ここに来て、世の中はデジタル一色です。10万円で買えるKiss
Digital発売されてからは「フィルムカメラを買おうと思う」などと発言すると、周囲からオタクか変人扱いされる時代になってしまいました(笑)。それに輪を掛けるように2004年2月12日から開催されたPMA(アメリカで開催されるカメラショーです)で、コニカミノルタはミノルタン待望のα7
Digitalを発表、ライカはRシリーズ用のデジタルバックを発表し、2年後にはM型ライカのデジタルを出す事も公言。エプソンはコシナと組んでMマウントデジタルの試作品を発表しました。これらビッグニュースの陰に隠れて目立たないけど、キヤノンはEOS
1D Mark IIに加えてレンズ一体機のPowerShot Pro-1以下一気に7機種のデジカメを、コダックは早くもDSC
Pro 14nの後継機(姉妹機?)DCS Pro SLR/nを発表し、さらにフジは1230万画素で3000ドル以内という破格の「FinePix
S3 Pro」のモックアップを発表ています。その一方でPMAで銀塩の新機種発表のニュースは聞きませんね〜。
しかし、2004年のPMAにおけるデジタルラッシュは、いつもとは違って銀塩派にも朗報だったと思います。それは今まで「デジタルに押されて消滅するかも知れない」と恐怖に怯えていたミノルタαシリーズと、R&Mマウント機にデジタルが加わることによって、銀塩のαシリーズやR&Mマウント機、及びそれ用のレンズ群も生き残るだろうという安心感が生まれたからです。今までこの安心感はEOS、ニコン、ペンタックス、シグマ、AFコンタックスだけの物でした。これに今回のα、R、Mデジタルの発表でほぼ全員勢揃い!という訳です。その一方で消滅が事実上決定したMFコンタックスと、既に消滅したオリンパスOMのファンの方は寂しい思いをされているでしょう。ご同情申し上げます。
こんな時代に「銀塩にこだわる」などと言っても相手にされない可能性が大であるのに、無謀にも私は二つ前のつぶやきで「銀塩ポジフィルムにこだわる」などとアドバルーンを上げてしまいました(笑)。今回はそのつぶやきで書き忘れたことを書く事にします。α、R、Mデジタルの発表で銀塩機の延命が確実性を増し「よし、私はまだまだ銀塩で頑張るぞ!」と思うお仲間も増えたのでは無いかと思いますので(笑)
二つ前のつぶやきで私が「銀塩ポジフィルム」にこだわる理由として挙げたのは、以下の8つでした。
1 ポジをライトボックスで鑑賞する事が一番美しいと思っているから
2 撮影時の緊張感が欲しいから(1カットごとにお金がかかる)
3 自己研鑽の為には、撮影時の判断が結果にダイレクトに結びつくポジが最良と思うから
4 デジタルとは違って、長期保管、将来使用が容易だから
5 一つの機材を永く使えるから(売り手主導の頻繁な買い換えをしなくて済むから)
6 私の撮影枚数レベルでは、銀塩の方が安上がりだから
7 便利なプロセスに頼って自分自身の能力を退化させる事が怖いから
8 貧乏だから
今回追加したいのは二つだけです。
9 銀塩フィルムは昔のものでも、現代(あるいは将来)最新の品質でデジタル化出来るが、デジタルは撮影時に採用した品質で一生を終える。
私が使ってるフィルムスキャナは石器時代の物で(笑)、CanoScan
2700Fです。発売は1997年ですから、当時のデジカメの代表機種、カシオのQVシリーズの画素数が最上位機種でも35万画素しか無く、キヤノンが一般向けにやっと57万画素のカメラを発売した時代の物です。しかし35mm銀塩とフィルムスキャナの組み合わせは、その当時から約950万画素のデジタル画像をもたらしていました。それから7年経った現在でもこの組み合わせは最新鋭のデジカメと競争出来る画像をもたらします。勿論ほぼ同等の1000万画素の撮像素子を持つデジカメ(1Ds)並みなんて言う気はありませんが、主流の600万画素レベルのデジカメとならば「何とか」画質を比べられるでしょう(ノイズが多い分、ちょっと苦しいか(^^;;;)。一方で現在最新鋭のフィルムスキャナを用いれば、35mm銀塩フィルムから4080万画素レベルのデジタル画像を生み出します。フィルムが5400dpiに耐える解像度を持っているかどうかは別としても、最新鋭最大画素数を持つデジタル一眼レフ(EOS
1DsやKodak DSC Pro14n)と真っ向勝負できる(そして恐らく勝てる)ことは特筆すべきです。更に1DsやDSC
