前回つぶやきからの続きです。
------------写真をクリックすると、より大きな画像をご覧いただけます------------
3. 露出補正
彼岸花の群生地を撮影する場合のKENの露出方針は、アンダー気味のEOS3の評価測光を用いて-0.7EV補正、-0.3EV補正、0(補正なし)の三枚ブラケッティングです。花撮影ではプラスの露出補正をするのが通常ですが、彼岸花の、特に群生地の様な画面の大半が赤で包まれる絵柄の場合にプラス補正は不要だと思います。例えば真紅の薔薇を、見た目通りの赤で再現する為には、花をスポット測光してマイナス1EVほどの補正が必要です。彼岸花も赤ですから露出をプラスにすると赤味が失われて行きます。
彼岸花の場合は露出を切り詰めた方が良いもう一つの理由があります。彼岸花の綺麗なタイミングは極めて短く、多くの花が咲き誇る群生地の場合には如何なるタイミングでも、既に花びらが白くなりだした花が混じります。素直な露出であればその白く痛んだ花の存在を如実に浮き上がらせてしまいますが、露出を切り詰めると多少白くなった花も赤っぽく再現されるので、痛んだ花を目立たなくして画面全体を綺麗な赤にしてくれます。
では、フィルムごとに具体的に見てみましょう。まずはE100VSですが、-0.7EVから+1.0EVまで露出補正を変化させたカットが有りましたので、全部お見せしましょう。露出と共に花の赤味が失われて、白くなってゆくサマが分ると思います。私個人が判断するE100VSの露出の当り目は-0.7EVです。
コダック・エクタクロームE100VS
|
|
|
-0.7EV補正 |
-0.3EV補正 |
補正なし |
|
|
|
+0.3EV補正 |
+0.7EV補正 |
+1.0EV補正 |
次にベルビアです。ベルビアは実効感度が低いので、E100VSよりも0.3EVぐらいはプラス側でも赤味は十分に再現されていると判断しています。したがってフラットな光線状態であれば、ベルビアの露出の当り目は-0.3EVか-0.7EVで、どちらを選ぶかは画面全体の印象次第です。しかし補正なしを選んだケースはありません。直射日光が当たっている状態ではより赤味が失われますので、画面全体の印象が崩れない範囲で出来るだけマイナス補正のカットを選びたくなります。
フジクローム・ベルビア50 (RVP)
|
|
-0.7EV補正 |
-0.7EV補正 |
|
|
-0.3EV補正 |
-0.3EV補正 |
|
|
補正なし |
補正なし |
4. 二重露出の効果
幻想的な絵柄を作りたくて、私は普段から二重露出を多用しています。私が使う二重露出は、普通に撮影した1枚目に、ピントをぼかした2枚目を重ねる方法で、一種のソフト表現を目指しています。その際のピントのぼかし具合、絞りの設定、露出のかけかたなどで無限の組み合わせがあり、その中から状況に合わせて意図に沿うものを選んで撮影しています。しかし彼岸花の二重露出で効果的な絵柄を得ることは難しいとの結論に至りました。幾つか撮影した中から、比較的成功の部類に入ると思う物を二枚掲載して説明しましょう。
下の左側の写真はフラットな光線状態における赤い絨毯の様な彼岸花です。一枚目はしっかり絞り込んで、パンフォーカスで撮影し、2枚目には絞りを開放にして、しかもピントを最大限にボカして全く形のないボケ色だけを重ねています。結果としてソフトレンズやソフトフィルターでは実現できない「パンフォーカス・ソフト」を実現しています。この手法を用いると、画面全体が画面大半を占める色で色カブリを起こします。見本写真の場合は画面全体が彼岸花の赤なので、赤カブリを起こしても不自然ではありませんが、もし緑や他の色が広く存在していると、濃い赤カブリの為に変な絵になってしまいます。
右側の写真は直射日光の下で撮影した写真で、画面の明暗差がかなりあり、彼岸花の赤に加えて草の緑、木のシルエットの黒が混在しています。この絵柄で左側の様な「ボケ色」だけを重ねる撮影方法をすると、赤と緑の補色同志の色カブリを起こし、かつ木のシルエットは隣の明部の光カブリによって失われてしまうので、全く見るに耐えない絵柄になってしまいます。そこでピント位置のずらしを少なめに留めた二重露出にしました。この方法であれば、赤カブリは赤い部分主体、緑カブリは緑色の部分主体におこり、補色同志の色カブリによる不自然さを避けることが出来ます。そして画面全体が滲んだような夢想的な絵柄になります。
しかし客観的な目で見ると、どちらもあまり効果的とは言えないですね。
|
|
通常撮影写真 |
通常撮影写真 |
|
|
二重露出写真 |
二重露出写真 |
|