短期で商品を陳腐化させて頻繁な再購入/システム入れ換えを強要し、既存の機材の廃却/資源の浪費を加速するデジタル時代を憂いた「KENの大判菌拡散計画」第2段として(笑)、数十年間に渡り基本的に変わっていない4x5カメラで、ブローニーフィルムを使うための「ロールフィルムホルダー」の事を書くことにします。
4x5を買ったら、ロールフィルムホルダーも買いましょう!
4x5大判カメラを持つ人にとって、ブローニーフィルムの使えるロールフィルムホルダーは必携の便利機材です。手持ちの大判カメラがフルにアオリの使える中判カメラに早変わりして、様々なメリットが生まれます。
第一のメリットが安価に撮影を楽しめることです。ポジフィルムの場合、4x5フィルムは10枚入り一箱2500円前後が実売価格です。つまり1枚250円。現像料は350円程度なので、合わせて600円が一枚当たりの撮影コストになります。これが120フィルムであればフィルム代と現像代を合わせて一本1000円程度で、6x9なら8枚、6x7なら10枚撮影できます。4x5に対する単価は1/5〜1/6になってしまいます。
ネガフィルムの場合はもっと差が広がります。何故なら4x5フィルムからの機械焼きサービスプリントは無く、全て手焼きになるからです。フィルム代と現像代はポジとあまり変わらず合わせて一枚550〜600円程度。これにプリント代が最低でも400円〜480円程度上乗せとなり、単価はほぼ1000円に達します。これが120フィルムであればサービスプリント代を含めても一本(8〜10枚)当たり1000〜1200円程度ですから、単価は4x5の1/10近くになってしまいます。
第二のメリットが迅速な撮影が出来ることです。4x5は一枚一枚引き蓋の付け外し作業と、フィルムホルダーの入れ換え作業が必要ですが、ロールフィルムホルダーはフィルムを巻き上げるだけで次の撮影体勢に入れますので、迅速に連写出来ます。ランニングコストの安さと併せてブラケッティング撮影などが迅速気楽に出来ます。
第三のメリットは大判同様にリアのアオリを含めて、アオリがフルにつかえる事で、ホースマンVHやハンザフィールド6x9などのビューカメラタイプの中判カメラを除けば、前後でアオリの出来る中判カメラは無いと思います。使ったことのない人は、EOSのTSーEレンズとか、フジGX680IIIなどのフロントアオリがあれば「アオリが出来る」と思われるでしょうけど、フロントとリアのアオリは役割/性格が異なり、風景撮影などではリアのアオリの使用頻度が実は高いのです。
第四のメリット(これが最大のメリットだと思います)は同じレンズでより望遠系の撮影が出来る事です。標準レンズの焦点距離を画面サイズの対角線長を基準に語ることがありますが、対角線長は35mm(24x36mm)で「43mm」、6x7(56x69mm)が「89mm」、6x9(56x84mm)が「101mm」、そして4x5(実測97x120mm)が「154mm」です。4x5を基準とすれば、6x9は1.5倍、6x7は1.7倍小さく、逆に言えばロールフィルム使用時は4x5用のある焦点距離のレンズが、その倍数を掛けた長焦点レンズ同等画角になるという事です。つまり、「一本のレンズが二度美味しい」。
APSサイズデジタル一眼レフと、35mmフルサイズデジタル一眼レフの両方をを持っている場合と似たような現象ですが、画質の点ではデジタルとは異なり、画面の小さな6x9、6x7でも全紙までなら4x5と遜色のない情報量を見せますから、実用上何等デメリットの無いレンズの画角変更デバイスと捉えても間違いにはならないでしょう。
第五のメリットはフォーマット(画面の縦横比)を変えた撮影が出来ることです。4x5の縦横比は6x7と同じです。一見異なるようですが、6x7の画面は56x67〜70mmで、比率としては6x7.5というのが正しく4x5と同じになります。一般的なロールフィルムホルダーにはそれ以外にも6x9と6x12がありますので、これらを買い足す事で、様々な縦横比の撮影を楽しむことが出来ます。
中判カメラにも複数のフォーマットをカバーする機材はあります。フジのGX680IIIは645、6x6、6x7、6x8の撮影が出来ますが、パノラマ画面の6x12は当然出来ません。大画面パノラマは一部の特殊なカメラを除けば、4x5大判カメラにのみ許された世界です。
ちょっと高価ですが、4x5用最終兵器としてジナー・ズームロールフィルムホルダーの存在をご紹介しておきます。これはひとこま単位で645、6x6、6x7、6x9、6x12のフォーマットを選択出来るロールフィルムホルダーです。これがあれば手持ちの4x5カメラは無敵のマルチフォーマットカメラになります。
という様な具合で、大判カメラを買えば、次に欲しくなるのはロールフィルムホルダーなのです。
KENのロールフィルムホルダー選び
ロールフィルムホルダーには様々なメーカーのものがありますが、代表的なものはトヨとホースマンのものでしょう。これらはいずれも4x5国際規格に合致していて、現在発売されている4x5カメラであれば殆どの機種に使用可能です。それ以外にもテヒニカとかジナーとかカンボとかマミヤもありますが、高価であったり、特殊であったり、滅多になかったり、国際規格に合致していないので使える機種が限られるとか問題もあります。前述のジナーのズームロールフィルムホルダーは欲しかったりしますが、中古など全くなく、新品価格は私の大判カメラセットを全部併せても足りないくらいに高いので、買うのはちょっと無理ですね。
中古ショップを巡ると数多く見ることが出来るのはホースマンのホルダーで、6x7、6x9、6x12の各サイズが用意されています。しかし私がねらいを定めたのはトヨの6x9ホルダーでした。6x7と6x9が用意されたトヨのホルダーはピントグラスを外さずに装着できるように作ってあるからです。欠点といえば重いことで、670gもあり、ホースマンは530gなので140gの差があります。しかしトヨフィールドを持っているので「トヨの方が良いかな?ピントグラスも外さずに済むし..」と考え、中古が出現したときに迷わず購入しました。
トヨ・69/45ロールフィルムホルダー
では、私の使用しているTOYO 69/45 Roll Film
Holderについてご紹介しましょう。一部を除いて総金属製の、手作り感に溢れた精緻でがっちりした作りのホルダーです。120フィルム専用で、「裏窓」はなく、自動巻止め機構が内蔵されています。ちょっと意地悪をして300mmF8開放で撮影した写真でもピントはバッチリでしたから、ピント面の精度、フィルム平面性はかなり良いようです。
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TOYO 69/45 Roll Film Holderの全景。