Pro14nは現在の被写体しか撮影できませんが、フィルムスキャナは過去に撮影した写真でも、現代最新鋭の品質でデジタル画像をもたらすのです。もし、過去にデジカメで写真撮影していたら...結果は言うまでも有りません。例えば1997年当時の画像なら眠い35万画素のままで改善は出来ません。
デジタルカメラでその時代最高の画質を得る為には、1〜2年に1回の100万円単位の投資を要求してきました。今後はもう少し安くなるでしょうが、投資要求頻度は変わらないでしょう。一方の35mmフィルムスキャナは1997年当時も今も、最高機種で実売7〜10万円です。しかも性能進化はデジカメ程には早く無いので、デジカメ最高機種と画質で張り合うだけなら4年に一度の買い換えで十分。私のように貧乏性の人間は(あるいはデジカメ実用機と画質で張り合うだけで良いなら)7年経っても使い続ける事が出来るわけです(笑)。
私の言いたいことがお分りになったと思います。私は撮影の瞬間瞬間が一期一会だと思っています。その撮影の瞬間はとても貴重な物で、絶好のチャンスでは一台のカメラのシャッターしか押せません。その絶好のチャンスをどの様な機材を使って、どの様な記録媒体、記録方法で作品を記録するのが得策か、と考えたときに、デジタルならではの用途が必要でない限り、あるいは最終的にデジタル画像を得る事が目的ならば「銀塩に勝る物は無い」というのが私の信念です。品質、コストパフォーマンス、長期保管、将来利用、いずれの面でも銀塩が上です。但し「即時利用」と「連続して大量の撮影をする」..デジタルならではの優位性、これには銀塩が大幅に劣りますね(^^;
こう書くとデジタル派から多くの反論を受けそうですが、受け付けません(笑)。ある種の視点からすればEOS
1Dsクラスの画像は35mm銀塩フィルムの情報量に匹敵するか、凌駕したかも知れません。しかしここで述べた事(1997年と現在の比較のアナロジー)は、今後中判、大判の世界に舞台を移して繰り返されます。中判デジタルバックで2000万画素の画像を得る為には数百万円の投資が必要ですが【ほぼ645サイズのフジのデジタルバックは、ハニカムCCD2068万画素、記録画素数4136万画素ですが、ここでは2000万画素の画像としておきます。価格はバックだけで238万円。これ以外にGX645と数本のレンズ群を購入するのに、バックと同じぐらいの予算が必要です】、そんな絶対に元を取れないような超高価な機材を横目に、古くから有る格安中判/大判機材とフィルムでせっせと作品を撮影しておきましょうね。そのフィルムと4万円程度のスキャナの組み合わせは、現在でも645で1億画素、6x7で1.7億画素、6x9で2億画素、4x5で5.2億画素の画像をもたらします。勿論画質は画素数だけではないし、現在のフラットベッドスキャナの性能は数値ほどには良くないし、5.2億画素の画像を扱えるPCが有るのか?という問題もあるので割り引く必要は有ります。しかしそれでも最新鋭デジタルと銀塩+スキャナでは画素数が数倍も異なりますし、今後のスキャナ側の進化で近い将来にはこれ以上の画素数で色調/階調的にも高画質なデジタル画像を得られるようになるでしょう。
デジタルは撮影した瞬間が最高でそれ以上には決してなりません。むしろ周りの進化で時間と共に見劣りするようになるでしょう。しかし銀塩(特に中大判)で撮影しておけば、将来により高品質なデジタル画像が得られるのです。銀塩写真は樽の中のウィスキーの原酒の様に「寝かせれば美味しくなる」のです(笑)。
10 余暇時間を有効に使いたい
この章は一部伝聞と推測で語らせて頂きますね。というのも、私は高性能デジタル一眼レフを持っておらず(汗)、一日に数百MBから数ギガバイトという様な大量撮影をしたことが無いからです。
インターネット時代になって、自分の余暇時間が足りなくなった気がします。絶対時間が減っているとは限らないのですが、インターネット(ブラウズ、サイト作りなど)は幾ら時間があっても足りない程やりたいことが沢山あり、最近は慢性的に時間不足の日々を送っています。そんな時代になってから、私は自分の余暇時間を大切に考えるようになりました。するとまた「デジタルカメラ主体の生活には足を踏み入れたくないなぁ」と思うのです。
プロのデジタル地獄という話を聞いたことが有ります。勿論伝聞ですので、正確ではないかも知れませんが、本筋において真実でしょう。その話とは、あるプロカメラマン(商品撮影をする人だったと思います)が銀塩撮影からデジタル主体の撮影に切り替えたそうです。プロですから撮影枚数は非常に多く、フィルム代が掛からない故のコストダウン効果は劇的で、デジタル導入は理にかなった物の様に思えました。しかし現実は...
