前回つぶやきに書いた様に、昨年の反省を踏まえて、今年は明け方の光りにたたずむ湯来の枝垂れ桜を、夜明けに藍色に発色するはずのコダック・エクタクロームE100VSを用いて、1アングルでフィルム1本撮影しました。その36枚を丸ごとお見せしますので、朝の光の具合(夜明けからの時間経過)、露出によりE100VSがどのような表現をするか、じっくりとご覧下さい。
スリーブの全コマです。縦位置撮影した写真ですが、ポジの雰囲気を味わって頂く為に90度右に傾いたままにしてあります(右側が上になります)。同じアングルでアンダーからオーバーに順番に撮影していますが、No.13とNo.14はNo.10-12に対してアンダー側を追加したもので、この部分だけ順番がイレギュラーになっています。
共通データ
EOS3, EF70-200mm F2.8L USM, 絞り優先AE、コダック・エクタクロームE100VS
天候は曇り。撮影時刻午前5:50〜6:30。(当日の日の出は5:45)
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No.1
180mm, F2.8, +0.0EV, 0.4秒 |
No.2
180mm, F2.8, +0.3EV, 0.5秒 |
No.3
180mm, F2.8, +0.7EV, 0.6秒 |
No.4
180mm, F2.8, +0.0EV, 0.3秒 |
No.5
180mm, F2.8, +0.3EV, 0.4秒 |
No.6
180mm, F2.8, +0.7EV, 0.5秒 |
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No.7
180mm, F2.8, +0.0EV, 1/4秒 |
No.8
180mm, F2.8, +0.3EV, 0.3秒 |
No.9
180mm, F2.8, +0.7EV, 0.4秒 |
No.10
120mm, F2.8, +0.0EV, 0.3秒 |
No.11
120mm, F2.8, +0.3EV, 0.4秒 |
No.12
120mm, F2.8, +0.7EV, 0.5秒 |
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No.13
120mm, F2.8, -0.7EV, 1/5秒 |
No.14
120mm, F2.8, -0.3EV, 1/4秒 |
No.15
120mm, F4, -0.7EV, 0.3秒 |
No.16
120mm, F4, -0.3EV, 0.4秒 |
No.17
120mm, F4, +0.0EV, 0.5秒 |
No.18
120mm, F4, +0.3EV, 0.6秒 |
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No.19
120mm, F4, +0.7EV, 0.8秒 |
No.20
120mm, F4, +1.0EV, 1.0秒 |
No.21
200mm, F4, -0.7EV, 1/4秒 |
No.22
200mm, F4, -0.3EV, 0.3秒 |
No.23
200mm, F4, +0.0EV, 0.4秒 |
No.24
200mm, F4, +0.3EV, 0.5秒 |
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No.25
200mm, F4, +0.7EV, 0.6秒 |
No.26
200mm, F4, +1.0EV, 0.8秒 |
No.27
200mm, F2.8, -0.3EV, 1/8秒 |
No.28
200mm, F2.8, +0.0EV, 1/6秒 |
No.29
200mm, F2.8, +0.3EV, 1/5秒 |
No.30
200mm, F2.8, +0.7EV, 1/4秒 |
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No.31
200mm, F2.8, +1.0EV, 0.3秒 |
No.32
120mm, F2.8, -0.7EV, 1/10秒 |
No.33
120mm, F2.8, -0.3EV, 1/8秒 |
No.34
120mm, F2.8, +0.0EV, 1/6秒 |
No.35
120mm, F2.8, +0.3EV, 1/5秒 |
No.36
120mm, F2.8, +0.7EV, 1/4秒 |
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ほぼ日の出の時刻から1時間弱に渡って撮影したコマを一望すると気付くことがあります。それは周囲が明るくなるに連れて、桜の色が変わって行くことです。撮影データを見れば、同じ露出補正値でもシャッタースピードがだんだん速くなっていますが、これは正に夜明けと共に明るさが増している証拠。それに伴い、桜が本来の色であるピンク色に染まり出しています。
E100VSはデーライトタイプですから、太陽の下ではほぼ忠実な色再現をしますが、太陽の無い時間帯には全く異なる性格を示します。その二つの性格の間を遷移してゆく様子がこのスリーブに写し込まれています。日の出直後の青さは一瞬タングステンフィルムかと見間違いますが、タングステンフィルムの持つブルーはもっと明るい(浅い)ブルーであり、E100VSの藍色の方が味わい深いと思っています。フジのフィルムでも夜は青めに転びますが、ここまで極端ではありません。
今度は露出と桜の表情の違いを見てみます。No.10-15のコマを基準とすれば、露出補正無し(+0.0EV)のカットは「なるほど適正露出!」と思えるバランスになっています。桜の花にも表情が残り、背景も暗い中にも僅かなトーンを残しています。これよりもオーバー目にすると、画面全体が明るくなり、前ボケが美しくなります。背景のトーンも浮かび上がって立体的になってきますが、肝心の桜の花びらが白く飛んでしまい、表情を見せなくなります。E100VS特有の藍色も存在を薄めて行きます。逆にアンダー側に振ると、背景は暗く沈み込み、主役だけを引き立たせるようになります。前ボケも薄暗くなり、ボケというよりも現実の存在感を持つようになります。ひとつの驚きが、桜の花びらが深い表情を見せる事です。曇りの夜明けですから、花に影は出来ない筈ですが、微妙な光の濃淡が出来て、あたかも暗い中にかすかな光源があるかの様です。一見暗くて露出を過った写真に見えますが、そこには深い藍色に染まった微妙な階調があり、細かく見れば見るほどに引き込まれてゆく気がします。
同一アングル、同一時点のカットを露出違いで見る。
上をクリックしてください。今度は露出をマイナス0.7EV補正からプラス0.7EV補正まで振った5枚の写真を用意しました。E100VS特有の藍色を魅力的に発色させるにはどうすべきかを見ることが出来ます。 |
ネイチャー写真の定番フィルムといえばベルビアで私も多用しています。E100VSはそんなベルビアひとり勝ち状態に食い込むべく、鮮やかな発色をするISO100フィルムとして発売されました。残念ながら粒状性が悪く、この点においてベルビアの敵ではありませんが、ご覧のようにフジのフィルムには無い第二の性格が隠されていました。この性格を見つけてからは、夜明けの撮影の多い私は、E100VSの使用頻度がベルビアを追い越してしまいました。現在では完全にKENのメインフィルムです。
この日没後、夜明け、月明かりの夜などで藍色に発色する癖は、エクタクロームE系にある程度共通する性格だと思います。私が確認した中では、E100VSに加えて、同じ乳剤のダイナ・ハイカラー(EBX)、そしてダイナ100EX
(EB2)にもありました(という事はダイナEXと同じ乳剤のE100Sにもあるはずです)。最近発売されたE100G/ダイナHG
(EB3)にもこの性格が残されているかどうかは未だ確認できていません。E系でもウォーム系のE100SW/E100GXには藍色に発色するこの性格は多分無いでしょう(未確認ですが)。
フジ一辺倒な皆さんは、一度エクタクロームE系で早朝や夕方に遊んでみては如何でしょう。新しい発見が有るかも知れませんよ。 |