ウッドかメタルか?と言えばゴルフクラブの話題に聞こえますが、もちろんカメラの話題です。つぶやき193で4x5判フィールドカメラをお勧めしましたが、このカメラには木製と金属製の2種類があり、どちらも主流をなしています。今回は各々の特長を書いてみますので、カメラ選びに役立ててください。とは言え、私は金属製のトヨしか持っておらず、木製カメラは友人Mのタチハラを触ったり、店頭でナガオカなどを眺めたりしているだけなので、あまり信用ならないかも知れません(オイ!)。
まずはタチハラ・フィルスタンド45GFとトヨフィールド45Aの写真をご覧下さい。
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タチハラとトヨフィールド45Aの比較写真。
タチハラは持っていないので、海外版カタログから引用しました(著作権上問題あるカナ(^_^;)。カメラ同志の比較は本文を参照頂くとして、写真同志の比較を語っておきましょう。タチハラの写真は大判メーカーのものだけあってアオリにより形を矯正してあります。フロントスタンダードがキチンと垂直に立っていますね。一方のトヨの写真はデジカメ広角レンズで撮影したので、近い所ほど大きく写るので上広がりに写っています。こんな現象を補正できるものアオリの特長です。 |
では「ウッド vs. メタル」のKENの直感的評価をして行きましょう。
#あくまで直感ですから、本当にカメラ選びをされる際にはオーナーのホームページとかメーカーのサイトとかを訪問して、様々な角度から調べてみてください。
1 美しいか? ~ウッドの勝ち
デザインは嗜好の問題なので、優劣を付ける意味は殆どありませんが、メタルカメラは真っ黒けです。超高価なリンホフは金属の地金の銀と黒のコントラストを持っていますが、例外と捉えた方が良く、ホースマンもトヨも真っ黒です。一方のウッドカメラは木の材質、木の色、塗装仕上げ、金具の色、蛇腹の色などが様々で、極めて多様なバリエーションから選ぶことが出来ます。上記のタチハラの写真はご覧のように光沢のある茶の桜材に金色の金具を用いています。更に趣味性の高いバージョンとして、これに赤蛇腹を組み合わせたものもありました。もちろん大人しい銀色の金具に黒蛇腹のものもあります。ナガオカやホースマンのウッドマン45などはもう少し光沢を抑えた塗装になっています。ウィスタには黒檀を用いた黒っぽいウッドカメラもあります。
上記写真と同じタチハラを所有されているうみょ吉さんの「このカメラここがマル、あそこがバツ」の「タチハラフィルスタンド45GF」のページには『友人は「なんなのその宝石箱みたいなのは?」と言いました。うーん、言い得て妙だ。』と書かれています。この様な出来事はメタルカメラでは起き得ない事でしょうね。
ウッドカメラは、大判カメラを良く知らない人にとって「とても古いカメラ」と思われるようです。だから最新のタチハラあたりを使っていると、お爺さんに話しかけられて「お兄さん、古いカメラを使っているね。それなのにとても綺麗だなぁ。まるで新品みたいだ。あなたはものを大切にする人なだなぁ...」などと妙に尊敬される事も有るかも知れません(笑)。
2 軽いか ~ウッドの勝ち
タチハラは1.5kg。トヨフィールド45AII(現行型)は2.8kg、私の持っている45A(旧型)は2.4kgです。この点では文句無くウッドカメラの方が軽く、撮影旅行などに持ち出す場合のメリットです。但し軽量をウリにする幾つかのカメラには収納時にピントグラスを保護するピントフードがありませんので、100~200g分ぐらいはサバを読んでいるとも言えます。ピントグラスを保護するものは有った方が良いと思いますので、購入前にチェックしてください。
3 操作性は ~メタルの勝ち
