。しかしコンパクトデジカメの一種として見れば(実際そうですが)、画質は間違いなくトップレベルで、機能的にもとりあえずあれこれ出来るので、評価はぐ〜〜んと上がる事になります。しかし私はEOSユーザーなので、どうしても前者の見方をしてしまいます。
カタログを開くと「カメラとしての完成度が違います」と書いてありますが、確かに違います。最新EOSと比べると15年は遅れている未完成品というのが実態でしょう。それだけに様々な機能性能が急速に改善されている途上で、例えばG3ではグリップも大きくなり、EOSの様なメイン電子ダイヤルもつきました。シャッターと絞りの範囲も拡大されています。それでもなおEOSと比べると大きく見劣りしますので、この進化は当面続くでしょう。つまり「最新のGが最良のG」という時代が暫く続きます。そして恐らくG5あたりでEOSの機能や操作性に追いついたときに、同じ値段でKissデジタルが買えてしまうという自己矛盾に陥り、Gシリーズの歴史を閉じる運命にあるカメラだと思いました。まるで一昔前のワープロの様です(ワープロがPowerShot
G series、パソコンがEOSというアナロジーです。ワープロがパソコン並の機能を持ったとき、ワープロは世の中から姿を消しました)。いや「コンパクトデジカメに徹すれば良いではないか」と思われるかも知れませんが、Sシリーズという事実上Gシリーズから外部ストロボなどのハイエンド機能を取り除いただけのカメラがあり、ハイエンドを目指したGシリーズはEOSデジタルの低価格化で行き場を失うのです。
次回つぶやきでは、外部ストロボの作動テストについて語ります。
続く
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