上下についているガイド板を除けば金属製の、手作り感覚溢れるがっちりした製品です。精度の要求されるレンズ側のプレートは分厚いジュラルミン(だと思う)の無垢板です。それだけに重量もかなりあります。 |
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内部構造です。厚い金属の無垢板で出来たプレシャープレートは、四つのスプリングで支えられ、正確なピント面を作り出します。プレシャープレートの前後には合計四つのガイドローラーがあり、フィルムをスムーズかつ面精度高く送り出します。 |
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上部です。「巻止め解除ボタン」はここに付いています。 |
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裏側です。こちらはピント面を司りますので、分厚い金属の無垢板で出来ています。もちろん4x5国際規格に準拠しており、ほとんどの4x5カメラに使用出来ます。
引き蓋は、ロック解除レバーを押してから引きますが、一杯に引き出したところで再度ロックがかかりますので、完全に引き抜く必要はありません。 |
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向かって右側、巻き取りレバーのある側の側面です。裏蓋開閉レバーが下側に、そのロックレバーが上側に付いています。 |
使用方法も書いておきましょう
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フィルムカウンターをSにして、巻止め解除ボタンがスライドされていない状態にする(これをしないと、とんでもないことに...)。
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裏蓋を開けて、スプールを巻き上げ側に取り付け直し、手でスプールを巻き上げ方向に回してリーダーペーパーを差し込み易い位置にする。
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フィルムを装填して、リーダーペーパーを巻き取り側スプールに差し込む。
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フィルム巻き上げレバーを巻き上げ、裏紙のスタートマークをホルダー側のスタートマークに合わせる。
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裏蓋を閉めて、巻止め解除ボタンを矢印方向にスライドさせる(レバーをスライドさせる前にフィルムを巻き上げてはいけません)。
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巻き上げレバーを巻き上げると、カウンターに「1」の数字が出て止まる。
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ホルダーをカメラにセットして、引き蓋ロックを押し、引き蓋を止まるまで引き出す。
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撮影し、引き蓋を戻す。
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巻止め解除ボタンを矢印方向にスライドさせて、フィルムを巻き上げれば、カウンターに「2」の数字が出て止まる。以下、7、8、9の操作を規定枚数の撮影が終わるまで繰り返す。
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規定枚数に達してから巻き上げると、フィルムカウンターには「S」の文字が現れ、巻き上げレバーは何度でも巻き上げられるようになるので、フィルムが完全に巻き上げられて手ごたえが無くなるまで、巻き上げる。
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裏蓋を開けて、フィルムを取り出す。
ついでに、トヨの全ロールフィルムホルダーの規格もここに掲載しておきます。
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トヨ・ロールフィルムホルダー67/45 |
トヨ・ロールフィルムホルダー67 |
トヨ・ロールフィルムホルダー69/45 |
トヨ・ロールフィルムホルダー69 |
品番・略称 |
No.8031 RFH67/45 |
No.8032 RFH67 |
No.8033 RFH69/45 |
No.8034 RFH69 |
使用フィルム |
ロールフィルムJ120専用 |
ロールフィルムJ120専用 |
ロールフィルムJ120専用 |
ロールフィルムJ120専用 |
公称画面寸法 |
6cm x 7cm |
6cm x 7cm |
6cm x 9cm |
6cm x 9cm |
実画面寸法 |
56mm x 67mm |
56mm x 67mm |
56mm x 84mm |
56mm x 84mm |
撮影枚数 |
10枚 |
10枚 |
8枚 |
8枚 |
フィルムカウンター |
ロータリー式 |
ロータリー式 |
ロータリー式 |
ロータリー式 |
フィルム巻き上げ |
巻き上げ多動作
強制ストップ方式 |
巻き上げ多動作
強制ストップ方式 |
巻き上げ多動作
強制ストップ方式 |
巻き上げ多動作
強制ストップ方式 |
カメラ取り付け規格 |
4x5インチ国際規格
ユニバーサル方式 |
6x9センチ国際規格
ユニバーサル方式 |
4x5インチ国際規格
ユニバーサル方式 |
6x9センチ国際規格
ユニバーサル方式 |
外形寸法 |
128x211x48mm |
113x211x47mm |
128x211x48mm |
113x211x47mm |
重量 |
670g |
580g |
670g |
580g |
安価に最高の画質が楽しめ、おまけに手軽なランニングコストで撮影でき、フルにアオリのできる中判カメラにもなる。やっぱカメラは大判+ロールフィルムホルダーでしょ!(^o^)/
ほ〜ら、あなたは大判が欲しくなる、欲しくなる、欲しくなる、欲しくなるっ!(@o@;)
この話題には更に続きがあります。それは次回つぶやきで..
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