木材それ自身はボルトなどのロックメカニズムを受け止めることが出来ません。ウッドカメラは木のフレームに加えて、金属リンクとボルトとナットなどを用いて可動メカニズムを作り上げます。結果的にボルトなどが細くなりがちで、ダイヤルやレバー類も小さくなりがちです。メタルカメラは金属部品そのものにタップを立てればボルトを受け止めますので、十分な大きさ、太さを持ったボルトやダイヤルを使えます。上記のタチハラとトヨの写真を比べていただければ判るように、タチハラのダイヤル類が小さいのに対して、トヨのは大きくなっています。実際にトヨの全てのダイヤル、レバー類は手袋をしていても操作可能です。
4 信頼感は ~メタルの勝ち
これは重さとの引き換えになりますが、カメラを実際に使っている時の剛性感、信頼感はメタルの勝ちだと思います。うみょ吉さんのぶつぶつによれば、例えば重いロールフィルムホルダーを装着した瞬間にタチハラは(もちろんホンの僅かですが)ビョーンとたわみ、また元に戻るとあります。私のトヨではその様な事は全く有りません。どの可動部においてもロックを解除した時の動きのスムーズさ、そしてロックしたときの剛性感、ぐらつきの無さはメタルならではのものでしょう。
また、万一の雨に濡れた場合も、ウッドよりはメタルの方が安心感はあります。
5 価格 ~ウッドの勝ち
メタルカメラはちょっと高いです。タチハラの新品は10万円ちょっと、ナガオカなら8万円台ですが、メタルのトヨ45Aにしてもホースマン45HD/FAにしても20万円を大きく上回ります。当然これは中古価格にも反映されています。
6 結論 ~勝敗無し
これが大判の世界での一般的な結論になっています。メタルもウッドも一長一短であり、どちらもキチンと写真は撮れます。ある程度のメインテナンスを怠らなければ、どちらも数十年間使う事が出来ます。だから純然たる個々人の趣味の問題としてウッドかメタルかを決定されて購入してください。
7 KENの一言コメント(あまり真面目に参考にしないよ~に(^_^; )
トヨフィールド45AII(メタル):
私の45Aに対し、各ダイヤル部がゴム巻きになり操作性を向上しています。またカメラバック部がワンタッチで縦横切替の出来るレボルビングバックになっています。結果的に操作性、安心感ではフィールドカメラの中でもピカイチかと思いますが、重いのが玉にきずの2.8kgです。トヨフィールドボードは110mm角と大きく嵩張りますが、このモデルにはリンホフボード仕様もあるので、新品買うならそちらがお勧め。価格はトヨフィールドボード仕様が205000円、リンホフボード仕様が235000円と、メタルとしてはお手ごろです。
海外にはレボルビングバックを通常の差替え式バックにして、更にピントフードを省略した45AXというモデルもあります。新品で500ドルほど安く、重さも200gぐらい軽いそうです。海外の中古を買われる際にはこちらも良い選択かも知れません。
トヨフィールド45A(メタル):
トヨのロールフィルムホルダー装着時に巻き上げの出来ない事を除けば、特に不満は無いです。非常に良く出来たカメラ。但し同じ45Aでも初期型にはグラフロック(4x5国際規格の取り付け構造)の無いものが有り、新しいバックに交換しないとロールフィルムホルダーその他のアクセサリーが使えませんので要注意です。一般的な欠点はレンズボードが専用で大きめのトヨフィールドボードで有ることでしょうか。レボルビングバックが無い分、新しい45AIIよりも400gも軽く、グラフロック仕様の中古が有ればお勧め。
ホースマン45FA(メタル):
ホースマンの上級モデルで、内容は充実。重さも驚異の2.0kgと軽いのでお勧めかも。但し新品定価は349000円と高いです。最大繰り出し量が少し足りずテレタイプではない300mmが使えない事と、ホースマンボードは8cmx8cmしか無いためにコパルNo.3シャッター搭載レンズと、後玉の大きなレンズは使えない事は知っておくべきです。その代わりにコンパクトなボードに取り付けたレンズは、収納時にもコンパクト!