その日に撮影した写真をPCに転送し、チェックするだけで毎日徹夜に近い作業になったそうです。またPCのトラブルがあればさらに忙殺され、メモリーエラーや撮像素子の汚れで大量の作品がダメになって翌日撮り直しになった事も...念の為にバックアップを取ることまで考えると、時間はいくら有っても足りなくなりました。
銀塩撮影していた時には撮影後はラボにフィルムを渡し、それが出来上がってくるまでは自分の時間があったのです。またトラブルも殆ど無く、コストは嵩むものの品質は安定していたとの事でした。この一連の体験の結果、そのプロはまた銀塩主体のスタイルに戻ったそうです。
私も同じ感覚を持ちます。フィルムで撮影すると、現像やプリントには1日以上掛かりますが、自分自身の時間は殆ど浪費されません。また出来上がったスリーブのチェックはかなり短時間で済みます。フィルム一本36枚あたり数分から10分程度です(気に入った作品が無ければ数秒という事も(^^;)。バックアップの必要も無く、整理保管は極めて簡単。私は自分の時間を確保したいが故に、銀塩のこの手軽さを手放したく有りません。
ただ、これを書いておかないと不公平でしょう。銀塩で撮影して一番不便な事は、デジタル画像を得る為のスキャニングです。私のスキャナは少し古くて遅い事も有り、1カットあたり『フィルムセット、スキャニング、フィルム取り出し、画像トリミング(黒縁落とし)、画質調整(原板を再現する為に徹底的にやります)、ファイル保存』のプロセスで10分弱かかります。暫く撮り溜めた写真から気に入った物を30枚程スキャニングすると丸一日潰れます。この面倒さ故に、銀塩カメラマンのサイト更新は頻度が低めであるのは否定出来ないですね(^^;。
大量の「デジタル画像ファイル」を必要とする人には、この章の内容はナンセンスです(^^;;;;
ただ、最近のスキャナであればもう少し速いことと、スキャニングすると16ビットTIFF画像も得られるので、デジカメでRAW撮影していて、一枚一枚現像して16ビットTIFF画像を作っている人となら、手間の差はかなり縮まると思います。
スキャニングがとても面倒な事は真実ですが、救世主、時間を金で買う手段があります。フジやコダックのフィルムからCDーRへのスキャニングサービスです。ポジフィルムからの場合は多少コストが嵩みますが(1枚あたり80〜120円+基本料500〜1500円)、非現実的とはいえないレベルでしょう。ネガフィルムの場合は更に安くて、フジカラーCD/コダック・ピクチャーCDを使う場合、フィルム一本あたり現像料+500〜700円です。この値段で(ネガのスキャニングが不得手な)パーソナルスキャナよりもはるかに綺麗なデジタル画像を「自分の時間を浪費することなく」得ることが出来て、おまけにインデックスプリントとバックアップCDーRまで手に入ってしまうのです。欠点は150万画素という解像度ですが、プリントを意識した画質に調整されており150万画素のデジカメ画像よりは綺麗です。サイト掲載や2Lぐらいのプリントには十分でしょう。
追記)ネットでフジカラーCDやコダック・ピクチャーCDの評判を調べると、とても満足している人と、とても不満に思っている人が両方おられるので、扱うお店によって品質にけっこうばらつきが有るようです。基本的にネガからのプリントと同じ要領で、写真に熟練していない店員さんでも可能なサービスですので、品質(カラーバランス、ゴミの有無など)がある程度属人的のようです。試しに一本CDーRサービスを依頼してみて、仕上がりに満足できるお店を探してみてください。
私は行き付けのキタム○・T町店に依頼しましたが、カラーバランスなどはとても満足できる仕上がりでした。ただ僅かなゴミはあります。これは自分で細心の注意を払ってスキャニングしてもある物なので、気になりませんが。
こう考えると、『35mm銀塩カメラ+ネガフィルム+フジカラーCDサービス+時折パーソナルスキャナで1000万画素以上のスキャニング』という組み合わせが、自分の時間の有効利用とコストの両面から見た「最良のデジタルカメラ」かも知れません。
(もしポジフィルムも現像料+500円/本でフジカラーCDにしてくれたら、私は全面的に乗り換えるでしょう。)
この疑似デジタルカメラ、本家デジタルカメラとは違って(機種を選べば)ビオゴンタイプのレンズで周辺まで高画質な超広角撮影を楽しむことも出来ます。おまけに(ライカを選ばなければ)かなり安上がり(^^)
そう言えば(2004年2月現在)コニカミノルタは「α7ボディとDiMAGEScan
Elite 5400の特別セット」を販売しているけど、これって4080万画素、35mmフルサイズ撮像デバイス装填可能な疑似デジカメ(ギジカメ?)ですよね(笑)
...という事で、まだまだ銀塩で頑張ります(笑)
「貧乏ヒマ無し」改め、「貧乏デジ眼無し」(^^;
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