ホースマン45HD(メタル):
FAからリアのアオリとピントフードを取り除いた様な機種。使用頻度の高いリアアオリが無いのは致命傷と思うし、またリアのエクステンションも無いので最大繰り出し量が全く不足し、249mmしかありません。重さは1.7kgですが、ピントグラスを保護するピントフードを加えるともう少し重くなります。それ以外はFAと同じ特長/制約があります。価格は230000円もするので、この内容なら文句無くトヨフィールド45AIIを薦めます。
リンホフ・マスターテヒニカ(メタル):
私には判りません(笑)。超高価で中古でもトヨの新品が数台買えてしまいます。アオリ操作もトヨほど簡単ではなさそう。お好きな方はどうぞ。
タチハラ・フィルスタンド45(ウッド)
旧タイプとなった45GF、GFRはホント美しいです。その美しさゆえに一台欲しいカメラ。1.5kgと軽量で、レンズボードは最も一般的なリンホフボードで使いやすいです。世界的に定評のある銘機ですが、数少ない欠点はグラフロックが無いこと。だからこのカメラにはホースマンのロールフィルムホルダーや、クイックロールスライダーなどのアクセサリーが使えません。ロールフィルムホルダーで使えるものは、ピントグラスを外さずに差し込めるものだけで、一部のマイナーなホルダーを除くとトヨのホルダーだけになります。
また収納時にピントグラスを覆うものが無く、工夫が必要です。新品時には黒い板が付属している様ですが、中古ではまず無いでしょう。ま、板切れであれば調達は簡単ですね。
最大繰り出し量が長く300mmレンズを余裕で仕えるのは立派。旧タイプの新品価格は8~9万円台でしたが、現行機種は10万円を少し上回ります。
ホースマン・ウッドマン45(ウッド)
落ち着いた茶色のウッドカメラ。リンホフボード仕様、重さ1.45kg、ピントフード無しと、全体的にタチハラに良く似た作りのカメラです。その割りには大人しいので、ジェントルマン向けか?タチハラよりも優れる点があるとすれば、グラフロックが付いていて、4x5国際規格に準拠したアクセサリーが使えることです。価格はタチハラよりも高めの138000円です。
ウィスタ45(メタル)、ウィスタ・フィールド45(ウッド)
ウィスタはアイデアマンの職人が、溢れるアイデアを織り込めるだけ織り込んだという印象のカメラシステムです。カタログを見ると肝心のカメラの説明はそっちのけで、大判アイデアショップの様な様々なアクセサリーに多くの紙面が割かれています。肝心の4x5カメラですが、メタル機もウッド機も標準状態のレンズ最大繰り出し量は300mmで、テレタイプではない300mmレンズを使うのはちょっと苦しいと思います。しかし専用のアクセサリーによって、超広角撮影とか、フィールドカメラでありながら(実用的かどうかには?を付けるとしても)1200mm撮影を可能としています。
ウッドカメラには非常に多くのバリエーションがあり、木の材質で3種類(黒檀、ローズ、桜)、リアシフトの有無でアオリ機構が2種類、蛇腹交換機能の有無、4x5国際規格対応の有無などがあり、アイデア満載のウィスタの機能が全てのウィスタカメラで使えるとは限らないようです。それだけにウッドのウィスタの中古は、その機種がどの様な仕様で何が出来て何が出来ないのかを見抜けないと、思惑違いの買い物になるでしょう。
メタルカメラは3種類。全て蛇腹交換の出来ることが大きな特長です。トヨ同様にレボルビングバックを装備し、フロントチルトが微動方式なのはちょっと魅力。中級機には更に微動リアスイングが加わり、最上級機はレンジファインダーを装備しています。
新品価格と重さは、メタルのウィスタ45が257000~395000円/2.4~2.9kg。ウッドのウィスタ・フィールド45が93000円~246000円/1.6~2.1kgです。全般的にアイデア満載のシステムですが、そのシステムを生かそうとすると沢山のアクセサリーを買わなければならず、安いとは言い難い本体価格と併せて安上がりに楽しむにはどうかな?と思うカメラです。
トヨフィールド45CF(プラスチック)
メタルカメラの長所とウッドカメラの軽量さを合わせ持つ事を狙ったプラスチックボディのカメラ。製造は韓国。重さは1.55kgとタチハラ並みですが、タチハラ同様にピントフードは付属しません。最小フランジバックが80mmと長く広角レンズの使用に大きな制限があり、凹みボードを用いても実質90mmまでしか使えない事は欠点でしょう。発売前にはその低価格と軽量さと「トヨ」の良品実績からアメリカでは極めて注目されたカメラでしたが、photo.netの掲示板はこのカメラの不具合不満情報で溢れていますので、素直にトヨフィールド45AIIかタチハラを買われた方が無難と思います。新品価格158000円。
その他大判カメラメーカーのホームページ
Canhamのホームページ(英文)
エボニーのホームページ
大判カメラスペック比較(米国販売店のADORAMAの大判冒頭ページ、英文)
問題は大判カメラを「買う」か「買わぬか」ではなく....
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~ ~ へ^^)へ メタルか?
お好きな方をどうぞ!
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